アカムとウカムの狩りが終わり、村で待っていたのは……絶望だった。まあ、ギルドに報告して、それから一応村長さんにも……と思ったら、村長さんが「貴方宛のクエストよ」と危険な微笑みを浮かべながら依頼書を渡して来たのだ。
クエスト名『終焉を喰らう者』
ターゲット『イビルジョー・ティガレックス・ナルガクルガ』
場所『闘技場』
依頼主…………『ユクモ村の村長』
完全に、挑戦状だった。
何やら、ギルドの様子も慌ただしくなっている し、不明な点ばかりだし、そもそも挑戦状を出す理由も解らん。
村長の暇潰しなのだとしたら、俺は相当な不運だ。まあ、何方にしても一人で逝く気は無い。
「……カミト、どうした」
視界外から、コウガが声を掛けてくる。
ベッドで一人ポツンと座っている俺が悪いのかは知らんが、気まずそうだ。
「何でもねーよ」
「俺の目を見て言え」
コウガが態々俺の前に立ち、いや座り、ジーと見て来た。
「しょーじきに言えば良いんだろ?村長さんに挑戦状叩きつけられて萎えてただけだ」
「はぁ?!この時期にか?何なんだよあの竜人 は……」
コウガも驚いた。まあ、それもそうだ。俺がしっかりと持っている依頼書を見て、それから完全に固まった。そりゃ、イビルとティガとナルガを同時(?)に狩 るのだ。プロハンとかなレベルじゃなければ、この反応は普通の事だ。
「……そういや、収拾はついたのか?」
収拾だけでも伝わったらしく、コウガはしっかり解説してくれた。
「他にも知ってて隠してる奴がいるとか、まだ他に隠れてる奴がいるんじゃないかとか、まあ騒がしいよ。まあ、俺が見た限り……いるけどな」
「………マジでタクトボコして良いか?」
あいつは、隠し事がとんでもなく苦手だったの だ。その上、他人の嘘を暴くのが得意で、トラブルメーカーとしか言いようが無い。
「止めとけ。また要らない騒ぎが起こる」
コウガは、しっかりと忠告してから、何かするのかマイハウスから出て行った。
「……レイなら出来るでしょ」
双眼鏡を覗きながら、ニヤニヤとしながら言う。はっきり言って、その姿は
「レイって誰だよ」
「あだ名。別に二つ名つけたりするんだから、問題無いでしょ」
もぐもぐとポポノタンを食べながら、独り言のように言う。
「んで、どんなクエストなんだ?」
「イビルティガナルガの狩猟」
俺は、絶句してしまった。
別に俺が殺るのなら、全く問題無いと思うが、カミトやコウガ、あいつらが殺るにはまだ早いと思 う。
「……誰も死なないよな?」
「予想が正しければ。まあ、イレギュラーな事が何時何処で起きるかは誰にも解らないけど」
何とも、彼女がどう予測したか全く解らない台詞だった。
「………しっかし、ラヴィがあいつらの心配をするとはね」
双眼鏡をズームしながら俺に言う。
「まだ利用価値もあるし、コウガとは何か息合いそうだしな」
「……ラヴィが友情云々を語った日は、世界滅亡の日だね」
侮辱を通り過ぎている嫌味を言いながら、ポポノタンを食べ終わる。
それから双眼鏡を外し、ニタァと笑って言った。
「とんでも無いイレギュラー、見つけちゃった」
ニタァと笑う時は、アンナのドス黒い部分が表に出ている証拠である。
「良いんですか?」
「だからさ、僕に構わなくても良いって」
眼を真っ赤に腫れさせているヴェンは、お茶を啜っていた。その姿を見ると、私なんかより全然強大な力を持ってる筈の古龍が、小さく見える。
「……まあ、心配してくれるその気持ちだけは受け取っておくよ」
何処か嬉しそうに返してくれた。私には、古龍というものが未だに良く解らないが、絶対的な強さの差はあっても、心の部分は同じなんだと思う。
しかし、そんなヴェンの表情が突然キツくなった。そして、一人を睨みながら言った。
「何であんたがいる?」
暗い赤紫の髪をした女性は、ウンザリすることなく、楽しそうに返した。
「人間を見に来た。それで納得?」
その人は、断りも無く私の隣に座った。
そして、楽しそうな表情を崩さずに、「よろしくね」と一 声掛けてきた。なんかムカつくから、無視したけど。
「はぁ……まさか煌黒龍が、態々僕に会いに来るなんて、そんなに気に入られたのかな?でも、また操るだとかはゴメンだから」
『こうこくりゅう』と呼ばれた女性は、ハァと溜息を吐いて、それからつまらなそうな顔になってから言った。
「私のお陰で、今の貴女がいるんじゃない。じゃなきゃ、今頃金ピカハンターさんの家でガクブルしてたんじゃない?」
