総べてを屠り、喰らう者
オレは、今日も村の皆のスキをついて凍土までやって来た。帰ると、毎回姉に怒られるのだが、それでも行く程の面白さがあるんだ。
本来ハンターは16歳以上で、しかも訓練所とかそういう施設を利用した奴のみなんだけど、12歳のオレはハンター登録が出来ないから真似事だけして楽しんでいる。
昨日は、火山まで行って臭いウラガンキンを殺ってきた。まあ、姉に説教どころか逆に泣かれたんだけど。凄く心配だったらしい。
そんな姉も、ハンターだ。しかも、プロハンだ。通称
まあ、ハンターに、姉に憧れた結果がこの真似事の発端である。武器は、姉と同じ武器種の太刀だ。最初は重くて驚いた。
しかし、姉は本当に凄い。だって、プロハンと呼ばれるようになったのが、17歳の頃だからだ。
オレは、そんな姉目指して頑張る為にモンスターを探していた。すると、遠くから重く響く咆哮が聞こえた。
「ガキが何している?」
それに気をとられてると、後ろから声を掛けられた。
その声を掛けた人物を誰か特定する為に、オレは後ろを見た瞬間、全身が歓喜で硬直した。
「………プロハンじゃないか」
「知ってるのか?それはありがたいな……」
その人、
「俺にもな、今のあんたみたいな事してた時期があったんだ」
意外な話だった。プロハンと呼ばれるような人達は、基本的に狩りを遊びと捉えること無く、仕事だから仕方無くなんてだらけた考えもしない、皆立派な人達だと思っていた。
「……さっきの咆哮はイビルジョーだ。死にたく無ければウチに帰ってろ」
イビルジョー。古龍や希少種、はたまた超大型飛竜種等の特別な部類を除けば、最高の危険度を誇るモンスター。
………この人は警告したんだろうけど、オレには逆効果だった。
「………死ぬなよ、ガキ」
「ありがとうございますっ!!」
見逃してくれた。だからオレはイビルジョーを狩るべく探し回ったのだ。
オレは、色々と不思議な光景を見た気がした。
オレと同じくらいか、少し年下の少女が遠くに倒れていた。それも十分不思議だったんだけど……ポポの方が腹に溜まりそうなのに、逃げてくポポを無視してその少女を喰らおうとしているイビルジョーだった。
狩りたいという気持ちと、助けないといけないという使命感に煽られて、オレは駆け出した。
まあ……そのイビルの身体が赤く膨張してるのに気が付かなかったんだけど。
そんなイビルジョーの脚目掛けて太刀を振った。表面に傷がしっかりとついたので、狩れるという自信が湧いた。
それでようやくイビルジョーは、俺を優先すべき敵だと認識したらしく、少女を喰らうべく開いた口を、俺に向けて来た。
イビルジョーは、咆哮した。まあ、普通のパターンだ。モンスターがこっちを認識して、咆哮。そんなのは解っていた。
目と耳を全力で閉じてやり過ごし、目を開いた時、恐怖でガチりと全身が硬直した。
さっきまでイビルジョーがいた筈の場所には、もうイビルジョーみたいな化物しかいなかった。口から赤黒いエネルギー、龍属性が溢れかえって口から身体の一部を覆い、眼はただの紅い光そのものと化していた。
そんな化物は、コッチへ歩きながら、龍属性のブレスで薙ぎ払ってきた。
相手の懐に飛び込もうにも、後ろへ全力で逃走しようにも、距離的に無理だった。
――コレ死んだわ。
