ALDNOAH.ZERO~ある火星騎士の物語 (休載中)   作:jorjue

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スランプ真っ只中ですが、短くても投稿しないといけない使命感に駆られてなんとか。

短くて申し訳ないです。次回戦闘回だから許して!私のライフはもう0よ!


忌々しき島 -Hateful Island-

『65Bブロック、異常ありません』

 

『63Cブロック、異常ありません』

 

「城から逃げ出した形跡はない!必ず探し出せ!」

 

指令室でクルーテオは配下の兵にスレインの拿捕を命じた。しかし、部屋に向かってもスレインが見つからないため城内を捜索させている。が、一向に見つかる気配はない。

 

 

スレイン拿捕には理由があった。以前、彼は主たるクルーテオの許可なく謁見の間を使い、スパイ行動をしていたとザーツバルムからの通信により伝えられていた。

 

『そなたの使い…確かスレインと言ったな?クルーテオよ、其方は彼の者に皇帝陛下へ何を伝えていたのだ?』

 

『ザーツバルム…?それは真か?私はあやつに謁見の間の使用などさせてはいないぞ?』

 

『なに…?』

 

ザーツバルムがクルーテオと情報交換しようと通信した時にスレインが無断で謁見の間を使用したのが発覚した。

 

 

「あやつめ…勝手に謁見の間を使うとは…!見つけ次第処刑せよ!」

 

そして、捜索されている身のスレインはいま、エレベーターに乗りブラドを運んでいたスカイキャリアに乗っていたパイロットを尋問していた。

 

「地球人が…ヴァッ!?」

 

うつ伏せにされたスカイキャリアのパイロットがスレインへ憎らしげに言った一言はスレインの無慈悲な銃声により遮られ、代償として左足を撃ち抜かれた。

 

「質問に答えてください。あなたがブラド卿を運んでいました。そしてあなたはブラド卿を倒したカタフラクトを見たはずだ。そいつは何色のカタフラクトだった?言え!」

 

「オ、オレンジ色だ!黒い追加装甲を着けていたが、ま、間違いなくオレンジ色だ!ほ、本当だ、信じてくれ!!」

 

「わかりました。では、貴方はここで暫く眠っていてください。ご安心を。ただの睡眠薬です」

 

抵抗するパイロットにスレインはポケットから睡眠薬を染み込ませたハンカチを相手の鼻と口にあて、眠らせる。そして丁度そのとき、エレベーターが格納庫に到着した。

 

(姫様は生きている…地球の人々がアセイラム姫を暗殺したところで利点はない…無闇に戦争を起こすはずが無い。そして、僕が動いたことで『何か』が動き出した。だけど今はこの状況を乗り切らないと僕は兎も角、アセイラム姫にも危険が…!)

 

そんな思いを抱きつつ、スカイキャリアを強奪し機体のシステムを立ちあげる。そして、強引にスカイキャリアの射出コードを入力、スレインを乗せたスカイキャリアは揚陸城から飛び立った。

 

「クルーテオ伯爵!逃亡者発見!スカイキャリアを乗っ取ろうと…い、いえ!既に発進した模様!」

 

「我が揚陸城よりスカイキャリア発進を確認!」

 

「おのれ…あの下郎め!どこまで私をいらつかせるのだ!!スカイキャリアの用意をしろ!タルシスででる!」

 

直後、スクリーンにザーツバルムの姿が映し出される。

 

『待たれよクルーテオ卿』

 

「ザーツバルム卿!このような時に何用だ!?」

 

『少々落ち着かれよクルーテオ卿。あの小僧に追撃を気付かれ行き先を変えられては困る。あの者がどこへ行くか知りたい』

 

「何…?つまり、炙り出すということか?」

 

『流石はクルーテオ卿、その通りだ。案ずるな、我が上から追跡しよう』

 

「…いいだろう、任せるぞザーツバルム卿」

 

『…近々、我が城へ赴くがよい。不可抗力とはいえ、少々貴公は神経質になりすぎている。饗そうぞ』

 

そして、ザーツバルムからの通信は切れた。

 

