モンスターハンター 最弱で最強の少年   作:夢の天鱗

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閑話:神を喰らう者

――どうしよう……!

 

神機と目の前の怪物を見比べながら考える。逃げるのも良いのだが、逃げてどうにかなることじゃない。

いや、ココはゴッドイーターの名にかけて、倒すべきかもしれない。しかし………しかしだな………

 

「此処何処だぁぁっっ!!??」

 

その日の凍土で、何者かの絶叫が聞こえたという噂は、あちこちで広まったらしい……

 

 

「はぁ……そんな噂がねぇ?」

 

エレクは面白そうにしている。俺はハッキリ言ってどうでも良いのだが。

 

「コウガ、早速探しに行こうじゃん!」

 

「何故俺っ!?」

 

最近のエレクは、何が面白いのか俺に付き纏っている。ウザい、超ウザい。

 

「えぇ……その事教えてくれたのコウガじゃん」

 

頬を膨らまして、いかにも駄々っ子みたいな様子を出しているが、俺からしたら一種の脅しである。

こいつとは、元々圧倒的な実力の差がある。その上で駄々をこねるなど、脅しと同意義だ。

 

「……リオンとか誘えば良いだろ?レナもそういう事好きそうだしな」

 

一応、機嫌を損ねないように気持ち努力しながらも、嫌だと主張する。

しかし、こいつの性格は不思議というのか、可笑しい。というか、未だに解らない。何故ユウとセイカを殺したのか、そして、それで俺達に一切手を出さないという事が。

前訊いたのだが、「ん?もしかして自殺願望者?」と、それ以上訊くなと言わんばかりの脅しをしてきたのだが。

 

「………コウガ、そんなに嫌なんだ」

 

「あんたと行くのだけは勘弁だ」

 

「あっそ。やっぱ実力の差を理解してないねぇ?それとも………死んででも私を殺したいの?」

 

一瞬で、雰囲気が変わった。ちょっとバカっぽい態度から、邪龍らしい暗い雰囲気を纏って人生の先輩らしい態度になった。

 

「……いや、私邪龍じゃないんだけど」

 

ポカーンとした表情で、そう言って来た。俺は、信じさせる為の作戦だと……誤解し、言い返した。

 

「あんたみたいのが邪龍じゃないわけねぇだろ?後、さっきの件は他の奴に頼んでくれ」

 

ついでに、その場から逃走したのであった。

 

 

「………レナなら解るかな?」

 

「何が?」

 

私が独り言を言った直後に、レナの声が後ろから聞こえた。相変わらずの隠密行動だ。

私は、レナの事は信用している。私の事の、カミト達の中での唯一の理解者だし。

 

「ふーん、またそれ持ってるんだ」

 

振り返った私の首を見ながら、無表情で言った。少し、何時もとのギャップから恐怖を感じる。

……いや、レナはイビルジョーだし、きっと私にも襲ってくるだろう。イビルジョーはそういう生物だ。だから、恐怖を感じるのは仕方無い。

と、言い訳を心の中でしつつも、冷静を気取って言う。

 

「まあね。これは大切な物だからね」

 

「……大切ね?他人から奪った物なのに?」

 

奪っただなんて間違いだ。あくまでも約束を守っただけであり………いや、その為に殺したから奪ったと言いたいのか。

 

「別に欲しいから殺したわけじゃないんだからね?」

 

急に鋭い目付きになり、個人的な禁句を言ってきた。

 

「本音は?」

 

これを言われると私は、

 

「一割くらいはそうです」

 

と、反射的に本音を言ってしまうのだ。

 

「大人気ないね……」

 

レナは、ゴミを見る目で睨んできた。しかし、私はあくまでも知的探究心で欲しくなっただけであり、本人に貸してと言ったのだが貸してくれなかったユウが悪いんだっっ!

 

「色々と理由(わけ)はあったのよ」

 

「……へぇ?理由があれば正当化できると?」

 

……理由があれば正当化できるか、人間として考えれば否、モンスターだとして考えればできてしまう。

そこは結局価値観の違いなんだろう。でも、私はあっちなのでこう答えた。

 

「できないですよネー」

 

レナは、そんな私を見て、何が面白いのかクスッと笑った。それから、ニヤリとした笑みに変わり、痛い所を突いてきた。

 

「……例の噂の事、どう思ってる?」

 

何て答えようか、凄く迷った。そもそもその事は、私から話してそのまま有無を言わさず連行するつもりだったのだ。

しかし、此処で天邪鬼な事言っても全く意味無さそうだから、正直に言った。

 

「凄く興味はあるんだけど、一人で確かめるのはちょっと………って感じだね」

 

「……そっか。だったら、一緒に行ってあげる」

 

「デスヨネー………ってえぇっ!?良いのっ!?」

 

私は、絶対に拒否されると思っていた。しかし、逆に不意を突かれてしまった。不覚っ。

 

「うん、良いよ」

 

両手を後ろで組んで、頭を少し傾けて上目遣い………。何故だ、何故アイツの一番苦手もとい大好きなポーズを知っている。

問いただそうかと考えたが、話が絶対逸れてしまうからやめておいた。

 

「じゃあ凍土にレッツゴォー!」

 

「まずは現場から……か。行こっ!」

 

どうでも良いのだが、この時私は初めてレナと一緒に行動した。

 

しかし、凍土へ着いたのは、夜になった。モンスターも活性化するのが多く、ハンターも夜の凍土はあまり来ないし、絶対にいる筈が無い。

………と、考えていた矢先だった。

 

「エレク、あれ見て」

 

レナが指差したのは、焚火だった。いかにも此処で生活してますみたいな感じだった。

更に、その隣りには剣が置いてあった。いや、大剣だ。

イビルジョーの大剣のようなデザインをしてはいるが、妙に明るい色をしてる部分もある。というか、そこは何か取り付けたみたいな感じだ。

とりあえず触ってみようかと近付いた直後………

 

「死にたくなきゃそれに触れんな」

 

声が聞こえた。鋭く、重く響く声だった。

また、現在地は洞窟の中なので、更にその声は響いた。

その声の発生源は、木を沢山抱えた少年だった。まさか、此処で生活してるのかと疑ったが、それ以上に、さっきの脅し文句を妙だと感じた。

 

「武器に触って、何が駄目なの?」

 

レナは、訝しげな目線を向けるだけだったが、私はあえて訊き返した。

もし、触って欲しくないだけなら、相当な自己中か馬鹿で、そのどっちも嫌いだからだ。

 

「そいつに喰われるぞ?」

 

少年は、焚火の近くに木を起きながら、そいつと言った武器を片手で広い、木に振り下ろした。すると、豆腐を切ったみたいに、なんの抵抗も感じさせない滑らかさで斬った。

暗闇の中だと全然見えない、漆黒色の髪をした少年は、私達を見ながら呆れた様子で言った。

 

「俺に興味があるのか?物好きだな」

 

大剣を肩に乗せて、私達をじっくり観察し始めた。粘っこい視線が気持ち悪い。

そんな少年に、さっき言われた意味不明な事について訊いてみた。

 

「あんた、喰われて無いじゃん」

 

少年は、一瞬ポカーンとして、視線に気が付いてから溜息を吐きながら言った。

 

「ああ、神機の事?」

 

サラッと知らない言葉を吐きながら、更に続けた。

 

「そりゃあ俺は適合者だし、何より偏食因子をちゃんと摂取してるしな。でも、ゴッドイーターじゃなそうなあんた達が、こいつに触れたらアラガミ化どころか肉片になりそうだしな」

 

そして、更に意味不明な言葉を連ねながらも、説明してくれた。

しかし、私は肉片という言葉が聞こえたから、馬鹿にされてる気がした。

 

「……肉片って何?」

 

すると、少年は遠い目をしながら言った。

 

「なんで別世界に迷い込んだんだ?俺」

 

それから、私達の事など眼中に無いかのように、ポイッと焚火の中に木片を入れる。

すると、初めてレナが口を開いた。

 

「別世界なら、その別世界のヒトにも解るように説明できないの?」

 

別世界という単語がやすやすと出て来て、しかもそれを疑問に思わないレナに疑問を思ったが、今それを訊いても仕方のないことだ。

すると、少年が手招きしながら、苦笑いして答えた。

 

「長くなっても良いならな」

 

つまり、此方来て座れという事らしい。

なので、焚火の近くに腰を下ろした。レナは、相変わらずスカートなのだが、それでも躊躇なく男座りする。

少年が、少しだけ顔を赤くしたが、きっとそういうお年頃なんだろう。

そんな少年は、わざとらしく咳払いして、説明を始めた。

 

「先に言っておく。俺は風凪(カザナギ)カイだ」

 

と、思ったら自己紹介から始まった。

 

「まず、俺の世界にはアラガミって生物がいるんだ。そいつらは単細胞生物なんだけど、そのアラガミを形成してるオラクル細胞っつーもんが、まあ結合……くっついて形成されてるんだ。それがまた厄介で、臓器とかの生物的なモンからロケラン……ロケットランチャー解ります?まあそんな兵器まで真似しちゃうんだよ。だから世界マジヤバい状況さ。そんなオラクル細胞の結合は超固くてな?銃だろうが爆弾だろうが全く駄目なんだ。それに対抗するのに創られたのが、これよ」

 

時々解らない単語を出しながらも、ちゃんとした説明をした少年は、大剣をやはり片手で持ち、もう片手で指差した。

「これは通称神機と云って、アラガミに対する唯一の対抗手段であり、神機自体もアラガミなんだ。オラクル細胞にはオラクル細胞をぶつけるって発想なんだろうが、まあ喰われるってそゆこと。そして、これをコントロールするために俺の身体にもすこーしだけオラクル細胞が入ってるんだ。これがまた適合しないと肉片になっちまうんだな………適合者ってのはこういうこと」

 

何かとんでもなく重要な事を、そんなん普通だと言わんばかりに説明した。

しかし、話は本当に長いようで、まだ続けた。

 

「そして、アラガミには偏食という特性があるんだ。絶対に何かを喰わないっていうな。だから、俺も喰われないようにこの腕輪から偏食因子を注入してるんだ」

 

特に気にしてなかった、神機を持っている右手についてる腕輪を見せながら言った。

 

「そして、このゴッドイーターとしての役職の恐い所は、アラガミ化だ。例えば、適合してない神機に触れたり、この腕輪が壊れたりすると………体内に入れたオラクル細胞が制御できなくなって本人の神経や細胞が、オラクル細胞に侵食されてしまい、アラガミになっちまうんだ。しかも、そのアラガミ化したゴッドイーターを殺すには、その本人が持っていた神機で戦うしかないんだけど、そもそも他人の神機に触れるのはヤベェし……………まあ、色々とヤバいんだ」

 

それから、フゥと溜息を吐いてから、頭をポリポリ掻きながら、「俺んちの事はこんなモンだ」と呟く。それから更に、ニタァと笑って、単刀直入に訊いてきた。

 

「あんた達何者?」

 

別に、彼になら嘘を吐く必要は無さそうだったから、素直に答えた。

 

「アルバトリオン」

「イビルジョー」

 

………レナと一緒に。

 

「解かんねぇからっ!?てか人間じゃねぇのか!?」

 

「まあ……違うねぇ?」

 

「見た目はそうだけどね……」

 

そう訊かれたら、そうとしか答えれないのである。

 

 

二人の女性(一人ガキ)は、人間じゃないとほざいた。しかし、俺みたいな化物寸前でも人間なのに、彼女らが人間じゃないとは……正直思えない。

しかし、考え方を変えれば、此処は別世界で俺の常識から外れた事も普通に起きる……という事かもしれない。

 

「まぁ良いか。何かさ………住む場所無いの?寒いんだけど此処」

 

「「あるから」」

 

ツッコミとでも言うのか、ズバッと言って来た。

良かった。大自然に囲まれて何も無い場所じゃなくて良かった。

しかし、今一番気にしてる事は、偏食因子を補充できない事だ。いや、もう既に二日も補充できてない。一日程度ならセーフかもしれないが、二日も経ってればアラガミ化が進行していても可笑しく無いのだ。

