全ての発端は、あの馬鹿な人間の不用意な発言 だ。
「ふーん……そいつがアマツマガツチだったりす る?」
他の人間共も、普通に群がっているような場所 で、クエスト帰り――僕は帰りじゃないけど――のカミト達の前で堂々と言ったのだ。 その直後、 無駄に眩しい服――防具には見えない ――を着 た女性が、僕と馬鹿な奴を引っ張って、 その女性 の家に連行された。 皆の姿が視界から外れた直 後、カミト以外の奴が退散していったのを、気配 で感じたのはまた別の事。 それから一時間程、 僕は何も喋らなかった。た だゴンゴンと鳴り響く扉をジッと見ていた。 ……つまり、僕が今こんなに退屈なのは、あのと いうかそこにいる男の所為なのである。
「サクラ……あいつが凄いキツイ目で見てくるん だが」
「自業自得よ」
髪眼服全部金ピカの人、サクラと呼ばれた女性 は、少々苦笑いしながら僕を見る。 ……あの男を 見た時の目は、ゴミを見る時の目だったんだけど ね。 しかし、本当に退屈だから、話の解りそう な御方と
「そっちの君!……そこにあるゴミの事どう思 う?」
サクラを指差しながら訊いた。まずは、相手の意 思を確認する所から始まるのだ。 サクラはもみ あげをクルクルと指に巻きながら、 満開の桜の ような美しい笑顔を浮かべて言った。
「いるだけで嵐を起こしてくれるような奴と話す とはね……」
「ちょっ!?それ不可抗りょ」
掌を僕に向けて来た。ちょっと待てと言いたいと 理解して、『く』を言い切る前に止めた。 それ から、相変わらず綺麗な笑みを浮かべたま ま、 トゲだらけの発言をした。
「でも、そんな事よりもタクトが存在することの 方がイヤ……かな?」
その
「タクト……ごめん、言い過ぎたね」
完全に表情は、雑魚を憐れむようなモノだったけ ど、声だけ聞くと本気で心配してるかのように思 える。 まあ、タクトはピクリとも反応しなかっ たけど。
「……それで、なんて呼べば良いのかしら?お嬢 様」
「そーだね……じゃあヴェンかな?まあ何でも良 いよ」
お嬢様と言われたのが、ちょっとムッとしたけ ど、そこは何とか堪えたつもりだ。 そして、そ ろそろ扉が限界を迎えたらしく、開いてしまった のだ。 扉の向こうには、村の入り口にいたよう な気がしないでもないような男だった。まあ、人 間の顔なんぞ一々覚えるモノじゃないので、わか らなくても仕方が無い。
「ギルドにお呼ばれだぞ」
結局、僕と何故かサクラも集会場兼温泉へ向かう ハメになった。
そこには、もう既に幾人かいた。その内四人は見 知った顔だ。それ以外のも、同じ猟団らしく拘束 されながらも何か話していたりする。 しかし、 拘束が甘い。手首を後ろで締めてる程度 では、 竜化すればあっという間に逃げれてしま う。こ の建物も消えるだろうけど。 もしかしたら気休 め程度の事かもしれない拘束 を、僕もされる。 ギュウと縛られて、結構イタ イ。
――アザが出来たらどうするんだっ!
僕の心からの叫びは、プライドが喉の辺りで抑え てくれた。そんな事叫んだら、ちょっと恥ずかし い気もする。 そんな事を当然知らないであろ う、此処のギルド に派遣されてるらしい、青髪 のちょっと女顔の竜 人族の青年が、訊いてき た。
「君達がモンスターなのは本当かい?勿論、そこ の二人は違うだろうけど」
「……君も竜人族でしょ?なら人間じゃないじゃ ん」
何故か殺気を後ろから感じた。青年は特に表情に 変化は無かった。 竜人族は、耳が尖ってるので、 見分けはそれでつ く。此処の村長も竜人族だ。 とりあえず、挑発は駄目だった。他に脱出策があ るのかと考えていたら、皆ベラベラと白状し始め た。
「私アオアシラ」
「俺はレウス。こいつはレイアだ」
「あっ!言わしてくれても……そこのチビジエン ね!」
「そこで私っ!?だったらそこの無表情なのジン オウガ!」
「………眠い」
「私はイビルだからね♪」
お一人だけ、全然関係ない事を呟いてた気がす る。というか、皆巫山戯過ぎだと思う。 この場 にいる全員の視線が、僕に集まる。とても 嫌な 空気だ。
「そこのイビルとか気をつけた方がいいんじゃな いの?」
話題を逸らそうと言ってみたものの、約一名から の視線に殺気が含まれただけだった。 僕は、も う面倒臭くなったので、言った。
「アマツマガツチですけど何か?……劣等種がそ んなに見ないでよ。僕が汚れる」
素直に思っていたコトをついでに吐いた。 そし て、言い終わったと同時に、誰かの手が頭に 置 かれる。その手の持ち主が、「劣等種は訂正し てくれないかな?」と優しい声で言って、ゆっく りと撫で始めた。
――超気持ちいいんだけど。
結局、僕はとても眠くなってしまい、犯人のサク ラに寄りかかってしまった。 こんな恥ずかしい 姿を見せてしまった挙句、自ら 劣等種と言った 人間に甘えてしまったのだ。 それから、サクラ が訊いてきた。
「人間って、劣等種かな?」
「ごめんにゃさい……」
しかも噛んだ。更に、誰かの嘲笑が聞こえた。
――ええい、笑え笑えっ!勝手に笑ってろっっ!
