二週間、あれといってまともな狩りは無かった。 記憶に新しいのは、コウガが狂ったようにアグナコトル亜種を殺したのは覚えてる。 そして、そんなコウガ本人と今二人きりでいる。
「なんだよ、呼び出しって」
俺が呼んだからだ。皆は何かを狩りに行ってい る。 そして、コウガは例の大剣を俺の前に置いた。
「これん事だろ?なら、俺も知らないな。拾いも んだ」
俺の訊きたい事を理解していて、その大剣の事を 解らないと言い張る。 それって、暗に隠してるんだと主張しているんだ ろう。
「別に入手経路なんてどうでも良いんだ。ただ、 素材を知りたいんだよ……」
頭を掻いてから、本当に面倒臭そうに言った。
「知らねぇな。俺が知りてぇよ」
超面倒臭そうに、大剣を手に取り、そのままアイ テムBOXに入れた。怪しまれないようにするため 入れたのか、でもちょうど無防備になる。 まあコウガが何処かに言ったら、見てみようと心 に決めた直後、コウガが真剣な顔して叫んだ。
「しゃがめカミトッッ!!」
コウガに叫ばれると、癖で言うとおりにしてしま う。何かを考える前に俺がしゃがんだ。 そして、部屋の壁の一部が突然抉れた。しゃがん で正解だった。 コウガは、大剣を取り出し炎を纏いながら家から 飛び出た。それから、「ゴキッ、バキッ」と何か ヤバい音が聞こえた。 俺も慌てて出ようとしたが、身体が全く動かな かった。縛られてるかのように。 だから、俺は何も出来ずに固まっていた。
俺は見たのだ。大剣をしまって、不意にこの家唯 一の窓から外を。そして、目を真っ赤に染めてる 何者かを。そいつは、片手を上段に持ち上げて手 刀をつくっていた。 嫌な予感がし、カミトをしゃがませたのが正解 だった。何者かが手を前に付き出した瞬間、カミ トが立っていた場所の後ろの壁が抉れた。避けな かったら頭が潰れていただろう。 俺は、その何者かの姿をしっかりと確認するため 大剣をまた手に取り外に飛び出した。そして、何 故かそこで夜だという事に気がついた。だって、 さっきまで昼だった筈なのだ。そんな時間が経っ た気もしないし、寝てしまったと考えるべきだろ う。 そして、出た瞬間、待ってたかのように俺の両膝 が変に折れた。立つことなんて出来ずに俺はその 場に倒れた。 そして、顔を上げて周りを見たが、変な事に誰も いなかった。静か過ぎた。その静けさを、誰かが 破った。
「カミトに話すな。コレは警告だ……次少しでも 言ったら死んでもらうぞ」
それは、確かに何回か聞いた事のある声だった。 ラヴィだ。あの男がやったのだ、こんな事を。 俺の背後にいるらしく、見る事ができない。だか ら、確証は無いが。
「あの男に殺されるぞ?少しでも情報を与えた ら。あんたが俺の事を隠していたのも、何となく 察せれてたな。……アンナ、ついてくるなって 言っただろ?」
最後、突然話してる事が変わり、その内容を理解 した時には、女性の姿が視界に入っていた。
「ラヴィばっかに罪を被せたく無いからねぇ。私 も態々来てあげたってのに……要らないの?私は そんなに要ら」
「要らないな」
ラヴィはスパッと言った。冷たく、突き放すよう に。だから、その内に潜む罪悪感とも思える感情 を感じ取る事ができてしまった。 トンッと、女性が地面を蹴った。怒っている様子 ではない。だけど、口はキレてるような言葉を吐 いた。
「要らないって……あのねぇ?私がいなかったら とっくに後頭部やられてバッチリ気絶してカミト がぐたぁとその身体引っ張って夜の渓流のど真ん 中に捨ててると思うんだけど?そこは私に感謝す る所じゃない?」
「すみません……俺が悪うござんした。てか、あ んたの説明だとその男は仲間を見捨てる奴だと思 うんだが?幾らあんたの予測は当たるとしても、 それが無茶苦茶じゃあ信じれねぇな」
女性の方は馬鹿にしてるだけらしいが、ラヴィは マジの方で苛ついてる。 そして、会話にカミトの事が出て来たのに驚いたし、それにカミトが仲間を見捨てるワケが無い。 ラヴィは見捨てる男だと聞いていたらしいが、確 かにこの女は真逆の発言をした。それは変だろ う。
「……ユウちゃんより馬鹿って言ってるのと同じ だよ?それは。あの娘は理解してるから逃げて、 遠ざけてるの。ついでの事言うと、あんなぶっ壊 れてるレナでも理解した。……いや、してるか ら」
「最後のは何言いたいんだ?それに、俺があんな のより馬鹿ってのは、屈辱的だな。あんたより馬 鹿ってのに比べたまだマシだがな?」
地面にヒビがはえた。全く体を動かさず、ラヴィ は地面を割ったのだ。油断ならない相手だ。 そして、俺はそこでユウの名が出て来たのは結構驚いた。レナが、もう帰って来ない的な事を言っ ていた記憶はある。それは、もしかしたらこの女 に騙されたからなのか。
「まあ……まあまあまあ、ラヴィ。そんなに怒ら ないでよ。そんなに怒ったら……コロスヨ?」