しかし、全く異変が無い事に、逆に違和感を感じながらも、二人に街へと案内してもらう事にした。

 

その街は、過去に日本と呼ばれていた当時の極東の、『ワフウ』な感じの街だった。

生憎、そこのフェンリル極東支部――フェンリル社こそ、我等ゴッドイーター達の飼い主――は、対アラガミの最前線だった。だから、風景なんぞ無いに等しいくらいだ。

なので、折角だから実物の『ワフウ』な街をこの眼に焼き付けようと、あちこち見渡す。

沢山の、武器を持った人達が、妙に長い階段の先の建物に向かっている。

そして、個人的に気になるのが、耳の尖った人や、身長が凄く低い人がいる事。

 

「ああ、やっぱ気になる?」

 

俺の目線を察知してか、大きい――何がとは言わない――方の人(?)が、声をかけてきた。

そういえば、名前を聞いてなかった。完全に忘れてた。

 

「うん。だけど、あんたらの名前も気になるんだが……」

 

小さい――身長だけとは限らないっ!!――方のガキが、ポカーンとしながら俺を見て、それから、ウィンクをしながら可愛らしい笑顔で言った。

 

「それは後でねっ♪」

 

「了解ッス!」

 

「…………」

 

大きい方がジト目で見てくるが、慣れてるので気にしない。

それから、特に何も無かったかのように勝手に説明を始めた。

 

「あの耳が特徴的なのが、竜人族。此処の村長もそうね。あのちっちゃいのは土竜族。そして………あっちのはアイルーね。一応、獣人族だから」

 

最後のは、武器を持ってる人についていってる、二足歩行の猫を指してだった。

 

――やべぇ。カワイイ。

 

なんか、毛がフサフサしてそうだし、耳も撫で撫ですれば気持ち良さそうだった。

そして、ガキの方が、それを見てガタガタと震えていた。まさか恐いのか。もしそうなら、アイルーとやらに失礼だ。

しかし、小声で何かを呟いていた。良く聴いて、更に脳内補完すると、「可愛いかわいいカワイイ撫でたい撫でたいなでたいナデタイッ!」と言っている。

どうやら、逆に抑えてるらしい。

 

「ど、どうしたの……?」

 

「アイルーたんが可愛いっっ!愛でたいっっ!!ああ欲しいっっっ!!!」

 

遂に大声で叫んだ。しかし、殆どの人は気にしてもいなかった。

まさか………日常茶飯事なのか。

 

「そんなにアイルー好きなんだな……」

 

「好きで何が悪いっ!文句言うつもりかっ!」

 

アイルーの事となると、我を忘れるらしく、俺をしっかり指差しながら、反対の手を腰に当ててなんかポーズとりながら超真剣な顔で言って来た。

………凄いアイルー愛を感じます。

 

「いや、俺もあれは良いと思うよ?」

 

と言うと、目が超鋭くなり、更に真剣に言って来た。

 

「あれだとっ!?アイルーの事をあれって言うんじゃなぁいっ!」

 

と、何かファンクラブにでも入ってんのかと言いたくなるアイルー愛を語ってる後ろで、大きい方のお方が、ハンマーを空高く掲げていた。

そのハンマーは、速すぎず遅すぎずな速さで振り、クリティカルヒットした。

 

「あふっ!」

 

「それを語るのはまた今度………ネ?」

 

何か、その時のそいつは、生半可なアラガミよりも恐かった。

 

二人――一命気絶――には、とある家に案内された。

 

「たっだいまーっ!」

 

「帰れっ!」

 

呼応するがの如く、そんな声が中から返ってきた。

しかし、その家含め、この村の家にはドア無く、何か布を垂らしてある。きっと、日本にも同じような文化はあったんだろう。まあ、知らないけど。

 

「そんな事言わないでよ〜」

 

「失せろっ!消えろっ!地に還れっ!」

 

さっきよりも酷い罵倒(?)が、また返ってきた。どうやらこの女性は嫌われてるらしい。凄く。

 

「んじゃあ宿主はいる?」

 

「………寝てるよ」

 

さっきから色々と酷い事を言っていた本人が出て来た。炎のような赤い髪をした男……そのさっきの犯人は、俺をチラッと見てから溜息吐いた。

 

「てか、あんたが入って来ないから何事かと思ったが………そういう事か」

 

「まあね………あんた、それどうにかできないの?」

 

多分、それはどうしよも無くずっと担いでいる神機の事だろう。つまり、神機をずっと持ってる俺を中に入れるわけにはいかないからこいつも突っ立っているという事なんだろう。

 

「んじゃあ………先自己紹介だけしちゃうね。私はエレクで、何処ぞのアイルー愛好者はレナで、んでそこの馬鹿がコウガ」

 

「誰が馬鹿だ。この屑」

 

「プッ。負け惜しみとかダサッ」

 

「は?俺の事知らねぇ奴に対して馬鹿だと紹介して好感度下げようってつもりなんだろ?」

 

「コウガ……想像力豊か過ぎ」

 

「図星なのか?図星だから言い返せないのか?」

 

「まるでガキだね。レナよりもガキだ」

 

「そうやって話逸らす気か?引っ掛かるかよ?」

 

「とか言って、実はあんたが逸してるんじゃ?」

 

どうしてだろうか、流れるように餓鬼同士の喧嘩が始まった。此処は俺が仲裁すべきなのか。

というわけで、仲裁する為に、まずは神機を二人に向ける。

エレクはさっき説明したから、明らかに警戒の色が浮かんだが、コウガの方は余裕の笑みを浮かべていた。

 

「何だ?」

 

「………いや、見てる方が恥ずかしくなる喧嘩を止めれたならそれで良いんだ」

 

そう言うと、二人共顔を極限まで真っ赤にして、家の中へと駆け込んでいったとさ……

 

俺はする事が無くなったので、沢山の人達が向かっている、例の建物に入ってみた。

まず、一番最初に目に入ったのは、温泉だった。しかも、見た感じ男女別れてないし、混浴っぽい。

しかし、入ってる内の86%程はむさ苦しい野朗どもだらけだ。しかも、4%の奴が頭が輝いている。

次に目に入ったのは、カウンターらしき所だった。売店じゃ無さそうだから、とりあえずそこにいる女性に近づいてみた。

 

「はいはーい。依頼ですかー?」

 

二人いるのだが、その内の紫の服の人が話しかけてくる。

依頼……英訳すればリクエストか。俺達の場合はミッション……日本語訳しても任務だから、全然違う。

 

「何があるんだ?」

 

とりあえず、身体動かさないと鈍りそうだから、何か依頼を受けてみることにした。

 

「新しいのならこれですよ」

 

「………へ?」

 

どうしてだろうか、今俺は新しいモノ順に依頼の受注書らしきモノを渡された気が………

更に、その受注書は他の受注書と違い、ハテナが書いてある。一体何なんだというのだ。

 

「実はそれ、まだギルドで未確認なんですけど、貴方の武器を見ると狩れそうだと思うんですよ!」

 

――無茶苦茶だっ!

 

確かに、この神機はアラガミ含めなんでも斬れるとはいえども………だからってギルド――フェンリルみたいなモノか?――が未確認なのを出して良いのかと。

しかし、依頼主もちゃんと書いてあり、その依頼主が『手練のハンター』となっており、違和感を感じた。

更に、その依頼主の書いた文を要約すると、『デカくて硬くて赤くて、頭部に人がいたように見えた』という事らしい。

完全に、『アマテラス』だ。

アマテラス……名前は天照から取られてるんだろうが、そのアラガミは、『ウロヴォロス』という超大型アラガミが独自の進化を遂げた『第一種接触禁忌種』と呼ばれる、強大なアラガミである。

しかし、この世界の化物共の超大型はどのくらいかは知らないが、アマテラスは大体俺四人か五人分程だろう。

まあ、要は……狩らないとその辺りオワタという事だ。

 

「俺、これ殺るよ」

 

「では、頑張って来てくださーい」

 

これで良いのだろうか、頑張って来いと言われたから良いと判断し、奥の出口に行くと、丸っこいダチョウみたいな奴の後ろに荷車的なものがついていて、そのダチョウみたいな奴の上に、手綱を持ってるアイルー………

 

――原始的過ぎだろ馬車とかあぁぁああ!!??

 

厳密には馬車では無いが、俺は心の中で叫ばずにはいられなかった。

 

ガタンガタンと揺れる馬車もどきから、俺はやっと降りた。凄く、長かった。

テントみたいな場所にベッド、そしてデカい箱が二つ。

何故か着いてきたエレクは、青い方の箱をガサガサと漁り、何か液体の入ってるビンを投げて来た。俺は慌てて受け取る。

 

「それ、私のだからありがたく飲みなさいよね?あ、それ回復薬だから」

 

回復薬らしい液体を見ながら、俺は思った。

 

――回復錠みたいに早くは飲めなさそうだな。

 

少々ガックシしてしまう。回復は命取りだから、早く飲まないと逆に殺される。

しかも俺、一気飲みした事無いんだっ!

 

「何か、諦めを感じるけど……」

 

「ああ、今一つ諦めた事がある」

 

結局、アマテラスを探す為、回復を諦めながら歩き始めた。

 

此処、『渓流』は俺の世界の、最低限俺のいる地域では絶対に見れない、綺麗な風景が広がっていた。

透明な自然の水が地面に溜まり、それが川のように流れてる所もある。そして、その近くで熊みたいな化物が魚を獲っている。

まず見れないような数々の木が生えており、森のように茂っている所まである。

はたまた、ちょっとした天然の洞窟もあったりする。そこも寄ってみたが、まあ、洞窟だった。

それを出た先に、何故か巨大な木製の橋があった。まさか誰か住んでるのか。

すると、それを見ながらエレクが言った。

 

「あの先にレナが行くと、発狂する事もあるからね……」

 

もう、理解した。

余談だが、その時本当にレナがそこにいたらしい。まあ、まさか今いるとは思わないが。

そして、次に目に入ったのが、沢山の稲みたいな細い葉の植物が縦に生えている場所だった。そこも、水浸しだし。

こんな風景は、まず人工的に作らないと無理だろう。

そして、そこも通過し、なんか腐ったボロ屋が見えた。そして、それが崩壊。

その奥に、触手のような脚四本、その後ろに二本の脚があり、頭の部分に女性を象った物が着いていて、背中はなんか自然のマント的なもので覆われている化物……アマテラスがいた。

 

「アラガミって皆あんなデカいの?」

 

「………いや、あれが最大級だ」

 

エレクの質問にも答え、俺は神機を構える。

しかし、何かアマテラスの様子が変だと感じた。明らかに俺に対する攻撃体制を取ってない。

どうやら……何かあるらしい。

 

 

確かに、それは大きなアラガミだった。でも、それ以上に距離が空いてるのに、触手のような物を伸ばして、その場で回転した。

そして、それと同時にキンッと金属音のような音が聞こえた。

すると、カイがニヤリと笑った。しかも、フフッと言いながら。

それから、大声で意味不明な事を叫んだ。

 

「おお〜い!貧乳ババアそこにいんだろっ!!」

 

すると、カイが言い終わったと同時に烈風が起きた。それからコンマ一秒程遅れて声が聞こえた。

 

「誰が貧乳ババアだゴラァァアアア!!!!」

 

カイは、当然の如くのけ反っていた。

それから、苦笑いして烈風の過ぎた跡を眺めながら言った。

 

「ホントに面白いな」

 

「一発インパルスエッジ当てさせろっ!」

 

またよくわからない事を叫びながら、誰かが()()()()突進してきた。

 

「へいへい、俺が悪うござんした」

 

結構真顔で、その突進したお方と神機で競り合いながら言った。

 

「………まあ良いわ。隊長がいると幾分楽だし、それとプラマイZEROって事で……OK?」

 

突進した方の人が、神機らしき物を構え直しながら、アラガミを向く。

 

「ん……まあそういう事で。俺は乱射すっから、お前はインパルス重視で近接な」

 

