Re ハイスクールD×D 黄金転生のロンギヌス 作:めんどくさがりや
カール・クラフトとの会話から数日が経った。その間に変わった事は無く、堕天使も目立った動きも無く、悪魔との闘争の兆候すら感じない。
「ここまで何もないと少し拍子抜けだな」
嘆息しながら言う。すると、友人等が席に近づいてくる。
「ようイッセー。何黄昏てんだ?」
「気になる子でも見つけたか?」
松田と元浜がそのような事を言ってくる。元浜の言葉に周囲の女子が緊張した表情になるが、一誠はその事を知り得なかった。
「残念ながら、今の所いないな。見目麗しい女性であることに変わりはないのだが、私自身誰かと恋仲になろうする気はないのでな」
その言葉に女子達は一誠が好いている子が誰もいない事への安堵と、誰もその気にされていない事から複雑な心境になる。それと同時に一誠に褒められての喜びも混じっていた。
すると、松田が頭を両手で抱え叫ぶ。
「かー‼︎相変わらずモテる男は羨ましいなチクショウ‼︎」
「クソッ‼︎やっぱ顔か⁉︎顔なのか⁉︎」
「卿らもその欲望を少しでも隠せばだいぶマシになるだろうさ」
苦笑しながら言う。
「いや‼︎女子がいるのなら
「全国の紳士に謝るといい。それと、いくら男児と言えどもそこまで下心十割の奴はいないと思うのだが?」
そこで、元浜がメガネをクイっと持ち上げて言う。
「フッフッフ。コレを見ても同じ事が言えるかな?」
そう言って元浜は懐から一枚のDVDを取り出して来た。
タイトルは、『赤薔薇巨乳歌劇〜愛しい恋人よ咲き誇れ〜』というものであった。いわゆるAVだ。
それを見て周囲の女子が一気に離れる。しかし、二人はそれに気づかずにはしゃいでいる。
「こ、これは‼︎限定50本の入手が超困難な作品じゃないか‼︎」
「おう、俺が死ぬ気で予約して入手したDVDだ‼︎」
「しかもプレミア付きだと⁉︎あ、あなたは神か‼︎」
すると、二人はとてもいい笑顔でDVDを差し出してくる。その笑顔は慈愛に溢れていた。
それを一誠は仕方なそうに苦笑して受け取る。
それに二人はうんうん仕方ないな、お前も男だものなといったように頷き、女子達は裏切られたといった感じに絶望しているが、それに構わず一誠はそのDVDを、
「枯れ落ちろ恋人」
破砕音と共に握りつぶした。凍りつく二人。ツァラトゥストラの流出のように時間が止まったかのような状況の中、一誠の手から粉々になったDVDの欠片が落ちていく。
そして数秒後、
「■■■■■■ーーー!!!!」
『(ZAMAAAAAAAA!!!!)』
凄まじい悲鳴を上げる二人。心の中で歓喜する女子。
すぐさま復活して一誠に詰め寄る。
「あた、なんばしよっとね⁉︎」
「博多弁になってるぞ?私に渡すという事は破壊してほしいという事だろう?」
「「違うわ⁉︎」」
このやりとりもいつも通りだ。するとそこで松田が言う。
「お前もよお、たまには女の子に興味持ったらどうだ?」
「そうだぞ。聞いた話だとお前告白を全部断ってきたらしいじゃないか」
それに一誠は、
「先ほども言ったろう?私は誰かと恋仲になる気はない」
何故なら自分の愛は個人に向けられるモノではないから。とはいえ、それをここで言うわけにもいかない。
二人は呆れ顔で「ブレないなー」、と言っている。友といつも通りに接し、いつも通りに話す。
いつも通りの風景、いつも通りの日常。
「(故に、理解したよツァラトゥストラ)」
ここにはいない、友の代行へと言う。
何の変哲もない日常。なるほど、たしかに彼が焦がれるのも理解出来る。だからこそーーー
「(卿が尊ぶ刹那は、私には合わん)」
愛しく思うがゆえ、
蔑ろにはせん、尊重もしよう。しかし、私の渇望とはやはり別物であると理解した。
何故なら、私の愛は破壊なのだから。
◆
ーー我が愛は破壊の情
渇望。それは読んで字の如く、「渇き」から生じた望み、つまり求めても得られずに高まった願望のこと。希って追い続ける見果てぬ夢。
その人物の魂の形とも言えるようなもので、渇き・飢え・祈り・願い・夢などとも表現される。
まず感じたのは『礼賛』ーー求めしものは全霊の境地
人には誰しも渇望がある。それがどのようなモノかは多種多様、様々だ。
それがどのようなモノであれ、狂おしい程に欲する。
ああ なぜだ なぜ耐えられぬ 抱擁どころか 柔肌を撫でただけでなぜ砕ける なんたる無情ーー
渇望にはふたつの形が存在し、必ずどちらかに分類される。
『求道』と『覇道』。
『求道』とは、「~になりたい」「~でありたい」などの自己に向ける願い。
例えば、『愛する男の糧になりたい』、『戦場を照らす光でありたい』といった自身への思いである。
『覇道』は「~したい」「世の中が~であってほしい」などの他者や外界に向ける願い。
例えば、『罪深き世を救済したい』、『(この結末は気に入らないから)やり直したい』といった世界への思いである。
森羅万象 この世は総じて繊細にすぎるから
そして兵藤一誠、いや、ラインハルト・ハイドリヒの渇望は『総てを全力で愛したい』という覇道の願いである。
神も、悪魔も、堕天使も関係ない。総てを愛し、故に総てを破壊する。
