ALDNOAH.ZERO~ある火星騎士の物語 (休載中)   作:jorjue

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みなさん、あけましておめでとうございます(遅い)

出来れば年越し前に上げたかった…

今回はヘラスとの戦闘回です。

楽しみにしていた皆様、遅くなってすみません…


再開 -Reen counter-

わだつみに、衝撃が走った。

 

「種子島上空に敵機!」

 

「対空戦闘!外洋に出る!最大船速、面舵一杯!」

 

種子島に着いて、安心できた矢先だった。そこは既に敵の支配下だった。この何も無いような地をも敵は侵略していた。

 

『こちら第18ブロック!ミサイルが着弾!爆発はありません!不発弾のようで…い、いえ!生きてます!うわぁぁああ!!』

 

着弾したのはミサイルではなかった。腕だ。巨大な拳が艦の装甲を破り、内部からケーブルを引きちぎった。

 

「油圧ケーブル切断されました!不見咲副長!」

 

「堤防と衝突コース!」

 

「各員、衝撃に備え!」

 

2度目の衝撃に一般人は声すら出ない。さらに、被害は衝撃だけでは収まらず、船底には亀裂が入り、堤防に衝突した側面からは浸水が始まった。

 

 

 

 

 

 

拳が種子島の高台にいる何かへ向かい、装着される。それは、カタフラクトだった。だが、設計思想はいままでのニロケラスやアルギュレとは何か違うものだ。

 

「あれが、バートン伯爵と共にしている地球の船か…妾の領地に断りもなく入るとは…いや、地球の民にはわかるはずもないのう…妾の眷属で可愛がってやろうぞ?」

 

カタフラクト、ヘラスを操る軌道騎士37家門の1人、フェミーアン。女性でありながら過激な彼女を相手にわだつみは挑む。

 

 

 

 

 

 

「不見咲、艦載機を出撃させてください!」

 

艦橋へ来たマグバレッジの指示で、フリージアン小隊、マスタング小隊、さらにはジョルジュの演説を聴き志願した義勇兵によるバレッゼ小隊の計12機が出撃準備に入る。

 

『フリージアン小隊、発進準備!1番エレベーター上昇準備!』

 

アナウンスが流れる中、伊奈帆は支給されたアレイオンに搭乗するも、メインシステムが起動しない。

 

『カーム、こいつ起動しない!』

 

「悪い、システムチェック中だ!まだ出せない!」

 

仕方なく、伊奈帆はあたりを見回す。すると、目に入ったのはオレンジ色の練習機。

迷わず、スレイプニールへ向かい、起動シークエンスを始める。

 

「フォースフィードバックチェキングプログラム、スタート。エジェクションシート正常、IFF確認。戦術データリンク、アクティベート。マスタング2-2、レディ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、艦橋では

 

「マグバレッジ艦長」

 

「アセイラム姫…」

 

アセイラム姫が現れた。後ろに、ジョルジュを引き連れて。侍女のエデルリッゾは居ないようだが。

 

「マグバレッジ艦長。この戦い、バートン伯爵に指揮を取らせて頂けませんか?」

 

「なっ…!?」

 

不見咲が、声を上げる。それもそうだろう。自軍の指揮を、他国の人間に任せるからだ。ジョルジュ、有能だと言うのは聞いているが、見たことのない人からしたら有り得ない発言だからだ。

 

「…姫殿下、それは何故でしょうか。ここには、ヴァースにとって、重大な何かがあってのことでしょうか?」

 

「ここからは私がお話しましょう、マグバレッジ艦長」

 

「バートン卿…」

 

「君たちは開戦後、地球の兵士の中で最も火星のカタフラクトと交戦経験があるだろう。だが、それは一対多だ。多対多の戦闘のノウハウは、ここ30年間ほとんど無い。あんな事を言った手前、彼らを見捨てることは出来ないのだ」

 

正論だが、不安が残る。確かに、マグバレッジやほかの皆は多対多の戦闘を経験したことはない。

 

「安心してくれ。私とて軍人だ。さらにあの機体はヘラス。策はある」

 

悩んだ末、マグバレッジ艦長は、

 

「…わかりました」

 

「マグバレッジ艦長!?」

 

答えを出した。

 