「わあったよ。でもな、俺があいつより馬鹿って のは……解かんねぇな」
ラヴィは、さっきまでとは真逆の、完全に冷めた 声を出していた。 何故、言われただけで怒りを引っ込めたか、俺に は全く理解できなかった。そして、理解できない 事は続くものだ。
「ラヴィは純粋だから理解出来ないよ。アンナも 人が悪い。説明してあげれば良いのに」
レナの声が聞こえた。怒っても、冷めてもいな い。ただ、遊んでるような、楽しんでるような声 だった。
「レナ!なんでいるんだよ!」
俺は大声で言った。聞こえるように。聞こえるだ ろうけど、普通の声でも。
「うわぁ、膝大丈夫?どうやったら折れるんだろ う」
しゃがんで顔がしっかりと見えるようにしてくれ た。他の二人よりはしっかりとしているんだろ う。 ただ、あまりにもニコニコ笑っていて逆に恐い。
「アンナもさ、いい加減言ったら?ユウが感じ 取ってる事。……後さ、これが私だから」
ボソリと、最後に俺にしか聞こえない声で囁い た。全然理解できなかったけど、何故か何を言い たいのかが解った。完全な矛盾だ。
「ラヴィ、仕方ないから説明するよ?カミトは ね、自分の事を知らないんだよ。本心全く思って ない事を、本心だと勘違いして、演じてしまう。 だから、言ってることやってること皆虚ろなの。 そして、ほんの少しの歪みに気づけない。だっ て、正しい方向に流されているんだから、本心に 流れてるんだから。そして、歪んで正しくなって しまえば、皆捨てる。盾にして、囮にして、壊し ちゃう。それを悟ったからユウは逃げて来たんだ よ。………親しい人にしか、ぜんっぜん解かんな いでしょうけどね」
最後に自慢げに一つ付け加えた。
「……ンだと?てかそんな事がありえるのか?て か、人格崩壊じゃねえか、それ。……どんくらい の奴が知ってんだ?」
人格崩壊、そんな表現をした。聞いていた俺も、 似たような事を考えた。
「まあ、そこでくたばって驚いてる奴は知らな かったようだけど………まあ、信じるかはどーぞ 君達次第って事で♪それで、話変えて良いか な?」
「どーぞ♪」
「何てめぇが勝手に決めてんだよ!?」
ラヴィの悲鳴に似たツッコミを、女は無視して勝 手に喋り始めた。
「此処来る途中に、ティガとナルガ見たんだよ。 それだけなら良いけどさ、縄張り争いとか、共闘 とかそんな事無くて、狂ったように暴れててね? ……人化する様子は無かったけど、暴れっぷりが 凄まじくて記憶に焼き付いててさ。まあ、私から 見たら雑魚のお遊びだけど」
「イビルジョーの私が言うのもなんだけど、それ はヤバいと思うな。だって……今皆何か狩りに 行ってるんだもん。いやぁ、巻き込まれちゃった らピンチだね……」
確かに、存在するだけでも危険とみなされるイビ ルジョーが言う事では無いと思う。 いい加減立ちたいという事を主張する為に、地面 をガンガン叩いた。 レナは、それを聞いた瞬間、膝を正しい方向にボ キリと折ってくれた。痛かったが、治った。 そして、さっさと立ち上がった。
「うはぁ……痛そう」
俺の目の前で、ポカーンとしながら呟く女。た だ、不思議な事に、右手はレナの頭を撫でてい た。レナもキュゥと目を細めて笑顔になってい る。良いペアかもしれない。
「……んで、それがアマツの暴走に何か関係があ ると、そう言いたいんだろ?」
「正しくは、アルバトリオンのでーす!何時も他 人の事バカバカ言ってるのにこれって、脳味噌 スッカラだと思うなぁ」
「解った。明日から二度と馬鹿とは言わん。その 分その存在も忘れとく」
女は、その言葉を聞いた瞬間、涙目になった。そ れからボソリと呟いた。
「冗談だって……」
「えっ!?なんかマジ泣きしてるぞ?いや、俺の だって冗談だよ!」
何故か凄く動揺しながら説得を始めるラヴィ。
「確かに頭はガンランスが扱えない程馬鹿だけど さ、凄くいてくれて便利だし。なんだかんだ言っ て飯用意してくれるし。夜五月蝿え事は良くある けど、その分俺の事助けてくれるし……マジで要 らないなんて事は無いからな?」
「本当……?」
上目遣いで、ラヴィに訊く女。見た目は可愛いと いうより美しいという感じなのだが、一つ一つの 仕草がその真逆だ。 ラヴィは別に恥ずかしがる事など無く、少し顔を 青くしながら答えた。
「本当だって……嘘吐くわけ無いじゃん」
「そっか……ラヴィって、残虐な所もあるけど、 それ以上に優しいよね……」
一人なんかメロメロしながら心地よさそうに体を クネクネさしている。 そして、右手は空を掴んでいた。
嫌な予感がしたが、もう遅かった。
「少し眠って」
頭に衝撃が走り、気絶した。
「はぁーー」
「うはぁー」
ティガレックスとナルガクルガの同時狩猟。依頼主は村長だ。
