東方白化雪 ~ White wonder wizardry. 作:夢哉
Side 白
そろそろ、春が近づいてくる頃合いになってきた。近づいてきた、と言ってもまだまだ冬の半ばであるが。
これまでの間は特に何もなく、強いて言えば黒の幻想郷縁起を作りに行ったり、紅魔城の面々や霊夢さん、魔理沙さん達と雪合戦(本気)をやりあったり、新年を盛大に祝ったりと。そんな感じだったと思う。
なんだかんだで、この世界に来てから三年も経とうとしているのだから思い返してみれば物凄いものだと思う。……ああ、本当に濃密過ぎる。
三年もの間この身体を借り続けているが、未だに―――――受け入れられていない。以前のような出来事があったからなんとかして受け入れようとはしているのだがどうしても「後戻りができなくなってしまう」という気持ちが邪魔をする。邪魔ではあるけど、これを軽々しく捨ててもいいものなのか、とも思っているからどうにもできない。
捨てられてしまえば楽なものなんだけどなぁ……。
そんなこんなで今日もまた博麗神社にお邪魔している。今日はもう修行も終えて、ただただのんびりしている。春が近づいてくる頃合いと言ってもやっぱり寒いもので、いつものメンバー全員がこたつにくるまっていた。
「いやあ、やっぱり寒いなぁ……」
「そうねぇ……早く暖かくなって欲しいものだわ……」
完全に霊夢さんと魔理沙さんはこたつによって手篭められてる。そう言う僕もこたつから出られそうにないんだけどね……。
「こたつはやっぱりあったかいですね、マスター……」
六華もだった。そんな中で黒だけはなぜか僕をじっと見ていた。
「…えっと、黒?どうしたの?」
「……ううん、なんでもない」
さっきから何度も訊いているが答えてくれない。まあ、なんでもないのならいいのだけど。
……ぼーっとしていると、なんとなくここまでの三年間の記憶が頭に流れてきた。色んな所に行ったし、色んな人にも会ってきた。まだまだ行ったことのない場所だってあるし、会ったことのない人もいる。
一度死んだはずなのにこうしてまた生きているって考えれば、これは全て夢なのではないかと。そんな、あり得ない心配ですらしてしまう。
こんなことを考えているのは今回に限ったわけではない。ここで生きてきて、いつ頃だったか、時間が経った頃からこの恐怖が生まれてきた。
しかし、アリスさんや霊夢さん、魔理沙さんや六華と、彼女たちと接することでその恐怖を紛らわすことができた。男のくせに、なんともまあ女々しいものだと思う。
外を見れば、雪はまだ積もっている。頭を冷やすために外へと向かった。
***
「どこに行っても、この雪景色は変わらないんだなぁ……」
生前に生きていた頃も、住んでいた地域は冬にはよく雪が降る場所だった。幻想的な空間を生み出してくれる雪は好きだ。
なんとなく、遊び心で雪だるまを作ってみる。うさぎなんかを作ってみるのも面白い。
「……そういえば、あの後ってどうなったんだろ……?」
僕が死んだ後、どうなったのだろうか―――――
考えたところで何かわかるわけでもないのだが。
「いつか確かめる時はくるはずだし……その時にしよう」
生きている限りは可能性はある。そのためにも幻想郷で生きていけるように強くなっていかなくちゃ。
「……ねえ、白」
「っ!?…え、えっと、黒?どうしたの?」
頑張るぞ!と意気込んでいるところを見られた。なにこれすっごい恥ずかしい。大丈夫だ、問題ない、黒は言いふらすような人じゃない―――!
「……ちょっと話があるの」
***
改まった顔つきで黒に話を申し込まれた。その顔は何かを決意したように見える。そう言えば、前々から様子が変だったような気がしなくもない。
「それで、話って?」
「……うん、実は」
話された内容をバッサリと言うと、旅に出ようと思う、ということだった。普段から何を考えているか全くわからない娘だなぁ、とは思っていたが、まさかこんなにも突拍子もない事を言うとは思わなかった。
とは言え、それを止める理由もない。
なぜ旅に出たいと思ったのか、と言えば、幻想郷各地を巡ってもっと強くなって僕を振り向かせるというもの。
好意を向けられているということはあのストレートな告白で理解していたつもりだがまさかここまでとは思わなかった。
「僕はその事は止めようとは思わないけど、霊夢さんたちはなんて言ってるの?」
「……ん、いいって。紫って人からも許可貰った」
なんともまあ、行動が早い。それだけ本気なのだろう。
「……私、本気だから」
「う、うん……」
迫力というか、凄みというか、そういったものが表情にあった。どうしてこうなった。
「それで、出発は?」
「……今夜。だからもうそろそろ」
空を見れば、もう夕暮れ時で太陽はだいぶ傾いていた。
「……言おうとは思ってたんだけど、なかなか言い出せなくて」
「そっか……」
様子が変だったのも、これが原因だったのか。
しかし、急過ぎる。今生の別れという訳ではないが、しばらく会えなくなるのも確かだろう。
何か御守のようなものがあれば……
「そうだ」
強すぎず弱すぎず、程よい力を込めて弾幕を一個、形成する。【雪を模する能力】でそれを雪の結晶にし、更に魔力で糸を作る。
雪結晶のネックレスの完成だ。
「大したものじゃなくて申し訳ないんだけど、これ、御守に持っていってよ」
一応、ある程度の力は込めてあるので不意打ちなどを防ぐことはできるだろう。黒に至ってはそんなもの必要ないかもしれないが、せめてもの贈り物としてね。
ネックレスを受け取った黒といえば、驚いた後に珍しく顔を喜色に染めた。
「……ありがとう」
喜んでくれたのなら何よりだよ。
***
その後は、僕達に見送られて黒は旅に出た。霊夢さんが泣いてた。いつものことだと思う……。
せめても、良い旅になって欲しいと思う。また次に逢う日は何時になるのだろうか。
日常編はたったの2話となってしまいましたがこれでまた一段落。次は花映塚編となります。
順序が原作と異なっていますが、それはわざとです。黄昏ナンバーは心綺楼しかやったことが無いので書いてません。(というか整数ナンバーしかやったことがありません)
なのでそこら辺は花映塚編の後にもしかしたら書くかも。
一応次の花映塚編で最終章のつもりです。もう後少しというところまで来ていますが最後まで付き合っていただけると嬉しいです。
それでは今回はこの辺で。ノシ