その破壊こそが彼の愛。彼の理、咒を、修羅道・至高天。
愛でるためにまずは壊そう 死を想え 断崖の果てを飛翔しろ
個人間の情愛ではなく、遥か高みに腰掛けながら所有物を愛玩している、支配者の愛。
聖書の神よりも人を愛し、悪魔以上の禍々しさを持つ修羅の黄金。それはさしずめ『
やがてこの世界は黄金の修羅道に飲み込まれるだろう。
ーー私は、総てを愛している‼︎
それこそが墓の王、黄金の獣、ラインハルト・トリスタン・オイゲン・ハイドリヒの愛であるのだから。
◆
それは学校帰りの出来事であった。下校途中、一誠は公園へと立ち寄った時、とある人物を見つけた。
「(あれは・・・来栖龍星か?)」
赤みがかった髪に紺色の瞳、一誠のクラスメイトである来栖 龍星。
そしてその対面には見知らぬ少女。何かを話しているようだが、そんな事はどうでもいい。
あの少女は人じゃない。一誠にはそれが何よりも理解できた。
「フフ・・・」
思わず笑みがこぼれる。ようやく、ようやくだ。16年という歳月を日常に費やした。その間あった戦闘ははぐれ悪魔との一戦だけだ。
そして今、眼前にいるのは一人の堕天使。黒い翼を出し、光の槍を手に持ち、それを来栖へと突き刺さんと構えている。
「『
そして一誠がつぶやくと、その手に一本の槍が現れる。穂先が深い青と紅が入り混じった色の魔槍。かつて、はぐれ悪魔を討伐した際に手に入れた神器の一つだ。
その能力は炎と氷を操るというもの。本来相入れぬ属性を共有させた槍。
一誠はその穂先に力を集中させると槍を炎が渦巻く。
「フッ‼︎」
そのまま槍を突き出すと、炎の渦が堕天使へと向かっていく。
「ッ⁉︎」
それを堕天使は咄嗟に避ける。
「ふむ、流石に今程度なら避けるか」
堕天使は宙に浮きながらこちらを睨みつけてくる。
「貴方は誰かしら?」
「そこで倒れている男の知人だ」
「へえ?敵討ちのつもり?」
その言葉に一誠は首を横に振る。
「そのようなくだらぬ行いに興味はない」
「なら何故?」
その言葉に一誠はただ笑いながら言う。
「何、そう大した事ではない」
瞬間、一誠が堕天使の上へと跳躍し、
「なっ⁉︎」
槍を振り下ろす。
「ただ、卿の力を知りたいだけだ」
「ぐぅ・・‼︎」
堕天使は咄嗟に槍で受け止めるが勢いを殺しきれず片腕とは思えないほどの凄まじい力で吹き飛ばされる。
「(馬鹿な⁉︎これが人間の腕力か⁉︎)」
驚愕しながらも堕天使は光の槍を一誠へと投擲する。並の人間なら一撃で殺せる威力だ。
だが、一誠は
「この程度で私は崩せんよ」
「くっ・・・‼︎」
瞬間、彼女は数日前のことを思い出す。最初はただの人間だと思っていたが、その実感じる覇気は明らかに上級悪魔を軽く超えている。
堕天使は殺気を放ちながら一誠を睨みつけるが、一誠はむしろ優雅さをはらんだ所作で槍を構える。
「どうした?卿の力はその程度か?」
「なめるな人間っ‼︎」
再び堕天使が向かおうとしたその時、少し離れた場所に紅い魔法陣が現れる。それを堕天使が見た瞬間忌々しげな表情を浮かべる。
「グレモリーの紋章・・・」
そう言うと堕天使は舌打ち混じりに飛翔する。その間際、こちらを見下ろし、
「貴方、名前は?」
「兵藤一誠、しがない学生に過ぎん存在だ。卿の名は?」
「私はレイナーレ。いずれ至高へと至る存在よ。待ってなさい、次は殺すから」
そう言うと堕天使ーーレイナーレは空へと飛び立って行った。
それを確認して一誠は
「で、もう話を進めてもいいかしら?」
「ああ、すまぬな」
そうして振り向くと、端整な顔立ちに鮮やかな紅髮が特徴の少女が立っていた。
『リアス・グレモリー』。
表向きは北欧からの留学生となっているが、その正体はソロモン72柱の序列第56位であり、魔王を輩出した名門『グレモリー家』の次期当主。
「初めましてね。兵藤一誠君」
「何故私の名を?卿と顔を合わせるのはこれが初めての筈だが?」
一誠がそう言うとリアス・グレモリーはなんともないと言ったように答える。
「自然と耳に入ってくるものよ?貴方、有名だもの」
「左様か」
だが、雑談をしている暇はない。
「して、卿の目的はなんだ?何の理由も無しにわざわざ来たわけでもあるまい?」
「ええ、と言ってもそこの彼に呼ばれたから来たに過ぎないのだけれどね。まあ、貴方が神器持ちとは思わなかったけど」
そうして視線を向けると、そこには既に息絶えている来栖 龍星がいた。
「彼の件は私に責任があるからこちらで対処するわ」
「彼を眷属にするつもりか?」
「・・・貴方、そこまで知っているのね。まあいいわ」
そこまで言うと、リアス・グレモリーは踵を返す。
「後日、使いの者を向かわせるわ。詳しい話はその時にしましょう」
「構わん。ではな、リアス・グレモリー。また後日、学校で会おう」
そう言って一誠は歩き出す。その後ろ姿を見送り、
「リアス・グレモリー……魔王の妹、か。どれほどの者かと見てみれば、随分と可愛らしい娘ではないか」
一誠は前世の社交界で見た少女らと彼女が重なるように見えた。
「だが、内包する魔力はなかなかだ。将来は期待出来るやもしれん」
そう言って一誠は踵を返す。