ALDNOAH.ZERO~ある火星騎士の物語 (休載中)   作:jorjue

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今回はオリジナルの軌道騎士中心で、内容も薄いです。オリジナル要素が本格的に入った回です。


鳥と月 -Light of the Blue Ster-

デューカリオン内部の一室にて、一人の女性の意識が覚醒する。

体の倦怠感は酷く、起き上がることも難しい。

辛うじて、目は開けた。

 

(ここは…どこなのでしょう…)

 

見覚えのない部屋。光の無い空間。最後に見た記憶との不一致。

 

「かえ…らなく…ちゃ」

 

小さく、とても小さく声は部屋の中で響いた。

 

 

 

 

 

 

「やはり、ザーツバルム伯爵だけでは荷が重いのではないか?」

 

「確かに、虫けらの中にも藪蛇は存在する…クルーテオ卿のサー・ブラドやトリルラン男爵が既にやられている」

 

「なんと…ではやはり、あの天才の仕業か…?」

 

「そこまでは分かりません。ですが、我々も互いに手を取り合わなければ損害が出るということか…」

 

「それでは、やはり?」

 

「ああ、皇帝陛下に謁見する他ない」

 

ヴァース帝国の所有宙域に点在する揚陸城、その一つに、密会は行われていた。

 

城の主はヴァインシュタイム伯爵。招かれた客は5人。

 

マリルシャン伯爵、カレル伯爵、シャルル伯爵、クレイツ伯爵、そして、爵位を失ったジョルジュの穴を埋める時期伯爵候補の1人、ブラン子爵。

 

次に口を開いたのはマリルシャン伯爵だった。

 

「ならば早急に準備せねばなりますまい。ザーツバルム伯爵に勘付かれる前に」

 

「確かに。幸い我が城は本国にほど近い場所にある。早々に気付かれる心配はないだろう」

 

「確かに。クレイツ卿はどう思いか?」

 

「…ザーツバルム伯爵が地球を占領する前に、こちらの結束を確かにしなければならないでしょう。その当たりはお任せあれ。我が家名にかけて…!」

 

「わかりました。ブラン子爵、貴方には伯爵になって頂くために私も根回ししましょう」

 

「痛み入ります、カレル伯爵」

 

「さて、これ以上我が城に居ては周囲に怪しまれるやもしれん。今宵はこれにて終いにいたそう。シャルル卿、構わんな?」

 

「もちろんですヴァインシュタイム卿。では、次回は5日後に、通信で」

 

密会が終わり、クレイツ伯爵は自身の城に戻る際、先の密会で疑問を抱いていた。

 

(カレル伯爵…あのブランを伯爵に仕立てあげ何をするつもりだ…奴は、地球に月の破片を降り注がせようとした奴だぞ…リソースとする地球を殺すやつを信じろと…?)

 

「どうやら、私は私で動くしかない、という事か…」

 

 

 

 

 

「ヴァインシュタイム様。ご客人、お帰りになりました」

 

「ご苦労、コーエル卿。入るがいい」

 

皆が去り、私室で読書するヴァインシュタイムに、使いのコーエル卿が室内に入る。

 

「皆様を纏めるのは難しく思いますが」

 

「まぁな。我らは言わば、別個の軍隊だ。それを纏めるのは一筋縄では行かないだろうな。旨みもなければこんな話を出すわけもない」

 

「旨み…でございますか?」

 

「ああ。ザーツバルム伯爵が失脚すれば奴の発言力は大いに減るだろうさ。そして、いまはあの番犬も月面基地にはいない。確か、月面基地の守りはバルークルス卿がザーツバルム伯爵から任されている筈。彼はマリルシャンの知己、旨みで釣ればいいさ」

 

「マリネ卿の存在で手の出しにくかった月面基地…どうやら、天才に感謝しなければなりませんね」

 

「あとは、クレイツ伯爵がどう動くか、だ」

 

本を閉じ、二人は部屋を出る。向かう先は指令室だ。

 

「マリルシャン卿に連絡を取る。コーエル卿は地球の方を頼む」

 

「仰せの通りに」

 

二人はT字路で別れる。地球とは別に、ヴァースでも変化が訪れようとしている。その結果が、血に染まることになったとしても、彼は喜んで戦乱へ叩き落すだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、その動きはザーツバルムに筒抜けであったとしても。

 

「やはり本国は我とジョルジュの不在をいいことに…ここまで露骨では寧ろこちらが罠に嵌められているか疑ってしまう。他には?」

 

『いえ、現在判明している新情報はこちらで最後です』

 

「そうか…引き続き監視をせよ。深入りは禁物だ」

 