ヴェンは、怪訝そうな顔で、睨みつけた。
そんなヴェンをチラッと女性は見てから、誰かを指差しながら言った。 ……その先にいたのは、カミトだった。
「あいつみたいにね」
ヴェンは、そろそろ苛ついて来たのか――理由は解らないけど――更に鋭い目付きになって言った。
「カミトの知り合い?」
手を降ろしてから、女性は不思議そうな顔で、 「誰?」とだけ呟いた。 どうやら、気の所為だったらしい。カミトを指差ししていたのは。
「……にしても、此処は雰囲気が良いわ。ロックラックなんて砂だらけでちょっと気持ち悪いわ」
「ああ、あの砂の街ね。んで、そこにも行った の?」
少々薄気味悪い笑みを浮かべて、呟く。
「そんなのどうでも良いでしょ」
それから、更に美しい、美し過ぎて逆に恐い笑顔で言った。
「まあ、次会った時は殺すから。今日は、折角初めて会ったから挨拶しただけだし。まあ、私の道具になるんだったらちょっと考えるけど」
「誰があんたの道具に。ユウも絶対止めな」
すっかり口調まで変わっているヴェンは、憎悪を明らかに向けていた。
そして、ずっと気が付かなかったけど、女性はずっと持っていたらしいお茶を優雅に啜る。「飲む?」と訊かれたけど、それを貰う理由も、 買った訳でも無い私が飲む権利も無いので、断った。
「エレク、どうせあんたでしょ。アカムとウカムの事」
「唐突に何?今私は景色を楽しんでいるんだけ ど」
今度はエレクと呼ばれた彼女は、初めてヴェンを睨み返した。 言っている事は、本音だという事が覗える。
「あんたがアカムとウカムを狂わした。だから、死ぬのを望んでいた……違う?」
「……アカムは確かにしたけど、ウカムは記憶に無いわ」
そう返してから、ヴェンに対する興味を失ったらしく、それから無言でお茶を啜っていた。 私は、話してる内容が全く解らなかったけれど、 この人が悪い人には思えなかった。
「言っておくけど、場合によれば遠慮なく貴女を殺すわ。そんな私を、信用しない方が良いと思うわ」
私は、無意識の内に、寄りかかっていた。この女性に。 ヴェンは呆れて何処かに行ってしまった。女性は、迷惑そうに私を見た。
「……後悔するわよ」
「別に良いです」
何となく眠くなって来て、「ふあぁ……」と欠伸をしてしまった。そして、その眠気に負けて目を閉じてしまった。
「私は、アルバトリオンなんだから……」
最後に、そんな声が聞こえた気がした。
見知らぬ女性が、俺を指差していた。俺は悪い意味でそんなに有名になってしまったのか。 そんな事をコンマ1秒だけ考えて、直面している問題に悩む。
村長さんに言われてしまった。行くなら一人で逝けと。死んだらどうすると抗議したが、なら行かなければ良いと論破されてしまったのだ。しかし、俺にも小さなプライドはある。行かなければ気が済まない。 つまり……俺は一人で死地に逝くハメになったのだ。
そんなこんなで、俺は今闘技場のBCに一人でいた。実は、もうイビルは狩った後だ。何かトラブルがあったのか、闘技場に放たれる前に同士討ちでもしたのか、不思議な程あっさり狩れてしまった。
そして、ティガレックスとナルガクルガが同時に放たれたのを見て即座に戻り玉を発動した。
きっと、仲良く殺し合っている……と嬉しい。
何時まで待ってても埒が明かないので、諦めて闘技場に足を踏み入れた。
………開幕バインドボイス→背後からナルガの飛びかかり→横からティガの突進→ナルガの棘飛ばし→ティガの岩飛ばし→ナルガの尻尾打ち→突進からの回転攻撃→噛み付き(ナルガ)→噛み付き(ティガ)
へ?勿論逃げたよ?詰んだし。
間髪無く次々と攻撃してくるあの二体のコンビネーションには勝てない。
………どうしたかって?リタイアしたよ。
村に帰って、ヴェンに会った。そして、直ぐ様訊かれた。
「どうだった?」
「無理だった」
素直にそれだけ伝えた。
俺にはまだ、『終焉を喰らう者』の攻略は無理らしい。もっと強くなければ、奴等を攻略するのは無理だろう。
敗北……おまけ編なので、たまにはありかと。
短い……上記と同じく。でも話に本編にとって重要なのが入っていたりするんだけど。
ネーミング……毎度毎度の事ですが、やっぱ酷い。
ティガ&ナルガ……前回のボコボコに対する復讐か!?
イビル……まだだ、まだ終わらんぞ!(出番が)
アルバ……次回出ますよ?そしてユクモ編も終わりですよ!
次回よろですっっっ!!!!
↑何時もよりテンションが高い作者。