「ふぅ…姫の事、バートンの事と、今のあやつには余裕が無いな」

 

姫を直前まで警護し、裏切り者と仕立てあげたバートンを信頼し姫の調査を譲った事と、クルーテオのプライドが失態を認めたくないからの結果だろうか。あるいは責任感か。今のクルーテオは手柄を欲しているのだろう。バートン城を攻めたのも自らの失態を晴らすためなのだろう。

 

が、あれ以上好きにやらせてしまえば…

 

「我の計画に突き当たるやもしれんな。不穏分子は消さねばなるまいか…」

 

ザーツバルムは、私室までの道のりで策を考える。

 

「…オルレイン、漸くお前の無念を晴らせる。待っておれ 」

 

その孤独な呟きは、通路の奥へ消えて行った。その背中は、軌道騎士筆頭としての背中ではなく、何かに取り憑かれた、小さなものだった。

 

 

 

 

 

スカイキャリアを強奪したスレインは追撃のない事に不自然と感じながらも、オレンジ色の機体について考えていた。オレンジ色の機体とアセイラム姫は一緒にいた。地球の兵器はアレイオンという鷲色の機体。オレンジ色のカタフラクトの目撃例は非常に稀。つまり、いまアセイラム姫はブラド卿を討ったオレンジ色のカタフラクトと共にいる。そして…

 

「オレンジ色のカタフラクトを載せた船は…タネガシマ、たしか、ヘブンズフォールの爆心地…そこに進路をとっている。おそらく、そこで何かがある」

 

確証はない。だが、もう戻れない。ここに行くしかない。姫様を助けるために。

 

 

 

 

そして、スレインの目的である船は一般人から徴兵、軍服が支給される事になった。そしてブリーフィングルームにて今回の徴兵に対し説明を行っていた。

 

「我が艦はこれより、種子島基地に向かい補給及び整備を行います。その後、ロシアの地球連合本部に向かいます。私からは以上です」

 

マグバレッジ艦長が下がり、横に控えていたジョルジュが前に出る。

 

「全員、楽にしていい。知ってる人も多いだろうが私はジョルジュ・バートン、火星人だ。早速だが、今回の徴兵に不満のある者は手を挙げろ。素直に上げてもらって構わない。こちらから何かする、という事は無い」

 

すると1人、手を挙げる。そこからまた一人、二人と増え最終的には半分程度が手を挙げている。

 

「そうか…確かに日常がいきなり、非日常になった。その感覚は正しいものだ。しかし、相手…火星の民は死に物狂いでこちらに挑むだろう。限られた資源、工業は発達するが文化は衰退してしまった火星の民は、地球という星がなければ希望もなかっただろう。今回の戦いは、一人の軌道騎士が起こした戦争だ。既に、火星人の占領下にある土地もあるだろう」

 

ここにいる日本人は、クルーテオの支配から逃れてきた人々だ。やはり、思う所はあるだろう。

 

「だが、こちらにはアセイラム姫がおられる。姫の無事が火星まで届くかはわからない。だが、姫の生存を示せば大義は君達にある」

 

ジョルジュは静かに左手を挙げ、ゆっくりとその手を拳にする。

 

「君達は生き延びるんだ。これ以上、この無益な戦争の犠牲を増やしてはならない!アセイラム姫殿下の願いは人と人が手を取り合うこと!いま、こうしていがみ合うことではない!君達はこれより兵士となる。だが、私やマグバレッジ艦長は君たちを見捨てることはしないだろう!死にものぐるいで生き延びるんだ!」

 

その言葉に、いまここで兵士となった彼らは震えが止まる。恐怖がないわけではない。現に、2列目の席に座る彼はまだ怖気ついている。だが、彼らは生きることを忘れない。幸いカタフラクトとは従来の兵器と違いパイロットの生存率を高めるために色んなギミックがある。

 

「解散!各自、配布されたマニュアルをよく読み、生きることを最優先に考えろ!」

 

そして、彼らにとって一生忘れれない言葉が、心に刻まれた。

 

 

 

 

 

