両作品の同日投稿....疲れますね。
紅音を見送った後、神綺は雫がくるまで時間つぶしに先ほど調整したCADのデータのバックアップと、改変された情報のコピーを取り、解析を始める準備をしようとキーボードをうち始めた。
それから1,2分が経っただろうか、薄着に着替えた雫が愛用する汎用型のCADを手に持ちながら部屋へ入ってきた。
「おまたせ。遅くなっちゃった」
「構わないよ。さ、CADを」
「ん」
細い指で手渡されたCADを紅音の時と同じく機材にリンクさせる。
「それじゃぁいつも通り寝てくれ」
「わかった」
それっきり二人は無言のまま部屋に備え付けられている時計の秒針が刻む音と、神綺が操作するキーボードの音だけが部屋に響く。
そこで雫が上体を起こしてポツリと
「ねぇ、神綺?」
「なんだ?」
と神綺は聞くが、目線はモニターに釘付けのままであり、手も止まってない。
それに雫は少し不機嫌な顔をするが、構わず続ける。
「昼間の学校でのことだけど」
「ん?なにかあったか?」
「模擬戦の時」
「模擬戦?」
「神綺言ったよね。服部副会長の首を切ることができるって」
「あぁ、言ったね。それが?」
「....本当にできるの?」
と不安そうに雫が俯きながら言っているのが、モニターに軽く反射して写った。
それを見た神綺は軽く溜息をつきながら手を止めて雫の方を向いた。
「それはとても複雑な質問だな。....俺が怖いか?」
「怖い...といえば怖いよ。神綺が平気で人を殺すとは思えないけど...でも」
すると神綺は雫の手を取り、
「っ」
「大丈夫だ。あれは半分ハッタリだ」
「えっ...?」
その言葉に雫は目をパチクリと瞬きする。
「確かに、掻き切ることはできるだろう。だが、条件がある」
「...条件?」
「そうだ。まず、運よく摩擦力がうまく働く角度に調整しなければならない。そして、相手が頸動脈から皮膚までの距離が短いこと、そして.....それでできた傷が深いことだ」
「....つまり」
「ほぼ不可能だ。あえて確立をあげるならトンファーを磨いて鋭くしないと厳しいだろうな」
「それじゃぁなんで嘘ついたの?」
「でなければあれからまた戦闘を続けなければならなかっただろ?できるだけ負傷させたくなかったんだ」
「そっか...」
「でも100%嘘ではないぞ?理論的には可能だからな」
「それじゃぁあそこで見破られてたらどうなってたの?」
「ん?見破られてたぞ?」
「えっ...」
「といっても達也だけだけどな。気が付かなかったか?俺がどうどうと説明したとき、あいつ笑ってたぞ」
「....気が付かなかった」
「ま、それでもいいさ。ともかく、雫が想像してるような殺人は起こさないし、起こせないから安心しなよ」
と軽く雫の頭をなでる。
「ん....」
するよ安心したのか目を細めて気持ちよさそうな表情をする雫。
それに安堵した神綺は撫でる手を止めて、中断していた調整を再開する。
「あっ....」
「ん?」
「えっ ううん。なんでもない」
「? そうか」
恥ずかしくてもう少し撫でてくれと言えなかった雫を不思議に思った神綺だった。
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「さ、終わったぞ。お疲れ様」
「ありがと。神綺こそ、お疲れ様」
調整を終えた神綺は雫にCADを返し、雫より一足先に自室へと戻った。
自室に戻ると、神綺はベットに突っ伏した。やはり尋常じゃない集中力を要する為、疲労もそれなりに溜まるのだ。
そうしてリラックスしていると、この部屋には神綺一人しかいないはずなのに、新たな気配が生まれた。それに嫌な顔をしながら気配の生まれた方に目を向けると、
「やぁ」
「...はぁ」
神綺の使っている机の椅子に腰を掛けているレイブンがいた。