「不見咲、私も未だ不安はあります。しかし、彼は火星の兵器を知る人間でもあり、指揮官という立場である以上、この状況は分かっているはずです」

 

マグバレッジはジョルジュへ顔を向け、

 

「指揮を任せます。私は船の指揮を」

 

「ありがとうございます、マグバレッジ艦長」

 

ジョルジュ橋の窓から種子島に居座るヘラスを射抜くような視線を向け、

 

「取舵40、湾口まで突撃せよ。ヘラスの拳は巨大分子で出来ているため破壊は困難だ。HE弾の爆発で軌道をずらせ」

 

「フリージアン小隊は艦首、マスタング小隊は艦尾に展開、バレッゼ小隊は待機だ」

 

「湾口まで、あと800!」

 

「敵の拳は上空からも来るぞ!対空監視気を抜くな!」

 

『こちらフリージアン4-4!弾が切れた!援護を!』

 

軌道をずらし、衝突を避ける策は平面での戦闘ならば問題はなかっただろう。しかし、上空から来る拳には意味が無かった。

 

『マスタング2-2、上だ!』

 

引き金を引く。しかし、射撃プログラムの通りに行かず、弾は当たらない。

 

(外れた?真上の射撃に対応出来てない?)

 

その光景を見たジョルジュは思い至る。

 

(違う、あれは貝塚君のミスではないな…重力によって有効射程が減っているのか!)

 

平面での射撃ならば放物線に沿って放てばいい。しかし、真上の標的には重力が弾頭に常時最大でかかる。

 

(だけど、あっちは重力によって加速している。この距離で当てないと、進路を逸らしきれない!当たれ!)

 

伊奈帆の祈りは届かず、引き金を引くも弾は出ない。

 

「弾…切れ」

 

「面舵一杯!船にあたってもいい!機体に当てるな!」

 

拳と伊奈帆の乗るスレイプニールの距離が100を切ったその時、考えもしなかった方角から砲弾が飛んできた。

 

「んん~!!…あれ、生きてる?」

 

韻子の呟きを皮切りに、伊奈帆たちは飛んできた砲弾の方向を見る。そこには、

 

「あの船に、アセイラム姫が…」

 

「火星の、輸送機…」

 

「スカイキャリアだと?なぜヘラスの邪魔を…?」

 

火星の戦術輸送機、スカイキャリアにのったスレインが、わだつみを見て、オレンジ色のカタフラクト、スレイプニールを見て、この戦闘に介入することを決意した。

 

 

 

 

 

 

「敵の増援?バートン卿?」

 

「いえ、増援ならばこちらを撃つはず。なぜヘラスを撃ったのかはわかりませんが…」

 

(どういうことだ…私がここにいるのはすべてのヴァース兵に伝わったはず。とすれば、こちらの事情がわかっている…?)

 

それは、パイロットにも理解ができないものだった。

 

『俺達を助けてくれた…?』

 

『伯爵の軍なのか?』

 

そんな中、マスタング小隊は淡白だった。

 

『仲間割れ…?』

 

『いや獲物を取り合ってるだけかもね…』

 

『はぁ…どっちでもいいよ』

 

『伊奈帆?』

 

伊奈帆のスレイプニールはヘラスへ銃口を向ける。

 

『敵の敵なら、味方でなくとも役に立つ』

 

 

 

 

そして、フェミーアンはというと、激昂していた。それもそうだろう。自身が勝ち取った領地を奪い取られでもしたら他の伯爵からの圧力がかかる。クルーテオの領地に隕石爆撃が降り掛かったのと同じだ。

 

「妾の地で、勝手は許さぬぞ!行け!我が眷属たち!」

 

ヘラスの拳は6本。その全てがたった一つのスカイキャリアに襲い掛かる。

 

それを視認したスレインは機体を上昇させ、拳が当たる前にペダルから足を離し、失速させた。

だが、急に失速し、ほぼ垂直にきりもみ落下している機体のGはとんでもなく、数秒後に意識を失う。

 

それを見逃すフェミーアンではなく、拳を開き鷲掴もうとしたが、開いた拳の内側に銃弾が命中し、爆発する。撃たれた拳は海へ墜落、弾道の先には、

 

「オレンジ色のカタフラクト…!援護してくれるのか?」

 