それを、俺達猟団は強制的に受注させられて、マイハウスでコウガと仲良くため息をした。なんだかんだ言って一番息が合う奴だ。
「面倒なの受けてきたね」
「リオンもそう思う?私も同感」
餓鬼二人が、何があったかも知らずに愚痴る。相変わらずクエストには四人しか行けない為、俺達四人で逝く事になっている。いや、行くだ。
「大変ねぇ」
綺麗な黄金色の髪に、金レイアの防具一式を装備している女性は、他人事のように呟く。
本来いない筈のこの女がいる理由は、コウガ曰く「こいつも連れてく。その方が楽だからな」との事。
「何か余裕そうだな、ネビュラ。ぜってぇ楽じゃないだろ」
「金銀夫妻相手するよりは全然楽よ。それに、この地方のティガって亜空間力学が働いてないらしいし」
亜空間力学とは、何処ぞの誰かさんが唱えたモンで、見た目当たってなくても衝撃が来たり、見た目以上の威力がある攻撃をしたりだとか、それを纏めたモンである。
ただ、他の地方のティガレックスとか、ガノトトスとかいう奴は、その亜空間力学の象徴と言われる程そういう攻撃があるらしい。
また、金銀夫妻とはリオレイア希少種とリオレウス希少種を指しており、文字通り金銀なのだ。
因みに、今定員オーバーのガーグァ車に乗ってる――渓流なのだが、急ぎらしいので――ので、凄くギュウギュウだ。
「んで、勿論離して狩るよな?同時に相手なんて勘弁だ……」
コウガは、最近弱気な気がする。しかし、同じ意見ではある。
「同時に狩った方が効率良いわ。最悪誤爆狙って逃げてれば良いんだし。それに、村長さんの話聴く限り、同時に出ると思うわ」
ハンターとしても人生としても先輩の女性は、納得がいく説明をした。
しかし、レナが「はいはーい」と手を上げて何か言いたそうにしている。
「……言いなさい」
少々呆れてる様子で促した。
「それって、リスク高いよね?ティガの轟音で硬直してる時にブレードで真っ二つにされるのだってあり得るし。まさか、努力で解決しろなんて言いませんよね?」
コチラも、言われてみればそうだと納得してしまう事を話す。
「それは、二体共視界に入れて上手く立ち回るしかない。出来ないというなら、まあ何時までも弱小ハンターのままだけど」
先輩ハンターも容赦無い事を言う。そして、その矛先がコウガに向いていた。
「まあ、村で頭から血を流してそれでもピンピンしてる貴方は凄いと思うわ」
そして、また巫山戯た事を言う。だけど、レナが妙にニヤついていた事に気がついてしまった。
「頭にお花が咲いたもん」
そんなレナは、コウガの事を馬鹿にしたのか。いや、頭に花と言ったら馬鹿だと言ってるようなものだろう。
咲いた、というのが気になるが。
「………っそ」
アグナコトル亜種の冷凍ビームより冷たい目をしてレナを睨んでいるコウガ。それから指を鳴らしながら訊いた。
「あんたはティガレックスとナルガクルガ。どっちの餌になりたい?」
しかし、レナは逆に巫山戯て返した。
「コウガに食べてもらいたいな」
レナが言った瞬間、コウガの大剣が紅く光った気がした。やはり、意味不明だ。
いや、あの大剣が何か職人に訊いてみたが知らないとの事。そんな武器が存在しないのか、そんな素材が存在しないのか、何方かは解らなかったが。
そして、光に同調したかのようにコウガの眼は更に鋭くなった。
「……ああ、骨一本残さず喰らってやろうか?」
俺からしたら、とてもおぞましい光景だったが、俺以外の皆は何も思ってないそうで……
「着きましたニャー」
ガーグァの騎手のアイルーが言った直後、全員が緊張したと思う。
「……予測通りのタイミング」
「あんたそこまで読めたのかよ」
双眼鏡で、渓流のBCを見ているアンナに、素直に思った事を教える。
「うん。後どのくらいしたらティガレックスと遭遇するかもね」
その言い方だと、ナルガクルガには遭わないそうで。
「そして、ティガが瀕死になった辺りでナルガと遭遇して、その隙にティガに逃げられる。そこから分裂して、レナはこっそり離脱して私の元に来て頭ブン殴ってそれを見たラヴィが気づけなかった事に驚きそれからレナを捕まえる……」
「いや、あんたは俺に言ったんだからそうなるとは限らないぞ?」
「……ちゃんとした推測だよ。まず、ラヴィはあの大剣の事気にしてるじゃん?だから気づけない。それで、私の事助けてくれるのは、私が必要だから。………幸せに生きるのに」
そこはグッと我慢して、ツッコまなかった。ツッコんだら、それこそアンナの思う壷だ。
「へぇ?ツッコまないんだ」
いや、そこまで予測されていたらしい。
「……ティガは只今アプトノスをいただいてます。ナルガはケルビ食ってる」
双眼鏡の向き、つまり目線を変えながら状況を言う。ハッキリ言って、どうでも良い。
「……お、予測と0.2秒違うけど、BCから出たね」
こいつは、ちゃんと予測と推測を使いわけてる。推測の場合は、だいたい何が起こるか程度しか解らないが、予測の場合はコンマ1秒の事も考えてるらしい。
