モンスターハンター 最弱で最強の少年   作:夢の天鱗

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雷鳴が鳴り響く刻〜howling the full moon

「おにーちゃん、もうそこにジンオウガ来てるよ?」

 

レナのその言葉を聞いた俺達は、適当に準備して即座に出かけた。

この村出身のハンターは大抵行ってるらしい。だったら上位ハンターがどうにかしてくれるとは思いたいものの、この村に上位ハンターは殆どいない。しかも、更にその上位ハンターの大半はスルーだ。

あまりにも薄情というかなんというか。酷い話だと思う。

 

そして只今渓流のBC。

簡単に作戦会議。

 

「最初は相手の攻撃パターンを見て攻撃方法を覚えろ」

 

俺が簡潔にそれだけ言うと、コウガが質問をしてくる。

 

「何処ぞの誰かさんみたいに奥の手があったらどうする?」

 

俺を見て、ニヤニヤしながら。

なので、お返しに俺もニヤリと笑い、答えた。

 

「そん時は……撤退しか無いだろ?」

 

「まあ、確かに妥当な線だよね」

 

何時もみたいなガキらしい言い方を何故かやめてるレナは、ベッドを独占しながら呟く。

ユウはヘビィを弄って話を聞いてないし、セイカはコウガに密着しているし、まともなのが全然いないなと改めて思う。

俺は歩きながら、皆に言った。

 

「ま、兎に角ヤバかったら即座に離脱だ!行くぞ!」

 

全員が俺を見て、皆「おう!」と元気良く返事した。

 

 

――強過ぎる!

 

俺、タクトは今ジンオウガと交戦中。仲間はとっくに回復薬を切らして撤退している。

白い体毛がフサフサしてる背中に、少し長めで太い前脚に、それを少しだけ短くした後ろ脚。何方にも鋭く大きい爪があり、一本横に飛び出てさえいる。

尻尾もまた太く、仲間の一人がそれに叩きつけられていた。頭はまた小さく、小さい割に大きな角が二本生えている。

体の色は緑が多く、角や脚などは黄色い。

 

「ラアッ!」

 

ランスをジンオウガに向けて一突き。

だが、後ろに跳んで避けられてしまう。更にそこからの突進。

盾を構えて衝撃に備える。ジンオウガの大きな身体が重さとなり伝わってくる。

突進を止められたジンオウガは、前の右脚を大きく上げて、振り下ろす。

それもまた盾で耐えるが、連続で左脚も襲ってくる。そしてまた右脚。

 

――ヤベ!

 

盾を飛ばされてしまった。お返しとばかり闇雲に一発突く。そしてUターンからのダッシュ。

勿論、ジンオウガは見逃してくれる筈もなく突進してくる。

 

――もうこれオワタァァ!!

 

と、横から何かが跳んできた。赤き大剣で体に一撃。……は与えられなかった。

しかし、ジンオウガはそれをやめる為に突進をやめた。つまり、大チャンス。

俺は全力で離脱した。

 

 

――外した!?

 

まさに自分から作った大剣、炎剣リオレウスでの一撃は見事に避けられた。

完全な不意打ちだった筈だし、その上自分は人間には出せない速さで迫ったつもりだった。

ジンオウガらしきモンスターは、俺を見て咆哮。いや、まるで遠吠えだ。

その咆哮には人間さえ止められる力は無かったらしく、後ろからカミトが迫る。

ジンオウガは後ろを向くことなく、体を少し屈めて、跳んだ。そのままバック転して、尻尾を叩きつけた。

カミトはジンオウガが跳んだ時には避け始めていたので、当たりはしなかったが勢いで飛ばされる。

更に、レナはまるでその技を知ってるかのように目の前まで移動して、黒きハンマーを振り下ろす。

ジンオウガの小さな頭を狙った一撃は、ジンオウガが体を曲げた際に場所がズレて角を掠めただけだった。

更に、カミトとセイカが左右からの乱舞狙いに突っ込む。というか、カミトはいつの間に離れていたのか。

 

「馬鹿!しゃがめ!!」

 