一方、墜落した拳を他の拳で拾うと、指が破壊され、使えなくなっていた。

 

「ボーディスの指が!…おのれ、列島民族の分際で…!こうなれば船を先に!」

 

2本の拳が船から距離をとる。

そして、それを見たジョルジュは新たに指示する。

 

「ウェルドック、ハッチ開放せよ。一般人を揚陸艇にのせるんだ。艦尾にいるマスタング小隊へ迎撃命令!」

 

「フリージアン小隊、港でスカイキャリアの援護、バレッゼ小隊はフリージアン、マスタング両部隊の支援!」

 

ウェルドックが開いたことに気づいた伊奈帆は心で感謝し、ハッチの中から拳を迎え撃つ。今度は平面での射撃、リロードは済ませてある。射撃プログラムの指示通りに、照準を合わせトリガーを引く。韻子はエレベーターから出てきた狙撃銃をユキに渡し、スポッターを務める。

 

伊奈帆の放った2発目の弾丸が片方の拳に当たり、海に墜落する。そして、ユキの狙撃銃から放たれた弾丸は若干左へ傾き艦橋を外す。そして、わだつみが停泊している少し先の崖にぶつかる。

だが、その崖が崩れると空洞があった。

 

「隠しドッグ?」

 

「マグバレッジ艦長、機関は生きていますか!?」

 

「…!操舵手!?」

 

「生きてます!」

 

「船体は!?」

 

「傾斜角2度…行けます!」

 

「機関最大!前進一杯!前方の崖の中で難を逃れる!貝塚君!」

 

ジョルジュは通信機を取り、伊奈帆へ通信を繋げる。

 

『攻略法は君の考えている通りでいい。だが、あのスカイキャリアは撃ち落とすな。我々の事情を知る者がいるかも知れない。丁重に迎え入れろ!』

 

「…マスタング2-2、了解」

 

まさか、自分宛に通信をしてくると思ってなかったせいか、呆気に取られるも気を取り直しスレイプニールをウェルドックから港へ向ける。

 

戦いは、まだ始まってすらいない。ここから、やっと対等な戦いになる。戦神の愛馬は圧政者へ向け、戦いに挑む。

 

「劣等民族が…妾に対し何たる無礼な!!」

 

ヘラスの使える拳を一斉発射。それは変則的だが、正確に伊奈帆のスレイプニールや韻子たちのアレイオンに向かう。

 

『3時方向、来るわ!』

 

「問題ない」

 

その拳はスレインのスカイキャリアが砲弾に撃ち落とされ、僅かに残った拳はユキのアレイオンにより落とされる。

 

(このままじゃ、ジリ貧だ。船はドッグの中、補給は望めない。なら、拳を無力化させるしかない。拳の装甲は硬く、破壊は困難。なら、ブースターを破壊するか、あるいは…)

 

画面に表示される画像を見て、伊奈帆は決意する。

 

「ユキ姉、敵のカットを直接攻めよう」

 

『何言ってるのなお君!?あんなのに適うわけないじゃない!』

 

『そうだよ伊奈帆!ここは火星の戦闘機に任せたら…?』

 

「いや、その方が危険だ。あの戦闘機がいつ敵になるかわからない。今のうちに協力させる。それに、さっきからあの三面六臂は同じ攻撃を繰り返している。きっと、あれしか武器がないんだ。そして、船はドックの入口を塞いだ。破壊するには威力が求められる。ロケットの威力は加速した距離で高まる。だけど、距離を離せば、少しズレただけで大きく進路が変わる。誰かが狙撃し続けてる間に攻めれば、問題ない。こっちにも勝機がある」

 

『なお君…』

 

「韻子、ハンドガン借りるよ」

 

韻子のアレイオンからハンドガンを借りた伊奈帆は真上に向け発砲、上空のスカイキャリアの注意を向け、湾岸に向けスレイプニールを走らせる。

 

『オレンジ色…そういうことか!』

 

意図を理解したスレインはスカイキャリアをスレイプニールの前につける。そして、スレイプニールは、敵であるはずのスカイキャリアのハッチに何のためらいもなく乗り込む。

 

『ちょっ、伊奈帆!』

 

『うそでしょ…?』

 

2人の心労を気にせず、伊奈帆はスカイキャリアに回線を開く。

 