「……まあ、ユクモ村に被害は出るね。この様子だと」
予測を推測に切り替えて、考え始める。
あの面子で村に被害を出すと到底思えない俺は、アンナに何故か訊いた。
答えは、案外単純だった。
――鬼神狂化。
その一言だけだったが、俺は理解した。
そして、俺はひっそりと、推測が外れる事を願っていた。
私は、さっきからずっと感じる視線が気になっていた。だから、皆の意識がティガレックスに向いた瞬間、チラッと視線を感じる方向を見た。
そこには、双眼鏡でずっとこっちを見ている誰か。私が姿を認識した瞬間、その人は親指を立てた。私に向かって。
「ふーん……」
レナが、私を見て興味深そう目線を送ってくる。それと、ティガレックスが叫んだのは同時だった。
「散開っ!」
ネビュラがそう叫ぶ。ティガレックスの咆哮を打ち消すような勢いで。
だけど、レナは私の手を引いて、ティガレックスの後ろに回り込み、「れっつごーっっ!!」と面白そうに叫んだ。
「……」
「な、何その目線」
槍を抜刀しながら、私は非難の目線を送る。
レナも、あたふたしてる様に
「……ハンマーなんだから頭狙えば良いじゃん」
「ティガには振り向きハンマーの方が有効なのだよ」
無い胸を張りながら自慢げに言う。
振り向きハンマーは、モンスターが振り向いた時に殴る事を言うんだろう。
私は、最初から尻尾を狙ってたので、後ろに周るしか無かったのだが。
「なら横で待機すれば?」
「……横見るのと後ろ振り向くの、どっちが時間掛かる?」
どうやら、安全に重い一撃を放ちたいらしい。
「ハイハイ、後ろですねどーぞスタンバってください」
ティガレックスは、そんな事を話してる内にもう何かしたのか振り向こうとしてる。
そして、今がチャンスとばかりにハンマーを構えるレナ。
でも、私には解る。振り向きはフェイントで、回転攻撃をする事を。
だから、念のためもう少し下がった。
「レナッ!避けろっっ!!」
カミトが叫んだ。それと同時にティガレックスの身体が高速回転。
尻尾にしっかりと打たれて飛んできた。私に。
とても速く飛んできたので、少し驚いたがしっかりと受け止める。
ネビュラは、ゴミを見ているような眼をしていた。
「あがっ」
レナは、血を吐いた。
――不自然。
そんな単語がよぎる。
嫌がってはいたけど、無理矢理装備を着させてるし、レナは素早く腕をクロスさせていた。
しっかりと当たったと言えども、自力で騙されたと理解し受け止めた。それに、飛ばされた後岩にぶつかったわけでも無い。
でも、レナは苦しそうに血をゲホゲホ吐いている。
「飲みなさい!」
回復薬グレートを、ポーチから取り出して無理矢理飲ませる。
嫌がる事も無く、ゴクゴクとしっかり飲む。
「ありがと。なんか苦しかったんだよ」
血を吐くのは止まり、元通りになった。
改めてこの薬を凄いと思い、私はピンピンになった彼女を手放す。
「もう受け止めてあげないんだから」
忠告のつもりでそう言った。
「そっか、それじゃあ飛ばされそうになったらリオンの所に飛んでくように調整しなきゃ」
屈託の無い笑顔でそう言う。その笑顔は、一輪の花のように美しかった。
「そんなの嫌だよ。私が耐えきれなくなっちゃう」
「……そっか、なら止めるよ」
暗い笑みを浮かべながら言った。
「狩るの止めて、何処かに行っちゃおうよ」
「………?」
今更ながら、私達は会話している、狩らないで。なのに誰も気がついてない。
もしかして、私が気絶したレナを介護してる……とでも勘違いされてるのか。
「逃げるなんてダメだよ」
私個人として何処かに行ってしまいたいが、コウガが命張って戦っているので、逃げ出すわけにはいかない。
「じゃあ……」
また違う意味で暗い表情をしたレナは、両手を自分の首に当てて……ギュッと、力を込めた。
「だ、ダメっ!」
その手は、思ったより簡単に取れた。
――不自然不自然不自然不自然駄目駄目駄目駄目ダメダメダメダメダメダメダメ。
頭の中で警報のように理性が叫び続ける。
だけど、レナなんだ。別に、レナに対して何も恐がる事は無い。
「……だったら、来てくれる?」
「駄目だって。ダメだよそんなの」
――殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セコロセコロセコロセコロセ。
まるで、もう一人の自分がいるかのように、頭の中で狂ったように叫び続けていた。
レナは、ハンマーなんかとっくに捨てていて、ヨロヨロと暴れてるティガレックスに向かって歩いていく。
レナの華奢な腕をガシッと掴む。虚ろな目で私を見つめる。
「どっちか選んでよ……」
――逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃ゲロ逃ゲロ逃ゲロ逃ゲロ逃ゲロ逃ゲロ逃ゲロ逃ゲロっっ!!
