提督ニ捧グ巡恋歌   作:サッドライプ

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※この鎮守府には以下の艦娘達がひとりずついます。どれがどの娘かはまだひみつ。

・神格尊崇(あなたがすべてただしいの)
・排他無望(あなたいがいなんのかちもない)
・献身徹底(あなたのためならなんでもします)
・思考共鳴(あなたのよくぼうこそわたしののぞみ)
・合一願望(とけあってぜんぶひとつになりたい)
・執着依存(みすてないで)
・堕落誘引(もーっとわたしにたよっていいのよ)

・大天使(てーとくらぶ)

 みんなこれでもあくまで“正気”だからヤンデレじゃない………ってのは苦しいよねやっぱり。
 てか正体バレバレなのが約一名いるんですがそれは



 注意事項として、特に提督と艦娘の関係等について独自設定がかなりあります。
 ゲームシステムや公式メディアミックスの描写と食い違ってても気にするな、そーいう作品じゃねーからこれ。

 あとここまでで分かってるとは思うけど、ほのぼの()も純愛()もラブコメ()もあるかもだが、今きたないサッドライプさんだから。
 某デアラ二次と同じ心構えで読むことは絶対しないように。
 あと嫁艦がアレなことになっててダメージ受けても、読んだ後で責任は取れないのであしからず。


 前置きはこんな感じで…………じゃあ、抜錨します。





金剛

 

 

 

「提督のheartを掴むのは、私デース!!」

 

 

 常なる信条として胸に抱く想いと共に、ありったけの砲火を叩きつける。

 狙うは黒い瘴気を纏い青い海を汚しながら襲い来る怨敵、深海棲艦。

 そのシルエット共はあからさまに化け物然としたそれと人型、あとお互いにパーツだけ混じり合って無機物から人の手足が生えているような生理的嫌悪著しい個体が混成している。

 人型の個体だって妖しい発光や赤い血は通っていないと一目で判る気色の悪い肌を見れば、それだけでも仲良くなろうとは思わないそれだから。

 

 滅殺の意志を込めて撃ち放つ。

 

 重力に縛られた弾道は本来ならある程度は外して、その軌跡から相手に当たる角度を計算しながら再度試行を重ねていくもの――――本来なら。

 

「っっし!!clean hitね提督!」

 

『ったりめーだろ、おら、畳みかけるぜ金剛!!』

 

 人と変わらぬ体躯に軍艦の馬力と火力と海を航行する力を備えた艦娘という存在自体が物理法則にそぐわぬ以上、そんなもどかしい理屈はso stupid(くだらない)。

 確かに金剛というただの艦娘単体だったらその必要もあったけれど、私の存在の内側から語りかけて来る声………提督との繋がりがあれば、この兵器のカラダはその性能を更に一つ上の次元に跳ね上げる。

 

…………まあ、それはつまり。

 

「っけえぇー、burning love(テートク、愛してるー)!!」

 

「るっさいわよ色ボケ紅茶艦!クソ提督に聴こえてるの知っててよくそんな頭のネジ飛んだ発言できるわね!?」

 

 僚艦の曙の言う通り、魂の繋がっている提督には―――流石に心を読まれたりはしないけど―――発言は全部聴こえてるってこと。

 でも、提督に聴こえてるからこそ愛の言葉は真心こめて叫ぶべきだと思うのだけど、彼女が怒る理由はよく分からない。

 

『お前こそ聴こえてんぞクソ嫁。気にすんな金剛、俺も愛してるぜ?だから一緒に、死線で楽しく踊ろうやッ!!』

 

「提督……っ、嬉しい、どこまでも一緒するネー!!」

 

「…………ケッコンカッコカリもしてない私を嫁呼ばわりしといて、すぐに他の女口説くとかどこまでクソ提督なのよ……。乗っかるアホはもう処置無しだけど」

 

 提督に愛してるって言われたのが嬉しくて、ぼそぼそ何か言ってる曙のことも忘れて交戦している深海棲艦との距離を詰めるべく前に出る。

 命中と有効打の出やすさを更に上げる為だ。

 それは向こうからしても条件は同じだけど、この身は仮にも戦艦金剛、容易く深刻なダメージを食らうようなやわな耐久力ではない。

 

『おら、逝けやヴァルハラァァァッッ!!!』

 

「提督、ヴァルハラってそういう場所じゃないネー!!」

 

 何やら閻魔に裁かれて行く地獄の同類だと勘違いしているらしい提督と意思を重ね合わせて、これまた単艦では出来ないspeedyかつtrickyな動きで敵艦達の砲撃を最小限のダメージで回避しながら火力を叩きこんでいく。

 自然戦場で目立つ私を、敵愾心か戦術的思考か知らないが集中して狙いだす敵艦達。

 

 but、それでいいノー?