『接触回線オープン。手短に行こう。そちらの兵装は?』

 

いきなり回線を開かれ、戸惑うも協力してくれる相手をわざわざ不快にさせないよう、スレインは返答を決意する。

 

「…榴弾砲の残りが20発ほど。そちらは?」

 

『HE弾9発。…それで最後だ。』

 

『なお君やめて!それは火星の『ごめんユキ姉、あとで。』…ぅぅう!!』

 

「…あの、味方の方は大丈夫なんですか?」

 

あまりに酷い切り方に、思わず聞いてしまった。

 

『大丈夫だと思っておこう。いまはそれよりあのカタフラクトの対処が先だ』

 

「へ、ヘラスの拳は巨大分子で出来ています。どんな弾でも、破壊できません!」

 

『いや、指が破壊された拳がある。指が開く時は、分子構造が戻るんだ。これなら、ひきつけて狙えば行ける。』

 

「し、しかし!」

 

それは難しい。拳を開くという事は、掴まれる瞬間を指す。そのつかまれる間の短い時間に指を当てるのは至難の技だ。

だが伊奈帆はその抗議を無視するかのように警告する。

 

『来るぞコウモリ!』

 

「コウ…ッ!?」

 

ヘラスの拳が迫っていた。

 

 

 

 

 

伊奈帆はスレイプニールの向きを変え、迫る拳へ向ける。銃口は拳の中央、タイミングは一瞬。

 

開いた━━

 

発砲する。

 

━━命中。

 

「これなら、コウモリが引きつける間に行けるか…」

 

スレイプニールの腕にあるワイヤーを追撃に来た2本の拳の片方に発射、巻き付ける。

 

そして、伊奈帆の意図を読み取ったスレインはスカイキャリアを左右に振る。すると、ワイヤー越しに拳もつられもう一つの拳に命中する。そして追い討ちをかけるようにスカイキャリアの銃座から砲弾が迫り、命中した。

 

 

 

『相変わらず無茶なんだから…前進するわよ』

 

『いいんですか!?』

 

『いいのよ…あの子の無茶って、たいてい正解だから…はぁ、私の心配を考慮に入れてほしいくらいよ』

 

ユキと韻子、伊奈帆に振り回されつつも伊奈帆を信頼している2人はため息をつきつつ、空中でドックファイトを続ける彼を助けるために機体をヘラスに向け、前進する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、隠しドックへ向かったわだつみは退艦をほぼ終え、ジョルジュとマクバレッジが今後について話し合っている。

 

「食料は当分大丈夫でしょう。伯爵の城より援助を頂いた分を入れ、2ヶ月は余裕でしょう。ただ、」

 

「身動きが取れない。地球は自転するため、宇宙にある揚陸城からの衛生スキャンからは、逃げられない。船の修理は?」

 

「あそこまでやられてしまっては船にいるスタッフでは…」

 

二人が悩んでいたその時、不見咲が若干の驚きを顔に表し二人を呼んだ。

 

「艦長!急ぎ、艦長と伯爵に見ていただきたいものが…」

 

「…?」

 

 

 

 

「しっかしオコジョ、伊奈帆とユキさん、韻子は大丈夫だと思うか?」

 

「カームらしくないな、伊奈帆がいるんだろ?多分大丈夫だろ?」

 

「こっちからだと苦戦はしないとは思うんだけどな。ニーナはどう思う?」

 

「祭陽先輩と同じ…かな?よくわかんない」

 

「なんだそりゃ…とりあえず俺も祭陽と同意見だ」

 

「詰城先輩と祭陽先輩は大丈夫、なら安心だな!」

 

「あーっと、ライエさん?だったけ?君はどう思ってるんだ?」

 

「…何の話?」

 

ここはドックの貨物室、わだつみを放棄した今、操舵手やレーダーから整備にいたるまで、皆暇なのだ。よって、今この場にいない伊奈帆や韻子がどうなっているか話してる。そこに通りかかったライエに起助が話を振った。

 

「…あいつなら負けないと思うわ」

 

「な、なら伊奈帆君たちも大丈夫だね!」

 

ライエはいま、複雑な心境だった。ヴァースにはこんな話が盛り上がらないから、いや、自分が不器用だから。

全ての元凶のお姫様はみんなに受け入れられた。それは人柄だから?身分?じゃあ私もみんなに火星人と言って受け入れられるか?