そして、やっと気がついた。理性がじゃない、本能が警告を発しているのだと。
衝動に任せて、私は手を離して逃げようとした。
周りを良く見ないで走り、何かに激突。甘い匂いがする。
「前ちゃんと見てよ」
女性がいた。そしてその女性は、私の腕を優しく掴み、林がある方に引っ張って来た。
私は、全く反抗する事が出来ずに、引っ張られて行った。
林に入ってから、何もしなかった。その女性は私を掴みながら、入って来た方向を見つめていた。
そして、唐突に何か呟き始めた。
「常識という土台が無ければ、積み上げた知識は無に還る。それが、再構成されたなら、常識という知識は自然と変わっていく。例えば、モンスターが人間を襲うだけの存在だということ。一部とはいえども、人に何故なれる。多少特徴は引き継ぐけど、基本的に人間と同じになる。それはまだ、知ってる人が皆秘匿しているから皆知らないけど、それが常識となれば……古い知識は消されて、私達モンスターも元に戻れなくなる。しかし、それはあくまでも一例。常識が潰れて、再構成される。それは、もしかしたら人間が手を振るだけで雷が降り注ぎ、歩みを進めるだけで地を割る。それは少しオーバーかもしれないけど、既にその不思議な力が芽生えて常識を崩れ去らせれる力を持った奴はいる」
私は、その意味不明な話をしっかりと聞いていた。
私が思うには、常識というのは知識。もし、人間が理性の無くモンスターのような者になっても、何かが変わるわけでは無い。例えば、物は上から下に落ちるとか。
そんな事を考えてると、女性は話を再開した。
「別に、そんな派手で無くても良い。ひっそりと、小さな変化でもそれは変化……」
ガサッと音がする。奥の木の影から、確かな足取りでレナが出てくる。
女性は、そのタイミングが解っていたのか、話を少しも止めずに言った。
「そうだよね?ティガレックスのお嬢さん」
苦戦していた。レナとリオンは気がついたらいなくなってるし、カミトは鬼人狂化で暴れていたがスタミナ切れで気絶。ネビュラはそんなカミトにグイグイ秘薬を飲ませている。カミトが全然起きない為、側を離れる事ができなさそうだし。
ティガレックスが突進してくる。頭や爪が紅く染まっているティガレックスは、とてつもない速さとなっている。
ティガレックスは、怒ると血行が良くなり、頭や爪の辺りが紅くなるのだ。その分柔らかくなるが。
ティガレックスは、俺に当たる事なく岩に当たるが、その岩を砕いて直ぐに振り向き爪を持ち上げる。
――岩飛ばしだ。
岩飛ばしは、地面を抉り、それで出来た岩を飛ばす攻撃。
そんな思い込みがあったから気が付かなかった。ティガレックスがゆっくりと息を吸っている事に。
飛んで来る岩を避けて、ティガレックスに接近。その時にやっと気がついた。
そのまま駆け抜ける事なんてできないし、戻るにも止まるだけが限界だろう。
流石に死にはしないだろうが、それってネビュラ以外皆倒されてしまうのだ。ティガレックス一体に。
この上無い屈辱を感じていて、思った。既視感がある、この状況。
ジエンを狩る時も、俺一人になり殺られそうになって……あの時は、ラヴィが助けてくれたがもう無いだろう。ネビュラもこんな状況で助けてはくれないと思う。
全身が引き千切られるような痛みが来るのを待ち構えていると、聞こえた。声が。
「しゃらくせぇんだよぉぉぉおおおお!!」
空から黒い剣が二つ降って来て、ティガレックスの爪の直ぐ手前をしっかりと捉えて刺さった。
橙色の明るい髪が見えた。両手にまた黒い双剣を持っていた。
「てめぇ油断し過ぎだ。これで貸し二つ」
ラヴィだった。ニヤニヤと笑いながら俺を見ていた。
何処から来たかというより、何故いるのかが解らなかった。
ラヴィは、右左一回づつ空に回し蹴りをした。それと同時にティガレックスに刺さっている剣が抜けて、飛んでった。
それから、俺に向かって双剣を投げて来た。俺は躱す事なく大剣をラヴィに投げた。
俺はしっかりと双剣をキャッチして、ラヴィも大剣をキャッチした。
ティガレックスは懲りず、息を吸い込む。
「隙だらけなんだよっ!」
ラヴィが駆けた。大剣を首に向かって投げた。
ティガレックスはそれを察知し、咆哮をやめた。
しかし、それはフェイントで、それより速く跳んだラヴィは大剣をキャッチし、背中に投げた。
だが、それは表面上で俺に向かって突進し始めたティガレックスの尻尾にしっかりと刺さる。
……最初からこれを狙ってたんだと思う。
しかし、大剣は尻尾をしっかりと切断してくれたので、ティガレックス自体は止まらない。
俺は、双剣を逆手持ちにして、身体を低くして駆けた。
そして、タイミングを合わせてバック転しながら跳んだ。双剣は、スレスレでティガレックスの顎には当たらなかったが、勿論わざとである。その顎を両足で蹴り、地面に着く。
ティガレックスは一瞬だけ止まったが、ほんの一瞬だけだ。