カイも、アラガミの方を向く。

突進した人は、カイの事を隊長と呼んだが、猟団的な何かがあるのだろうか。

 

「あー………でもオラクルのchargeどうするの?無くなったら撃てないわよ?」

 

突進した人………桃色の髪を下ろしている女性は、『ちゃーじ』という言葉を使ったが、聞いた事が無い言葉だった。

 

「連射弾当てりゃ補充できるし、俺アサルトだから」

 

カイは当然解るようで、普通に受け答えする。

しかし、なんだ。乱()とか速射()とか言っているが、剣で弾を撃てるのか?と気になってしまう。

ずっと思っていた、アラガミが妙に襲って来ないな……と。そのアラガミは、触手のような物を岩にかけて、その岩にくっついている。何をしているのだか………

 

「そういえば、あいつ誰?friend?」

 

その女性は、頭だけ此方に向けながら、目も合わさずにカイに聞いた。

 

「………えと………フレンドって何でしたっけ?」

 

そして、通じていなかった。

 

「友達よ!友達。You're a fool!」

 

「………なんか凄く馬鹿にされてる気がするっ!意味解かんないけど直感が『あんたは馬鹿だな(笑)』ってコケにしてると告げているっ!」

 

そろそろ私には着いていけない域に到達してきたらしい………

 

 

「正解。って本当は解ってるんじゃないの?」

 

マイ(本名マイネ・レン・クルスフィード)が、完全に疑った目で見てくる。

しかし、解らない物は解らないのだ。

ちょっと補足すると、我等がいる支部での第二部隊副隊長が彼女である。んで隊長は俺。

剣での実力は俺の方が上だろうが、射撃と守備、ついでにサポートまで彼女の方が上だ。

因みに、俺がそれでも隊長でいられるのは、他のメンバーの支持と、最古参だという所だ。

そんな彼女は、棘だらけの暴言を俺に吐くのは日常茶飯事な癖に、別に仲が悪いわけじゃないという、微妙な関係だ。

因みに、貧乳ババアというのは、初対面の時の俺に対する態度がウザかったら言ったら、俺が逆に殺されかけたという………完全な禁句だったりする。

 

「解かんねえって。まあそんな事より、さっさと狩っちまおうじゃ無いか。第一種接触禁忌種さんを」

 

するとマイは、挑戦的な笑みを浮かべてから言った。

 

「でも生憎、隊長がいなくても殺れるくらい体力残ってないんじゃない?」

 

「まさか……な。それじゃ、始めるか。後、ちゃんと女神像狙えよ?」

 

女神像というのは、アマテラスの頭部についている、人間の女性のような物であり、剣での攻撃はあそこが弱点。

銃撃に関しては、腹の下が弱点………と言っても、銃撃そのものが効きにくいんだが。

 

「私の邪魔だけはしないでよね?」

 

マイが忠告してきた。当てたらコロスぞと。

銃撃は、この神機からオラクル細胞を弾として撃つものであり、当然人間にも当たるので誤射は駄目だ。

極東支部には、そんな誤射が滅茶苦茶多い人がいるんだとかいないんだとか……

まあ、そんな人がどうだというのが問題では無く、射撃苦手な俺の腕にかかれば誤射は普通。

つまり、もう後々コロサレルのが確定っぽい。

そんな、最早アラガミそっちのけな思考をしていたら、マイが駆け出していた。

神機を、剣から銃へと変形させる。神機そのものがアラガミだからこそできる荒業だ。荒神だけに。いや、今の無し。

当てると何故かオラクルを補充できる速射弾(無)に弾を切り替える。

速射弾(炎)とかの方が、威力はあるが撃つのにオラクルを消費するので、溜めるには無の方がいい。

勿論、オラクル無しの無ではなく、無属性の無だが。

マイはロングブレードと呼ばれるタイプの剣であり、オラクルを消費して放つインパルスエッジという大技がある。

因みに、俺のはバスターブレードと呼ばれるタイプで、チャージクラッシュという技がある。

が、それは今はどうでも良いのでスルー。

そして、マイはそんなインパルスエッジを放つ為に、装甲を展開する時のような、片手を刃と芯の間の辺りに置く。そして、ロングから爆風が溢れる。

すると、そこで初めて此方に気が付いた――思い出したと言うべきか?――らしく、マイを見て(?)触手でベシベシと叩く。

俺は、その時できる隙間に連射弾を乱射する。狙撃なんて俺には無理だ。

マイは冷静に、避けないで装甲を展開してガードしている。まあ、インパルスエッジの時とマイの場合はポーズが同じだから仕方がない。

アマテラスは、ビンタもどきをやめて、俺に飛び掛かってくる。もしもアマテラスがアラガミでなければ不可能だが、あんな巨体でもアラガミじゃあ出来てしまう。

俺は長距離のバックステップをして避ける。乱射しながら。

アマテラスが、少し触手を広げて、体が持ち上がった。これは回転しながら触手を打ち付ける技の動きだ。ウロヴォロスとなら結構戦っているので解る。

しかし、マイは知らないのかアマテラスに近付こうとしている。

まあ………マイの得意な作戦(?)って、ゴリ押しからの臨機応変な対応だから、放置しても平気だろうが、隊長失格になってしまう。

 

「回転来るから下がれっ!」

 

「えっ!?」

 

マイは、驚きながらもしっかり装甲を展開しながら後ろに跳んだ。そして、その装甲を触手が掠めた。

見ていて此方がヒヤヒヤする戦いっぷりだ。マイは。

アマテラスは俺の心境も知らぬであろう。そんなアマテラスは、触手は回転攻撃を終えてもやはり俺を向いていて、そのまま触手でベシベシ叩こうとしてくる。

しかし、ウロヴォロスもそうだが、アラガミらしい特殊な攻撃は全然しない。巨体を活かした突進や、長さが特徴の触手での攻撃、後はウロヴォロスなら地面に触手を刺して、それから地面から触手のような物を何回も突き出す。後は………なんかピカーンって光る奴。良くわからん。

そういう意味では、結構殺りやすいアラガミではある。

第一種接触禁忌種と言っても、そんなに強くはないと思った。

 

 

彼等は、とても強かった。

どうやら神機は、剣と銃を変えれて、しかも剣の時は盾を出せる。更に、二人共楽々走っているので、軽いのか怪力なんだろう。

あのアラガミは、物理的な攻撃しか全然しない為、一撃も当たってないし、動きからしてもモンスターより弱い。

更に、カイは女性に対して的確な支持を行う。全く、問題が無いようにも見えた。

 

「あっ……」

 

その時、女性が転んだ。小石につまずいたのか。バシャンという音が起きた。それに反応したのか、アラガミはそちらに突進した。

カイは、即座にずっと銃だったのを剣へと変形させて、女性の前にとてつもない速さで移動し、盾を出した。

アラガミは突進をやめて、触手でそのカイを叩く。

カイは、盾で正確に防ぎ、それから一回転して触手を斬った。そして、まさかの切れた。

 

「巫山戯んなよ……」

 

そう呟きながら、カイは剣を空に掲げた。すると、剣の周りに黒いオーラのような物が覆った。

アラガミは何かを感じ取ったのか、後ろに飛び退いた。しかし、カイは剣にオーラを纏ったまま、アラガミに急接近し、まるで龍属性のエネルギーのような物がカイの周りを走り、そのカイは振り下ろした。

ぐしゃあと血のような紅い液体が弾け飛び、アラガミの一部が崩れた。

 

「何か手応え無かったな……」

 

神機が、黒い化物の頭のような物に変わっていく。そのままアラガミにかぶりつく。更に、そのまま食い千切り、飲み込む。

神機はどうやら、武器以外の形にも変形するらしい。

 

「結構痛めておいたからね……」

 

女性はニヤニヤと笑いながら言った。

 

 

マイは、確かにニヤニヤしているのだが、疑問顔にもなっていた。

多分、俺がブラッドアーツを使った事に疑問を感じているのだろう。

ブラッドアーツは、秘められた血の力を持つ者しか使え無く、それにそういう奴は皆ブラッドという部隊に所属しているからだ。

教えるつもりは全く無いが、目覚めたのは最近で、ゴッドイーターになったのが結構前………とヒントだけにしても教えてるのと同意義になってしまうので何も言わない。

 

「いやぁ……どうだ?初アラガミは」

 

後ろにいるであろうエレクに対して声を掛ける。

 

「ちょっとイメージが沸かないわね……まさか皆が皆同じじゃあ無いでしょ?」

 

「そりゃねぇな。んで、一つ頼みがあるんだが……」

 

 

何故だろう。何故俺はこんな所にいるのか。

ヴァリアントサイズを持ち、警戒しながら周りを見る。

それは、アラガミに壊されるよりも昔の世界を見ている様だった。

俺がいるのは崖の上だ。そして、その崖に座っている男が一人。いかにも鉄を加工して作ったような剣を二つ。神機使いでは無いことが、容易に解った。

このまま何もしなければ何も解らないので、声を掛けてみた。

 

「隣り良いか?」

 

隣りに座りながら訊いてみた。いや、返信が来る前に座ってしまったんだが。

 

「……良いけど?」

 

そう、男は返して来た。

男は、後ろから見たら俺より年上に見えたが、顔を見ると年下に見える。

服は、凄く野生的とでも言うのか、綿とか絹とかじゃなくて、革………皮をメインに作られている物だ。

 

「俺、凰月(おうつき)ライト。君は?」

 

男は、不思議そうに俺を暫くみつめて、唐突に返して来た。

 

「カミト。オウツキライト……で良いか?」

 

「いや……ライトで良いよ」

 

カミト、別に彼がそういう名前でも変では無い。いや、ファミリーネームを言わない奴は、結構いるから。

しかし、下を見下ろしてもアラガミがいるどころか、綺麗な自然しか無い。辺境の地なのか、それとも異世界……的な場所なのか、多分後者だろうけど前者の可能性だってある。

だから、もう少し詮索してみた。

 

「カミト、君のその格好は……何だ?」

 

そう、まずはあまりにも奇妙な格好について調べてみようかと。

 

「ハンターなら誰でも着る……らしいね」

 

ハンター、狩人。もう、異世界だと確信した。俺達の事を指す時は、ゴッドイーターか神機使い。ハンターなんて、誰も言わない。

しかし、それよりも気になる事が一つ。

 

「らしいって……君はハンターじゃないのかい?」

 

その、曖昧な表現だ。

だって、彼がハンターなららしいなんて言わないだろうし、違うなら着てる理由が解らない。

だから、問いてみた。

 

「何も憶えてないんだ。仲間がさ、ハンターやってりゃすぐ思い出すって言うからやってるけど、全く思い出せそうに無いよ」

 

彼は苦笑いしながら言った。まるで、そんなに気にしてないかのように。

しかし、記憶喪失と来たか。少し、気になる。

 

「もしかしたら、カミトじゃないかもよ?名前。だから思い出せる物も思い出せない的な?」

 

「だとしたら、騙されてるんだな」

 

また、苦笑いした。また、だ。

なんか、感情が抑えられてるような、そんな気がする。

 

「だったらハンターやってりゃ良いだろ?こんな所にいなくても」

 

「思い出せないから此処にいるんだよ……」

 

そして、()()苦笑い。

確信した。このカミトという男、壊れている。

一応、何を言っても苦笑いするのか、試してみる事にした。

だから、俺なりに頑張って言ってみた。

 

「なら、俺が思い出させてやるよ」

 

そして……落ちた。言い終わった瞬間、崖が崩れて、落ちた。

地面とは結構距離があった。オラクル細胞を身体に組み込んでいるので、神機使いは身体能力等が発達している。そうじゃなければ、両足骨折していただろう。

しっかりと着地して、改めて辺りを見ると、半分は水辺で、半分は陸地といった場所だった。

そして、崖……下から見たら洞窟のような場所のある方向を改めて見ると、スタッと華麗に着地してるカミトがいた。

 

――なんだ、身体は憶えてるじゃんか。

 