 

 

『横っ腹ががら空きなんだよ、まさか外さねーよなぁ――――――鈴谷、榛名!!』

 

 

「もちろん、鈴谷さんがいただきだよー!」

 

「勝利を、提督に――――――参りますッ!!」

 

 

 両翼から十字に重なる火線。

 私の姉妹艦の榛名と、重巡・鈴谷による、上空から見ればまさに敵艦隊を磔刑に掛けるような集中攻撃に、堪らずダメージを蓄積させていた敵巡洋艦級が爆発四散する。

 確かに命中補正が段違いに跳ね上がるのは私同様提督との繋がりによる賜物だけど、この結果はまぎれもなく二隻の実力による部分も大きいのは確かだった。

 

「やりっ、どーだ見たか提督っ!」

 

「もう、鈴谷さん?今のは提督と金剛姉様の手柄が殆どですよ?」

 

『手柄なんぞ知るか、要るなら鈴谷が勝手に持ってけ!それよりまだ来るぜ?』

 

「no problemデース!」

 

 既に煙を上げて満身創痍の敵駆逐艦級の一体にトドメの主砲を当てて吹き飛ばす。

 その勢いに煽られて、巻きこまれた残敵もまた姿勢や陣形を崩して隙を晒した。

 

「わっ、すご……」

 

「いつにも増して気合入ってますね、姉様……」

 

「nothing to say(あたりまえ)ネー!今回は私が旗艦を任されたのだから、――――ッ!!?」

 

 油断、ではなかった。私は戦場でそんな真似をするrookyじゃあない。

 榛名や鈴谷と言葉を交わしながらも最後の締めとして砲を構えた所に、おそらくやぶれかぶれなのだろう体勢を崩しながら撃った適当な砲撃を直撃させられたのは―――単純に運が悪かった、としか言えない。

 更にはそれがほぼ完全に人型を取っている深海棲艦の一種、戦艦級の大口径砲弾だったのは本当に踏んだり蹴ったりの不運。

 

 “魂にまで響く”ようなダメージに、艤装の一部と私の存在を構成する外殻と言っていい“装甲”が抉り削られる。

 でも、それよりも。そんなことよりも。

 

「「提督ッ!!」」

 

 テー、トク……ッ!!

 

 “魂が繋がっている”提督と、このダメージは等分。

 戦艦たる身で受けたダメージと、生身の人間である提督が同じダメージを受けるのだ。

 提督の肉体そのものは遠い鎮守府にあって、傷一つ無いかもしれないけれども、精神にはこの衝撃がきっちり加わっている。

 それに耐えられなければ、肉体も二度と目覚めない――――〈提督〉の死亡理由の殆どを占める、戦死。

 

 

『……クク、痛てえ………痛いな畜生が………はは、ハハハハハハハハハハハハハハハハハハッッッ』

 

 

「………はぁっ」

 

「もう、いつものことだけど、それでも焦るっての………っ」

 

「テートクぅ………!!」

 

 常人なら三回は死んでいる精神への痛みに楽しそうに笑う提督に、一応安心する。

 これ以上に酷いダメージを、繋がっている艦娘“六人分”耐えた実績もあることを考えれば過剰な心配だと提督は言うかも知れないけど、仕方ない。

 心配なものは心配だし、安堵が広がる心を責めてもどうにもならない。

 

 もちろん戦闘中で臨戦態勢は崩してない………ものの、そもそも直接打撃を食らった私は勿論榛名と鈴谷も提督との繋がりが今のダメージで一瞬乱れ、今度は隙を晒した私達が深海棲艦共の逆襲を受ける番だった。

 

 小回りの利き、こういう場合でも即座に対応に回れる駆逐艦の彼女“達”の牽制が無ければ。

 

 

「こっちの気も知らないで楽しそうにイカれた笑い方しやがって、クソ提督っ」

 

 

 曙の乱れ撃つ機銃が波を高く跳ね上げ、狙いを定めさせない。

 私がこれ以上ダメージを受けないよう前で庇う位置取りをしながら………一瞬振り返って酷く罵られた。

 

…………あ、本気で怒ってるネー。

 

「金剛、あんたも旗艦だっていうのになに囮作戦やってるのよ、旗艦が一番クソ提督へのダメージフィードバック激しいの知らないの忘れてたの馬鹿なのそれとももう歳なのかしら金剛オバアサン!?」

 

「そ、sorry……」

 

『クク……言うなって曙、俺がやらせたその場のノリの作戦だぜ?ハマって今回は楽勝かと思ったが、

―――――やっぱ戦場はこうでなくちゃなあ!!?』

 

「………提督が楽しそうで榛名は何よりです。それで、どうここから立て直しましょうか?」

 

 

「―――――だいじょうぶよ、雷(いかずち)にまかせて!!」

 

 

 もう一隻の駆逐艦・雷が、曙が跳ね上げた飛沫の中を単装砲で狙い撃つ。

 見た目の幼さに反して鎮守府最古参の彼女の攻撃は、狙い過たず敵艦の人型の輝く眼球を見事に撃ち抜いた………戦艦級では、ない方の。

 

――――その一撃で趨勢は確かに決したのだ。

 

 戦場のリズムが、変わる。

 ただし、今まで二次元上で繰り広げていた海面でのことではない。

 

 そこに素早く影を横切らせていた、空を舞うモノ達の織りなす鉄火のリズムが、変わった。

 