正式なハンターじゃないオレは、まともな防具は全く身に着けてない。なので、あんな化物のブレスを食らったら確実に死ぬ。
恐怖により、ギュウと目を閉じた。そして、次の瞬間、足の感覚が無くなった。そして、聞こえた。
「死ぬなと言っただろうが、ガキ」
目を開けると、オレはプロハン殿に持ち上げられて、仲良く空を舞っていた。どうやら、どうやってかオレを持ち上げて、そのまま大ジャンプしたらしい。
地面に着くと、プロハン殿はオレを睨んで、動かなくなった。
「了解ですよ……」
狩れ、という事なんだろう。
反射的に納刀していたらしい太刀を、改めて持ち構える。
精神を集中させる。無の境地とでも言うのか、完全に精神統一させる。
太刀は赤く輝いていた。更に、その赤い光は太刀よりも長く伸びている。
「練刃長太刀か。サザナミの弟か?」
「大当たりです」
質問に答え、オレはさっきの倍の速度で駆け出した。狙うのは首と脚。首を直接殺れるのならそっちの方が良いし、脚を殺れば多分転んでくれるので、そうなればコッチの勝ち。
駆けるオレに標準を合わせて、化物は巨体には見合わない大ジャンプをしてくる。
オレは太刀を頭上で回す。コレも姉の技の、旋風竜巻斬。
自らリーチに入ってきた化物の脚から、血飛沫が舞う。けれど、しっかりと着地した。
オレは軽く跳んでいたので、地面の揺れはなんてこと無かった。
化物は、コッチへ向きを変えて、上半身を上げて、それから掬い上げるように喰らいついてきた。
……生憎、それはオレの勝利を意味したのだが。
タイミングを合わせて、首目掛けて跳んで躱しながら斬り落とす。それだけだ。
そして、イビルジョーの頭は綺麗落ちた。身体もまた揺れを起こしながら倒れた。
「中々の腕前だな」
プロハン殿は、それだけ言って帰ってしまった。満足出来たのだろうか。
オレは、一応納刀して、少女の元に行った。そして、少し体を揺さぶってみたけど、起きる気配が無かったので……担いで帰った。
しかし、凄い自分好みの可愛い顔だった。
モガの村は、とても小さい村だ。しかも海の上にあるのもあって、ハンターは全然来ないのだ。逆に、そのお陰でオレはやすやすと抜け出せるのだが。
また、村長は昔は強いハンターだったらしい。今も、知識は豊富だ。
オレは、少女を担いだまま家に入った。そして、恒例のお出迎えがあった。
「今日は何処行ってたのよ!?………そしてその娘どうしたの?」
当然ながら、何時もは無い台詞も付けて。
茶色の髪は、ゆらゆらと揺れていた。オレの視線がそっちに向いているのに気が付いたのか、少し顔を赤くした。まあ、何時もの行事だ。
「イビルジョー狩ってきた。後、この娘助けて来た。今日は人助けしたんだし文句は言えまい」
そう言って中に入ると、後ろからオレの事を抱きしめてきた。しかも泣きながら。
――心配し過ぎだって。
軽く死にかけたオレは、流石にそんな事を言う勇気は無かった。
にしても、姉はまだまだ子供だ。18歳なのに。
……あ、まだ子供か。
とりあえず、イビルジョーがイビルジョーみたいな化物にすり替わった事を話すと、姉は溜息を吐いた。
「それ、飢餓イビルじゃない。どうせ誰かに助けてもらったんでしょ」
――速くもバレたっ!?
「へ、へぇ……飢餓イビルって、そんなに強いんだ」
「噂だと、同族とか……古龍とかも余裕で襲うらしいけど」
――それはヤバイ!