完全に、ナゲヤリになっていた。
「……そうだとします。ならば、どうしてそうな れるのですか?」
青年が、もっともな疑問を口にしていた。 一応、 眠気が覚めないながらも名誉挽回の為に、 その 事について話した。寄りかかりながらだけ ど。
「僕が知ってる限りなら、大体十年前頃から突然 起きた現象で、しかもなれないのはなれない。大 体、同種族の中で強力な個体や、元々強力な種族 のみなれる。因みに理由は知らない。皆もそうで しょ?」
なんとか噛まずに言い切ると、皆からはいの返事 が帰ってきた。 多分、この現象の理由を知ってる のは祖龍辺りし かいないだろう。
「証拠、見せれますよね?」
青年が、なんの証拠かも言わずに訊いてきた。 多分、僕達がモンスターだという証拠の事だろ う。
「だったら、そこのアシラ連れて行きなよ。外で やらないとアシラといえども危ないからね」
それはゴミでも理解できたらしく、幾人かで連行 していった。ガヤ共もそちらに向かっていった。 そして、僕達と青年以外が誰もいなくなった。 すると、青年がさっきまでとは打って変わって突 然言ってきたのだ。
「あの……できたらアカムトルムとウカムウルバ スを狩ってくれませんか?いや、貴方達がモンス ターだろうとじゃなかろうと私にはどうでも良い んです」
すると、唯一手が空いてるカミトは、その青年の胸ぐらをつかんで大声で言った。
「んじゃなんだよ!さっきまでのは」
青年は、困った顔をしながらも言い訳を始めた。
「これでもギルドマスター代理ですよ?だから仕事はしないといけないんです!つまり仕事でやっ てただけなんです!」
カミトは、一応納得したのか、手を離した。 そして、さっきいた場所に戻るとほぼ同時に、 帰ってきた。速すぎるのでは無いかと思ってしまう程。
「こ、こいつ本当にアオアシラになりました よっっ!?!?」
皆、凄くざわついていた。まあ、何も解らない トーシロが見ても、混乱するだけか。 しかし、青年は至って平然としながら言った。
「なら、他の村にこの事がバレないように隠蔽し ましょう」
内容はトチ狂ってるけど。 ガヤの一人が、ギリ ギリ冷静を保っていたのか反 対した。
「こんな事、知らないヤツがたくさんいたら大変 な事になるだろっ!?」
しかし、青年はやはり冷静だ。
「こんな事が、世界中に知れ渡ったら、それこそ パニックを起こすでしょう」
それは、一理あったので誰も反論できなかった。 それから僕達は拘束を解いてもらった。手首にア ザが出来てないのを確認して……僕は、サクラに 寄りかかりながら寝てしまった。
俺は、本気でタクトに教えた事を後悔した。じゃ なきゃ、こんな面倒な事にはならなかったのだ。
「役割分担は明日なっ!今日はもう寝る」
会議室かと間違えてるのかもしれない皆にそう 言って、俺は即座に寝た。そして、次の日は安眠 できない事を知らなかったから、気持ちよく寝れ た事にこの時は感謝するべきだった。
次の日、ヴェン込みで、アカムウカムのチーム確 認をした。 アカムが、コウガとセイカとルーン とヴェン。ウカムが、俺とユウとリオンとレナに なった。 何方も凶暴そのもので、俺が決めても さして変わらないので、チーム分けは殆ど自主に なった。 そして、朝結構早い時間に例の青年に 起こされ て、皆渋々といった感じで支度をした。 ヴェンだ け生き生きとしていたが。 そして、ギ ルドの
一つ言うならば、暑すぎる。この溶岩峡谷、名前 の通りに溶岩が滅茶苦茶流れてるような、火山地 帯の奥地なのだ。
「なんであんたこっち来たんだよ」
「こんなに暑いと思って無かったんだよ」
レウス君……あ、違う違う。コウガ君の質問に答 えながら、しっかりとクーラードリンクを飲む。 それだけで、結構暑さが和らぐから凄い。
「そんじゃー行きますか!」
レイアのセイカ君が、元気に声をあげた瞬間、僕 含めBCから出発した。
そこに、黒い飛竜(?)――アカムやウカムは、飛 べないのに飛竜種に分類されてるらしい――が鎮 座していた。一言で表せば、巨体だ。 ……でも、 そんなのどうでも良いから、少しだけ 浮かんで アカムに近付いた。 アカムは、その巨体で突進 を始めた。まあ、遅い けど。 今回持ち出したス ラッシュアックスを剣モードにしながら抜刀す る。そして、構える。 誰も近付いて来ない辺り、 解っているのだろう。 とりあえずは一人の方が 良いことに。
