魔法科高校の劣等生 -彼のこれからは-   作:レイヴェル

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どうも、レイヴェルです。


入学編 7【挿絵あり】

「そうか....どれだけ優れているか、知りたいなら教えてやる」

 美月の主張は校内のルールに沿った正当なものだが、同時に、ある意味でこの学校のシステムを否定するものだ。

「ハッ おもしれぇ!是非とも教えてもらおうじゃねぇか」

 一科生の威嚇とも、最後通牒とも取れるセリフに、レオが挑戦的な大声で応じた。

 完全に売り言葉に買い言葉な現状に神綺は頭を悩ませながらどうすれば収まるか頭をフル回転させていた。

(どうする。レオの奴、挑発しやがって....)

 勿論道理は美月にある。

 それがわかっているからこそ、今のシステムに安住するものは誰であろうと感情的に反発する。

 ここで明確なルール違反があったとしても、それが美月達の側のものでなければ、見て見ぬふりをする者が多数派だろう。

 たとえそれが、学内のルール違反に留まらない、法律違反であったとしても。

「....だったら教えてやる!」

 と男子生徒が拳銃型のCADを取りだし、レオへと照準を向けた。

 学校内でCADの携帯が許されている生徒は生徒会の役員と一部の委員のみだ。

 学校外における魔法の使用は、法令で細かく規制されている。

 だが、CADの所持が制限されているわけではない。

 それは規則を作った所で意味がないからだ。

 CADは今や魔法師の必須アイテムだが、前にも言ったように別に魔法を発動するのに必要不可欠、というわけではない。CADが無くても魔法は使える。だから、CADの所持そのものを法令は禁じていない。

 故にCADを所持している生徒は、学校に着くと事務室にCADを預け、下校時に返却を受ける、という流れが定着している。

 またそれ故に、下校途中である生徒はCADを持っているというのは、おかしくない。

「特化型だと!?」

 だが、それが同じ生徒へと向かれるとなれば、異常な事態、いや...非常事態だ。

 向けられたCADは発動速度重視の特化型なら尚更だ。

 そして特化型には攻撃性のある危険な魔法を登録してある場合が多く、それがわかっている神綺達は勿論、騒ぎを聞きつけ集まった野次馬の内数人がレオにCADを突きつけているのを見て悲鳴を上げたりしていた。

 さらにまずいことにCADを取りだした生徒は口先だけではなく、CADを抜き出す手際、レオへと照準を定めるスピード、どちらも明らかに魔法師同士の戦闘に慣れている者の動きだったのだ。

 魔法は才能に負う部分が大きい。

 それは同時に血筋に依存するところ大であるということ。

 優秀な成績でこの学校に入学した一科生であれば、学校における魔法教育を受けていなくても、親の、家業の、親戚の手伝いといった形で実戦経験のある者は決して少なくない。

「うおぉぉぉぉ!!」

 CADを向けられたレオはそう叫びながらCADを奪い取ろうと男子生徒に近づく。しかし、相手はもう引き金を引いていて、魔法式が構築されている最中だ。

「お兄様!」

 そしてレオが危ないと焦った深雪の言葉が終わらぬ内に、達也は右手を突き出していた。だが、

「いい、俺がやる。レオ!しゃがめ!」

「おう!?」

 神綺に怒鳴られ咄嗟にレオがしゃがんだ瞬間。神綺は自分の特化型CADを構えて、引き金を引いた。

 すると、

ガラスか何かが砕けたような音が響き、男子生徒の手からCADがはじき出された。

 

【挿絵表示】

 

「なっ!?」

 今神綺が行ったのは『術式解体』。圧縮されたサイオンの塊をイデアを経由せずに対象物に直接ぶつけて爆発させ、そこに付け加えられた起動式や魔法式と言ったサイオン情報体を吹き飛ばす。

 しかしこれは使用難度が高く、使う魔法師はごく少数なのだが神綺は使えたのだ。

 簡単にいえば、神綺はサイオンの弾丸をCADから打ち出して相手のCADに展開されている魔法式に当て、魔法式構築をサイオンの弾丸で阻害し、エラーを起こさせて魔法を発動させないようにしたのだ。