それは、狩人としての腕なのであろう。隊長でもあんなに華麗な着地は不可能だ。

ホッとした刹那、確かな殺気を感じた。無意識の内に身体が右にズレたから良かったのだろう。その直後には、ザァとブレーキをかけながら、剣を()()()()()ポーズになっていた。更に、二本の剣の内、片方だけポッキリ折れている。

まさか、速さに耐え切れず折れたなんて事は無いだろう。つまり、神機に当てた。それしか考えられない。

しかし、衝撃はおろか、何も感じなかった。生半可な実力では無い事が良く解った。そして、もう一つの剣が俺の首を狙っていた事も。

首の皮が一枚だけ、切れているのだ。少しだけだが。

つまり、俺を殺そうとしたのだ。

 

「おい!何だよ突然!」

 

思わず声を荒げてしまい、大人気ないかと思ったが、別に問題は無いだろう。カミトだって、睨んで来ただけだから。

すると、クオンクオン……と聞いた事もない音が聞こえた。そして、その音、多分声が聞こえた方向を見ると、エリマキトカゲのような紫色で大きめ動物がいた。そして、その周りにその小さいのがどんどん集まって行く。

 

「……チッ」

 

カミトは今、舌打ちをした。感情が戻っているのか。

すると、カミトの姿が消えた。そして、動物の頭が宙を舞った。血がビシャリと地面を汚し、残った身体はバタリと倒れ、頭がコロンと落ちた。

俺は、全身が震えた。こんな残酷な事をいとも容易くするのか。

確かに、アラガミだって血に似た液体を出すけど、本物の血とは訳が違う。それに、首を弾き飛ばすなんて事は絶対にしない。

 

「……雑魚が」

 

カミトは、ゴミを見る目でそう呟いた。雑魚、と。

命を絶って、言う事がそれなのかと。とても、不愉快だった。

そして、またカミトが消えた。そして、取り巻きのような小さい奴等が、次々と血を吹き出しながら倒れた。

カミトの動きは、隊長よりも速かった。そんな、彼を指すには……光、光線、閃光、そんな言葉が当てはまる。

 

「……レイ、か」

 

俺が、思わず口に出してしまった直後、カミトは俺を見て、目を見開いて……糸の切れた操り人形の様に、その場に崩れ落ちた。

そして、その直後耳元で声が聞こえた。通信機は使えるらしい。

 

『おーい、おーい、聞こえるか?聞こえたら返事しろ』

 

『いやいやまさか……』

 

隊長と副隊長の声だった。脅かしてやろうかと思ったが、状況が状況なので、即座に応じた。

 

「隊長、今何処にいる?」

 

『おっ、ライトか。ほら、いたろ?』

 

『……ほ、本当に出たよ』

 

何か、俺が遊びの道具に使われてるみたいで何かイラッと来る。

 

「いや、だから何処?」

 

『まあでも、ライトだけだね』

 

『他に誰かいないのか?』

 

………俺、戦力外通知ですか?

 

「聞いてます?隊長」

 

『………んで、何だっけ?』

 

どうやら、ガン無視されていたらしい。

 

「何処?」

 

『ライトこそ何処だ?迎え行くぜ』

 

何処……と訊かれても解らない。とりあえず特徴だけ言っておこうかと。

 

「水辺があって、陸地と分かれてて……水は綺麗だな。後、なんかエリマキトカゲみたいなのがいるな……」

 

『渓流と孤島どっちだ……?』

 

『私の勘だけど、孤島だと思うわ』

 

渓流、孤島、そんな場所なのか。そして、特別な地名がある訳でも無いらしい。

 

『んじゃ、これから行くんで』

 

隊長が、そのまま切ろうとするので、カミトの事を伝える。

 

「あのさ、カミトって奴がいるんだが……」

 

『あんた、ちょっと変われ!』

 

『ちょっ!?コウガやめろ!』

 

知らない男の声が聞こえた直後、ガタッと音が聞こえた。通信機を奪ったのか。

 

『おい、今カミトって言ったよな?』

 

「あ、あぁ……」

 

その男は、相当焦っているらしく、耳が痛くなる程の大声で言ってきた。

 

『ふぅん……』

 

女性の声が微かに聞こえた。何処か、面白そうにしている声が。

 

『え、えぇと……行くぞ』

 

隊長の、少し慌てた声の後、通信が切れた。

 

それから、神機をジィと暇だから見ていると、何か嫌な予感がして、大きく跳んだ。

下を見てみると、神属性特有の明るい紫色をした弾が通り過ぎて行った。

飛んで来た元を見てみると、少女がいた。左手にはチャージスピア(神機)を持っている。それだけなら、神機使いだと納得した。しかし、右腕は……赤いカタナのような物になっていた。腕輪なんて、当然無い。

元神機使いだった。アラガミ化の始まっている奴だ。実際に見たのは初めてだが、それは即座に解った。

 

「……最悪だ」

 

素直に思った。アラガミ化した神機使いは、基本的にその神機使いが持ってる神機でしか倒せない。

しかし、それこそ誰だって他人の神機は使えない、矛盾した考えだし、その神機を本人が持っている。

俺は、神機を構える。カタナはそんなに長く無いし、リーチで俺の方が長いので、それで戦う。

 

「ウッ……」

 

苦しそうな表情を浮かべながら、確かに声を出す。まだ、ヒトという形を残しているのか。

だが、直後カタナとスピアを俺に向けて急接近してきた。

近づかれる前に、思いっ切り鎌を振る。しかし、スライディングをして躱される。

俺は、そのまま勢いを利用し、回し蹴りをする。すると、見事に腹に当たり吹っ飛ぶ。

そして、それだけで気絶したらしく、全く動かない。

近づいて、改めて観察してみる。赤みがかった黒い髪を、ポニーテールにしている。そして、結構長い。俺と同じく迷い込んだんだろうが、その前は裕福な暮らしをしていたんだろう。そう思う程、髪がサラサラしている。

いや、実際神機使いは、命賭ける程危険な仕事だが、その為かその神機とその家族は、暮らしが優遇される。それが理由で神機使いに憧れる人だっているくらいだ。

話を戻して、顔を見てみる。見て感じるのは、隊長に似ている。それだけだ。

スゥスゥと、息をしている。どうやら、アラガミになっているのは右腕だけらしい。でも、襲ってきたから、思考が鈍ってると考えるのが一番か。

なんとなく空を見上げる。すると……何か赤い物が接近していた。近づけば近づく程、それはワイバーンの様な、竜だった。竜そのもの。

 

「………ゑ?」

 

完全に思考がフリーズした。

ポカーンと固まっていると、その竜は俺の前に着地した。そして、その竜の背中から、隊長が飛び降りた。

 

――隊長、貴方は竜を手懐けたんですか?

 

結構本気でそう思った。

しかし、ジィーと見てると、その竜が突然光った。そして、光が収まった時には人がいた。燃えるような赤い髪をした男が。

 

「コウガ、サンキュな!」

 

「……別に、利害の一致ってだけだ」

 

コウガと呼ばれた男は、倒れてるカミトを見付けてそっちに走っていった。

そういえば、コウガという名前を何処かで聞いた気がするが、どうでも良い。

そして、大問題を忘れていた。目の前で倒れている、アラガミ化しかけている少女だ。

隊長は、それを見ても、同様どころか全く反応しなかった。

 

「どうすりゃ良いかな?こいつ」

 

一応訊いてみたが、へんじがないただのしかばねのようだ。

隊長はその場にしゃがみ、少女の額に掌を乗せる。そのまま何秒かジッとして、それから……バシンッと頬を全力で引っ叩いた。

……え?それってヤバくない?

 

 

中々帰ってくるのが遅い。途中でアラガミにでも襲われたのか。

そう、私は何時も違う事を考えて現実逃避している。毎日毎日浴びせられる、汚物を見る眼。私は、本気で嫌だ。

だから、私は時々農場に行っている。

 

「……何やってんのよ」

 

私は、初めて見た光景に、呆れた。

三人が仲良く並んでアイルーを抱き締めながら寝ている。一人は、やはりレナ。もう一人は、何故かヴェン。更にもう一人は、大きめの腕輪を着けている少女。神機らしき物も近くに置いてあるし、ゴッドイーターなんだろう。

まあ、この少女が此処にいる理由は、たまたま此処にいて、レナにアイルーが何たるかを語られたからだろう。

しかし……最近見ないと思ったら、ヴェンは一体何をしているのやら。それとも、アイルー好きだった事を私が知らなかっただけなのか?

 

「中々面白い絵だな……」

 

「ホントそうよね………ってわっ!?」

 

驚きのあまり、その場で転んでしまった。

橙の髪をした男の存在に、全く気が付かなかった。しかも、普通に話してしまった。

 

「エレク、だろ?アンナから聞いてある」

 

「アンナの知り合い?男の知り合いがいるなんてね……」

 

正直、アンナの名前が出たのには驚いたけど、さっき程では無い。いや、本音を言えば、アンナに男の知り合いがいた事の方が驚いた。

 

「………いないのか?」

 

「多分、あんただけよ」

 

純粋に疑問に思ったらしく、目をぱちくりさせている。

 

「あいつの変態っぷり考えれば解るでしょ?」

 

すると、わざとらしく考える仕草をしてから、ニッと笑って言った。

 

「そういえばそうだな」

 

納得してくれたらしい。

そして、クルッと向きを変えて、農場から出ていった。彼は、多分暇潰しで来たのだろうか?

まあ、結構どうでも良い話ではあった。

どことなく和む三人を見てると、その内の一人、ヴェンがゆっくりと目を覚ました。

こんな状況でも、ヴェンの事だから屑を見る目くらいはすると思ったが、ほののんとした表情になって、目を細めて頬をスリスリした。アイルーを使って。

 

「エレクも、アイルーを撫で撫でしに来たの?」

 

……吐き気がした。あまりにも気持ち悪い。不自然。まるで、別人のようだった。

 

「あれぇ?珍しいじゃん、あんたから話しかけてくるなんて。しかも嫌味でも何でもない」

 

嘲笑しながら言ったつもりだった。しかし、ヴェンはクスリと笑っただけだった。

 

「何が可笑しい?」

 

「……エレクって、思ったより酷い奴じゃあ無いんだね」

 

「君はエレクって言うんだねぇ」

 

そして、ゴッドイーターらしき少女がさり気なく会話に参加していた。

桜のような明るい桃色の髪、それは短くて、何処かお転婆な雰囲気を秘めている表情をしている。

 

「君は……ヴェンのライバルかなんかかな?」

 

「え?いやライバルなんかじゃないわ。こんな奴」

 

睨みながら言ってあげたが、ヴェンは苦笑いを浮かべただけだった。

 

「まあ、エレクには敵いませんね」

 

敵わないと言ったのか?前は自分の方が強いだのあんたには負けたくないだの言ってきていたのに。

 

「本音は?二人共嘘はやめた方がいいんじゃない?」

 

「は!?嘘なんて言ってないわよ」

「え!?嘘なんかじゃないですよ」

 

凄くピッタリなタイミングで返してしまった。

すると、少女は面白そうに笑顔になり、痛い所を指摘してきた。

 

「ヴェンが幾ら変でも、嘘はよくないねぇ?それに、本気でこんな奴だなんて思ってるなら、もうどっか行ってるんじゃない?」

 

指を振りながら、屈託の無い笑顔で言う。楽しんでいやがる。

 

「それは、此処にいるのが落ち着くからで……」

 

「だったら遠く行ってるでしょ?」

 

「なんか三人が寝てるのを見てて……なりいきよっ!」

 

「話さなくても良いんじゃん?」

 

「折角だから相手に……」

 

「話し相手以上なんだね……それってつまり。もしかして、ツンデレ的な?」

 

……つんでれ?