俺は、仰向けになり腹に向かって二本共刺して、直ぐに抜いた。
流石にティガレックスは止まり、その隙にティガレックスの下から脱出。
「あんた、双剣の方が似合ってるぜ?格好いいんだよ、そっちの方が」
「ラヴィの荒業には敵わないし、それに大剣の方が好きなんだよ」
ラヴィは、大剣を上段に構えていた。そのまま突っ走り、身体を縦に一回転させてからちょうど尻尾と身体の境目当たりに当てて、斬り落とした。
俺も、双剣を元の持ち方に戻して右手、というより右翼を狙い飛び込むように突きを放つ。
しかし、俺の腕はラヴィに掴まれた。
「どうしたんだよ!?」
「っらぁあ!!」
俺は、ラヴィにぶん投げられた。答えもせずに。
ラヴィ本人も、俺を追いかけるように跳んできた。ティガレックス不器用に飛んで行ってしまった。そして、入れ替わるように黒い影が降り立った。
見た目は、全体的にティガレックスよりほっそりしていて、頭が小さめで猫っぽい。翼は先がブレードになっている。
ナルガクルガだ。ティガレックスより素早い動きで翻弄するモンスター。
「コンビ組んでるんじゃねぇの!?」
あの入れ替わりを見て、未だ天地をひっくり返したまま飛んでいる俺は叫んだ。しかも、ナルガクルガがだんだん小さくなっていってる。
「アンナの奴がわけねぇって言ったんだ!そりゃあり得ねぇ!」
「アンナって……あの女か」
あの少し馬鹿っぽい態度と、自分の意見を貫き相手を論破する真逆の態度をする女の姿を想像した。少し前に会ったばかりの。
「うわあっ!?」
そして、今弾丸モドキになっている俺に追いつく速さで跳んできたナルガクルガに驚き悲鳴とも取れる叫びをあげてしまった。
「……どういう事」
レナは、ニコニコと笑って女性を見ている。
「ああ似てない。超似てない。レナだったらそこは無邪気そうに見せてでもほんの少しだけニヤけて黒い笑みしないと!」
何故か妙に細かい要求をレナにしてから言った。
「私は可愛い女の子を見る目だけなら自信あるからね」
サッと私は女性から離れた。色々と危ない気がしたから。
「……あたしはイビルジョーだし、レナ本人だよ」
「はい乙ぅ。レナの一人称は基本的に私だし。しかもレナ本人だなんてそんな言い方こそ別人ですって主張してるようなもんだし。それに、確かにあたしと言うことあるけど、そういう時って自分の可愛らしさを主張しながら相手をおちょくってる時限定だからそんな寂しい言い方しないっ!それに、どこも萌えないっ!返せっ!あの可愛いくてでもちょっと黒くて何考えてるか解らないようなミステリアスなレナちゃん返せ……っ!?」
さっきまでとは全然態度が違う女性の後頭部をチョップで殴った。
それを見ていたレナは、ポツリと「駄目か……」と呟く。
「はぁ……あんたがこの子をちゃんと観察してたのは理解した。でも、だからってなんであっちで暴れてるティガレックスだと推測できたの?」
女性は、私の頭に手をポンポンとしてから撫でて、それから「一歩間違えてたらリオンちゃん死んでたから」と言った。それは警告通りだったかもしれない。
それからニヤリと笑い、彼女に向かって言った。
「あのね、常識ってその人の知識と想像力を縛るだけのモノ。それを利用してギルドは様々な事を隠蔽している。まあ、バレると不味い事じゃなくてハンターが知っても得が無い事を、だけどね。まあ、そんな常識に縛られてたら、貴女が二人いるなんて誰が想像できるかしら?」
「……常識が無い。それは、秩序が無いのと同じじゃない?」
目を少しだけ細めながら、彼女は訊いた。それは、本当にレナそっくり、というか本人では無いかと思える程だった。
「無いよ。モンスターに秩序なんて。……それに、彼処で暴れてる本当の貴女に向かって言える?さて、じゃあ貴女の
後半からテンションが急上昇しているこの女性は、途方も無く変な事を言っていた。しかも、早口。
それからも、まだ話はあるようで続けた。
「名前ある?無いよね?複製だもん。ああでも本体消えると複製皆死んじゃうんだよね?ああそっか、じゃあ酒飲んでみる?きっと最初で最後の酒よ。ああ大丈夫、美味しいよ」
何処から取り出したか解らない小さな樽にある穴を、ティガレックスの娘――女性の言ってる事が全く解らないので――の口に当てながら言った。
多分、樽の中には酒が入っているんだろう。樽は小樽爆弾に使用する物だろう。それでも爆弾サイズだからそれなりのサイズだ。
樽を離した時には、顔を真っ赤にしてフラフラしていた。酔ってる。完全に酔ってる。
「うっぷ……」
口元を抑えながら、その場に座り込む。
「うはぁ……可愛いっ!」
本人もゴクゴクと酒を飲みながら言った。
――この人、変態かつどSだ。
他人が気持悪くて吐いてる――吐いちゃった――姿を見て興奮するのは、Sである証拠だ。
それから、獲物を見る目をして私を見て、超高速で私の前まで来て、口の中に苦い物が流れた。