レナはそう言いながらバックジャンプ。そしてカミトはスライディング、セイカは普通にしゃがんだ直後、ジンオウガが時計回りしながら跳んだ。今のは尻尾に当たればさぞかし大ダメージになってたに違いない。

俺はチャンスだと思い、落下地点目掛けて走る。落下した瞬間に、硬直する。そこに一撃お見舞いする。

落ちてくるタイミングに合わせながら大きく振りかぶる。そして、当たる。……その直前に、ジンオウガは右脚を上げていて、狙った場所がちょうどそこでスカる。

ただ、それで体を支えれるワケも無く、転がってしまう。

一番近くにいたカミトは、やはり突っ走り、そのまま双剣をジンオウガの背中に刺す。

 

「起き上がり来るぞ!」

 

レナが叫ぶと同時に、ジンオウガは立ち上がり、そのまま回転ジャンプ。

まだ剣を抜いてなかったカミトが空に投げられる。

そして、ジンオウガは地面に着く前に、また血を噴き出した。

ユウの援護射撃だ。一撃で体を突き破ったということは、使ったのは貫通弾だろう。

ジンオウガは今度こそ華麗に着地、そして小さくまた回りながら飛ぶ。但し、さっきの技のようにでは無く、体の中心を軸にしてだが。

そして、雷の玉が一つ何処からか出てくる。明らかなユウ狙いだ。

まるで生き物のように、滑らかに曲がりながら飛んで行く。

そして、ジンオウガが鳴き始める。

それを見た瞬間、全員バックステップして距離を取った。落ちてきたカミトは無理だったが。

背中に緑の雷が集まっていく。まるで周りから吸収してるかのように。

ジンオウガが鳴き終わった時、ジンオウガに太い雷が落ちた。

次に姿を表した時には、全身が光り、全身の毛が逆立ち、さっきまでとは全く違う姿になっていた。

 

 

――超帯電状態!

 

あたしは、ジンオウガの事は結構知っている。だから解る。ジンオウガは、周りの雷光虫を活性化させて、その電気を自らが纏う事により、全ての技に電気が付与されて、ジンオウガ自体が素早くなる。

ある意味では、それが奥の手であり、ジンオウガ本来の姿でもある。

そのジンオウガはもう一度吠える。

それだけで、周りに雷が幾つも落ちる。

あたしは、その技を知っていたから結構距離を取っていたけど、他の皆は範囲内にいたため、回避しながら更に後退。

そしてジンオウガが吠え終わると、もう一度太い雷がジンオウガに落ちる。

ジンオウガの超帯電を解くには、雷光虫をバラさせる必要があるけれど、あの技を使われると帯電し直されるため、厄介である。

 

――だけど、チャンス!

 

雷が落ちた後は、少しだけ動かなくなる。それを知っているあたしは、ジンオウガの頭目掛けて走る。

しかし、先入観とは恐いものだ。ジンオウガの硬直は思ったより少なく、蹴飛ばされる。

 

――もうダメ。

 

蹴飛ばされたからでは無い、空腹に耐えれないからである。

なので、草食竜でも貪る為に、さっさと離脱した。

 

 

「撤退だ!」

 

俺は少々驚いてる。レナは腐ってもイビルジョーだ。猪突猛進な部分もあるが、その強さは尋常じゃない。

そんなレナがジンオウガに一撃加えられたのだ。

ジンオウガの強さを量り違えてたらしい。俺は皆に撤退命令を出して、双剣を納刀して敗走者のように逃げて行った。

 

現在地、マイハウス。

村長に、俺達があくまでも戦略的撤退をしてきただけで負けたのでは無い事を語り、休憩している。

遅れてやって来たレナが、笑顔で「ジンオウガ食おうかと思ったけど逃げられちゃった♪」と言った時には、イビルジョー討伐隊が結成されないかと心配になったものだ。

そして、レナ以外の皆は各自別行動としてマイハウスから出て行ったのは良い。

 

――何この嫌な予感!