どうやら、オレが相手したイビルジョーは、普通では無かったらしい。
すると、モゾモゾと布団が動いた。寝かせておいた少女が起きたらしい。……まあ頭まで布団の中に無理矢理入れてあげたので、暫く自分の置かれてる状況が理解できないだろう。
予想通り、暫くモゾモゾしていた。そして、やっと体を起こした。
少女は、ポカーンとしながら部屋を見ていた。そして、オレを見てから言った。
「助けてくれて、ありがと」
……オレは、余りの可愛さに気絶する所だった。
「ハァ……なんでこんな風に育ったんだろ」
姉は、オレを見ながらそう言った。いやしかし、オスがメスをそういう目で見るのは人間以外では常識では無いのかと考えた。
「……迷惑かけちゃったね。君の名前は?私はレナだよ」
まさかの唐突な自己紹介だった。そして、やはり可愛「ガスッ」……頭峰打ちされた。
「オレはソルだ。いや、迷惑なんかじゃないよ。殺りたいから殺ったってだけだし」
ソルと言えば、シルバーソルからのリオレウス希少種だが、当然オレはそんなに強く無い。
少女もといレナは、自分の服を見ていた。そういえば、血が結構ついていた。
「……また買わないとな」
と、レナは独り言を呟く。……まあしかし、オレの姉の前では、それはタブーだ。
「私が選んであげるわ。それに買わなくてもあるから」
そう笑顔で言う様は、オレの姉で無ければ、キレイで一目惚れしていたかもしれない。いや、もうレナにしているんだけど。
レナは、目をパチクリさせていた。それから、ニコッと笑った。
「ソル君、覗きは駄目だからね」
「チッ」
「…………」
姉がクズを見る目でオレを見ているが、まあ気にしない。
とりあえず家を出て、中を見ないように毎日見る風景をジィーと見ていた。誰もさして気にしない。薄情だからでは無く、何時もの事だからだ。
モガの村には、農場がある。そこはオレと姉のモンで、オレはアイルーにハチミツ作り頑張らしてる。何故か?オレは甘い物が好きなんだ。
他に施設という施設は無い。クエストカウンターと、ちっいゃいレストラン――なんとお一人様が最大――と、道具屋程度か。でも、オレはそれでも全然良い。ちゃんとしたハンターになっても、此処で暮らすつもりだ。
しかし、さっきからレナの悲鳴に近い声がちょくちょく聞こえるのだが、姉は一体何をしでかしているのか。
………オレがこんな変態になってしまったのも、
と、色々と考えてると、「もう良いよー」と姉が呼んでくれたので、中に入る。
レナは、色々と汚れていた服から当然着替えて、茶色の地味だけど、中々シンプルでレナにはちょうど良い一品を着ていた。ボタンを付けるタイプのモノで、白いラインが少し入っている。スカートも同じデザインで、フリフリ等の動きづらそうな要素は何も無いミニな奴だった。
………一つ言うなれば、何故姉が明らかに自分のサイズと合わないような狩りに全く関係無い服を持っているのかが不思議だ。
「姉さん……剥がしてねぇよな?」
「どんな変態よ」
――アンタにだけは言われたくねぇぇええ!!
心の中で、オレは絶叫した。
ソルという少年は、姉譲りの変態だと思う。そう、このサキという人も十分な変態なのだが。
ただ、服は余りにも似合っていた。絶対に汚さないぞと、心の中で誓った。
ソルは、何か言いたそうに目を見開いてパクパク口を動かしていた。
「………そ、そんでレナ、アンタこれからどうするよ?てか……何処産まれの何処育ちよ」
後半、目線が明らかに鋭くなっていた。ただ、発言変えたのは良く解った。
しかし、ソルという少年は、この短時間で私の事を不自然だと思い、さっきまで完全にテストしていた。私の事を。
解ってはいたのだが、ついつい本音が出てしまう。それで、不信感は更に募ったらしい。
まあ、そんな事よりも今どうやって答えようか悩んだ。
打ち明ける、それはナシ。まだまだ幼いこの少年に、自分がイビルジョーだと言っても、ハァ?と返ってくるのがオチだし、逆に理解されても迷惑をかけるだけだ。
結局、答え方が解らなくてド忘れしたと言おうとした時、ソルがニッと笑って言った。
「別に言いたく無きゃそれで良いんだよ。姉さんも問題無いだろ?」
「………言いたくない理由がそもそも解かんないけど、確かに言う必要も無いよね」
サキも納得してくれて、内心ホッとした所で、ソルは小さな声で言った。多分、私だけが聞こえる声で。
「……アンタ、何者だ?ま、何だって良いけどな、可愛いし」
少々ムカつく事を言って、ベッドの中に潜った。手だけ出して、しかも手招きしながら。
それを見たサキは、溜息を吐きながら外に行ってしまった。もしかしたら、ソルはサキを追い出す為にバカな事をしたのかもしれない。
「遠慮すんなよ」
「遠慮じゃなくて拒否だから」
頭と手以外布団の中に収納されているソルは、個人的に不快な笑みを浮かべていた。
「ンな事言うなよ。まあ……ナニモンか教えてくれるなら話は別かな?」
「誰がその二択を選ぶかっ!」
声を荒げてツッコんでしまった。不可抗力だと思う。
「………ま、いっか。暇潰しにさ、何か行かない?」
「何に?」
「そりゃあ……イビルジョーの狩猟だよ。アンタ食われかけてたじゃん?てなわけで克服しに行こうっ!」
――はい?
