東方白化雪 ~ White wonder wizardry.   作:夢哉

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またまた日常
その32 ★


Side 白

 

 

「うーん、六華の分も入れてそろそろ新しい服を作ろうかしらね?」

 

僕達を見やるなり、アリスさんがそう呟いた。しかし、しかしだ。作ってもらえるのはとても嬉しい。本当にとても嬉しいのだが…………女の子の服なのだ。そう、もう一度言おう。女の子の服なのだ。

 

「えっと……」

「本当ですか!?ありがとうございます!アリス様!」

 

めっちゃ喜んでる。六華がめっちゃ喜んでる。確かに、自我を持った分“新しい服”というものにはとても惹かれるのだろう。僕だって惹かれる。男物の服であれば。

 

とは言え、作ってもらう側には文句を言うわけにはいかず、むしろありがたくいただくべきであろう。この身体に慣れるための通過点の一つとして思おう……。

 

「それじゃあ、お願いします」

「ええ。気合い入れて作るわ」

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 

アリスさんが服を作っている間、僕たちは博麗神社に向かう。訓練のためだ。

 

例にならって、そこでは霊夢さんと魔理沙さんが口喧嘩をしていた。「私の分のお菓子まで食べるな!」という霊夢さんの怒った声や、「いちいちそんなことを気にしてると疲れるぞ」と笑いながら答える魔理沙さんの声が聞こえてきた。

 

唯一違う点を挙げれば、その二人の間でもそもそとお菓子を食べ続ける少女のことだろうか。

 

「こんにちは。霊夢さん、魔理沙さん、それに黒」

「こんにちは、皆さん」

「おお、白か。いらっしゃい」

「いらっしゃい、白ちゃん」

「……白、いらっしゃい」

 

みんなしていらっしゃいって言うんですね……。

 

黒はあの異変以来、博麗神社に住み込んでいる。半ば強制的に霊夢さんが引き取っていた。なんでも、僕とそっくりで可愛らしいから、だそうだ。……まあ、黒は僕から見てもとても可愛らしいと思う。僕自身は借り物の身体なのだが。

 

まあ、紫さんも許可しているし、大丈夫だと思う。

 

「んー、そうだな。今日は黒を相手に模擬戦をしてもらおうか」

「……!する!」

 

すっごい黒が食いついた。普段は見せない表情―――目がとても輝いている。

 

「えっと……」

「大丈夫だ。黒にはしっかりと加減の仕方を覚えさせた。」

 

どうにもニッコリとした笑顔で言われる。これ絶対大丈夫じゃないよね……?

 

「形式はいつも私と戦っている通りだ。残機一のスペカ無制限。被弾するか体力が尽きるか降参したほうが負けだ。まずいと思ったら私達の方で止める。白の方は六華の助力はなしだ。あってもいいが、今日はお前自身の能力値を黒相手で見てみたい」

「……わかった」

「わかりました」

「マスター、頑張ってください!」

「二人とも頑張ってね!」

 

応援を受けるからには簡単に負ける訳にはいかない。どんなに黒の表情に凄みがあってもだ。……ちょっとやばいかもしれない。

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 

黒と一定の間を開け、空中に浮き上がる。自身の持つスペルを用意し、準備完了だ。

 

「よし、いいな。それじゃあ―――始め!」

 

魔理沙さんの合図と同時に黒が一気に距離を詰めてくる。弾幕を放ちながら接近してくるので避ける一方へと回されてしまう。

 

「ぐっ……このっ!」

 

黒の弾幕はなかなかにしつこい。ホーミング性の付いた弾幕のために追尾してくるのだ。こちらからも弾幕を当て、それを破壊していくが……

 

「数が多い!」

 

ほぼ無尽蔵に作られてしまえばひとたまりもない。仕方なくスペルを構えるが……

 

「……闇符『ブラックアウト』」

 

相手に先にスペルを唱えられた。スペルの内容は僕が使うものと全く同じであるが―――威力は僕よりも圧倒的に上だ。

 

「雪符『ホワイトアウト』!」

 

しかし、回避できなくはない。相殺しきれなかった弾幕は個別に消していく。

 

「……白からも攻めてこないと……負けちゃうよ?」

「……!なら、これで!雪符『スノーフォール』!」

 

降雪―――雪が降る光景を模したスペルだ。しかし、降り注ぐのは上からではなく、全方向。

 

「……うん。そうこなくっちゃ!」

 

いつにも見せぬ黒の表情は、本当に心の底から楽しんでいる笑顔だった。

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 Side 魔理沙

 

 

「時折、白ちゃんってなかなかにエグい弾幕を作るわね……」

「ああ、そうだな。しかしまあ、避ける方も避ける方でよくやるよ」

 

白自身、あの暴走からなぜか格段に力が上がった。理由はわからないが、本人はどうやら理解しているらしいのでそこはまあいい。それによって恐らく上級妖怪でも太刀打ちできるであろう力は有している。まあ、まだまだ力の制御は甘いから中級妖怪が限度だろうがな。

 

しかも霊夢が言うようになかなかにきついスペルを作り、用いてくる。私自身でもヒヤっとくることがある。

 

しかし、黒はそれをむしろ楽しそうに攻略していく。黒が持つ力は白の限度があるものと逆―――ほぼ無尽蔵である。恐らくあの天邪鬼の能力で改変された部分であろうが、とても恐ろしい能力だ。本人はどうやら自制していて上限を設けているようだが。