聞いたこともない言葉を言われたが、内容はなんとなく理解した。しかも、図星だ。

 

「それにヴェンわぁ〜諦めてるんだね?」

 

「……何を?」

 

「強くなること。エレクより弱いって、諦めてるんだね?」

 

「諦めてるって……そんなの、関係ありませんよ」

 

「ウププ。私なんも言ってないけど?なのに関係無いって、わざとそんな態度取ってるって自白してるようなもんだよね?」

 

「え?違ったんですか?」

 

「しらばっくれてもむーだだよ〜?」

 

ヴェンも、確実に弄ばれてた。

 

「フフッ………それで、一つ訊きたいんだけど」

 

すると、少女は突然真顔になり、尋ねてきた。

 

「此処、何処?」

 

今更過ぎる事を。

 

 

ビシャリと、水が跳ねる。そして、全身を濡らす。

私の耳に入る音は、「ポキポキ」と鳴らされている指の音だけ。そして、顔を上げると、視界に映るのは、かの煌黒龍でも尻尾巻いて逃げ出しそうな程恐い顔をしたコウガ。

 

「よう?久しぶりだな」

 

そう、コウガの口から発せられた言葉は、口調こそ何時も通りだが、怒りに満ち溢れていた。

 

「………何故に激怒?」

 

そう訊くと、餌を見るような目をしながら言った。

 

「ハハッ、自分で考えろヤ」

 

今此処にいるのは、カミト(気絶)とコウガ、そして異世界の人間らしき三人。気絶さんを除いたら、皆此方を見ている。

まあ、何時も通り観察していたら、滑って高台から落ちて来たと。そして、それで注目を浴びるのは普通……

 

「えぇと?見てたのが悪いと?」

 

すると、大剣をとてつもない速さで抜刀し、私に突き刺そうとした。

転んで倒れていたとはいえども、大剣での速さなら反応できたので、横に転がった。それから立ち上がり、炎をコウガに向けて撃った。

 

――あ……ヤバ。

 

その炎を見事に断ち切ったコウガはニヤけていた。理由は、本人が教えてくれた。

 

「あんたは、炎を出すモンスターか?そして、髪色的に黒が主な体色……」

 

図星だった。しかし、コウガには当てる事はできないと思いたい。

そもそも、この辺りの地域に、黒で炎を使う奴など………あ、いたわ。

しかし、私が思いついたモンスターを、コウガは想像しなかったからか、少し俯きながら思考している。

まあ、それを思いついても違うんだけどね♪

 

「さてと………」

 

コウガは考えるのに夢中になってるし、まさかあの三人がちょっかいを出してくるとは思えなかったので、さっさとズらかろうと考えたが、何かが高速で接近してくるのを察知して、後ろに跳んだ。

正解だった。神機(槍)が私のいた所にちょうど刺さったのだ。

神機は彼等曰く、オラクル細胞の結合により作られた物でしか傷一つつけられない。そんな硬い物が、刺さりでもしたら風穴が空いてただろう。

 

「何するのよっ!」

 

軽く命の機器だったので、三人がいる筈の方向を振り返りながら、叫んだ。

しかし、その直後には、血のように紅い刀が、私の首に突きつけられていた。

あの少女だ。そして、さっきの神機を投げたのもこいつの筈だ。

しかし、拍子抜けするような事を言ってきた。

 

「え、ええと……すみませんっ!」

 

チラッとコウガを見ると、親指を立てていた。

 

――あいつ目線だけで脅しやがったっ!

 

何故エレクに負けたのか、全く解らない程の行動力と大胆さを秘めている。だから、コウガの行動だけは読みにくい。

しかし………さっき見ていた時より、全然様子が違う。強いて言うなら、人間らしくなっている。

 

「し、失礼します……」

 

なんか、見ていると守ってたげたくなるような可愛らしい涙目で、ロープらしき物を器用に巻いていく。勿論、私に。

どうやら、精神的な攻撃には弱いらしい。

しかし、どうした事か、この少女は私から微妙に距離を取っている。まるで、恐れてるように。

しかし、絶対的な武器を持ってる彼女こそ、私が畏怖していいんじゃないかと思う。

結局、何も抵抗できずにグルグル巻きにされた。そこまでキツくはないのだが、冗談抜きで硬い。力技で解こうなら、此方が千切れそうな程。

 

「あ、あの……」

 

そして、巻き終わった直後、耳元で、幽かな声で訊いてきた。濁りの無い、透き通った声。記憶ではなく記録しておきたいような声だった。

 

「貴方は、お強いんですよね?」

 

「まあ、至禍凶刻と呼ばれる程にはね……」

 

至禍凶刻、異世界住人なら勿論、この辺りのハンターも聞き覚えが無いだろう。

 

「シカキョウコク……格好いいですね」

 

腕と身体がグルグル巻きにしてあっても、脚はどうもしてないから支えが無くても平気と判断したか、少女は離れて行った。

この際、彼女の好みを考えない事にする。至禍凶刻が格好いいなんて……とは言ってはいけない。

しかし、巻かれている間、コウガがいる筈の方向から、紅龍がずっとコチラを睨んでるかのような禍々しいオーラを感じたのだが。

まあ………紅龍ではなく、火竜なんだろうが。

 

「まあ、あんたにはユクモ村に来てもらうよ」

 

ポンと、私の肩に手を置いて、言ってきた。

凄く、蹴り飛ばしたかったが、一撃も当たらず馬鹿にされる未来が見えたので、グッと我慢。

結局、私はユクモ村へと連行されたのだ……

 

 

ハッ、と目を覚ます。私は、何故かアイルーを抱えている。隣の三人みたいに。

あれからどうしたのか、全く憶えてない。

整理すると、あれからヴェンとは一文着あった。それから、やっと少女……本名、アリス=ルナ=ルクス・トゥルースに此処か何処かを説明して、そしてレナが起きて……それ以降が全く思い出せない。

私は、一体レナに何をされてしまったのか?そこが凄く重要なのに、全く憶えてない。

 

「おはよ〜」

 

すると、寝ていると思っていたアリスが、隣から声をかけてきた。因みに、三人の中で一番近い。

そして、直後不思議な事を言った。

 

「アイルーに好かれるなんて、良いな〜」

 

好かれると言われても、イマイチ解らない。

 

「……というか、私何故寝てたの?」

 

そう訊くと、笑顔を引っ込めて、妬み嫉みに溢れた瞳で語った。

 

「貴女はね、今持ってるそのアイルーに麻酔を入れられて眠り、そのままそのアイルーが自ら腕の中に入った」

 

アイルー恐るべし。と、まるで他人事のように思ったが、古龍であり世界規模の災禍を引き起こす龍とも言われている私が、獣人族に負けたという事実は、ヴェンには面白かったようで、アハハッと笑った。というか、起きてたんだ……

 

「正直言って、気がついてたと思ったよ」

 

アリスの向こう側から、そんな言葉が聞こえる。でも、嫌味という感じでは無さそうだ。

 

「レナに気を取られてたからね……」

 

そう返す。

私達の関係は、アリスのお陰で友達になった。そう言っても過言では無い。

多分、アリスは敵を作りそうだけど、それ以上に他人との付き合いが上手いと思う。

ただ、アイルー愛好会――レナが創ったらしいが………――には入りたくないので、アイルーをポイ捨てして、マイハウスことカミトの家に向かってみた。

 

「あ、私も行く」

 

ちょっと駆け足で、ヴェンもついてきたので一緒に。

ヴェンの家に入って、そこにいたのは珍しく一人だった。全てを飲み込む闇のような、完全な黒の髪をした彼女は、私達を交互に見てから、彼女らしい笑みを浮かべた。

 

「へぇ?いつの間に仲直りを?」

 

「……失せろ」

 

突然放たれた一言、それがヴェンの物と解るまでに数秒を掛けた。

何も無い筈の室内に、微風が吹き、湿気がどんどん上がっていく。結構マジギレ寸前だった。

 

「まあまあ?落ち着いて?ね?」

 

彼女……アンナは、少々焦ったように苦笑いしながら言った。しかし、なんのポーズを取ることは無かった。強いていうなれば、最初からずっと両手を後ろで組んでる。

しかし、ヴェンは当然そんな言葉で収まるような性格で無く、風がより一層強くなった気がした。

 

「黙れ……ゴミが」

 

「い、いや……ね?この前はごめんって?ね?ね?お願いだから……ね?」

 

アンナは本気で焦っているらしく、ね?と連呼するように言っている。

しかし……『この前』ってなんだ?

その疑問は、口にもすることができなかった。それは何故か?

 

「ただいまー………」

 

場違いな言葉が、背後から発せられたからである。

 

「あ……えと……」

 

発した本人は、状況を理解したのか、一歩下がる。適切な判断だと思う。

しかし、その本人、少女――雰囲気的にはリオンやレナに似てるので、幼女でも合ってるかもしれない――は、左手に回復薬と思わしき瓶――中身は空――を持っている。それは普通。しかし右腕、正確には肘から先が、紅い刀になっていた。

ヴェンも気になったであろう。私とヴェンの視線が刀に注がれる。

すると、少女はシュンと、俯いてしまった。顔もなんか朱い。

 

「そんなに腕を見つめちゃって……」

 

アンナの、馬鹿にする時のトーンの声が聞こえた。

しかし、そんな事はあまり気にならなかった。アンナ平然といれるのは、既に会って会話等をしているからだろう。しかし、腕とはどういう意味なのか?

それが気になって、更にマジマジと見つめた。そして、私が見始めた直後、アンナの叫び声が聞こえた。

 

「死にたくなければ見るのをやめなさいっ!」

 

アンナが叫ぶのが珍しかったから、思わずアンナを見た。表情は、真剣そのものだった。

 

「えっと……アラガミって、解ります?」

 

遠慮がちな声が、また背後から聞こえる。

今度はそちらを見る。結構真面目な表情で、ジッと私を見てる。

 

「ええ、オラクル細胞だとか……って奴でしょ?」

 

満足そうに笑う。その笑顔も、凄く子供らしかった。

 

「はい、そうです。そしてこの刀もそうなんです。ただ、神機ではありません……」

 

そして、寂しそうに笑い、続けた。

 

「侵食されてるんですよ」

 

侵食。私の知識で理解できたのは、アラガミ化しているという事だ。しかし、その中途半端な所で止まってる理由がいまいち解らない。

 

「なら、なんで右腕だけなのよ?」

 

「ブラッドアーツです」

 

またまた、よくわからない事を言った。ぶらっどあーつなど言われても、意味が解らない。

それから、少女はじっくりと教えてくれたのであった。

 

 

「アラガミの出現報告多数だ」

 

「ふーん?第二隊長も大変ね」

 

嫌味を混ぜながらも、アリスはそう返してきた。

第二隊長というのは、第二部隊隊長の省略だろう。そして、二番目の隊長、という意味もあるだろう。

しかし、それについてどうとは言えない。アリスが、第一部隊隊長だからだ。

ウチの支部は、第一と第二しか無い。そして、その二つは実力で分けられている。そして、当然第一の方が上だからだ。

因みに、何をしていたかというと、クエストの中にどれだけアラガミのクエストがあるのかを確認して、それを一応報告している。

 

「まあ、この世界も終わったね」

 

本音か冗談か判断のしにくい発言をする。しかし、実際そうなのだ。アラガミは、消すことのできない存在。でも、だからこそ、抗う。

 

「なら、終わらせないだけだ」

 

その考えをざっくりまとめて、アリスに返す。

もし、アラガミがこの世界を喰らうのなら、先に俺が喰らう……それだけのことだ。そして、今までもやってきた。

 

「なら、あんたが喰われないようにね」

 

真面目な顔つきになり、そう言った。

それは……言われても、どうしよもないことだと思った。

 

 

アンナ……彼女は、パッと見はただの馬鹿だ。しかし、実際はそうでもない。それは、今アンナが証拠を提出したばかりだ。

ただ、少々非現実的だが。

そして、エレク、あいつもアタマはある。しかし、それだけの知能があるのなら、何故二人を殺したのか、それで平気顔して仲良くしようとする意味が解らない。

 

「アンナ、つまり常識の再構成に、アラガミという存在が巻き込まれて、オラクル細胞の塊であるアラガミは、生物的な何かに生まれ変わっている……という事?」

 