『了解』

 

そう、ザーツバルムの内偵は軌道上に点在する騎士のみならず、本国にも存在していた。無論、全ての揚陸城なに忍び入る事が出来なかったのは、バートン城に内偵がいない事でも明らかだが、それでも反ザーツバルム派の軌道騎士全てに点在する。

 

「さて、そろそろ地球の者共に手を拱くのは終いだ…地球へ向け、総攻撃、か」

 

(それと同時に、バルークルス卿への忠告、マリネの状態、スレイン・トロイヤード…)

 

歯車は正常だ。ならば、これを狂わせぬようにしなくてはいけない。手持ちのカードは少ないが、効果はある。発言力のある今のうちに根回しをしなければならない。

 

 

 

だが、気になることもある。

 

「バートン城…宇宙に上がり所在がわからぬのが少々厄介だな…」

 

そう、宇宙に上がったバートン城の事だ。アルドノアドライブが停止していないことからジョルジュが生きているのは確実、そして向こうの兵力はあまり削れていない。大局的に見て、彼らの存在はあまり気にしなくてもいい。だが、相手はこのザーツバルムを持ってして適わぬ頭脳の持ち主、18で伯爵にまで登りつめた天才だ。

 

「だが、今かまっていられないのも事実で、あるか…」

 

覚悟を決め、己の決定を見つめ直す。既に矢は放たれた。なればあとは己を信じるのみ。

 

「我が同胞らへ回線を繋げよ━━!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デューカリオンのブリッジは平和そのものだ。そこにいるのはカームに韻子、ニーナ、祭陽の4人。

 

「これがブリッジ…空飛ぶ戦艦、デューカリオンねぇ…」

 

「ニーナ、これどうやって飛んでるの?」

 

「種子島で見つかった、火星のカタフラクトのアルドノアドライブを移植して飛ばしてるの。高度計も見ないといけないから大変だよー…」

 

「アルドノアドライブは、お姫様が動かしたの?」

 

「うん、アルドノアの光て凄かったよ?ね、カーム」

 

「ああ。韻子は戦闘中だったしな。もう見れないんじゃないか?綺麗だったぞー?」

 

「二人してずるいー!いいもん、私はそんなのに興味ないしー!」

 

「またまたぁ、嘘はいけないぜ韻子?」

 

「もー!知らないし!…あれ、そういえば、伊奈帆は?」

 

「あん?伊奈帆なら確か火星人と話してるんじゃなかったか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前が、コウモリ…」

 

「貴方が、オレンジ色の…」

 

二人は、デューカリオンの格納庫にいた。互いに気に食わない、だが、興味がある伊奈帆が会いに行った。すると、スカイキャリアの主翼にスレインを見つけた。

 

「正直、僕は君を信用しきれていない。姫は死んだ。なのに探していた。それだけで警戒する理由になり得るから」

 

「…僕は暗殺者の仲間じゃありません」

 

「なぜそう言い切れる?」

 

「僕は、地球の生まれだからです」

 

「…地球の?」

 

眉を顰める伊奈帆。スレインが乗っていたスカイキャリアは火星の兵器、事情を知らない伊奈帆にはスレインが火星へ連れてかれたことは知らない。故に、真偽が測れない。

 

そこに、

 

「スカイキャリアはこちらにあると聞いたのですが…」

 

アセイラムの声が格納庫に響いた。

 

「アセイラム姫!」

 

「ッ!」

 

「貴方は…!」

 

反射的に伊奈帆の体が動く。右手はスレインの左腕を掴み、後ろへ回す。それを軸に伊奈帆は自身をスレインの背後へ。スレインの腰から銃を抜き取り、拘束した。

 

「ヴッ…!?オレンジ色、何を!?」

 

「伊奈帆さん!?」

 

格納庫にいた人間全ての視線が集まる。

 

「セラムさん、この方と知り合いですか?」

 

それでも伊奈帆の鉄面皮は崩れず、声のトーンも変わらずセラムに問う。

 

「え、ええ。スレイン・トロイヤードといいます。地球のことを沢山教えてくれた、私の友達です。ですので伊奈帆さん、手を離してあげてください」

 

どうやら、地球生まれは本当のようだ。なら、一定の信用はできるか。そう判断した伊奈帆はスレインから手を離し、銃を返す。

 

「疑って済まない、コウモリ…いや、スレイン・トロイヤード」

 

「すまないと思うならやらないで下さい…えっと、」

 

「界塚伊奈帆」

 

「…貴方の、名前ですか?」

 

「ああ。まだ完全に信用出来てないけど」

 