 

「ねえ、この模擬戦どっちが勝つと思う?」

 

霊夢がそう尋ねてくるが、思案する時間も要らずに答える。

 

「黒だろうな」

「うーん……仕方ないのかしらね……」

「マスター……それでも頑張ってください……!」

 

白には申し訳ないが、今のあいつでは黒には勝てない。あの暴走時は話が別だが、力がいくら上昇していようがそれを制御できていない時点でもはや決まってしまっている。黒も力の制御が甘い部分は見受けられるが白ほどではない。

 

―――――ぶっちゃけて言えば、黒は霊夢みたいなタイプで、天才だ。

 

それに比べ、白は私と同じ努力で力をコツコツと上げていくタイプだ。今の白は“天才”と戦っている。それを本人は痛感しているだろう。

 

この模擬戦で黒の相手が白ではなく私であっても、私は負けているかもしれない。恐らくといった話であるが、生まれてから幻想郷で住んでいれば嫌でも相手の力量というのは見てわかる。

 

正直に言えば、かなり悔しい。しかし白が以前話してくれたことを思い出せば、それをも目標にできる。

 

さて、模擬戦も佳境を迎えてきたな。

 

「うーん、なかなかに白は粘ったが、もうそろそろ限界か」

「そうね」

「マスター……!」

 

六華と共に戦っていればまた少し違った結果が見れたかもしれないな。また明日が楽しみだ。

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……」

「……白は頑張った。だから次で勝たせてもらう」

「まだ……終わってないよ……!」

 

口では対抗するが、もはや体力の限界を迎えていた。

 

「……ん。いくよ……『ダークスパーク』」

「『スノースパーク』!」

 

白と黒の魔砲が僕と黒の間でぶつかり合う―――しかし、体力の差か、すぐにこちらの魔砲は掻き消され、黒の魔砲が―――――

 

 

 

 

 

「夢符『二重結界』!」

 

霊夢さんのスペルにより阻まれ、掻き消された。

 

「そこまでよ。黒ちゃん、それは明らかに程度を超えてるわよ」

「……ごめんなさい」

「うん。わかればいいのよ」

 

霊夢さんに介入してもらわなければ僕が怪我では済まなかった―――つまり僕の負けだ。

 

この模擬戦で僕は圧倒的な力量差を黒に見せつけられ―――

 

「くっ……!」

 

悔しさで涙を流した。

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 

「さて、反省会をするぞ」

「……はい」

「……うん」

「まずは白、お前からだが……着実に強くなってる。それは断言しよう」

「……はい」

 

しかし、今まで強くなりたいと一心に努力してきたものは何だったのか。その疑問が湧いて止まらない。

 

「負けたのであればそれは努力がまだ足りていないってことだ」

「……!」

 

魔理沙さんの言葉で目の前が一瞬真っ赤に染まる。が、僕よりも努力している魔理沙さんの言葉には説得力があった。

 

「ということはまだまだお前には伸びしろがある。それも断言しよう。お前の課題はお前の課題は二つ。自分の力を把握することと制御することだ。この二つを完成させて、初めてお前自身も完成される」

「……はい!」

 

自分の課題―――これをクリアしていくために今よりも努力が必要だと再認識させられた。だから頑張っていきたいと思う。

 

「さてまあ、次は黒だが……お前も力の制御が甘い。自分の力を上手く利用しているという点については評価するがこの課題をクリアしなけりゃな」

「……わかった」

「最後のスペルだけは、制御が甘くなったな。それは減点だ」

「……むぅ。つい熱くなってしまった……」

「お前らはまだまだ伸びる。より強くなりたいなら課題をクリアするためにひたすら努力しろ。いいな?」

「はい!」

「……うん!」

 

まだまだ強くなれる――――その言葉に僕は決意を改めた。

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 

「マスター、今日もお疲れ様でした」

「うん、ありがとう。……といっても負けちゃったけどね」

「でもマスターはちゃんと強くなってます!魔理沙様も仰ていました!」

「あはは……ありがとう、六華」

 

六華にお礼として頭を撫でてあげると気持ちよさそうに目を細める。うん、やっぱり可愛い。

 

今はもう帰路の途中、時間は夕暮れ時だ。あの後少し博麗神社で雑談し、お暇した。

 

「帰ったらアリス様が作る服が楽しみです!」

「そうだね」

 

本当に新しい服が楽しみなようで、先程から忙しなく僕の周りを飛び回っている。確かに、新しい服と慣れば気分も高揚するものだ。

 

と、話しながら歩いて行けば、アリスさんの家に到着した。

 

「ただいまです」

「ただいま帰りました」

「おかえりなさい。新しい服、完成したわよ」

 

と、新しい服を見せてくれる。

 

「わぁ!マスターの服と同じ形ですね!」

「ありがとうございます」

 

六華の服はカラーリングこそ以前のものと同じであるが、僕の服と似ているものだった。

 

「早速着替えてきます!マスター早く行きましょう!」

「うん……」

 

いまいち乗り気でない僕とは正反対は六華に背中を押され、着替えに行くのだった。

 

 

【挿絵表示】

 




ようやく投稿……3,800文字……久々にこんなに書きました。
そして素敵な挿絵を頂きました!ありがとうございます!嬉しい…嬉しい……!

次回も未定です。なるべく早く投稿したいなぁ、と。
それでは今回はこの辺で、ノシ
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