 

「――――提督さん。制空権、取ったよ」

 

 

 雷が損傷を与えた“敵空母”の、制御が乱れた艦載機を一気に全滅させた彼女の報告が、あるいはこの戦闘の終結を告げる宣告。

 

『…………ふん。じゃあ久しぶりに“あれ”行くか。もたせろよ五人とも』

 

「………っ」

 

 提督との繋がりが、限りなく遠く薄くなる。

 猛烈な寂しさに襲われるも、これからやることを考えれば彼女一人に集中しなければならないのは必然。

 そしてその間提督の繋がり無しでやり過ごす必要があれども――――大した時間が掛かる訳でもなし、造作もないこと。

 

 だから私達は、ただその終末を見届けるだけも同然だった。

 

 

『さあ、ド派手な花火を水面に咲かせようぜ?風流だろ……………なあ、瑞鶴ッ!!』

 

「よくも、よくも提督さんにひどいこと………っ、沈めえええぇぇぇぇっっっーーーーーーーーー!!!!!」

 

 

 艦娘に著しい能力向上をもたらす提督との繋がり。

 その恩恵を一身に受けた空母・瑞鶴の艦載機達が、かの撃墜王もかくやの動きを見せながら一斉に残りの深海棲艦に襲いかかる。

 拙い対空迎撃をひらりひらりとかわしながら加えられる機銃掃射と爆撃にその身を削られていく敵艦達。

 凶悪な羽虫に集られた獣同然に、もはや深海棲艦達になす術があるはずも無かった。

 

 

 戦闘が終わる………。

 

 

 海面が凪ぐ。

 もはや瘴気を発することもないただの残骸が無数に浮かぶ海域で、私は旗艦として提督に指示を仰いだ。

 

「脅威の消滅を確認、どうしマスか、提督ー?」

 

『あー、これ以上の進行は無理、っつかやだ、やりたくねー』

 

「テートク………」

 

 帰ってきた指示は戦闘中のテンションからは予想もつかないなんともやる気のないもの。

 ただ、想定の範囲内ではあった。

 

『ダメージは別にいいんだが、瑞鶴のアレが頭使うから疲れるんだよ……やってる間は爽快なんだけどな、後から来るこのダルさが………』

 

「それは大変だわ、司令官、帰ったらゆっくりしないと!今夜は暖かく眠れるように準備も……」

 

「ねえ、提督さんっ!」

 

『あ?』

 

 とりあえず今日の作戦終了ということで雷がいつも通り提督の世話を焼く算段をし始めるのと同時に、瑞鶴が騒ぐ。

 これも内容が分かってしまって、ちょっと落ち込む。

 やっぱり、仕方ないことではあるけれど………。

 

「今回のMVP、わたしでいいんだよね?ごほーび、期待してもいい!?」

 

『………はっ。明日にでも俺の部屋来いや。可愛がってやるよ』

 

「っ!やたっ!!」

 

 明日は、提督と瑞鶴、一日いちゃいちゃ………。

 午後の提督とのティータイムも無しになるだろうし、うう、悲しいネー。

 

「次こそは、私が……っ」

 

 次回の出撃への闘志を燃やしている私。

 ふと他の娘達の反応を眺めてみると、様々だった。

 

「………ま、提督の決定が全てだしね。仕方ない、か」

 

「提督が楽しいなら、榛名は大丈夫です」

 

「えっと、じゃあ明日の司令官の朝ごはんのメニューはもうちょっとボリューム増やして―――」

 

「クソ提督………」

 

 曙が親指の爪噛んで悔しがってるけど、彼女もなんだかんだでladyだし、おおむね問題なさそうネー。

 

 

 

 世界は、戦争をしている。

 海上から人類を脅かす正体不明の怪物〈深海棲艦〉と、軍艦の力を宿す兵器〈艦娘〉を率いる〈提督〉と。

 

 艦娘たる私達と提督にとって戦は日常であって………、でも、安らかなるひと時もまた日常であることには変わりない。

 

 だから帰っていく。

 

「艦隊、作戦終了につき帰投デース!進路、鎮守府!!」

 

「「「「了解!」」」」

 

 私達の鎮守府(いえ)に。

 

 瑞鶴が明日提督といちゃつけるのがよほど楽しみなのか、“まるで私たちが眼中に無い”みたいな様子だけど…………浮かれるのも当然だし、見逃しますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

「てーとくさん、みんな帰ってくるっぽい!!」

 

「おー、じゃそれまでに俺の上から退いとけ。金剛とか曙がうるせーぞ」

 

 

「……………ぽいっ」

 

 

 





 修羅場だと思った?残念、大天使金剛ちゃんでした!

………いや、まだ金剛が上の区分で言う大天使に該当するのかは明言しないけどね。

 天使(メガテン的な意味で)の可能性も………?


 しかし狂気が書きたいと思って始めたのに案外ほのぼのしてるなぁ………。
 提督の性格を戦闘狂にしたのと設定上戦闘描写は仕方ないとしても、それ以外は平和………。
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