「……トロいんだよっっ!!!」
感想を素直に表現しながら、目の前まで来たアカ ムから横に避けながら一閃。 しかし、そんな事 は気にしないようで、立ち止まってから地面に潜 り出した。 潜り切るのが一番遅い尻尾は、入り きる前にコウ ガに少しだけ斬られていた。 地面 からマグマが噴き出す。あれだけの質量が潜った ら、噴き出しても仕方無いかと。 そして、結構 離れた所で出て来た。私は風を使っ て――浮く のにも当然使ってるけど――スピードを出して近 づく。 ルーン君とセイカ君は、既にアカムの後 ろ側に回り込んでいた。予想していたのか。 ア カムは、まさかの上体を上げた。何をしたいの かと思っていると、息を吸い始めた。 後ろの二 人は、離れようとしない。あれは明らかにバイン ドボイスで、しかもアカムはティガよりも強く叫 ぶ。だから密着なんてしていたら、ただじゃ済ま ない。 そして、アカムは当然、咆哮した。
「バカだよ……君達」
そして、その直前に、僕は二人を抱えて空に上 がっていた。
「ありがとうっ」
「………」
ルーンは無愛想だ。何も言わないし、無表情だ し。セイカは逆にお転婆なのか。ちょっと五月蝿 い。 さっさと地上に降りた。そして、荷物をそこに置 いて、納刀しておいた剣斧を抜刀する。斧モード にして、接近する。 アカムはというと、コウガに対して飛びかかって いる。勿論、コウガは素早く範囲から逃げるけ ど。 アカム程の巨体が飛んだだけあつて、地面が激し く揺れた。私には関係ないけど。 更に、アカムは飛びかかりした際に、着地を上手 くできなかったのか、何故か動かない。 ……どうでも良いから、脳天目掛けて斧を振り下 ろしたんだけど。
極圏。そこは兎に角寒い。アカムが火なら、ウカ ムは氷のモンスターだ。まあ、大型飛竜という事 には変わり無いけど。
「レナぁ……」
私が、ユウに酒を飲ませてしまった結果、私に べったりなのだ。いい加減醒めて欲しい。
「寒いよぉ……」
「暑いよりはマシでしょ」
全身をわざとらしくガタガタ震えさしているユウ を見る度、自分の愚かな行動に後悔する。 カミトは苦笑いしながら固まってるし、リオンは 興味が全く無いようでベッドで転がっている。
「ユウ、早く行こ?」
「こーわーいー……」
超、棒読みだった。 そろそろ苛立ちが限界になって来たので、鳩尾に 膝蹴りを一発お見舞いした。 すると、綺麗に気絶した。
「……こっちが恐いから」
呆れ半分苛立ち半分といった所で、カミトが呟い た。 ……そして、それは初めて聴いた
そこには、顎が尖くて大きくて……しゃくれて る、大型の白い竜がいた。ついでに、背中が山み たいになってる。 それは、私達を見つけた瞬間、いきなり白いレー ザーもどきを払いながら撃ってきた。 私は、スライディングして下に避けて、それから 更に駆けた。 ウカムは、突如地面に潜り出した。顎を器用に 使って。 それを止めるべく、顔面に一発ハンマーを殴りつ けたのだが、止まること無く潜ってしまった。
「うわわっ!?」
ユウの声が聞こえる。何事かと、ユウを探した 所……ウカムが山のような背中を出しながら突進 ――泳いでいるのか?まあ潜行突進が妥当か――していた。しかも地味に追いかけていた。 そして、カミトがウカムを後ろから追いかけてい る。 何をする気かと観察していると、投げナイフを扱 うように、剣を一本だけウカムに向けて投げた。 当たった直後、ウカムは地面から全身を出した。 また顎を使って。 カミトは、ちゃんと刺さっている剣を抜く為に近 づいていった。それに合わせるようにウカムは上 体を持ち上げて、立った。 カミトは、背中に刺さってる剣を抜く為に後ろに 回ったから見えなかったんだろう。ウカムは、息 を吸っている。 しかし、空気とともに何かが吸い込まれていっ た。そして、頭の後ろから紅いモノが飛び散っ た。 更に、リオンがウカムを登ったのか、そこをラン スでプスリといった。
――凄い鬼畜がいる。
少々呆れてしまった。
アカムは、何というのか……異様に弱かった。 黒い髪を揺らしながらも、当然気絶している少 女。 僕は、見た時に決めた。息の根を止めると。 コウガが、歩いて近づいてくる。そして、そのコウガの死角となるように調節して、首に斧を当て る。 それで、目が覚めてしまった。
――逃げられるっ!