 

ベッドに座りながら――横になると、本気で寝そうだからやめておく――嫌な予感が何かと詮索してると、レナが隣に座ってきた。

ただ、近い。ほぼ密着。

 

「離れろ」

 

「嫌ぁ。だって、カミトと二人きりなんだよ?」

 

滅茶苦茶幸せそうな顔して、俺に寄りかかってくる。

俺は距離を取る、逃げる勢いで、壁まで。

しかし、レナはやはりというか着いてくる。

どーしてこーなったんだー。それが今言いたい言葉である。

 

 

カミトと二人きり、多分、もう二度と無いだろう。

なので、私はしっかりカミトとの時間を満喫しようかと思って、まず密着してみた。その結果避けられたけど。

 

「酷いよ、避けるなんて」

 

「誰がイビルなんぞと密着したいと思うかよ!」

 

冷たい。応えてくれるだけまだマシだろう。

 

「私は好きなんだよ?カミトの事」

 

「ン?あんたの一人称ってあたしじゃなかったっけ?それに今俺の事名前で呼んだよな?」

 

――内容無視された!!

 

もう目線まで冷たくなっている。酷過ぎる!

話してもまともな返事が返ってこないと解ったので、目線で訴える。カミトの眼をジィーと見つめる。

すると突然、汚物を見るような眼をしていたカミトが、目を泳がせた。

 

「あ、えーと……何かごめん?」

 

何故か疑問型で謝ってきた。

でも、謝ったのだ、理由は知らないけど。チャンスだ。

私はカミトの目の前に移動して言う。

 

「良いよ。でも……」

 

カミトを押し倒す。そしてその横に同じく寝る。

そして言う。

 

「代わりにキス欲しいな……」

 

カミトの顔が真っ赤に染まる。

 

「い、いやいや待て」

 

「待たない。それともさっきの嘘?」

 

「嘘なワケ」

 

言い終わる前にカミトの頭の後ろに手を回して、接近させて……

最初で最後の暴挙は、見事()()()に止められたのだが。

 

「もう!カミト!ハチミツが無くなって……」

 

あたしとカミトの体があまりの不意打ちにブルッと震えた。

カミトはちょうどユウがいるであろう位置を向いている。

そんなカミトの顔が一気に青ざめた。どんな顔してるんだろう、ユウは。

 

「えーと……何かある意味大切な何かの誤解を招いってごらんしてるんじゃないのかな?」

 

「………」

 

ダメだ。カミトが動揺しすぎてあまりにも意味不明な言葉を口走って、逆に怪しまれてる。

まあ、あたしとしてはその方が良いんだけどね。……恋敵だから。

 

「……ンフフ、もうユウったら……何図星な事想像してるの?」

 

ユウを見ながら言った。すると今度はユウが動揺したらしい。変な事を口走った。

 

「か、カミト?え?本当?そんな危ない橋を危ない奴と渡ろうと?」

 

どうやら、ユウは妄想が激しいらしい。

そして続けて否定しようとカミトがまた不思議な発言をする。

 

「い、いや何か変な事をするつもりなぞ全く無かったんだ。ただレナが暴走して何か俺を押し倒して……」

 

カミトは、目線をあたしに合わせて言ってる事を変えた。

 

「そういや、何で一人称が変わってたんだ?気分なのか?」

 

「んーと……あたし興奮してる時って私になっちゃうんだよねー」

 

良し、きっとこれなら変な勘違いは起こさな……

 

「興奮?レナってそういう娘だったんだネー」

 

第三者が起こした。

カミトはさっと立ち上がり、早口で「そういやユウさっき何か言い掛けてたよな?そっち片付けよう。うん、それが良い」と言って何処かに走って逃げてしまった。

 

「………レナ」

 

ユウが、そこで優しい笑みを浮かべて言った。

 

「流石に泣かなくても良いと思うよ?」

 

「え?」

 

そこで、初めて泣いている事に気が付いた。

あたしは、気晴らしも兼ねて何か食らいに行こうと思い、一人で渓流に行った。

 

 

マイハウスからカミトが飛び出て、農場へと狩場でも中々見れない速さで走っていくのを俺は見た。

 