楽しみながらこれを飲む人の頭が理解できない程不味い。
「子供だねぇ。酒が飲めないなんて」
私の表情を見てから言った。
「多分猟団の皆呑めるって。なのに一人だけ飲めないなんてキャワイイよ。きっとこのまま放置したら私も飲めるとか言い出して飲み過ぎてヴェェってなるだけだよね?」
女性は、言い終わった瞬間真剣な眼差しに変わった。そして、ティガレックスが暴れてる筈の方向を見て一番の早口で言った。
「ナルガ速度上昇幻影切れ味増加。夜までの長期戦か瞬殺の短期戦。何方にしても首を折られて死ぬ。ラヴィはコウガを庇って軽傷。サクラさんはティガを追って離脱。ラヴィは脱出できずにコウガに捕まる。そのままユクモ村に連行されて……うんやめよう。現実逃避、現実逃避」
ふぅ、と息を吐いてから、すぅ、と息を吸い、それから叫んだ。
「ティガレックスは私が抹殺する!」
ナルガクルガのブレードが迫る。しかし、身体は完全に不自由だから、避ける事はできなかった。だから、双剣で受け流した。ブレードの動きに合わせて、威力を吸収するように受け止めて、弾き返した。
「凄いな。俺にはそんなの無理だっ!!」
ナルガクルガは、追いかけるように迫るラヴィに対応すべく、大きく跳んでバックステップ。そして、ナルガクルガの尻尾に棘が生える。そしてコウガが落下するタイミングに合わせて横回転する。
ラヴィも、俺の真似をしようとするが、上手く受け止めれず弾いてしまい、ラヴィは飛ばされる。
そして、俺の手が地面に着いた。だから軽く跳んで立ち上がった。
「やっぱ無理か」
ラヴィは冷静に呟き着地。
そして、奇妙な事が起きた。
「ウゼェんだよっっ!!」
ラヴィは大剣を下段に構え、そこから横に一回転しながら斬り払う。空気を。
それだけなのに、ナルガクルガの左翼が千切れた。
そして、俺はその隙に大きく跳躍して、落ちながら首目掛けて一閃。
ナルガクルガの頭は首と別れて宙を舞い、首からは血が溢れ出し、俺を紅く染める。
意思を失った身体は、その場にグッタリと倒れた。紅く濁った水がその身体をも少しだけ紅くする。
「……戸惑わないんだな」
「ハンターってそういう役職だ」
ジト目で俺を見ているラヴィに苦笑いしながらそう教える。
というか、遠慮無い所はラヴィもそうだと思う。
規則正しい音がなる。それは、物と物をぶつけ合う音である。そしてその物は、手だ。
「中々の腕前ね」
日の光を弾き輝く髪を揺らしながら、ネビュラは言った。それは、馬鹿にしてるような棘のある言葉では無かった。
「……あんたの剣技、見せろよ。アンナから聴いたぜ?鬼神狂化したカミトより強いんだとよ。ま、嫌なら良いけど」
「ならしないわ」
まるで知り合いのように話が進んでいるが、完全な赤の他人の筈だ。
その証拠に、ラヴィは右手を納刀した大剣から手を離さない。
「……じゃあ、俺は帰るな」
そして、帰るという名目で、俺は林の方の探索に向かった。
「うっ……」
樽の中の酒を全て飲まされた少女は、素直に吐いていた。
「アハハハ……」
一応、これでも古龍の私はとりあえず笑っていた。
とても凄まじいモノだった。双剣を取り出して――その双剣は刃と逆向きの針だらけだった――を尻尾と胴体ごと地面に一本づつ刺して、地面に固定。その際に「ルアーを見て考えた戦法なんだっ!」とニコニコ笑いながら言っていた。
それから、服の下に隠していたガンランスを口の中に刺した。今此処。
「チェックメイトだっ!!」
女性はいきいきとしながら叫び、竜撃砲を発動した。
ガンランスの先が青白い光に包まれて、大樽爆弾にも勝りそうな爆発を起こした。当然頭は吹っ飛んだ。
「うぶっ……」
少女は色々な物を吐きながら、糸が切れた操り人形のように倒れた。
「まだショーは終わってないんだからね♪」
そして、女性は更にいきいきとしながらガンランスをティガレックスの死体に刺した。
まだ死んだばかりだからか、ガンランスを抜くとそこから血がドロドロと流れた。
「こういうトキって……イッツショウタイムってイウんだよネ?」
そして、どうでも良い事を呟きながらまた死体に刺した。抜いて、刺して、抜いて、刺して、抜いて、刺して、抜いて、刺して、抜いて、サシテ、ヌイテ、サシテ、ヌイテ、サシテ、ヌイテ、サシテ、ヌイテ、サシテ、抜く。
まるで作業でもしてるかのように淡々と繰り返した。
それをする度、ティガレックスの死体はグチャグチャになっていき、それをする度、女性を真っ紅に染めていく。
そして、ティガレックスの死体からただの肉片に成り下がった辺りで、手を止めた。
「……退いて?」
それから、転がっていた二つの眼球を握り潰した。
そして、スタスタと私の所に歩いてくる。
――逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃ゲロ逃ゲロ逃ゲロ逃ゲロ逃ゲロ逃ゲロニゲロニゲロニゲロニゲロッ!!!!
