東方白化雪 ~ White wonder wizardry.   作:夢哉

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その30

 

 

 Side 霊夢

 

 

「さて、どうするの?」

 

恐らく、この異変の主犯格であろう、目の前にいる二人の少女に問う。少名針妙丸に、鬼人正邪、それがこいつらの名前だ。

 

弾幕ごっこをする羽目になったが、所詮は、というレベルの奴らだった。強いて言えば、能力や道具を用いたスペルに手を焼いたところか。

 

悔しそうに睨みつけてくる針妙丸はわかるが、正邪はなぜか余裕のある笑みを浮かべていた。まあ、何かしようものなら後ろにいるメイドがなんとかしてくれるだろう。

 

「というか、よくバレずにまあこそこそとこんな異変を企てられたわね」

強者ども(おまえら)が下を見ていない、良い例じゃないか」

 

なるほど、確かに目が行き届いていないところがあったのかもしれない。博麗の巫女として、それは反省点だ。

 

が、それとこれとは話が違う。こいつらが仕出かした異変は今までのそれとは規模も行為も大きく異なっている。まさに、幻想郷そのものを変えてしまおうという明確な“悪意”を感じられるものだった。それをこいつらは……わかっているのだろうか。

 

少し威圧を含んだ視線を送ってみれば、針妙丸は小さな悲鳴を。しかし正邪は大きな表情の変化は見られなかった。いったいどこにその余裕があるのか。追い詰めているのはこちらだというのに。

 

「あなたのどこにそんな余裕があるんですか?」

「ああ、今回は失敗してしまったが面白い収穫もあった。この小人のお陰でな」

「正邪……?それって……」

「ああ。お前は上手く利用されてくれたってわけだ」

 

なんともまあ、非道なやつだ。言葉もなく、目を落とす針妙丸に同情の念が沸かないわけではない。少なくとも、針妙丸は正邪に騙され、利用されていたということが正邪本人から聞くことができたのだ。

 

しかし、それでも追い詰めているのには変わりがない。まだ何かあるというのか。

 

「お前らより一足早く、白というやつに会ってな」

「……それで?」

 

嫌な予感がする。こんな時に白の名前が出るなんて、間違えなくまずい状態になっている。

 

「勧誘したがまあ、断られてしまってなぁ。そこで、少しちょっかいをかけてみた」

「何をした?」

「言うと思うか?」

 

こいつ……

 

「なら無理矢理にでも話してもらうまでです!」

「おお、おお、怖いなぁ。お前らはこれがわかるか?」

 

出してきたのは、針妙丸が所持しているものとそっくりな打ち出の小槌だった。

 

「正邪!?なんでそれを持ってるの!?」

「あんた、まさか盗られたんじゃないわよね?」

「そんなわけないよ!だって今持ってるもん!」

「ああ。これはその打ち出の小槌の複製品、言わばレプリカだ。その欠点を補ったものだよ」

 

オリジナルの欠点を補った複製品……?

 

「それじゃあな、強者ども。私は必ず幻想郷をひっくり返してみせる!」

 

そう言い、打ち出の小槌を用いて逃げ出す正邪に為す術もなかった。完全に油断をしてしまっていた。

 

しかしそれ以上に

 

「白様が危険、ということですよね」

「ええ。私が白ちゃんの方に向かうからあんたはそいつを見ていて頂戴」

「わかりました」

 

メイドが返事をしたのを確認し、急いで白の方へと向かった。

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 

Side 白

 

 

気がつけば、真白い空間の中にいた。

 

どうやら僕は今、気絶しているらしい。らしい、というのも、なんとなくそんな感覚だということが伝わってきているからだ。

 

そして前方に、僕が―――――否。「僕が借りている身体」がいた。しかし、それは自分の意志で動いてこちらへと歩いてきた。僕が動かしているわけでもいないのに。

 

そして目の前までやってくると、にこりと微笑んできた。

 

「君は……?」

 

―――――誰なの?と。

 

身体は動かないが、声は出るようだ。しかし身体が動かないが故に、自分の姿を確かめることができない。

 