――あいつ元気だなぁ。

 

そう思いながら、生産レシピを見る。

俺は今使ってる炎剣リオレウスも好きだが、ヴァルキリーブレイドも良さそうだと思う。レイア素材で作れる大剣で、毒属性だ。

炎剣リオレウスの場合、火属性だから効きにくい相手にはダメージダウンしてしまうと思うが、毒なら効かない奴でもダメージダウンする事は無いので、良いのかと。

素材はセイカに頼めば良いし、充分だ。

だけど、セイカを傷つけて作るというのに抵抗がある。だから作るかどうか悩んでいる。

そして、俺と同じくレシピを見ている御本人は隣にいるので、その気になれば直ぐに頼める。

すると、セイカが突然、俺に訊いてきた。

 

「イフリートマロウ程度、コウガなら作れちゃうよね?」

 

どうやら、躊躇う必要は無かったらしい。

 

 

レナは、絶対に気がついてます。私がカミトに好意がある事!

まさか泣くとは思いませんでしたが、レナも好意を抱いてるのは絶対です。

 

「うわ……アイルー共サボってやがるし」

 

ユクモ農場で、私はハチミツは好きなだけ貰っていいという約束をカミトとしたのですが、今日は無くて、それでカミトを呼びにいったのが元の目的でした。

そして農場にカミトを連れてきて――実際はカミトが逃げて先に来ていたのですが――最初の一言です。

 

「ニャニャ!?旦那様!?」

 

黒いアイルー――メラルーというらしいです――が、カミトを見つけて驚いてます。

此処のアイルーに教えてもらったのですが、カミトは農場に全然来ないらしいです。

 

「……逃げる支度バッチリだな」

 

今日のアイルー達は、皆袋を持っていたので、何だろうと思ってましたが、カミト曰く逃げる支度らしいです。

 

「そ、それは……別にユクモ村が襲われたら逃げようなんて思ってなんかいませんニャ!」

 

「嘘だな」

 

カミトがメラルーさんを睨むと、奥へ逃げていきました。

けれど、私はそんな事どうでも良いのです。

アイルーがどうこうでは無く、ハチミツです。ハチさんがいないからハチミツが無いのです。

 

「うはぁ……」

 

本来ならハチミツがあるべき場所を見て、カミトは呟きました。

 

「マジで万端だな」

 

私には意味が分かりませんでした。カミトは叫びました。

 

「蜂取ってったアイルー共集合!逃げたらイビルの餌にするぞ!」

 

すると、アイルーが三匹集まりました。

カミトは睨みつけてから言いました。

 

「戻せ」

 

たったそれだけなのに、アイルー達は大慌てで戻しました。

そして、私を見て言いました。

 

「今日は代わりに魚でも食ってくれ」

 

 

魚を獲りたいだけ取った後、美味しくいただきました。

カミトは「今度こそ休む」とか言ってマイハウスに戻りました。

そして、悲鳴が聞こえました。

 

「ンニャァアア!?」

 

アイルーのです。

無視しようかと思いましたが、次に聞こえた声でやめました。

 

「アイルーしゃん可愛いよぉ……だべだい程可愛いよぉ。もう逃がしゃにゃいぞぉ」

 

……レナでした。

レナがアイルーを抱きしめて撫でてました。その表情は今まで見た中で最高の笑みでした。

しかも、マタタビ爆弾をくらったアイルーみたいに酔ってる感じでした。

 

「レナ、そんなに幸せなの?」

 

私が問うと、一応返事が返ってきました。

 

「あう?ユウ?どぉう?一緒にアイルーたんをもひゅもひゅしにゃい?」

 

「………」

 

どうやら、レナは無類のアイルー好きらしいです。

他のアイルーは悲鳴を聞いた瞬間に隠れてたので無事なようですが、このメラルーはもみくちゃにされてます。イビルの怪力で。

 

「あのね?わちゃしはね?今とぉぅってもしあわしぇなんだよ?ユウも抱きちゃいでしょ?」

 

「………別に良いです」

 

「もしかしてあいりゅー嫌い?」

 