何か勘違いしてるようだが、
サキはもう何か狩りに行ってしまったのか、村には見当たら無かった。
ソルは、私の髪を見て「こりゃ邪魔だな」とか言いながら手際良く勝手にサイドテールに結んでくれたうえに、手をこれまた勝手に繋いで来たのだ。
「ほぉ、彼女でも出来たのか?」
「いやぁ村長、オレはまだそんな歳じゃないっすよ」
村長らしき人と話ながら、繋いでいた手を自然に離して、親指でこっそりあっち行けという合図を出していた。方向は、橋がある方である。
そっちに行くと、小さめの畑があった。そして、アイルーが何匹か作業をしていた。真面目である。
………そんな真面目アイルー達の邪魔してニャーニャー泣いてる所をギュウと抱きしめてワシャワシャと頭を撫で回してからそのまま寝てしまいたいモノである。
そして、そう思っている途中から身体は勝手に動いて寝る寸前まで移行していた。
「アイルーが好きなんだな……」
何処か呆れたようなソルの声が聞こえた。身体がガチりと固まる。
「どーした?顔紅いぞ?」
――見られたぁぁ!!
なんというのか、私アイルーが
多分、今の私の身体は、元々の二倍くらい熱くなってるのでは無いかと思ってしまう。
サッとアイルーを離して、それからスグに立ち上がりソルを見ると、凄い真顔だった。しかも、その真顔で似合わない台詞を吐いた。
「ウチのヤシが嫌がってるんで二度とやんな」
さっきのアイルーはヤシという名前らしい。しかし、嫌がってるからヤメロという台詞は、コイツの口から出るのは間違ってると思う。
「それで……どうするの?イビルジョーを狩るって」
「
……しかし、誰もあんな事になるとは思ってもいなかったのである。
いざイビルジョーを狩るべく、通称孤島のモガの森に行ったのだが、最初に遭遇したのは……ドスジャギィだった。
頭と体をおさらばさせて、死体は無視して少し歩いて、そしてまた見てみた時には消滅していたのは本気でビビッた。
だって、殆ど一瞬でドスジャギィの死体を食ってしまったんだから。
流石に姿の認識が出来てないような奴と相手するつもりは無く、一旦逃走。
しかし、オレがドスジャギィ殺った辺りからレナの顔が真っ青なのだが。
「血……苦手か?」
一応訊いてみると、返事が返ってくる事無くその場にブッ倒れた。
――苦手……なんだな。
勝手に理解させてもらった。
そんなレナをオレは担いで、本来BCである場所へ避難。すると、そこにはハンターが幾人かいた。
――ヤベッ!
最悪言い訳が出来なくは無いが、見つかって良いモンでは無い。
オレは思いきってレナ諸共水中へ避難。大抵のハンターは水中に入んない為、まず見つかる事は無い。でも、気絶してるレナをずっと入れておくのはマズイから、こっそり出してあげる。勿論、場所は考えて。
まだまだ新人っぽいハンター達が雑談しながら出て行く。もしターゲットがドスジャギィだったら、既に消滅しているが。可哀想に。
出て行ったのを確認してから、オレも陸に上がる。まずは空気をたっぷり吸って、吐く。
深呼吸も完了した所で、レナを揺さぶる。しかし、全く反応が無い。
――実はショック死とかねぇよなっ!?