慌てて力を込めようとした時、聞いてしまった。
「………ありがとう」
僕は逆に恐くなり、一気に首を落とした。 鮮血が、花のように、開くように飛び散った。少 女の頭が、コロンと転がる。
――コロスって、こんな事だったっけ?
殺して、僕の心には何も残らなかった。ただ、恐怖が付き纏うだけ。
「てめぇっ!何してんだよ!?」
何か聞こえる。
「酷い。古龍だからといって、別に私は特別扱いしないよ?」
何か聞こえる。
「少し、見損なったな。もっと良い奴だと思ったのにな……」
何でアリガトウって言った?アリガトウって何 だっけ?アリガトウって、どんな時に使う言葉 だっけ?
「ヴアアアアア アァァァァァァッッッッ!!!!」
それが、自分の発した言葉だとも気づけなかっ た。
妙だった。超大型モンスターに分類された奴は、 古龍や希少種の次に強い……筈だ。でも、あっさ りと倒してしまった。 ……いや、殺ってしまったと云うべきか。 白い髪をして、そこに倒れている少女は、誰がど う見ても寝てるだけにしか見えないが、脈が無 かった。要は、死んでいる。 私は、特に何とも思わなかった。自らが生きる為 に常に喰らっているようなモンスターの私は、死 ぬという事に対して特に感じる事は無かった。 カミトも、やはりハンターの性なのか、命を狩る 事を仕事しているからか、特に何かを思っている 様子は見られない。 しかし、他の二人は全然違った。
「ごめんないっ。ごめんないっ。ごめんないっ」
ユウは、何故かヒタスラ謝り続けている。
「……」
リオンの目は、焦点が合っていなかった。 後悔でもしているのか。
「リオン、どうしたの?」
とりあえず良く解らないから、訊いてみた。
「何か感じない?強大な力」
良く見ると、ブルブルと震えている。どうやら、
「……っ!」
僕は、あと一歩で正気を失っていただろう。自分で悲鳴を発した事にも気付けない程にまで、なっていたのだから。
「誰だっ!!」
コウガも感じ取ったのか、僕から視線をズラし た。もう、すぐ側にいるのは、解っていた。
「……うっ」
私が創ってしまった無残な死体を見ると、底知れぬ恐怖と、またグロテスクさから吐き気がするが、それ以上にあいつの存在を強く感じ取っていた。
「出て来いよ」
状況を理解できていないと思われる二人が、目をパチクリさせていたが、そんなのどうでも良かった。
「出て来いよエレクッッ!!」
返ってきたのは、嘲笑だけだった。
はぁ……と、リオンが溜息を吐いた。全身の震えも収まっていた。
「どっか行ったよ……」
そうは言いつつも、まだ気持ち悪そうにはしていた。だから、私はもう少しだけ様子を見る事にした。
……しかし、一体何だったんだろう?
ウカムの事といい、リオンの事といい――ユウの事は性格の問題だろう――奇妙な事だらけだ。
結局、それが何なのか判明する前に、私達は村へ帰還してしまっていたけれど。
バレる……最初からこうするつもりでした。タクトって、20%くらいは、この為の存在なんだよな。
アカムとウカム……我らの団編で、ガチ暴れしてもらうので。今回は極弱体化――いや、ゲームでのあの機動じゃこんなモンだと思うけど――させてもらいました。理由もちゃんとあります。
ヴェン……アマツ好きなんで優遇wあ、ネーミングの方は気にしないでください。
カミト……今回カミトside無いけど。やっぱ主人公なんかうわなにするやめろ\(^o^)/チーン
只今考え中……モガの村編と、タンジアの港編で分けようか、モガの村編だけにしちゃうか悩み中。
予告……モガの村編では、カミトの出番更に減るっ!!
グダグダですけど、次回もよろしくっ!