そしてあろうことか、僕の頬をチロリと舐めてきた。だが、その行動でとある記憶が蘇った。

 

―――――あの時、白い子猫が僕の頬を舐めていた。

 

なんとも無理矢理なこじつけだ。しかし、その予想は間違っていなかったらしく、目の前の彼女は嬉しそうに、再び微笑んだ。

 

そして、ようやくわかった。

 

幻想郷での僕の姿は、“彼女から借りていたもの”なのだと。

 

「どうして……?」

 

そんな疑問に、ふと、思考が流れてきた。

 

『あなたは、私を助けてくれた。だから私も、あなたを助ける』

 

と。

 

突然、外界の状態が頭に流れ込んでくる。その景色には、魔理沙さんと六華、黒がいた。おびただしい弾幕の数。それは僕が展開しているものだった。そして、僕は彼女たちと戦っているようだった。

 

「どうして……!」

 

困惑の疑問から、怒りの疑問へと変わった。

 

『あなたを傷つけようとした。だから、私が守る』

「だからって!魔理沙さんや六華も殺してしまうような弾幕じゃないか!」

 

そう叫べば、なぜそんなに怒るのか、という顔で

 

『でも、あいつもあなたを殺そうとしたよ?』

「でもそれをやり返す必要はないよ!僕を守ってくれるのは嬉しいし、ありがたいけど、やり過ぎだよ!」

 

叱られている、とわかったのか、目の前の彼女は悲しそうに目を伏せた。

 

 

 

僕は、何もしなかったのに。

 

よくもそんなことを言えるものだ。

 

『ごめんなさい』

 

ポツリ、と。彼女からそう呟かれ、自己嫌悪が加速する。外では、どうやら弾幕は止んだらしい。恐らく、彼女が止めたのだろう。

 

『あなたに助けて貰えて、嬉しかった。だから恩返ししたかった。だから、ごめんなさい』

「……助けて貰ったのは、僕の方だ。僕が今、こうして生きていられるのも、この世界に来ることができたのも、君のおかげだったんだ。だから、謝るのは僕なんだ。……ごめんなさい」

 

だから。

 

「僕は弱い。この世界にきて、それがよくわかった。今回みたいなことも、これからも何度も起こると思う。自力でなんとかしたい。だけど、もしそれが叶わなかったとしたら……そしたら、助けてくれないかな」

 

再び貰ったこの命。生きているなら、精一杯生きていこう、と。

 

自分なりに、努力をしてきたつもりだ。しかし、それでも力及ばなかった。下手をすれば、また死んでしまったかもしれなかった。

 

“死”の恐怖は忘れない。あの痛みも、段々と自分ではなくなっていく感覚も、全てが怖かった。

 

より一段と、努力が必要なのだろう。彼女の力を借りずに済むように。

 

そして、彼女は

 

『うん!』

 

と。頼られることがとても嬉しいのか、満面の笑みで承諾してくれた。

 

『この身体は、あなたのもの。だから、私もいっぱい力を貸す。だから、死なないで』

 

悲痛に、祈るように、願う彼女に。

 

「わかった。精一杯、生きていくよ」

 

そう、返事をした。

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 

身体の返還は、スムーズに行われた。君はどうなるのか、と尋ねると、

 

『あなたの中にいるよ』

 

と言われた。漠然としたものだが、なんとなく理解できた。

 

目を開けば、戻る。

 

ああ、たくさん迷惑を掛けてしまった。魔理沙さん達に叱られるかな……叱られるだろうなぁ……

 

ごめんなさい、と思いつつ目を開けば、案の定魔理沙さんたちがそこにいた。

 

そして、

 

「ごめんなさい。ただいま戻りました」

 

帰還の挨拶を伝えた。




だいぶ無理矢理感がすごいです……
どうして白がこの姿になったかがなんとなく書けたかな、と。無理矢理。

次回も未定です。なるべく早めに更新出来たらいいなぁ、と思います。それではまた次回に、ノシ
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