「なんでパイロットじゃなくて整備員なんだよ…」

 

「だってカームは赤点じゃん」

 

「整備だって立派な仕事よ!整備員がいないとカットは動かないんだから」

 

「そうだぜカーム!ま、俺は索敵に回されたけどな!」

 

「オコジョも人のこと言えないじゃんか!」

 

先のブリーフィングから数十分、伊奈帆たちは格納庫にいた。伊奈帆と韻子は配給されたカタフラクトの確認、カームは整備に回されたため元々格納庫に、起助は次の交代まで時間があったためだ。そしてそこに、

 

「まあそう気張るなって。この15年、実践を経験したやつは俺達や火星の奴らを入れて皆死んだ…てことは、だ。俺達や敵さんもみんな、童貞さ」

 

鞠戸大尉が現れた。

 

「みんなじゃありません。鞠戸大尉は生き残った。そうでしょ?」

 

それを大尉は皮肉げに呟く。

 

「スコアブック上は違う。俺の書いた種子島レポートは握り潰された」

 

「種子島…レポート?」

 

ふぅ…と一息ついて、鞠戸は説明する。

 

「15年前、ヘブンズフォールで崩壊した月の破片が一番最初に落ちた場所、だがな、月より先に火星の奴らが来た」

 

火星のカタフラクトは人形とは思えない、あまりにも大きいカタフラクトと戦闘機の二機が種子島に舞い降りた。化物じみた性能を持つ火星カタフラクトに時代遅れの戦車で挑んだ地球軍は全滅、奇跡的に生き残った鞠戸大尉は直後に起きたハイパーゲートの暴走、時空震動によりヘブンズフォールを目撃して種子島レポートを書き上げた。

 

「物的証拠は月の破片から奴らのカタフラクト、すべてを吹き飛ばし無くなった。つまり、この種子島レポートは俺が恐怖で書き上げた妄想となり、俺はやっかみを受けているのさ」

 

「だけど事実だったじゃん。火星の奴ら、俺達の技術を超えてるぜ。だろ伊奈帆?」

 

「どっちにしても同じだよ。僕達にはアルドノアドライブがない」

 

「アルドノアドライブなぁ…やっぱ凄いんだろ?」

 

「オコジョ、凄いなんてものじゃなかっただろ…」

 

(アルドノアドライブ…)

 

自身の乗るスレイプニールを伊奈帆は見上げる。アルドノアドライブ、それはオーバーテクノロジーという枠にすら入らない人知を超えたものなんだろう。だけど、関係ない。

 

「どのみち、僕達は僕達の最善を尽くすしかないよ。頑張ろう、韻子、カーム、起助」

 

「おう!こうなりゃ、整備はまかせろってんだ!」

 

「カーム、整備したことあるの?」

 

「…」

 

「へへ、どうしたカーム?」

 

「お前にそんなふうに言われるとむかつくな!覚悟しろオコジョ!」

 

彼らは、彼らなりにこの状況に潰されないようにしているのだろう。いずれ、彼らの中からも犠牲が生まれるかもしれない、この状況を。

 

 

 

アセイラム姫は、外にいた。物資コンテナを椅子替わりに、海を見ていた。

 

「…綺麗。これが、海」

 

そこに、影が生まれる。後ろを振り向くと、情報端末を持つ伊奈帆が立っていた。

 

「いらしてたのですか、伊奈帆さん」

 

「ええ。…やはり、青い空は珍しいですか?」

 

「はい。本当に綺麗。…地球は美しいですね」

 

空を見ていたアセイラムはまた、伊奈帆の方を向く。目線は情報端末に。

 

「お勉強ですか?」

 

「はい。復習を少し。役に立つかはわからないですが」

 

「…なぜか聞いても?」

 

「僕らはアルドノアドライブを持っていませんから」

 

…沈黙。アセイラムは口を開けても、言葉は発せなかった。伊奈帆のアルドノアドライブがない、これに何を復習していたのかを察してしまったから。

 

「どんなものですか、アルドノアって」

 

何とか言葉を返そうと、意識を持ち直す。

 

