Re ハイスクールD×D 黄金転生のロンギヌス   作:めんどくさがりや

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神とはーー

「堕天使か・・・」

 

堕天使がこの町に潜伏していると報告を受けたのは玲誠が帰って来てすぐだった。

堕天使。欲望を抱いたがために神に堕とされた天界の住人だった者達。

 

「ふむ、上級悪魔であり、72柱に数えられるグレモリーとシトリーの次期当主が管理するこの町で行動するとはな・・・あるのは策か、それとも驕りか」

 

一誠はこの世界については一つの世界としての知識はあるが、物語としての知識は皆無だ。何せラインハルトとしての人生が長過ぎた。それゆえにラインハルトの前の自分がどのような男だったのかという事など那由他の果てに消え去っている。

あの神に頼めば思い出すだろうが、それでは駄目だ。

何が起きるのか、一から十まで知っているのでは興醒めも甚だしい。既知感の恐ろしさは前世で嫌という程知っている。

原作を知ればたしかに楽に進めるかもしれない。だが、そうなるとその者は原作という名の鎖に囚われてしまう。

だから原作を知る事を拒んだ。この世界の知識は数年前に偶然現れたはぐれ悪魔を仕留めた際に手に入れた。

 

「たしかにカールに悪魔のような男と言われたが、まさか本当に私が悪魔を取り込むとはな」

 

自嘲気味に苦笑する。

その時、部屋の扉からノックする音が聞こえてくる。

 

『兄様、私です』

「玲誠か。入ってこい」

 

そう言うと扉が開き、玲誠が入ってくる。

 

「どうした?」

「はい。今回の件、どうするのですか?」

 

今回の件、とは堕天使達の事だ。

 

「今は傍観、と言った所か。何にせよこちらは堕天使側の情報が皆無だ」

「それでしたら、シュピーネに情報集めをさせればどうでしょう」

 

今言ったシュピーネは団員の中でも直接的な戦闘よりも諜報、斥候を得意とするため、必要とする情報を集めるのは容易いだろう。

 

「いや、今動くと悪魔陣営にバレる可能性がある。こちらの存在は向こうからしたら完全なイレギュラーとなるだろう。ならば無闇に我が爪牙を見せる訳にはいくまい」

「では、どうするのですか?」

「時が来れば、私自身が接触する。幸いあちらの眷属の一人とは交友関係を持っているからな」

 

その言葉に玲誠も心当たりがあったのか、複雑な表情を見せた。

 

「そんな表情(かお)をするな。存外に、話が上手く進むやもしれん」

「そう、ですね」

 

一誠が苦笑しながら言う。その後しばらくは雑談に興じた。

 

 

玲誠が部屋を出てから一誠は椅子に座り、読みかけの本を開く。

 

「堕天使、か。彼らを見ると創造主とやらに呆れを感じてしまう」

 

ポツリと一誠はつぶやく。

 

「『汝の隣人を愛せよ』という言葉があるが、実際の所神は愛すべき者を選ぶ。自らの愛し子が欲望を持てば堕天させ、欲望の化身である悪魔を敵視し、自ら以外の神、それに準ずる概念を異端と蔑む。あまつさえ神の呪いなどと呼ばれるモノも存在するという。いかにも矛盾している」

 

すると読んでいた本から顔を上げる。

 

「そうは思わんかね?カールよ」

 

すると、部屋の中に一人の男が現れる。

黒いボロボロの外套を纏っており、その存在は朧げであり不確かで、不鮮明。青年のようであり枯れた老人のようでもある風体の男。

一誠(ラインハルト)の盟友、『カール・クラフト』。かつて自分が生きていた世界では第四天、水銀の蛇、コズミック変質者などと呼ばれた男だ。

 

「さて、どうでしょう。私からすれば総てを愛する存在など貴方とマルグリット以外に知り得ない故、憶測で語る事になりますがよろしいかな?」

「構わん。いや、むしろ座の神であった卿の意見というものに少なからず興味がある」

 

その言葉にカールはでは、と口火を切る。

 

「そも、宗教における神とは何か?全能の創造主?栄光の王?永久(とわ)の存在?人にとってはそのような存在だろう。それらが神という存在の一種の固定概念と化している。または、不老不死の存在が神という説もある。

しかし、私はそのどれでもないと思うのだよ」

「ほう、その理由は?」

「まず、聖書における神の概念。神の元には天使と呼ばれる配下がいるが、それらが欲望を抱いた瞬間堕とされ、堕天使と呼ばれるモノへと変貌する。天使にとってこの瞬間は終わりであると同時に、転換期でもある。何せ自らを律する枷が外れたのだ。

ここで貴方に問おう、獣殿。何故、天使は欲望を抱くのか?」

 

役者じみた仕草でカール・クラフトは問う。

 

「神が欲望を嫌うのなら、欲望に染まらぬ存在を創ればいい。欲望という概念を天使から消せばいい。意思を持たず、ただ命令を執行するだけの人形を創ればいい。しかし、神はそれをしなかった。いや、出来なかった。神の一部から生まれた筈の彼らが欲望を抱くのは何故か?」

「ーー神自身がその身に欲望を宿しているに他ならない」

 

カール・クラフトの言葉に繋げるように言う。

神が真の意味で欲望を持たないなら、その配下である天使が欲望を抱く筈が無い。ならばそれらの創造主である神自身に欲望が存在すると言ったほうが理に適う。

 