アンナが頑張って一時間も掛けて説明した事を、エレクは容赦無く解りやすく纏める。

アンナは少し不服そうに、頭を立てに振り、肯定した。

しかし、この二人が知り合いだと知った時は、納得してしまった。この二人に、なんか共通点がある気がしたからだ。………色云々の事ではない。

 

「しかし、アンナって狩り出来たんだねぇ?」

 

レナが、全く違う話をしだす。

あ、因みにだが、この四人で狩りをした所である。まあ、エレクと一緒だということは凄く嫌ではあったが。

 

「まあ、これでも危険度は結構上だろうね?神出鬼没だとも言われてるし」

 

神出鬼没。そんなモンスターはまずいない。だって、態々ハンターに会いに行く馬鹿がいるわけないから。

 

「……自覚は?」

 

一応、訊いてみる。

 

「無いに決まってるでしょ?」

 

普通で良かった。

しかし、アンナの事を詮索したいが、それよりもアラガミについての事を訊きたかった。なので、話を軌道修正する。

 

「じゃあ、俺達でもアラガミは倒せるのか?攻撃が通らないのは、オラクル細胞の結合の所為なんだろ?」

 

まずは、一番大事な事を訊いた。

もし狩れないようなら、詰むから。

 

「でも、凄く硬いんじゃない?ああ、それとアラガミはオラクル細胞の塊だから、幾ら倒しても蘇るってのは、平気だと思うよ。だって、もうアラガミは一つの個体だからね」

 

俺が次に質問をするのを予測したのか、先回りで答えてくれた。

でも、とりあえずアラガミに滅ぼされるという事は無さそうだ。

 

「さて、少し話を変えるけど、良いかな?」

 

アンナがニヤリと笑う。それと同時に、エレクの表情に警戒の色が浮かぶ。

何を警戒したのか知らないが、それは杞憂に終わったと思う。

 

「あいつ、まだ名乗ってないよね?」

 

アンナがそんな言葉を発した直後、俺含め全員が、サッパリ理解してないようで、不思議だといわんばかりの表情になった。

 

「あ……うん、片腕刀のあいつ」

 

苦笑いしながら、付け足す。そして、それは凄い判りやすい言い方だった。

 

「ブラッドアーツで、アラガミ化の進行を止めてる……とは言っていたけど、それは表面上だけだと思う。時折見せる表情はさ……」

 

アンナは、こう続けた。

 

――まるで、生きる屍みたいだよ。

 

それは、俺の頭の中で靄が掛かっていて、スッキリしなかった事が、スッキリしてしまった。

 

「そういう事だったのかよ……!」

 

無意識の内に、声を出してしまう。そして、三つの視線が俺に刺さる。

 

「い、いや、関係ない話だから」

 

そう、弁解しようとしたら、視線の鋭さが増した。これは、話さないといけない感じか。

なので、一応なんの話か位は言った。

 

「カミトの事だよ。生きる屍ってのが、凄く似合うからさ……」

 

「まあ、それもそうよね?これで二回目だし」

 

エレクは、少々呆れた様子だ。しかし、何も訊かれてないだけマシか。

因みに、二回目というのは、カミトはまた記憶を無くしたのだ。あの、ライトという男と一緒にいたのだが、彼は、「レイと言ったら気絶した。というか、俺が殺されかけたんだぞ?」としか言わなかった。カミトは、人間を殺すようなイカレ野朗じゃないから、記憶が戻った訳でも無い。結局、その件については迷宮入りしたのだが。

あ、更に脱線するが、そのライトって奴は、レイが何処かから連れてきたアリスって女を睨んでた記憶がある。

で、色々と戻るが、アンナは何故か両手で口を塞ぎ、笑いを堪えている様子だ。

 

「アンナ、どうした?」

 

アンナは、何回か深呼吸した後、はた迷惑な事を言った。

 

「コウガ、何が解ったの?」

 

どうやら、俺の推測は、アンナが先に推測していたらしい。

 

 

私は、訳あって第一部隊隊長のアリスと共に行動をしていた。アリスは、私の狙撃が上手いからと言っているが、実際の所は第一のスナイパーの方が上手い。

それに、何方にしてもそれが理由で、私達は何故村の観光をしているのかが疑問なんだが。

 

「えっと……マイで良い?」

 

アリスが、呼び方をどうすれば良いか確認してくる。

しかし、実力も階級も上の彼女に、それはやめろだなんて言えるわけもなく、それで良いと返した。

しかし、彼女はこう言った。

 

「そう。なら、遠慮なくマイネと呼ばせてもらうわ」

 

一瞬、耳を疑った。マイと呼んで良いと言ったのに、マイネと呼んだのだ。

少し嬉しかったが、それ以上に疑問だった。

 

「別に、マイと呼びたければ呼んでも……」

 

すると、アリスは不意に優しい笑みを浮かべた。それを見た瞬間、私は頭を鈍器で殴られたかのような感覚を覚えた。

アリスは仲間にも非情な隊長として有名だった為、実の所恐れていた。しかし、アリスはこう言った。

 

「口ではそう言ってるけど、嫌そうな顔してたから」

 

「あっ……」

 

アリスは、私の事を良く観察していた。自分で言うのも難だけど、ポーカーフェイスには自信があった。しかし、容易に見破られた。

 

「……第二に入りたかったな」

 

私の顔を見ながら、呟いた。少しわざとらしいが、また表情を観察しているのか。

しかし、第一部隊隊長というのは、そう簡単になれるものではない。それに、それだけの実力があると認められていることであり、それだけの権利はあるのだ。皆からしたら羨ましい限りであろう。

そして、アリスは更に続けた。

 

「隊長は辛いよ?それに隊員が馬鹿だらけで余計大変。だけど、第二は結束力もあるし、カイの指示も上手いし……」

 

そして、そこまで言って何かに気がついたらしく、両目を見開いてから、私の両肩をガッチリ掴んだ。

 

「此処にはフェンリルも何も無いから、第一も第二も、隊長と隊員も、正確には定まってないよね!?」

 

「ま、まあそうですけど……」

 

それはそうなのだが、唐突に大声を出すから、周りからの目線がイタイ。

それに、アリスはいち早く気が付き、弁明を始めた。流石隊長、周りを良く見てる。

そして、アリスは弁明が終わると、顔だけ此方に向けて、普通の声量で言った。

 

「じゃあ、これからよろしくね!」

 

その時のアリスは、ガラス細工のような儚さを持つ、美しさがあった。

 

猫のような生物、アイルーが沢山いる農場で、説明が行われた。

 

「まずは、どんなクエストだろうが、四人までってのは解った」

 

そう、カイが言うと、後方にいる、元々この世界に住んでいる彼等は何かしら肯定の動きをした。

 

「後は、今んとこアラガミとモンスターは同一視されてるな」

 

それは、既にアンナに聞いている。あの娘、馬鹿にしか見えないけど、頭は良い。

 

「何か馬鹿にされた気がする……」

 

アンナが私をガン見しながら呟いた。勘が良すぎる。

そして、そんな事を知らないであろうカイは、本題(多分)を話し始めた。

 

「とりあえず、まずはアラガミを殺りたいと思うんだけど、俺んちゴッドイーターとハンターの御方々と一緒に狩りをしたいと思うんだ。だからチーム組んで」

 

そこまでは、確かに聞こえた。しかし、突如発生した豪風により、音が遮られた。

そして気が付くと、アリスの隣にアンナとレナが引っ付いていた。とてもでは無いが、そんなに速く動くのは無理だ。

そして、二人に挟まれてるアリスが、私に向かって手を振っていた。そして、そのアリスは言った。

 

「adiuvate」

 

アリスが言わんとしてることを理解したのは、私だけだと思う。何故か?皆意味が解らなくてスルーしているからだ。

……まあ、つまり、助けてと言いたいんだろう。ライトは、それなりに英語が解るので、help meと言っても簡単に理解されてしまうから、そう言ったのだろう。

 

「んじゃ、そっちはそこの四人で良いだろ」

 

しかし、手を振っていたから、私が誘われている事はカイでも解ったらしく、勝手に決定しやがった。

そして、この世界の人は、コウガ以外の皆自然に逃走していった。だから、カイとライトとコウガと、片腕が刀になっている、見知らぬ少女がもう1チームになった。

 

火山、そう呼ばれるそのまま過ぎる場所で、今回のtargetを確認した。

色は、ざっくり言えば水色か。薄めの青と言った方が合ってるが。

形状は、まずは中心に人間のような形をしてる物があり、頭の上から扇状の物が出ており、そこに邪眼がある。

下に行くと、スカートのような物が広がっており――前から開いたり閉じたりできる――更にそこから脚のような物が伸びている。

名前は、サリエル。死を司る大天使の名だ。

 

「あまり……大きくないね」

 

レナが、そう呟く。

 

「中型……よね?」

 

アンナが、唖然としながら言う。

 

「えぇと……マイネ、知ってる?」

 

器用に、片目だけ私に向けながら訊いてくる。

 

「興味ないから……知らない」

 

素直に答える。

何故だか、凄く気まずい空気が漂った。しかし、サリエルは音に反応するタイプのアラガミだ。だから、呟きが聞こえたらしく、此方を向く。

何か喰っていたのか、地面に着いていた体を浮かせる。戦闘態勢でしかない。

 

「アンナは脚狙って!レナはハンマーで頭狙って!マイネは狙撃してオラクル足りなくなったら接近戦!」

 

癖なのだろう。ずっと隊長をやっていたから、だろうか。

しかし、単調な作戦だった。誰でも解るような。しかし、それには理由があるだろう。

 

「悪いけど、バレットの弱点知らないから!後、サリエルは追尾性能の高いレーザー攻撃と、ヴェノムを撒き散らす攻撃があるから注意!サリエルが落ちたら、レナは脚狙って!私は頭を斬るから!」

 

あくまでも基本的な事しか言わない。戦術の類は何も言わない。

それは、凄く気になった。しかし、あえてその作戦に従う事にした。

サリエルは、放射モジュールの、神属性以外の弾を、スカートに当てるのが良い。

アンナは、適当に突進する。しかし、サリエルはヒラリと躱す。その際に、黄色の弾を残す。時間差でそこからレーザーを発射するのだが、これが中々判りにくい……

 

「レナ!五秒後レーザー!」

 

……え?

どうやって見定めたのかは解らないが、アリスはそう言った。

私は、1狙撃弾(炎)2(同時に)追従・放射(炎)の弾をスカートを狙い撃つ。それも、また舞うように左に避けられるが、気にせず、今度は先読みで撃つ。すると、右側へと、此方に向かいながら大きく動く。それは、完全に予測通りで、見事に当たる。

しかし、一発で止まることは無く、また左へ右へとゆらゆらと動きながら近づいてくる。

あまり近づいてなかったレナは、そのサリエルに近づく。そして、右側に移動した時、左側から横殴りにした。

 

――効いてる!