結構本気でそう思ったが、確実に息をしてるので生きている。いや、死体が息してるなんてコトあったら怖いってレベルじゃない。
起こす方法を幾つか考えてみた。やっぱ、衝撃があるようなコトをすれば良いと思う。そして、物理的なコトは色々やったが全く起きない。バシバシ頭を叩いても全く起きない。
結局、オレはとてつもないアホなコトを考えてしまった。……え?んまあ童話とかでも良くあるじゃん?王子様がキスしたら姫様が起きる的な展開。
いや、うん。実行させていただいた。ナンつうのか、凄く柔らかいです。そして、これまた見事というのか、レナが目を開いた。それから約十秒停止していた。勿論、オレはすぐさま離したけど。
「初めて………」
リンゴ?ナニソレ?って嘲笑うくらい真赤になった顔で呟いていた。
……いや、オレも初めてだから。
「ヨシオキタシイコー!」
凄い棒読みで――当然そんなつもりは無かった――そう叫び、逃げようとした所で、風を切る音が聞こえた。
オレは、反射的に避けていたから良かったけど、レナの飛び蹴りが炸裂していた。当たってたら背中ポッキリ逝ってたと思う。
「わ、悪かったって。てか、オレ起こそうとしただけだって……」
死にたく無いから言い訳をしたが、無意味だった。
「だからってあんな事しなくても良いでしょぉぉおおおおおお!?!?」
さっきの倍はありそうな速さでまた蹴りが炸裂した。今回は前からだったから、何とか避けれた。
しかし、一つ思う。
――怪力過ぎだろコノヤロォ!!
地面が軽く抉れていた。レナが何故そんな怪力なのは後回しで、また言い訳をする。
「他の色々試したよ!?なのに起きなかったアンタが」
「問答無用ッッ!!地に還れっっ!!」
更に蹴りが炸裂した。避けれそうに無かったから、オレはレナの脚を掴んでそのまま投げた。まあ、受け身とでもいうのか、生憎これも姉の技である。
「いったぁ……ていうかさ、だったら置いて行けば良かったじゃん」
「………は?」
今、ナニカをレナが言っていたが、聞こえなかった。うん、聞こえなかったり
「だから、見捨てれば」
「巫山戯てんのか?今更見捨てるくらいなら最初からアンタ死んでるよ」
見捨てるとか、置いて行くとか、そんな選択肢は最初から無い。オレはレナを守ると決めた。物理的にも、社会的にも。だから、そんな選択肢が思い付く筈も無く。
「……行くぞ」
無駄に上がっていたテンションが落ちたので、良い事だったと考えながら、BCからさっさと出て行った。
マジだった。一瞬だけとはいえども、何処かお気楽で下心まる出しの変態野朗というイメージを吹き飛ばす程の、大マジの目だった。
それに、私は実際に彼に助けられてるので、何も言い返せない。
「……にしても平気かな」
そんなソルは、何か呟きながら歩いている。まあ、そんな事はどうでも良かった。
それから五分程した辺りだろうか、低く重い、ハンター間で言う『一度聞いたら無事ではすまない』、自分は聴き慣れてる――自分の咆哮と同じだからね――咆哮が聞こえた。
「レナ、オレより前に出んなよ」
「了解……」
ソルは、太刀に手をかけながら駆け出した。別に良いんじゃないかと思ったが、理由はすぐに解った。
イビルジョー……というかその成れの果てとハンター四人が交戦していた。しかも、ハンター達は皆ボロボロ。
「この化物がっ!!」
ソルは、太刀を抜刀しながら走り始めた。
あの太刀は案外重い物だから、まだまだ子供のソルにそんな事が出来るとは思って無かった。
当然、私の思ってる事など知らないであろうソルは、ハンターの一人を喰らおうとしていたイビルジョーの足に勢い良く刺した。更に手際良く抜くと、血がダラダラと垂れ始めた。
私は慌てて視線を逸らした。そして、もう眼球としての跡形の無い赤い光を、私は直視してしまった。多分、目が合ってしまった。
腹に容赦無く太刀を刺そうとするソルの攻撃を躱す為か、大きく跳んで……私の前に降りた。
――やっぱり私狙いかっ!!