「どうしてお前がここにいるんだ?」
「偶には来たくなってね」
「雫たちが来たらどうするつもりだ」
「いつも言ってるだろ?人払いを掛けてある。誰も来ないさ」
「そうかい...んで?なんの用だ」
「随分と冷たい対応だね」
「うるさい....俺をこうしたのもお前だろうが」
神綺自身、レイブンのことをあまり快く思っていない。それもそうだろう。平凡な生活をしていたのに、急に殺伐とした世界へと送られてしまったのだから....それも脅されて。
「そうだったね。....それじゃ本題だ」
そう一息置くと、レイブンの雰囲気が変わる。今までの飄々とした感じがなくなり、張り詰めた威圧感のある雰囲気になった。
「もうそろそろで一騒動起きるようだからね、忠告に来たんだ」
「忠告?」
「そうだ。くれぐれも...今度の騒動で死んでくれるなよ?」
「おいおい...戦闘が起きるってのか」
「そうだ。それも一高でね」
「勘弁してくれ....それで?本当にそれだけなのか?」
レイブンの言う騒動に頭を悩ませながらも、それだけの為にこちらにくることはあり得ないと思い、聞いた。
「いんや?勿論他にもあるさ。.....そろそろ君のリミッターを外してあげようと思ってね」
「リミッター?」
「君は改造されている。そこはわかるね?」
「あぁ」
「だが君は手術には成功したが、彼らの思う完成とは言えない中途半端な状態だった」
「...というと?」
「さっきも言ったようにリミッターがかかっているのさ。だってそうだろう?元々真人間だった奴が魔法を使える体にされたんだ。いきなり全力で魔法を行使したら体が壊れてしまうだろう?」
「...確かに脳や体に高負担が掛かって廃人になるだろうな」
「そういうこと。だから君には何重にもリミッターが課せられているんだ」
「因みにどのくらいだ?」
「そうだね...ざっと15段階と言ったところかな」
「ず、随分あるんだな...それで?今の俺はどのくらいリミッターが掛かってるんだ?」
「12段階はあるね」
「....そんなにか?」
あまりの制限具合に思わず苦笑いをしてしまう。
「しょうがないよ。今まで一度もリミッターを弄ってないんだから」
「....もう少し早くに解除してくれてもよかったんじゃないか?」
「そうしたいのも山々だけど、いきなり力をつけすぎて自分強すぎ!って勘違いされても困るしね」
「なるほどね...少しはわかった。して、いくつぐらい解除してくれるんだ?」
「2段階ぐらいかなぁ」
「2...か」
「少ないと思ったかい?でも仕方ないんだ。一気に開放しても体が慣れないからね、徐々にだよ」
「なるほど。....それじゃぁ最後に」
「随分と慎重だね....」
「当たり前だ。未知の体験だ。慎重でなくてどうする」
「左様で...んで?なんだい?」
「解除することによってどうなるんだ?」
「あぁ、そういえば言ってなかったね。それは、魔法の...ま、サイオンだね。サイオンの体内に蓄えられる量が増えるのと、扱える魔法が増えるね」
「...種類が増える?」
その言葉に神綺は引っかかる。今の神綺でも、時間はかかるが、それなりの魔法は発動できる。
「そう。リミッターが外れるにつれて君は色々な技が使えるようになるはずだ。今のように個別の特化型CADではなく、汎用型で使用できるってこと」
「なっ....処理速度が上がるってことか!?」
「そうだね。まぁ....それは全リミッターは解除したレベルだから、2段階解除したところで少し速くなったかな?程度だよ」
「そうか....」
「それじゃぁもう質問はないね?時間もないからいくよ」
「....わかった」
そう答えると、一瞬の激痛が走り、うめき声をあげる間もなく気を失った。
閲覧ありがとうございます。
今回はほとんど会話会になっちゃいましたね。...あ、いつもとか言わないで。