 しかしそのことを理解できた人間は達也と深雪しかいなかった。

「やめろ。自衛以外での魔法の無断使用は犯罪だぞ。お前達は自分の家に泥を塗りたいのか!」

「っ」

 その言葉でハッとなったのかCADを弾かれた男子生徒の後ろで、続いてCADを起動しようとしていた者達が顔を青くしながら構えていた手を下す。

 その中でほのかも魔法を発動しようとしていた一人だったのだが、もう神綺が言った時は遅く、もう魔法式が構築されはじめていた。

 通常なら構築を破棄すればすむのだが、今のほのかは軽いパニック状態になっており、そのまま発動するのを待つだけだった。

 それにハッと気がついた神綺、と達也はほのかのCADへと目を凝らす。

(...光振動系魔法、所謂目くらましレベルと判断)

 紅音に魔法を受けた時もそうだったが、神綺は元からかは知らないが、起動式を読むことができたのだ。あの時はまだ体も小さく、魔法知識も皆無だったために自身の身の危険を感じた時にしかできなかったが、今は成長しいつでも意識すれば起動式を読めるようになっていた。

 だが読めた所で今からほのかのCADに照準をもう一度定めて先程みたいに打つことはできなかった。

(まずいっ!)

 そう神綺が思った瞬間。先ほど神綺がした時と同じ現象がほのかのCADにも起きた。

「止めなさい!自衛目的以外での魔法による対人攻撃は、校則違反である前に、犯罪行為ですよ!」

 なんだ、と思いその声が発せられた方を全員が向くとほとんどの生徒が顔を青くした。

 その相手は、生徒会長である七草真由美だった。

「あなた達、1-Aと1-Eの生徒だな。事情を聞きます、ついてきなさい」

 冷たい、そして硬質な声でそう命じたのは、真由美の隣にいた女子生徒だった。 

 神綺の知る限り、彼女は風紀委員長の渡辺摩利、3年生だ。

 そして彼女のCADはすでに起動しており、座標を決めれば即座に魔法を発動できる状態になっていた。

 大方抵抗を見せれば即座に実力行使で鎮圧する、という脅しだろう。

 レオやエリカ達もその彼女達の雰囲気に押されて動けないでいる。

 だが、その中で達也と神綺は特に項垂れたり、胸をはるわけでもなく、ただ普通に摩利へと近づいた。

 それを奇妙に思った摩利は手をこちらに翳し、照準を2人へと合わせる。止まれ、と言いたいのだろう。だが、それに臆することなく二人は一定の距離を進み、一礼をした。

「すみません、悪ふざけが過ぎました」

「悪ふざけ?」

 唐突に言った達也の言葉に摩利は眉をひそめた。それが演技か素かは知らないが、それに続くように今度は神綺は、

「はい、森崎一門のクイックドロウは有名ですからね。後学の為に見せてもらうだけのつもりだったのですが....あんまり真に迫っていたもので、こちらから頼んでおきながら手が出てしまいました」

 と白々しく神綺は言いながら達也とアイコンタクトをし頷いた。癪だが、考えていることは同じらしい。

 それを聞いたCADを突きつけた生徒は目を丸くして驚いている。

 他の一年生も今までとは別の意味で絶句する中、摩利は神綺の持っているCADと弾いたCADを一瞥し、違法にCADを使おうとした男子生徒とほのかを鋭い目つきで震えあがらせてから、達也と神綺を見て冷笑を浮かべた。