何故か最近、飢餓イビルに分類されるタイプのイビルジョーに良く狙われているのだ。私はそんなに美味しいのか。いや、飢餓イビルに美味しい不味いなんて概念そもそも無かったか。
「レナに触れるなぁぁあ!!!」
殆ど一瞬にして私の前にソルがやって来て、開かれた口の中に、これまた容赦無く太刀をブッ刺した。ただ、それで止まる事無く、ソルは慌てて両手を引いた。引いて無かったら、龍属性溢れる口の中に入ってたと思う。
「子供がどうしているんだ!?ソイツは尋常じゃない!逃げろ!!」
傷ついたハンターの内の誰かが叫んだ。しかし、ソルは私を後ろに投げ飛ばした上に、イビルによって割られて柄だけになった太刀を拾い、懲りなく私を狙うイビルに何故か斬りかかりながら大声で言った。
「イビルジョーの強さ知らねぇような新米に言われたくねぇんだよ!!」
無くなった筈の刃を模した紅い光が生まれた。
「練刃……」
呟きながら脚を斬る。
「翔撃……」
それでも歩きながら私を襲おうとするイビルの背中より高く飛んだ。
「
そして、紅い光はとてつもない長さになり、三日月を描くように斬り、そこから結局一周した。
信じられない事に、光の刃で斬られたイビルジョーは、綺麗に真っ二つになった。血が、尋常では無い量溢れた。思わず目を瞑ってしまう。というか、そうしないと絶対気絶する。
「……良かった。誰も死んでねぇ」
ソルの声が聞こえたから、目を開けてみたものの、そこには全身血塗れのソルがいた。
そして、また思わず目を閉じながらも、ソルに訊いた。
「凄い、汚れてる」
「……誰も死ななかったんだ。まあ、勝利の証……的な?どうせ洗えばすぐ落ちる」
陽気な声が聞こえた。どうやら、自分の事はあまり気にしてないらしい。
――こんな良い人の前に私がいて良いの?
正直思った。私がいるから、ソルに迷惑をかけている。私が、ソルの前にいてはいけない気がした。
「………そういやレナって血が苦手なんだったな。洗ってくるよ」
ペトペトと、ソルが歩く音がする。もう、私を視界に捉えてないだろう。
だから、こっそり逃げ出した。自分から、逃げ出した。
結局、他の人間と出会ってしまって、それからハンターの真似事をする事となるのは、当然ながらまだ全く知らない話である。
もう、十年弱は経っただろう、レナという少女と会った時から。
当然、俺は十六歳になった時に他の村の訓練所まで足を運び、一ヶ月で解放されて見事ハンターになり、モガの村にさっさと戻り、時々タンジアの港にも生きながらハンター生活をしている。
最近、村に地鳴りがちょくちょく起きているので、タンジアの港には行ってない。まあしかし、調査の為に行った筈の水生獣ロアルドロスの狩猟にて、妙な事が起きたのである。
……今なら解る、レナはモンスターだったと。
新章……主人公ポジのキャラチェンジ。しかしレナはまたまた登場。
飢餓イビルこと怒り喰らうイビルジョー……知らない人への解説コーナー。ざっくり言えば、お腹空かし過ぎてイカれたイビルジョーなのである。調べてみた所、化物と化した際に口から溢れる龍属性のエネルギーは、同族を喰らいまくった結果らしい。なので、レナさんには襲われてもらいました。初出は、3G。
ソル(サキ)の技……解説すると、原作で気刃大回転斬(漢字間違ってたらスミマセン)を当てた時に白→黄→赤とオーラを纏うけど、それを常時発動させて更に実体化させるという荒業。
ソル2……幼少期のソルはもう出さないつもりなので。
次回もよろしくです。