東方白化雪 ~ White wonder wizardry. 作:夢哉
「なんで来れたの?って顔してるね」
「なんでわかったの…」
「あははー、白ちゃんわかりやすいもん。六華ちゃんもそう思わない?」
「ええ。マスターは表情に出やすいですからね」
そんなに出やすいものなのかなぁ……?
「まあ、なんで来れたって言えば、ぼーっとしてたらいつの間にか来てたって感じかな」
「無意識にってこと?でもそんなぼーっとして歩ってたら危ないんじゃないかな?」
ルーミアは目の前が見えなくて何度も木にぶつかってて軽く泣きかけてた。いやもう、あれは見てられなかった。
「んー、それは昔からのことだからね。いつからだっけなぁ、このへんな目を潰した時からだったかな」
ゾクリ、と。身体の奥底が冷えるような昏い笑みを浮かべた彼女には既視感がある。紅い館に住むあの子にそっくりだった。
「あの目は、覚り妖怪が持つ目です」
「覚り妖怪?」
「相手の心を読むことができる妖怪です。それ故に、周りから嫌われる、と聞きました」
六華が耳元で覚り妖怪、という存在を教えてくれた。恐らく、あの目で相手の心を読むことができるのだろう。
心が読めるとなれば、ありとあらゆる相手の状態を知ることができる。だからこそ、心を読まれる事は、人間も妖怪も嫌うのだろう。霊夢さんや、魔理沙さんは少しズレた人……だから「会話要らず」と言うだろうが、他がそうだとは限らない。
しかも、それは逆もできる。心を読まれている、と理解すれば精神的なダメージを与えることができる。そうなれば、強制的に心を読んでしまう覚り妖怪には苦痛を与える事になるだろう。
それを彼女は避けた。悪く言えば、逃げた。……ただ、それが悪いとは思わない。思えない。
周囲からの悪意を持つ心を強制的に読んでしまうというのは幼い彼女にはかなりの苦痛となっていただろう。話しているといつも笑顔な少女に見えた。だけど、さっきの笑みを見て確信した。
―――――話してる間の笑みは仮面だと。
「私はこの目を潰したけど、お姉ちゃんはまだこの目を持ち続けてる。私より、強いんだ」
「……そっか」
「だからお姉ちゃんはいつも周りの奴らから嫌われてた」
「……うん」
「だけど私は……逃げた」
「……それで、お姉ちゃんは一度でもこいしちゃんを恨んでる、とか嫌いだって言ったの?」
「え?」
「一度もそんな事を言われた事がないのなら、それは勝手な思い込みなんじゃないかな」
事情を知らない奴が何を偉そうに、と思われるかもしれない。ただもし彼女のお姉さんがそう思っていないのに悩むのなら、それはただ二人の距離を離していってしまうだけだろう。
「……あはは、そうかもね。ありがとう、白ちゃん」
お礼を言われるようなことなんて言えてないんだけどね。
***
「すっかり話しちゃったねー」
「そうですね。もう夕方になってしまいました」
もう日が傾き始めてる。そんな時刻になり、そろそろ帰らないと帰路が危うくなる。もちろん、生死の意味で。
結局、早苗さんたちはまだ帰ってこない。一日神社を空けて、どこへ向かってるのだろうか。
「それじゃあ、僕たちはもう帰りますね」
「うん。私も帰るかなー。それじゃあ、またね」
「ええ。また」
手を振り、帰路へつく。霊夢さん、魔理沙さんはもう異変を終えているだろうか、と考えながら空を飛び始めた。
***
「ただいま帰りましたー」
「あら、おかえりなさい」
「お、白に六華か。おかえり」
アリスさんの家へ戻ると、家の中にはアリスさんと魔理沙さんがいた。ということは異変は解決したらしい。
「と、白、六華、お前にも伝えとくぜ。もうすぐ霊夢の神社で宴会が始まるから来いよ!」
「あ、あー、宴会ですか……」
宴会は毎回アリスさんと共に参加させてもらっているが、毎度の事、記憶が飛んでいる。しかも、決まってお酒を飲んだ後に。さらに厄介な事に目が覚めると全員がなぜだか鼻血を出して何かの事件の後かのようになっているのがいつものことだった。
つまり、宴会でのまともな終わり方が自分の中では一度もなかった。だから、参加するのを渋ってしまった。
「あー、まあ、いつものは仕方がない。…な?アリス」
「ええ……白ちゃんのせいじゃないわ。…ね、六華」
「……はい。マスターのせいではないと思います…よ?」
「なんで皆さんそんなにぎこちなく話すんですか」
「まあ、来いよ!拒否権は与えない、いいな?」
「……はい。参加させていただきます」
「時間についてはアリスから聞いてくれ。んじゃ、またな」
そう言い、家を出ていった。……出掛ける準備をしましょう。
うーん、地霊殿成分がほとんどないのです。許してくだされ。
次回はきっと宴会回です。それでは。