もう、警告では無く命令と化していた。この少女を前にした時とは格が違う恐怖を感じた。
「……私はそこでブッタオレテル娘に用があるんだ♪」
私は、気絶したのか死んだのか解らない少女の前に立った。
もし死んだなら、レナが目覚める筈で、生きていても使い物にはならなそうだけど、何故か守ろうとしていた。
「退け」
女性が、真顔になってそう言った。
勿論、私は退くもんかと考えた。しかし、その思考を裏切るように、身体が勝手に動いて退いてしまった。
「ありがと♪」
女性は、私に笑顔で言いながら右手で少女の首を掴んだ。
少女を物のように持って、肉片の山まで運んだ。そして、少女を肉片の山に適当に埋めた。
それからしゃがみ、少女の耳元で何かを囁いた。
すると、死んだか気絶したか解らない少女は、肉片をゆっくりと食らい始めた。
「……まだ時間掛かるかなっ!?」
女性は、呟きながら驚いて固まった。私もそうだ。
飛竜が襲来したかのような風が吹き荒れた。そして、その直後にコウガが黒い剣を女性の首に後ろから突きつけていた。
「やはりいたか。アンナ……だったか」
殺気の篭った声が、コウガから出た。
それは、とても殺意が湧いているのが解るような声だったけど、女性は気にせず言った。
「そんなに速く剣を動かせるなら、大剣やめて双剣使えば?」
空気を読んでいない、お気楽な発言だったが、コウガも対抗するように、剣を引っ込めてから苦笑いで言った。
「いや、俺は大剣が好きなんだ。あんたには解らないだろうがな?」
それは、ちょっとした挑発だった。
「私はちょっと解りませんね。まあでも、一撃必殺って男の子の夢なのかね?双剣はチクチクやるだけだしね♪」
そして、女性は挑発だと全く理解してないようである。
「まあそれもそうだな。ラヴィみたいに使えりゃ良いんだけどな……」
頭を掻きながら、苦笑いを継続して言う。
そして、女性はニコニコ笑いながら、何故か少し顔を赤くして言った。
「可愛いコウガ君がそんな事しちゃ……ダ・メ♪」
それから……コウガに倒れ込み、コウガ本人もしっかりと受け止める。
――コウガが盗られちゃうぅっ!!
それ以上何かはさせまいと、コウガに突撃しようとした。しかし、某バリスタをやられた時みたいに、身体がいうことを聞かない。
「………なんだよ」
「もうちょっと……こうしてたいな♪」
コウガはハァと溜息を吐きながらも、女性の頭を撫で始めた。
これこそ阻止しなければならなかった気がするが、やはり身体が動かない。
「……今私気分良いからなんでも答えちゃうな」
コウガは一体何を訊くかとドキドキしていたけれど、案外つまらない事だった。
「アマツマガツチって何だよ……」
女性も、耳を疑ったように、目をパチクリさせながら訊いた。
「それだけで良いの……?」
「とりあえずな」
「大好きっ!やっぱコウガ君は優しいな」
とても幸せそうな表情になる女性。そして、妙に手つきが更に良くなるコウガ。
――どういう関係だったの?
素直に訊きたかった。
しかし、口も開かなかったけど。
「じゃあ説明するよ?アマツマガツチは嵐龍と呼ばれていて、その場にいるだけで暴風雨を引き起こすの。更に、風を使った攻撃や水のブレスで十字を描いたりする攻撃もあるね。勿論、飛んでるよ。あ、後言ってなかったけど古龍ね。それに、ジンオウガは元々この辺りにいなかったけど、アマツマガツチから逃げて来ちゃってるわけ。まあ、纏めると生きてる嵐って所だね♪」
コウガの胸に頬を強く当てながら説明していた。そらそろ黒い感情が漏れ始めてる所か。
「偉い偉い……まあ説明サンキュ」
「はう……気持ちぃ」
頬を限界まで赤くして、気絶したようにグッタリとその場に座り込み、寝てしまった。
コウガは、女性をその場に寝かせて、私の方に歩いて来て言った。
「まあ色々と忙しかったが……帰るぞ」
ガタンと、椅子を盛大に倒しながらユウが立ち上がった。
「どんな感触だったんですか!?」
私が、コウガにナデナデされて気持ちよくて寝てしまった……と、ラヴィに何故寝てたか訊かれたので答えたら全く違う御方が反応した。
「ちょっと……説明できないや」
ユウは、頬をプクーと可愛らしく膨らますと、そのまま私の寝室に向かってしまった。
最近、ユウは活発になっているかもしれない。会ったばかりの頃なら、モジモジして何もできなかった筈だ。
「どうするんだろう……」
私個人としてはいてくれた方が良いんだけど、私は昨日言われてしまった。「そろそろ、私カミトさんに想いを伝えようと思ってます」って。
ただ、そろそろという曖昧な時間表記なので、何時出ていくかが気になっていた。
「何考えてたのか知らねえけどさ?一つ言って良いか?」
私は、彼女をアマツ狩りに行かせようか悩んで、返事もしなかった。
その沈黙を肯定と受け取ったのか、話し始めた。
「あいつらがアルバまで殺ったらどうする?利用価値はまだまだあると思うんだが」
私は、その質問から間違っている事を一つ訂正した。
「どう頑張ったって、コウガは殺らせないよ」
ラヴィは、何故かと目で訴えていたけれど、先に質問に返答した。
「まあ終焉に嵐に三界やったら、次はモガの村に行かせようと思うんだ。というか、ラヴィ誘導よろしく」
ラヴィは、それを聞いただけで、無言で立ち上がって………寝室に向かった。
それから私は、これからの事をただひたすらに考えていた。
ティガとナルガ……瞬殺されてもらいました。
亜空間力学……この世界では、実装されております。
アンナ……今回は出番多くしたよ。多分ラヴィより!
終焉……え?当然殺らせますよ。知らない人ように補足すると、村最終で、『終焉を喰らう者』というクエスト。闘技場で、イビルからのティガ&ナルガ。
三界……アカムやウカムも行かせますよ?た補足すると、アカムウカムアルバの三体の事を三界って言ったりする。
カミト……本当に主人公かって?誰も主人公なんてうわなにをするやめr
モガの村……もう少し先なので。
後書きの項目と内容が減ってるって?そりゃ無いんだもん。
次回もよろしく。