 

実の所、弾かれるだけだと思ったが、ガツンと効いている。その証拠に、サリエルは左側にズレている。

しかし、流石アラガミ。ズレはしたけど、怯む事なく、今度は直進して来た。

スナイパーをロングに変化させ、剣を私の手前に構えスタンバイ。このまま突っ込んで来るようなら、インパルスエッジを当てるし、来ないならまたスナイパーに戻すだけ。

 

「………」

 

アリスの、とても冷たい目線を感じた。それは、まるで何故気が付かないと問い掛けてるようだ。

そして、そらのお陰で気が付いた。サリエルは両腕――らしき物だけど――を自身の手前でクロスさせている。あれは、周りにバリアを張る攻撃の予兆だったか。

インパルスエッジを撃つと、衝撃で大きな隙ができる。だから、当てれても、自分も当たる。

とりあえず、右側に最低限の距離跳ぶ。そして、サリエルは曲がることなくバリアを張りながら止まる。

そこに、アリスが跳びかかる。片手でショートを持ちながら、バリアが消えると同時に頭に一撃。それと同時に、アリスの身体から赤黒い光が放たれる。

 

――また、か。

 

あれは、ブラッドアーツを使う時に放たれる光………らしい。つまり、カイもアリスも使えるという事だ。

そして、瞬間移動したかのように後ろに動き、また頭に一撃。そして、サリエルが反応する前に左へと動き、もう一度一撃。

それを何回か繰り返していたので、放射モジュールの弾を撃つと迷惑だと考え、私は何もしなかった。

横目で他の二人を確認すると、レナはハンマーを構えながらも、突っ立っている。アンナは、低く構えている。

アリスが攻撃を止めた瞬間、アンナが入れ変わるように間合いに入り、小さくバック転しながら脚を斬る。

サリエルは警戒したのか、少し下がった。それと同時に、アンナがニヤッと笑う。

アンナは斬り終わった時に、双剣を二つ共向きを横にする。そして、それと殆ど同じタイミングで、レナがそれを踏んで常識外れな高さまで跳ぶ。

その間に、1狙撃弾(無)2(1が何かに衝突時)通常弾極短(炎)3(通常弾短(炎)4(3が何かに衝突時)通常弾短(炎)の弾を胴体へと撃つ。

破砕の弾はスカートに有効だが、貫通の弾は胴体が有効だからそうする。

しかし、サリエルは弾をどれだけ撃たれても気にせず、普通に後ろへと下がる。

すると、アリスがショートを上に向けながら構える。そして、落ちてくるレナに合わせて振る。

レナは、そのショートを蹴り飛ばし、一瞬にしてサリエルと距離をつめて頭にガスんと一撃。

サリエルは、避ける事もできずにヒット。そのまま落ちる。

そして、チャンスだから追撃する。いや、しようとしたが、アンナが私を手で制した。

 

「今絶好のチャンスでしょ!?」

 

飛んでいないから当てやすいのと、落ちてる間はスカートと脚が柔らかくなるので、チャンス以外の何物でもない。

しかし、アンナは私を見て、嘲笑するような笑みを浮かべた。

 

「解かんないんだ?可哀想……」

 

アンナはそれだけ言って、サリエルに近づく。そして………

 

「うらあっ!」

 

蹴った。動きは決して、お世辞でも良いとは言えない物だった。しかも、痛そうに足を抱えてる。

 

――何をしたかったんだろう?

 

それが、一番の疑問だった。

 

「………アンナ、無理しなくても良いんだよ」

 

レナが、憐れむような声で、アンナにそっと告げる。

 

「おっかしぃな……」

 

アンナは、今度は双剣を逆手持ちにして、脚に全力で振り下ろした。流石に弾かれて折れる事は無かった。

しかし、また逆に不自然な事が起きた。グシャリと刺さり、血のような、というより血がダラダラと刺した部分から流れ始めた。

 

「バルス」

 

アリスが、ニヤケ顔で謎発言をした。

その直後、サリエルがスタングレネードのように激しく発光した。そして、光が収まる。

すると、サリエルがいた筈の場所に、自分と同じくらいの歳の少女がいた。

もう、わけがわからない。

 

 

――やっぱり。

 

完全に、予測通りだった。しかし、今回の予測は、少々自身が無かったので、ホッとした。

体色と同じ青色の髪に、その真逆の真紅色の瞳。荒神と言われてもハァ?となりそうな見た目だ。だって、人間だし。そして、ちょっと子供っぽく、パッチリしている瞳は、ド直球のタイプだ。

そして、永遠の謎()は元の形をそのまま服に縮めたような形だ。被り物は無いけど。

 

「キュゥ……」

 

そんな少女のお腹が無った。しかし、生憎餌などもってない。どうしたものか……と、考えてると、少女はテトテトと歩き始めた。そして、その辺に落ちてる小石を拾うと、食べてしまった。それを咀嚼してるのか、ゴリッゴリッと音がする。

 

「もうどうなってるのよ……?」

 

マイネが、不思議そうに呟く。しかし残念ながら、何が起きたか理解できてないのは、マイネだけだ。

まあ、『ばるす』というアリスの呟きは、全く理解できないんだけど。

 

「……貴方、人間じゃない」

 

私を見ながら、少女は呟いた。一瞬で見抜かれたのは、少しだけ驚いたが、この世界のモンスターと同じ者になっているのなら、感覚で判るだろう。

 

「そうね。でも、貴方も……ね?」

 

少女は、無表情のまま私に近づいてくる。そして、私にもたれかかった。

 

「神機、恐い」

 

小さな声で呟く。

 

「でも、私も貴方を攻撃したわ」

 

「手加減してた」

 

ジッと私を見つめながら、応える。信用されるのは嬉しいけど――というか持ち帰りたいんだけど――レナの視線が鋭すぎて辛い。

 

「良かったねぇ?」

 

嫌味たっぷりの発言を、レナがする。

 

「まあ、良いんじゃない?」

 

アリスが救いの言葉を差し伸べてくれる。

それから、二時間程言葉の弾幕を浴びせられたのだが。

 

 

「………」

 

彼等にかける言葉など、何一つ無かった。死亡寸前ど言っても間違いじゃない程傷ついている二人、それを私はゴミとしか理解できない。

 

「何か、言えよ」

 

コウガが、怒りに染まった表情で、私に言う。

言えと言われたから、仕方なく思ってる事を話してあげた。

 

「隊長置いて逃げ帰るなんて、クズね」

 

「隊長の命令なんだよっ!」

 

カイトだったかライタだったか良く覚えてない餓鬼が、即座に言い訳をする。

 

「守れない命令って、無いの?せめて誠意は見してあげたら?」

 

馬鹿みたいだったから、特別に私がキレてる理由を教えてあげた。

コウガは言いたい事が解ったのか、共感する所があるのか、バツの悪そうな顔して黙った。しかし、ラストだったかが、やはり言い訳をする。

 

「テメエに何が解る?まともに戦った事も無え癖によ」

 

いや、言い訳でさえ無かった。思考が一回転してしまったのだろうか。哀れだ。

そう思い、適当に農場にでも行こうかと――というか、それ以外行くとこ無い――して振り向くと、緑がかった青色をした髪の少女が、真紅の瞳で私を見ていた。しかも、目と鼻の先の近さで。

 

「カイが、危ない。このままだと、喰われて死ぬ」

 

それだけ言うと、小走りで農場に向かって行った。やはり、農場は溜まり場なのか。

 

――というか、誰?

 

カイの事を知ってるらしいが、ゴッドイーターなのか。いや、腕輪をしてなかったからそれは無い。となると、アラガミか。

 

「エレクゥ!」

 

アンナの呼び声が聞こえた。また振り向くとカスの後ろから大きく手を振りながら走ってくるアンナの姿。

 

「………誰もいないね」

 

なんて、無かったのだ。

 

「って無視しないでよっ!」

 

当然何も無かったから振り返ると……仁王立ちしているアンナなんていない。だから少し右にズレて歩いていく。

 

「……もしもーし」

 

「何?」

 

可哀想になってきたので、応答してあげた。

 

「あのさ、青い」

 

「向こう行った」

 

そして、質問は予想がついていたので、去っていった方向を指差して言う。そして、さっさと別れ……

 

「んじゃ着いてきてよ!」

 

「ちょっ……」

 

ることはできずに、腕をガッチリ掴まれた。そしてそのまま駆け出してしまった。

アンナは無駄に力持ち。そのお陰で逃れる事ができずに引っ張られていった。

 

結局目的地の農場へと引っ張られた。そこにいたのはレナ。何時もより三倍愛でてる。

 

「ほーら逃げちゃダメでしゅよー」

 

「ニャァァアアア!!!!」

 

首の辺りを掴まれながらも、悲鳴以上の大声――まあ悲鳴なんだけど――を出すアイルーは頑張ってる。

そして、レナが何時もより愛でてる時は、必ず誰かに分け与えてる時。つまり、アンナの目標も達せられたのである。

 

「アイルー……可愛い」

 

そう言いながら、撫で回しているアラガミさん。しかも、真顔で。

 

「あぁ!やっと見つけたよ!」

 

「あ」

 

少女はアンナを発見すると、サッとアイルーを置いて、レナに短く手を振り、滅茶苦茶高く跳んで大きな岩の上に立つ。完璧に、逃げてる。

 

「あのねぇ、私はカイ共がどうなったのか訊いただけだよ?なのに逃げなくても……」

 

アンナ、私は逆に教えてもらえたよ。

心の中でアンナに教える。まあ、口に出したら八つ裂きにされそうだから言わないけど。

 

「……貴方は知らなくて良い」

 

「はあ!?何?私の頭ん中黒いから知らなくて良いって言いたいのか!?んなのわかってらぁ!こっちゃ心配してんだよ」

 

色々と口調が崩壊しているが、ブチギレ寸前という証拠である。

周りの温度は上昇してるし、本来黒い瞳は血よりも紅く染め上げられてるし、地面は割れ始めてるし、手は血が実際に出る程強く握ってるし。

アンナが一番キレやすいのは、自分の事を差別するという事だ。

まあ、単純な好き嫌いとかは特に気にしないらしいけど。

 

「……怒らなくても良い」

 

少女は、それを軽蔑の眼差しで見ていた。そして、その意見ももっともだ。

 

「ならはよ教えろや……」

 

そして、多分噛み合ってない事をアンナは返す。いや、絶対噛み合ってない事をだ。

 

「とりあえず、静まりなさい」

 

これ以上キレると、理性を失って竜化しそうだから、頭からガツンと一撃お見舞いした。

 

 

「報告ご苦労様」

 

「あーもう時間経ってるし保証はできねーぞ」

 

現在、渓流にある洞窟の中である。結構村に近い為、あんまり他人に聞かれたくない事を話す時に使うようにしている。

そして今、終始棒読みながらも、コウガは何があったのか教えてくれた。あの少女に一応説明は細かく聞いたのだが、難し過ぎて解らなかったので、現地に言った御方に尋問もとい質問した。

因みに、その少女はアンナに捕まって何処かに連行された。

 

「レウスの翼にオウガの強靭な後ろ脚に、イビルのような凶暴性に大食い、それにナルガのような伸縮性のある尻尾………どんだけ食ったのよ」

 

「知らねーよ。でも、異常に強いな」

 

話し始めて、初めて感情の篭ってる言葉を聞いた気がする。

しかし、どれだけ強いのかはイマイチ解らないが、コウガが負けるとは思えない。

 

「本気、出してる?」

 

「ああ?死ぬか死なないかのの状態で本気出さねえイカれ野郎じゃねぇよ」

 

凄く正論である。しかし、何時も本気を出してないように見えていたが、出せなかっただけなのか。いや、出せるならセイカを本気で守ってたし……

 

「セイカも態々死にに行かないか」

 

基本一人だった私は、独り言が多かった。そして、その癖だろう、口に出してしまったのは。

まあ当然、それは………

 

「何故セイカの名前が今出る?」

 

地雷を踏んだわけで。

もう既に自然と引火しそうな程温度が上がっている。赤い髪は炎のように立ち揺れる。元々赤い眼だが、宝玉のように禍々しくも美しい紅になっている。

どうにか鎮めないと、絶対ユクモ村から追い出される。

 

「いや、ちょっと考え事してて……」

 

「何処をどう考えたらどうなるんだボゲェ!!」

 

その熱量は既に、ユクモ村の気温が上がりそうな程上がっているのに、更に上がっていく。

それは、コウガが立っている辺りの石を溶かし始める程………あれ?