「然り。だが、それ故に神は欲望を嫌う。全能の存在である自分が下劣な思いを抱く筈が無い。故に欲望とは忌むべきモノである、とね」

「くだらぬな」

 

カール・クラフトの言葉を一言で切り捨てる。

 

「欲望を否定する。その時点でその者に世界を創る権利などない。食欲、性欲、睡眠欲、人であれ畜生であれ、生物であるならばなんだろうと欲を持つ。そもそも否定という概念を持つなら、神も人とさして変わらぬ。いやーーー」

 

その時、カール・クラフトの言葉の意味を理解した。

 

「なるほど、ようやく卿の言葉の真意を理解出来た」

「ああ、聡い貴方ならば答えに辿り着くと確信していたよ」

 

そう、神の正体。それはーーー

 

「人類の原典。それこそが聖書の神の正体か」

 

万物には全て始まりがある。人間の始まりはアダムとイヴという説があるがそれ自体が間違いだ。

何故ならアダムとイヴを創ったのは神であり、そのアダムとイヴが知恵の実を食べたからといって欲望を持つとは限らない。アダムとイヴに元々存在した欲望の種が知恵の実の力によって芽吹いたに過ぎないからだ。

そもそも、親が持たぬ概念を子が持つなどありえない。

故に、全てを創った神こそが人間の原典である。

 

「なるほど、な」

「如何でしたかな?獣殿」

「実に面白い話が聞けた。感謝するぞ、我が友よ」

 

すると、カールが椅子から立ち上がる。

 

「それは重畳。では」

「行くのか?」

「ええ、今作成中の女神を記した写真集である『黄昏の浜辺〜女神マルグリットの足跡〜』を作らねばならないのでね」

「・・・卿は変わらぬな」

 

呆れ顔で言う。カール・クラフトはこの通り女神に心酔している。根は一途で純粋な男なのだが、その一途さ故に行き過ぎてしまう事が多々あるため、殆どの人物からウザがられており、女神からも『カリオストロ超うぜぇぇぇ‼︎』とシャウトされる程のものだ。ちなみにそれによって彼の代替も被害を被っているのはここだけの話である。

 

「獣殿よ、貴方はたかだか数年で私の女神への愛が失われるとでも言うのかな?否、断じて否‼︎私の女神への愛は不滅であり、未来永劫失われることはないのだァ‼︎「落ち着け」ぶっ」

 

いい加減近所迷惑になりそうなので拳で黙らせる。

 

「け、獣殿?いささか力が強いように感じるのだが・・・」

「ん?・・・ああ、気づかぬうちに倍加の力を使用していたようだ。許せ」

 

その言葉にカール・クラフトはピクリと反応する。

 

「倍加の力?・・・ああ、赤龍帝とやらか」

「元は神器(セイクリッド・ギア)と呼ばれる器に封じられていたのだがな。何の因果か、本来神器にいたドライグーー赤龍帝の魂が我が爪牙の一つとなった。卿ならその理由が理解出来るだろう?」

「神器は魂に宿る。これがそこらの武具ならまだ良かったが、ソレには赤龍帝の魂が宿っていた為に、貴方の魂に触れた赤龍帝に聖痕が刻まれた。それにより、器と魂が分離し、器は別の者へ、魂は貴方の軍勢(レギオン)へと加わった。

ああ、感服するよ。貴方なら魔王や神すらも飲み込むだろう」

「魔王か。なるほど、実に面白い。彼等がどれ程の力を持っているか、それを知り得るのも一興やもしれぬ」

 

そこで一誠の部屋の扉が開き、玲誠が現れる。

 

「兄様、湯船が空きーー何故お前がここにいる」

 

玲誠は部屋にいるカール・クラフトを睨みつけて言う。

だが、カール・クラフトはそれに涼しげな表情でいる。

 

「久しいなイザーク。いや、今は玲誠と呼んだ方がいいかな?」

「そんな事はどうでもいい。何故お前がここにいるのかと聞いている」

「何、久しく友と会っていなかったから来たに過ぎない」

 

するとイザークはため息を吐く。

 

「兄様、一度ご自分の交友関係を見つめ直してください。では、私はこれで」

 

そう言って玲誠は部屋を出て行く。

 

「私の交友関係か・・・」

 

そう言って自分の友人等を思い浮かべていく。

 

木場 祐斗→悪魔の眷属の一人。

 

松田→変態である。

 

元浜→変態である。

 

カール・クラフト→コズミック変質者である。

 

・・・なるほど、たしかにマトモとは言えない交友関係だ。と言うより友人の大半が変態とは如何なものか。

 

「では獣殿。私は帰らせてもらおう」

「ああ、さらばだカールよ」

 

そう言ってカール・クラフトは去っていく。

そしてカール・クラフトが帰ってからも一誠の頭の中では様々な単語が飛び交っていた。

悪魔、天使、堕天使、魔王、神、二天龍、神器、そして、ロンギヌス。

 

「最強の神器(セイクリッド・ギア)、『黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)』。なるほど、黄昏の名を冠する武器か」

 

これも何かの縁かもしれない。

二本の聖槍、片や最高位であり最強の聖遺物。片やカールが愛した女と同じ黄昏の名を冠する神器。

 

「いつか必ず、我らは相見えるだろう」

 

その時こそ、我が破壊の愛を示そう。

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