 

 

 

 

…怖い。怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖いコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイ!

 

 

 

 

 

…私は火星人とも地球人とも仲良くなれない…私はここにいていいのか?今すぐ外に出て、あの戦いに巻き込まれた方がいいんじゃないか?

 

(…エ?)

 

だけど、死ぬのは怖い。それと同じくらい周りも怖い。

 

(ラ…エ!)

 

何か、聞こえる。

 

「ライエってばー!聞いてるの?」

 

現実に戻った。

 

「ご、ごめん、聞いてなかった…」

 

「大丈夫?汗すごいよ?耶賀頼先生に見てもらおうよ?」

 

ライエの腕をつかみ引き寄せるニーナ。

 

「え、ちょっ、え!?何!?」

 

「だーかーら、耶賀頼先生のとこ!」

 

「大丈夫、大丈夫だから!?」

 

「つべこべいわないー」

 

 

…なんだか、いまは何も考えない方がいい。

 

 

 

 

 

 

尚、とりのこされた男子達は呼び出しがあるまで立ち竦んでいた。

 

 

 

 

 

「なんだ…これは…」

 

その頃、隠しドックの最深部では、ジョルジュが驚愕していた。目の前にある物が、天才を動揺させた。

 

「これは、一体どういうことだ!なぜデューカリオンが!こんなところに!」

 

「不見咲、これは一体…」

 

「検討もつきません。この施設は一体…?」

 

「…恐らく、火星の技術を盗もうとした結果でしょう」

 

声に震えはあるが、その声の主はジョルジュだ。

そこに後ろから声がかかる。

 

「クレーターだ」

 

「クレーター?」

 

「ここに落ちた隕石は10や20じゃ足りない。ある隕石は入り江を作り、ある隕石はドックを建設した。それが」

 

「ここさ。この機体は俺の15年前の悪夢さ…」

 

鞠戸の足が震えている。やはり、動かないとわかっていても怖いのだろう。

 

「では、鞠戸大尉の種子島レポートはこの事実を隠すために…?」

 

「いえ、あれも含まれているでしょう…」

 

ジョルジュがアレに指を指す。その先には…

 

 

 

 

 

 

 

 

空でコウモリと拳が飛び交う。

 

『後方より、さらに2機!』

 

「進路1-7-5、海岸線に沿って飛んで。…ユキ姉、聞こえる?」

 

「都合のいい時だけ頼るんだから!進路そのまま!」

 

「装甲のない真後ろからなら、エンジンを撃てる」

 

 

 

「ボーディス…マラクス…ロノウェ…ハルファス…ラムウ…ヴィネ…妾の子らを…よくも!!」

 

『合図で突撃するわよ』

 

『…はい』

 

「ならば奥の手!」

 

ヘラスがあらぬ方向へねじ曲げられたり折りたたまれたりする。変形を終えると、スカイキャリア以上の速度で空を飛んだ。

 

『はあ!?』

 

『とんでったー…』

 

女子2人とは違い、伊奈帆とスレインは混乱に陥った。

 

「なんだあれは!?」

 

『僕も知りません!』

 

「距離をとった、加速してくるぞ!」

 

『狙撃で軌道は逸らせますか?』

 

「あのサイズ、ライフルじゃ無理だ!」

 

『失速させます!気をつけてください!』

 

「来るぞコウモリ!」

 

『黙っていてくださいオレンジ色!』

 

「…オレンジ」

 

スカイキャリアを失速させ、下に避ける。当たらず、通り過ぎるへラスはその巨体に見合わない旋回性能によりきりもみ落下するスカイキャリアを射程に入れる。

 

『引き起こしが!』

 

「…また来た。何か策はあるかコウモリ」

 

「同じ手は食わぬぞ!」

 

迫り来るヘラス。

 

『…ダメです、間に合いません!』

 

スレイプニールをヘラスに向ける。だが、策はない。

 

 

 

 

 

それは、地中から放たれた。そして、

 

 

 

 

 

 

 

ヘラスの側面が

 

 

 

 

 

 

 

爆発した。

 

 

「何事!?」

 

