東方白化雪 ~ White wonder wizardry.   作:夢哉

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その7

 

 

Side 白

 

 

「まさか一日で二度も死に掛けるとは思いもしませんでした…」

「本当にごめんね、白ちゃん」

 

霊夢さんの…まあ、アレで窒息死しそうになった僕は、霊夢さんに謝罪を受けていた。いや別に怒ってないよ?うん。

 

「怒ってないですよ。ただ…次からは気をつけてくださいね」

「肝に銘じるわ…」

「その辺にしておきなさい。魔理沙も笑いを止めなさい」

「くくく…ああ…悪かったんだぜ…」

 

アリスさんが場を納め、この後はどうするのかと僕に訊いてきた。…どうしよう…?

 

「えっと…行く当てがないです…」

「それじゃあ私の家に来る?」

「いいんですか?!」

 

アリスさんからそう提案される。それは願ったり叶ったりだ。…霊夢さんも私も!と言いたかったのだろうか、アリスさんを恨めしげに見ていた。

 

「ええ。中々に面白いし、白ちゃんは」

「ありがとうございます!」

「いいのよ」

 

笑顔でそう答えてくれるアリスさん。絶対この方はいい人だ…!いや、魔女って言ってたし人じゃないのかもしれないけど…。

 

霊夢さん、魔理沙さん、紫さんには本当にお世話になった。もし霊夢さんがいいと言うのならここへ通おうかと思う。

 

「あの、霊夢さん」

「何かしら?」

「今度、ここへ遊びに来てもいいでしょうか…?」

 

霊夢さんはその質問に再び目を輝かせ、そして勢いよく僕の方へと駆けてくる。

 

「今度とは言わずにいつも来て頂戴!変なのもいるけどいつでも来ていいわよ!」

「おい!変なのってなんだ変なのって!」

「あはは!わかりました。それじゃあまた、お邪魔させていただきますね!」

「ええ!」

 

霊夢さんはそれはもう、太陽のような眩しい笑顔でそう答えた。よかった、霊夢さん元気になってくれて。

 

「それじゃあ、帰るかしらね。そろそろ暗くなるし。またね、霊夢」

「そうだな。お邪魔したぜ!霊夢!」

「お邪魔しました」

「あんたらが来るのはいつも通りだし、大丈夫よ。またね」

 

それぞれが別れの言葉を交わし、それぞれの場所へと別れる。僕はアリスさんについていき、初めて来た森へと戻る。

 

今日は色々な事を教わったなぁ、と心の内に思いながら歩みを進めた。

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 

「えっと…お邪魔します」

「今日から一緒に住むんだからいいわよ。むしろただいま、がいいわ」

「…わかりました」

 

アリスさんの家に到着し、上がるので挨拶したが、今日から一緒に住むと言ってくれた。とても…嬉しい事だ。

 

「うーん、まずはお風呂沸かしてくるわね。先に入っちゃいなさい」

「いや、でも、アリスさんが…」

「いいのよ。疲れてるでしょ?こういうのは遠慮しないのが礼儀なのよ」

 

確かに相手の親切を無碍にするのは気が引けるけど…アリスさんがそう言うならお言葉に甘えさせてもらおう。

 

「わかり…ました。それじゃあお言葉に甘えさせていただきます」

「素直でよろしい。それじゃ、ちょっと待ってて頂戴」

 

アリスさんが浴室へ向かい、お湯を張る。しばらく時間が掛かるだろうし、少し座らせてもらう。そしてたまたま目に入った本を手に取り、作品名を読んでみる。

 

「“the Grimoire of Alice(グリモワールオブアリス)”?」

 

Grimoire…グリモワールとは“魔導書”という意味を指す。アリスさんは自身を魔女と称していたけど…。

(とりあえず、読んでみよう)

 

本の最初のページを開け、とりあえず文章を読んでみようとする。…だが、

 

(読めない…)

 

何ページか捲ってみたが、全く読めなかった。魔法使いが使う文字の類なのか、少なくとも日本語ではない。英語も少なからず使えるのでどうかと思ったがそれも違った。

 

五分程うんうん唸っていたが、結局読めないので、

 

(今度アリスさんに訊いてみよう)

 

本をパタンと閉じ、元にあった場所へ戻しておく。するとアリスさんがタイミングよく戻ってきた。

 

「お風呂が沸いたわよ。入ってきちゃいなさいよ」

「はい。それじゃあお先に失礼しますね」

 

一言断りを入れ、浴室へと向かう。籠があったのでそこに衣類を入れ、浴室の中へと向かおうとする。…だが、ここで大切な事を忘れていた。

 

「僕、女の子の体になってたんだったぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

それはもう、大声を上げた。男だった時には女の人の裸なぞ、小さい時に母親と入った時以外一度も経験した事がない。ましてや今の体は幼女体系。生前にロリコン趣味なぞ持ち合わせてはいなかったが、それでも裸を見るなんて僕にはできなかった。

 

「どうしよう………」

 

幸いドアを閉めてあったので外には声は漏れていないだろう。…いや、絶対漏れてた。

 

「どうかしたの?!」

 

慌てて駆けつけたアリスさん。だけど今は入らないでぇ!!!

 

「大丈夫です!!!」

「そ、そう…わかったわ」

 

足音が遠くなっていく。よかった…。

 

と、いうよりも一度確認したじゃないか!そうだ!僕はもう…!