「ではその後に1-Aの女子が攻撃性の魔法を発動させようとしていたのはどうしてだ?」

 おそらく、あまりにも白々しい為これで言い包めようとしたのだろうが、相手が悪い。

「驚いたんでしょう?条件反射で起動させるとはいやはや...流石は一科生ですね」

 と真面目くさった表情で達也は答えたが、どう聞いても白々しい。

「君の友人は、魔法によって攻撃されそうになっていたわけだが...それでも悪ふざけと言えるのか?」

「攻撃と言われましても...」

 と達也が言葉を濁し、

「ただの目くらましですよ。閃光魔法ですが威力もとても抑えられていて、後遺症が残るレベルではありません」

 と神綺が言いきった。

 再び、息をのむ気配。そして冷笑が感嘆へと変わった。

「ほぅ....今の言い方だと、君達2人は、展開中の起動式を読み取ることができるのか」

 起動式は魔法式を構築する為の膨大なデータの塊だ。

 魔法師は、魔法式がどのような効果を持つものであるかは、直感的に理解することができる。

 魔法式がエイドスに干渉する過程で、改変されまいとするエイドス側からの反作用により、魔法式がどのような改変を行おうとしているのかを読み取るのは可能だ。

 だがそれ単独ではデータの塊に過ぎない起動式は、その情報量の膨大さ故に、それを展開している魔法師自身にも、無意識領域内で半自動的に処理することができるのみ。

 起動式を読む、ということは、画像データを記述する文字の羅列から、その画像を頭の中で再現する様なものだ。

 意識的して理解しようとしても、普通はできない。

「実技は苦手ですが...分析は得意です」

「昔から分析は得意分野なもので」

 と二人はその異常な技能を『分析』で片づけた。

「....どうやら誤魔化すのも得意の様だな」

 値踏みする様な、睨みつけるような、その中間のまなざしで二人を見るが、二人は何も気にせずただ涼しい顔で摩利を見ていた。

 とそこで達也の後ろから二人を庇うように深雪が進み出た。

「兄と神綺君が申し出た通り、本当にちょっとした行き違いだったんです。先輩方のお手を煩わせてしまい、申し訳ありませんでした」

 こちらはなんの小細工もなく、真正面から深々と頭を下げられて、毒気の抜かれた表情で摩利は目を逸らした。

「摩利、もういいじゃない。達也君...そして北山君、本当にただの見学だったのよね?」

 神綺はそこで違和感を覚えた。それもそうだろう、真由美と面と向かったのは今が初めてで未だに自己紹介すらしていないのだ。なのに真由美が自分を知っていることに驚いたが、すぐに平静を取り戻し

「はい」

 そう言うと真由美は満足げに頷いた。

 まるで貸し一つですよ?とでも言いたい様な感じだ。

「生徒同士で教え合うことが禁止されているわけではありませんが、魔法の行使には、起動するだけでも細やかな制限があります。このことは1学期の内に授業で習うでしょう。魔法の発動が伴う自習活動は控えた方がいいでしょうね」

 と即座に真由美は真面目な表情に戻り、訓示を垂れる真由美の後を受けて、摩利もまた形式を意識した言葉使いで審判を下した。

「....会長がこう仰られていることですし、今回は不問とします。以後この様なことがないように」

 慌てて姿勢をただし、呉越同舟ながら一斉に頭を下げる一同に見向きもせず、摩利は踵を返した。

 と思いきや、一歩踏み出した所で摩利が振り返り、

「君達の名前は?」

「1年E組、司波達也です」

「同じく1年E組、北山神綺です」

「覚えておこう」

 反射的にやめてくれ、と神綺は言いそうになったが喉まで上がってきたそれを必死に抑え込んだ。

 

 

 

 

「神綺く~んっ!!...うえぇぇぇぇん!!」

「おっとっと....おいおい....」

 余程怖かったのだろう。摩利達が去ると同時にほのかが神綺の胸に飛び込んできた。

「...借りだなんて思わないからな」

 と男子生徒が神綺と達也に向かいそう言う。

「貸しだなんてハナっから思ってねぇよ。それよりも目障りだ、帰れ」

 結果的に助けてやったのにこの態度だ。昼のこともあり、神綺の中でのこの生徒の評価は底辺へと落ち切っていた。

「俺も貸してるだなんて思っていない。それに、決め手は深雪だ」

「お兄様ったら言い負かすのは得意ですのに、説得は苦手なんですから...」

「ははっ 違いない」

 深雪のわざとらしい非難の眼差しに苦笑いで達也は返す。

「....僕の名前は森崎駿。お前が見抜いたように、森崎の本家に連なるものだ」

 司波兄弟の馬鹿馬鹿しいやり取りに気を殺がれたのか、敵意の薄れた顔で男子生徒は名乗った。

「ただクイックドロウを見たことあるだけだ」

「あ、そういえばそれ私もみたことあるかも」

「で、テメェは今まで忘れていたと。やっぱり神綺や達也とは出来が違うな」

「何よ偉そうに。CADを素手で掴もうとしてたバカに言われたくないわよ」

「なっ!?バカだと?」

「あの....本当に危ないんですよ?」

 と後ろでは友人達が話をしている中。神綺達は、

「僕はお前達を認めない。司波達也、北山神綺。司波さんは僕達と居るべきなんだ」

 そう捨て台詞を吐いて森崎は返事を待たずに背を向けた。

「いきなりフルネームで呼び捨てか」

 という嫌味に聞こえる達也の言葉に森崎は肩をビクつかせ

「はっ 認めてもらおうなんか思ってないさ。それより早く帰れ、言っただろ?....目障りだ」

 そう神綺は最後の語気を強めてそう言った。

「っ」

 森崎はなにか言いたげだったが、神綺の威圧に負け、そのまま立ち去った。




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