「…アルドノアは、ヴァース…あなた方が火星と呼ぶ惑星で見つかった超文明のテクノロジー。それを初めて接触した私のお爺様…レイレガリア・ヴァース・エンヴァースが、アルドノアを目覚め、その力によってヴァース帝国を作り上げた…。」

 

ふと、アセイラムは立ち上がり青い空に浮かぶ雲を見つめる。

 

「アルドノアは、遥かな時を経て、起動させたお爺様を正当な使用者と認識して、アルドノアの起動因子をお爺様の遺伝子に焼きこみました。故に、アルドノアを起動できるのはお爺様、そしてその子孫のみ。騎士はお爺様と種じゅうの契りを交わし、お爺様はアルドノアの起動因子を貸し与えました。騎士はその力で城とカタフラクトを作り上げ、植民地を統治していまのヴァース帝国を作り上げました。そして、次に求めたのが…地球」

 

雲を移していた瞳は、瞼によって見えなくなる。

 

「光を屈折し、海と空が青く見えるほど沢山の水と空気を持つ…私たち人類発祥の地。ごめんなさい、伊奈帆さん。私達ヴァースの民がこの美しい星を…」

 

「それは違う」

 

「え?」

 

「セラムさんが謝る必要は無いです。それと、空が青いのは屈折ではありません。レイリー散乱の影響です」

 

「え?でも、光の屈折だとスレインが…」

 

「空が青いのはレイリー散乱、雲が白いのはミー散乱。その人の勘違いです」

 

この言葉が、大きな意味を持っていたと伊奈帆が認識するには、まだこの時わからなかっただろう。これが、伊奈帆を縛る言葉であり、意志となり、アセイラム姫を探す切っ掛けになるとは。

 

 

 

同じ頃、鞠戸大尉もまた外にいた。その左手にまだ栓の空いてないウイスキーを手にして。そして、左腕を上げ、振りかぶる。

 

「まだ日は高いですよ」

 

後ろから声をかけられた。よく聞く声だ。

 

「これは俺の分じゃない、もう飲めないやつの分さ!」

 

ウイスキーは鞠戸の手から離れ、空を飛ぶ。すると鞠戸はズボンのポケットからドッグタグをとりだす。そこに刻まれた名前はヒュームレイ。鞠戸の戦友だった男。

 

「ヒュームレイさんに、ですか」

 

「そしてこいつが俺の分」

 

内ポケットから、自分の酒を取り出す。

 

「精進落としだ。先生もやるか?」

 

「はぁ…わかりました、いただきましょう」

 

「私にももらえますか?」

 

後ろから声をかけられる。声の主はマグバレッジ艦長だった。

 

「種子島レポート…噂だけは聞いてました。だけど、私は出鱈目だと思ってはいない。だから、鞠戸大尉。貴方を余計に許せない」

 

「…許せない?」

 

「種子島での戦闘、私の兄も参加していました。戦死…いえ、見放されたんです、あなたに」

 

「マグバレッジは私が引き取られた里親の名前。旧姓はヒュームレイ。貴方の親友は…私の兄だったんです!」

 

「…ッ!?」

 

 

 

『ヒュームレイ!大丈夫か!?ヒュームレイ!!』

 

『ま、鞠戸ぉぉ!助けてくれ!足が!足がぁぁああ!!』

 

『ヒュームレイ!待ってろ、いま引っ張り出してやる!!』

 

『だ、ダメだ!足が砲弾に引っかかって!!うわぁぁあ!!』

 

『ヒュームレイ!!』

 

 

 

「あ、ああああ!!」

 

「鞠戸大尉!」

 

空から拳が落ちてくるのを、マグバレッジと耶賀頼医師は鞠戸のPTSDの発作に気を取られ気づかなかった。あれは、火星のカタフラクトの攻撃━━━

 

わだつみに、衝撃が走る。

 

 

 

 

 




蘇る15年前の傷跡。それは感傷に浸る間もなく、無情にも戦いへと繋げさせる。そして、その島で見たものは何か。次回、再開。天才の存在が、悲劇を覆す。
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