「…そうですか」

 

そう簡単には納得してくれない人として、スレインの記憶に残る。今はアセイラム姫に話さなければならない。

 

 

 

「何事だ?」

 

「バートン伯爵!?」

 

そこに、天才までもがこの場に現れる。スレインはジョルジュの目前に畏まる。

 

「君は?」

 

「スレイン・トロイヤード、クルーテオ伯爵の使い…でした」

 

「クルーテオ卿の…?」

 

「はい。クルーテオ城より抜け出し、アセイラム姫を探していました。伯爵はトリルラン卿を使い、姫様を暗殺しようと!」

 

「なっ…!」

 

アセイラムは思わず声を出してしまった。それが事実だとすれば、暗殺を目論んでいたクルーテオの城に長い期間いたアセイラムに何か良からぬことを企んでいた可能性もある。

 

「…この場で話すには些か宜しくない。姫殿下、スレイン、場所を移すぞ。伊奈帆君は艦長達を呼んでくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『久しいな、マリルシャン卿』

 

「そうですね、バルークルス卿…月面基地の管理は大丈夫なのですか?」

 

『数日前、マリネ卿がザーツバルム卿に呼び戻され、戦力は減ったが、地球人にここを攻め落とす余力はないだろう、問題ない』

 

(情報通り、番犬は地球に行ったようですね…誘いを掛けるなら今しかありません)

 

(ザーツバルム卿の読んだとおり、誘いに来たな…情報を引き出すにはいい機会だな)

 

「バルークルス卿、単刀直入に言いましょう。ヴァインシュタイム伯爵はご存知ですね?」

 

『ああ、ザーツバルム卿がいなければ彼が軌道騎士のまとめ役になるやもしれん御仁だ』

 

「それは話が早い…ヴァインシュタイム卿と、地球を取りませぬか?」

 

『なに?しかし、今はザーツバルム卿が指揮を執っているではないか。何かあったのか?』

 

(誘いの裏はなんだ…?ヴァインシュタイム卿と、何を企んでいる…?)

 

「ヴァインシュタイム伯爵は、近々侯爵になられます」

 

『なに…?しかし何故ヴァインシュタイム卿なのだ?確かにあの御仁は力がある。が、ザーツバルム卿や人望のあるクレイツ卿がいる中で、何故彼なのだ?』

 

「ザーツバルム卿は、皇帝陛下を流言で惑わそうとしている。その彼が指揮する地球侵略は、信用できませぬ!」

 

(ザーツバルム卿を失脚させるのが目的か。だが、それは手段でしかないな、望みがわからん)

 

『だがマリルシャン、ヴァインシュタイム卿の真意がわからん。ザーツバルム卿を失脚させた所で、軌道騎士が混乱するだけだ。この大事な時期に、混乱させるのは望ましくないぞ』

 

「大事な時期だからですよバルークルス卿。姫殿下の弔いに、裏切るやもしれぬ奴に任せては37家門の威光に陰りが増します」

 

(…口を割る気はないらしいな、ならば、ここらが潮時だろう)

 

『検討はしておくぞマリルシャン卿。オリンポスの砂嵐に抗う気は無い。風を読ませてくれ』

 

「わかりました、良い返事を期待しますよ」

 

そして、マリルシャンとの通信を切ったバルークルスはため息をつく。いい印象は受けないが友と呼べる者が、

風を読み間違えた事に、頭を悩ます。だが、それは新たにモニターに映る人物の姿で強引に整理を付ける。

 

『難儀であったようだな、バルークルス卿』

 

「ザーツバルム卿…本国は、予想していた以上に荒れている。あれではアセイラム姫殿下も嘆くことであろう」

 

『バルークルス卿、今は本国の動きも大事だが、そちらに余計なネズミが入らぬかどうか、監視の目を光らせよ』

 

「承知している。…マリネ卿が出撃されてから、基地内の兵士から緊張の糸が解れた印象を受けた。少々、自身の騎士に一言言ってやってはどうだ?」

 

『フッ、善処しよう。バルークルス卿、何かあれば我に連絡を』

 

「そちらも、有事の際にはこの月面基地の戦力を差し向けよう」

 

モニターは黒に染まる。ここからは時間との勝負。

 

(我がヴァインシュタイム家の悲願が叶うが先か、)

 

(我が復讐が成功するが先か、それとも━━)

 

 

 

 

それとも、全てが無意味になるのが先か。




少年2人は一人の少女のために戦いを決意する。その中で、一人の少女は、裏切りの娘と相対する。次回、響く銃声の向く先は。青い星は、朱に染まる。
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