 

「やっぱ無理ぃぃぃ!!!」

 

悲痛な叫びが木霊する。アリスさんを配慮したので然程大声は上げていないけど、それでも声を上げずにはいられなかった。

 

「腹を括るか…!」

 

僕は男だろう?!体は女の子でも心は男だろ!こういうのは腹を括るのが男として立派なんだ!

 

意を決して僕は体を纏っている最後の砦を外した。

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 

あれは精神的に来るものがあった。でも慣れなくちゃいけないと思い腹を括った結果がこれだよ!

 

お風呂とは古来より疲れを取るために存在していると思っていました。ですが、ここに来てそれが一気に崩れ落ちました。まあ、汗を流せたから文句はないんだけど…。髪の毛を乾かしたら思いのほか、自分の髪の毛がさらさらしてたし…。

 

「お風呂…上がりました…」

「大分時間が掛かったわね。ご飯できてるわよ」

「ありがとうございます…」

 

テーブルに置かれているのは二人分の食事。待っていてくれたのだろうか?

料理としては洋食より。クロワッサンに、コンソメのスープ。どれも美味しそうだ。

 

「おお…!」

「パンは自家製だからまだあるわよ」

「本当ですか!?」

 

アリスさんの手作り…!あのクッキーを食べた時からアリスさんの作ったものは絶対に美味しいと確信していた。

 

「いただきます!」

「ええ、どうぞ」

 

にこやかに笑顔を浮かべるアリスさん。僕はアリスさんの手作りのクロワッサンに手を伸ばし、一口食べる。

 

―――――あの時のクッキーに負けず劣らず、最高の味だった。

 

「美味しいです!」

「そう、それはよかったわ」

 

あっという間に料理を平らげる。本当に美味しかった。

 

「ごちそうさまでした」

「お粗末さまでした」

 

(そういえば、あの本について訊いてなかった)

 

「あの、アリスさん」

「?どうしたの?」

「そこの本棚にある『the Grimoire of Alice』っていう本があるじゃないですか?」

「ああ、あれね。それがどうかしたの?」

「あれってどんな内容が書かれてるんですか?僕にはさっぱり読めなかったんですけど…」

「あれはそうね、全ての属性について書かれている魔導書、かしら?」

「そんなに凄い本だったんですか…。あれはアリスさんが書いたんですか?」

「違うわよ。あれはお母さんが書いてくれたのよ。私がひとり立ちするときにね」

「アリスさんのお母さんって凄い方なんですね…」

「ええ。自慢の母親よ」

 

魔法の全属性…断片的な知識しかなかったけど魔法には火、水、木、金、土、日、月から成り立つんだっけ…?それを全て記すことができるとなると…余程の魔法使いだった事が伺える。

 

「もし内容を知りたいのなら今度教えてあげるわよ?」

「いいんですか?」

「ええ」

 

魔法かぁ………日本には存在しないものって言われていたものだからなぁ…僕自身が使えるかどうかはわからないけど楽しみだ。

 

「さて、今日はもう遅いし寝ましょ。…といってもベッドは一つしかないのよね。だから一緒に寝ましょう」

「え、いや、そんな…」

 

女の人と一緒に寝るなんて無理ですよ!さっきのお風呂で発狂寸前だったんですから!

 

「大丈夫よ。女の子同士なんだから、ね」

 

うぐぅ…。それはもう仕方ない事なんだろうけど…。

 

「はぁ…わかりました…。寝る用意をしてきます」

「ええ。洗面所はあっちよ」

 

指を指された方へ向かい、歯を磨き、寝る支度をする。歯ブラシはアリスさんから貰いました。

 

「寝室はこっちよ。上海もいらっしゃい」

「はい」

「シャンハーイ!」

 

上海…妖怪を倒してくれた人形の事だ。ありがとう、という意味で頭を撫でる。するとまるで心があるかのように気持ちよさそうに目を細めた。そして上海は僕の頬に唇を当ててきた。

 

「よかったわね。随分気に入られたようじゃない」

「そうですかね…?それにしても上海って心があるみたいですね」

「ええ。と言ってもまだ試作段階だけどね」

「心を人形に入れるって凄いですね」

「魔法のお蔭ね」

 

魔法、万能だなぁ。覚えられれば便利なんだろうなぁ………。

 

寝室に到着し、アリスさんがベッドへと潜る。

 

「ほらね、人一人分空いているのよ。だから大丈夫なのよ」

 

この時が来てしまった…。お風呂の時と同じように腹を括って返事する。

 

「えっと、それじゃあその………お邪魔します」

「遠慮しなくていいのに。やっぱり白ちゃんは可愛いわね」

 

そう言われ、顔がりんごのように赤くなった。ああ…恥ずかしい………。

だが横になってしまえば今日の疲れが表面に現れ、簡単に眠気が襲ってくる。

 

「おやすみなさい、白ちゃん」

「おやすみです、アリスさん」

 

眠気を受け入れ、僕はそのまま目を閉じた。




こんばんは。今回は珍しく長めのお話でした。
いやー、白ちゃんのお風呂シーンは本気で書こうか迷いましたが…それはまた別の機会で。

それにしてもアリスさんと白ちゃんって案外相性が合ってる気がします。ええ。

次回こそは紅い館編を書き始めたいなぁ、と思います。とりあえず前置きは全てかけたと思うので。

それでは次回もお楽しみに!ノシ
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