 

「落ち着いて、落ち着いて!溶けてる!」

 

「……え?」

 

コウガが、溶け始めてる地面を見て冷静になり、温度は下がる。

 

「あんた、そんなに熱くなる前に竜化しなかったっけ?」

 

「………言われてみりゃそうだな」

 

というか、竜化云々の前に、絶対殴ってくるのだが。今回は全く。まさか、怒る程強くなるとか?逆に冷静さを失いにくくなるとか?有り得る。

 

「んで、なんでセイカの話なんだよ?」

 

でも、冷静になっても疑問が無くなる事は無かったらしく、問い詰めてきた。

ゆっくりと近づいてくる。そして私も後退り。そして壁まで追い詰められる。

だんだん体温が上がる。普通にカッコいいので、少しドキドキする。そんな状況では無いのだが。

 

「答えろ!!」

 

コウガの右腕が私の右頬のすぐ近くを通り抜け、後ろの岩というか壁に手が打ち付けられる。コウガの体重の一部は壁に預けられて、少し此方へ身体が傾く。

………アンナに聞いた事がある、壁ドンと言って、告白するような時にするものだと。

まあ、コウガはそんな事知らないだろうけど。

しかし、この体制でいるのは何か嫌だから答える事にした。

 

「本気かどうかって話したでしょ?そんで本気出してなかったらセイカは」

 

「俺が訊いてるのは死にに行くって部分だ」

 

あ、変えやがった。

 

「それは庇ったから……」

 

「自分のペースに持ち込めば良いと……」

 

シメシメというような顔で、そう呟いた。それからスッと離れて、何かメモリ始めた。

 

「この手帳があんたに使えるとは……」

 

そうわざとらしく呟いて。

そこで初めて気がついた、乗せられたと。

 

「あ、あんた………」

 

そして、声を掛けても何事も無かったかのように去っていった。

 

 

「出陣だぁ!」

 

馬鹿を見る目が二つずつ三人分降り注ぐが、そう叫んだ本人は気にしてないようである。

私アリスと、アンナ、エレク、マイネの四人で凍土へ向かう。当然救出作戦。少女曰く、まだ生きてるらしいので救出といえよう。

 

「ほんじゃま、アイルーさんよろね」

 

「要件は聞いてるニャ。全速全身ニャア!」

 

馬鹿と気が合いそうなアイルーが陽気に喋る。ガーグァ車――もう馬車だよね――に乗っているので、後は凍土に着くだけ。

色々と危険なアラガミになっている個体がカイ達を襲ったらしい。

 

「空からイビルが降下してくるか……あー恐い」

 

アンナが、良く解らない例えをしている。しかし、エレクは神妙な顔で頷いてから言った。

 

「状態抜きでキツイよね?それにジンオウガの脚力となれば、翼を封じても無駄だし」

 

脚力がある。と言ってもどれくらいか解らないが、翼と同等程の高さを確保できるのだろう。まあ、普通に飛んでいる時の、だが。

 

「イビルジョーってどんだけ凶暴なの?」

 

マイネが参考にしたいのかアンナに聞くと、ニヤリと笑って答えた。

 

「世界各地で確認されており、高い体温を保つ為に常に何かを喰らう必要があり、それ故見境なく何でも、勿論肉を喰らい、生態系をぶっ壊す事もある。更に食欲が限界を越した飢餓イビルにもなれば、同族も自分の外れた身体さえ喰うし」

 

「………」

 

マイネは、顔を真っ青にして、固まっていた。

 

「更に、疲労すれば普通弱体化するけど、唾が強力な酸性の為、逆に気をつけないといけない」

 

中々に危険なモンスターだという事を理解した。更にそれが飛ぶとは、やっぱ危険だ。

 

「そんでブレスも吐くでしょ?身体能力異常だから結構な巨体でも軽く跳ぶでしょ?それに弱点属性も定まって無いし」

 

……やっぱ危険だ。 

 

「あれの荒々しさは可笑しいから。格上も襲う場合あるし。それに飢餓イビルは古龍の一歩手前の危険度だよね?」

 

エレクが、アンナに問いかけるように話す。それをアンナは訊いてると勘違いして、しっかりと答えた。

 

「そーね。希少種なんかと同じね」

 

「………」

 

本当に答えやがったといわんばかりの冷たい目でアンナを見つめるエレク。それから一気に空気が重くなり、一言も発さなかった。

 

もう日が落ちて、辺りは暗くなっている。昼なら白銀に輝いているだろう地も、黒くなっている。

 

「フゥ……」

 

マイネがそっと息を吐く。他二名は、それをチラッと見て、興味なさそうに歩き始めた。

 

「寒くない?」

 

だから、今一番の疑問を口に出す。だって、凄く寒いから。

しかし、二人は返事をせず、こっちも見ずに、駆け出した。

 

「ちょっと待って!」

 

そして、私も慌てて駆け出した。

 

暫く走ると、二人は立ち止まった。アンナは双剣を、エレクは弓を構えた。

 

「ハァ。これだから狩りは面倒なのよね」

 

アンナは目の前にいる、炎のような赤色の翼を広げ、黄色く大きい爪を剥き出しにした二足で立ち、黒みがかかっているスピアのような尻尾を振り、少し長く小さめの頭を持っている化物をジト目で見ながら呟く。

 

「身体をそのまま別けてるみたいね」

 

エレクも面倒そうに呟く。

背中には妙なコブがある。そして、そこから少しだけ白い空気が漏れていた。熱いんだろう。

 

「あれ……だよね?」

 

私はこんなアラガミなんて知らないから、多分隊長を残して逃げた二人が言ってたアラガミなんだろう。

何か忘れてる気がして振り向いて気がついた。この場にマイネがいない。人数が一人減るだけでも結構キツイのに。

 

「本気だすよ」

 

「………久々ね」

 

前者はアンナで、後者がエレク。つまり、前は――サリエル戦の事である――本気を出していなかったという事か。

 

「あんたに出番は無いから」

 

挑発的な目線を私に向けながら、アンナは呟く。

しかし、前の戦いでの細かい動きを見て解ったのだが、アンナは狩りに慣れてない。というか、近接戦闘が苦手なのだろう。

もし本気を出していなかったとしても、それは事実だ。だから、どんな狩りをしてくれるか、楽しみだ。

 

「じゃあ、逝くよっ!」

 

何か発音がおかしかった気がするが、あえて気にしないでおく。

アンナが一歩踏み出した直後、姿が消えた。近くにあった岩が半壊し、更に反対側にある岩も砕け散った。アラガミは、何処が首か解らない頭を右へ左へと振る。そして、何も確認できなかったからか、エレクを見る。

そのエレクは、ボールを矢の代わりに付けて引き絞り、空に放った。華麗な孤を描き背中へと向かう。しかしアラガミは、後ろへと跳んで避けて、そこから滑空してきた。

それは凄まじいスピードで、そんなに距離が無かったから一瞬でエレクの目の前に()()()()

なんの違和感も無く落ちたアラガミの背中に、アンナが持っていた双剣の一本が刺さっていた。血のような……ではなく血がダラダラと流れている。そして、そのアラガミの背中にアンナが着地。そのアンナの目は、紅い光になっていた。

そんなアンナは、刺さっている剣を抜き、少しズラして刺した。勢いがあったからだろう、血が噴水のように溢れた。そしてアンナはまた剣を抜く。抜きながらもう一本を刺して、また抜きながら刺して、滅多刺しにして。

 

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!!!!!」

 

何処かで聞いた事のありそうな台詞を吐きながら、アラガミの背中が抉れて無くなってしまいそうな程滅多刺し。

飛びに飛び、地面を真っ赤に染めていた血も、だんだんと量が減っていく。でも、まだ止めない。もう死んでいる筈なのに、原型を無くすつもりなのか止めない。

 

「ハァ、ハァ、ハァ。エレクも見てないで殺ったら?」

 

完全に興奮しているアンナが、エレクに問うが、エレクは苦笑いしながらこう言った。

 

「あんた、臭そうだから近づかないで」

 

返り血を大量に浴びているアンナへの嫌味である。というか、それ以外考えられない。

しかし、良くそんな事を楽しんでまきると、心から思った。

だから、その事を口にしようと思ったけど、先に聞こえた音で、硬直してしまった。

ドサリという音が聞こえた。その音は、何回か聞いたことのある人が倒れる音。それが聞こえた方を向くと、カイとマイネが倒れていた。そして、その後ろに、片腕が刀の少女。

血を辺りにバラ撒きながら、アンナはアラガミからその少女の目の前に跳んだ。

 

「やっと正体現したか、このアラガミのガキ」

 

そして、やはり血塗れの剣を、右手の方の剣をペン回しのように回す。当然、血が辺りに落ちる。

 

「中々強いんだね、アンナさんは」

 

屈託のない笑顔で、少女は答えた。まあ、応えたという方が合ってるのだが。

 

「んで、そこの二人どうすんの?」

 

「殺すんだよ。頑張って創ったペットを殺されちゃったからね」

 

少女は、カイを殺すと言った。しかし、カイはあの支部に入ってから暫く二人で戦って来た同僚でもあるし、戦友だし、親友(ダチ)だし、殺らせるわけにはいかない。

マイネは………後回し。てか、何故捕まってボコされてるのか。

 

「ペット?もしかしてあれが?弱過ぎだよ。てか、この地域のモンスターだけで造ろうとするからダメなんだよ」

 

「赤ちゃんが弱いのは普通でしょ?」

 

完全に会話モードに入っている。だから、少しづつ距離を詰める為、一歩進む。

 

「良くないと思うなぁ、そういうの」

 

そして、バレた。

少女は、こっちをガン見していた。なるべく気配を消したつもりだったのに。

 

「まあ、別に見せびらかすつもりは無いし、殺っちゃおっか」

 

少女は、奪還されるのを危惧したのだろうか、多分予定を変えた。そして、刀をアンナに向けた。

アンナは、即座に大きく後ろに跳んだ。そして、私は前に。

神機はバレットを弄れば、真下にだって撃つことができる。そして、アラガミなら尚更。つまり、刀を向けて警戒させておいて、下の二人を狙える。ならば……止めるしかない。だから近づいた、だけど身体はエレクによって横に押し飛ばされた。

私がいた場所に、穴ができていた。撃たれていたのか。そして、カイの身体、多分心臓部分にも……穴が空いていた。

 

「っ?!」

 

まさか、2連射したのか。私を撃って、カイを撃ったのか。

カイは、既に死んでいる。心臓が空けば死ぬ。終わりという物は呆気ない。ショックなのだろうか、全身が動かない。まだマイネは撃たれてない。止めるしかないのに。

 

「用心深いね、あんた」

 

「これ以上は誰も殺らせない」

 

エレクが叫ぶ。しかし、少女は気にも止めずに刀をマイネへと振り下ろした。誰も助けに行かず、否、行けずマイネは切られた。………刀身がまだあったなら。

刀が、グルグルと空を舞っていた。そして、少女の頭ころりと落ちた。制御を失った身体は力無く倒れた。

何が起きたのか、解らなかった。

 

「相変わらず容赦無いわね」

 

アンナが突然呟く。

 

「人外は皆敵さ」

 

いつの間に少女の死体の後ろに立って、なんか双剣を腰の鞘に収めてる青年が、そう応えた。

 

「ああ、心配すんな。今日は長旅で疲れてるんであんたの相手はしねぇよ」

 

「まあ、何時もよりトロかったからね」

 

そして、少し意味の解らない話をし始める。前者は、内容を理解できなかったけど、後者は理解するのが不可能だった。

背中には贅沢に弓まで持ってる青年、彼が少女を殺ったとすると、存在に気づけない程静かに、目で認識できない程の速さで斬ったと考えられる。そして、トロいと言った。連想すれば、本人も本調子では無いと思う。

完全に次元が違った。

 

「じゃーな、人外の天才君」

 

「帰れ、自称最強のハンター」

 

互いに嫌味を言った後、青年は何処かへ行ってしまった。

 

そんなこんなあって、当然色々とそれからもあったが、元の世界に帰る手段は見つからなかったから、ハンターになる事を全員で決めた。そして、ユクモ村に滞在することも。

 

これから、ゴッドイーターによるハンター生活が始まるのだ。




最後の方、少し早送りですみません。続きやります、本編切りがいい所でやります。そして、投稿超遅れました。今までのペース的に失踪したかと思われても仕方ないですね。
後、今回は解説無し。そういった補完は本文中でやっていくつもりです。閑話は。

まだ読んでるなら次回もよろしくです。後、多分投稿遅くなります。改めて、次回もよろしく。
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