爆発し、続くミサイルの対処に追われるヘラスを間一髪で助けられた伊奈帆は地中から浮遊する船を見る。凡そ現代の科学では到底浮くはずのない質量を持っているはずの船は確かに浮いていた。

 

「飛行艇…いや、戦艦か」

 

そしてスレインは、アルドノアで動く船と読み、艦橋を見る。そこには、

 

 

 

「見つけた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アセイラム姫!」

 

 

 

 

 

数分前、艦内に侵入したマグバレッジ達は2分もせずに艦橋へ侵入した。

 

「艤装を確認、燃料、武器、弾薬の確認を急いでください」

 

「艦長、なぜこんな立派な船が出撃もされず放置されてたのですか…?」

 

「予備の電源、生きてます!パワーが来たら行けます!」

 

「燃料は…えっ、わかりません!」

 

「なんだその報告は!?」

 

「燃料計がないんです!」

 

「なるほどな…」

 

ちょうど艦橋へ入ったジョルジュはその報告で納得がいった。この船は…

 

「アルドノアで動く船ですね。あのデューカリオンのアルドノアドライブを移植したのでしょう」

 

「しかし、アルドノアドライブを動かせるのは火星の人々…」

 

「姫様が生きておられてよかった、これで何とかなるかもしれません。私は姫をお連れします」

 

そして、アセイラムを連れてきたジョルジュが艦橋に来て、地球初のアルドノアドライブ運用兵器、「デューカリオン」が動き出す。

 

 

 

 

 

「馬鹿な…アルドノアを持たぬ地球人が…何故そのようなものを…!」

 

フェミーアンのヘラスはデューカリオンに進路を向ける。だが、それは彼女の命運を尽きさせた。

 

ヘラスの背後にスカイキャリアとスレイプニールが近づく。

 

装甲のない真後ろからなら、エンジンを狙える

 

フェミーアンが気づいた時には遅かった。エンジンをやられ、変形が維持出来なくなる。そして、地上に落ちたヘラスはデューカリオンの穂先に衝突する。

 

速力、質量で圧倒的に上回るデューカリオンの衝突に耐えられるわけもなく、ヘラスは大破。

 

「おのれ…まだっ!?」

 

周りにはアレイオンがいた。

 

これは戦争だ。つまり、死人はつきものだ。

 

 

数秒後、ヘラスは爆発四散、フェミーアンは戦死した。

 

『こちらフリージアンリーダー、敵カタフラクト撃破!』

 

 

 

 

 

 

 

スカイキャリアでスレインはデューカリオンの中にいるアセイラムをみて、一息ついた。

 

「アセイラム姫…よかった、生きていた…」

 

 

『姫は死んだ。なのに…なぜ探している?』

 

 

「えっ…?」

 

 

『君は姫が生きていたのを知っていた。何故だ?』

 

 

スレインは冷や汗をかく。ここで選択肢を間違えたら、僕は殺される。そんな、確信があった。

 

 

『答えろ』

 

 

「僕は、オレンジ色、貴方を探していた。あの街から。そこで姫様を見た。姫は地球の生まれである僕に偏見は無かった。僕は、姫を利用するものと、姫を殺すものを許さない」

 

『…』

 

 

 

 

 

ここで、殺すべきか?

 

真意はわからない、だが、姫を大事に思っているのは確かだろう。

 

だが、不穏分子に代わりはない…

 

『だが、あのスカイキャリアは撃ち落とすな!』

 

ジョルジュはそう言った。

あの人は火星人。だが、いい人だ。

 

このコウモリは、どうなんだろうか。

 

「コウモリ」

 

『…なんでしょうか、オレンジ色』

 

「お前の名前は?」

 

『…スレイン・トロイヤード』

 

「スレイン・トロイヤード…僕は君を信用できてない。だが、姫に対する気持ちはわかった。今は見逃す」

 

スレインと伊奈帆の緊張は収まった。

 

『オレンジ色、僕はあなたの事が嫌いだ』

 

「僕もだよ、コウモリ」

 

二人は、デューカリオンに戻る。嫌いという点で分かりあった二人に会話はなかった。




塗り替えられた運命に二人の少年は向き合う。一人は嫌悪感を、もう一人は興味を。その裏で、火星では内部分裂が始まる。次回、鳥と月。過去に囚われたものの弱さ、それは事実の誤認だ。
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