「別に嫌いでも無いです」

 

「ンニャァァァアアアアア!!!」

 

結局、私がメラルーを救出して、更にレナをマイハウスに無理矢理連れていって、それでなんとか済みましたけど、レナは三十分間ずっとあんな調子でした。

 

 

そのままグダグダ過ごして夜になった。

そこで、村の防衛隊が限界だから誰か狩ってくれ(要約)というメッセージが村中に響き渡った。

俺は、逆によくそこまで耐えたなと感心しつつ、全員集める。

 

「今度こそジンオウガを狩るぞ。良いな?」

 

「………コウガとセイカ、何か武器変えた?」

 

レナが何かをポリポリ食いながら二人に訊く。

言われてみれば、コウガの大剣は赤から緑に変わってるし、セイカも緑から赤になってる。

 

――緑と赤?

 

いかにもレウスとレイアな色だが、まさか剥ぎ取ったワケでは無いだろう。そんな自傷行為する筈無い。

だけど、そこでユウが「早く行こうよぉ」と眠そうな声を出したので、二人の武器の件は狩り終わってからにする。

 

現在地、渓流、ジンオウガの近く。

 

――バレてねぇな!

 

下が水浸しで、足音も鳴ってしまいそうだが、見事バレずに接近している。

せめて先制攻撃は絶対にしたい。そう思ってゆっくりと近付く。

 

――今だ!

 

飛び出そうとする。が、レナに掴まれて行けなかった。

 

「何するんだよ。まさか避けられるとでも?」

 

「……当てたら返り討ちに遭うよ?」

 

その意味が解らなく、ジンオウガを改めて見る。

そしてやっと気が付いた。月に向かって吠えてる事に。しかも今日は満月だ。

まるで月の光も自分のものにしようとしてるように見える。

そして、雷が落ちる。

今誰も気が付かれてない筈なのに、ジンオウガは超帯電状態になった。

 

――何だよこの展開!

 

しかも、ジンオウガの周りに溜まってる雷は、前見た緑じゃなくて青。

今すぐにでも殺らなきゃヤバい気がする。

 

「レナ……止めるなよ?」

 

「了解」

 

短く答え、後ろから気配が一つ無くなる。

そして、ウルクススの双剣を抜刀しながら飛び出た。

更に鬼人化し、脚目掛けてクロスさせながら一閃。

流石のジンオウガでも、気付いてなければ避けられないらしく、モロにくらった。

だが、軽い傷をつけた程度で、大ダメージにはならなかった。

更に、背中にレナの重い一撃が炸裂。

背中は昼、俺が傷をつけたので、そうとう効いただろう。

ただ、俺もレナもそこで一旦後退。

ジンオウガはサマーソルト――レナがそう言ってるので俺も使わせてもらう――をして難なく着地。そこから右脚を大きく上げて、俺目掛けて振り下ろす。

俺は左前に転がって避ける。ジンオウガも振り向き、次は左脚を振り上げて、落とす。その際、跳んで俺に近付いてくる。

次は右前に転がって避けた。

ジンオウガはしつこく、更に右脚を上げる。なのでもう一度左前に転がって避ける。が、衝撃が伝わってこない。

妙だと思い、ジンオウガを見るとまだ上げたままだった。しかも、雷が集まっている。

俺が転がりきった瞬間、それは落とされた。

背中に直撃。装備が壊れた音と激痛。

 

――ユクモ一式だったら死んでたぞ!?

 

そして、なんとか体制を立て直してジンオウガを見ると、セイカが引っ掻き飛ばされて、コウガが尻尾を危なげに避けていた。

コウガはそのまま俺の元に跳んできた。

 

「使えよ。あれを」

 

コウガは俺を起こしつつ耳打ちした。

 

「鬼人強化しないと無理だっての!」

 

回復薬グレートを一気に飲み干してから答える。

 

「それもそうか……」

 

コウガは呟きながらジンオウガへと走って行った。

どうにか打開策は無いのか……

 

――それはただの幻想。

 

頭の中に、誰かの高い声が響いた。子供のような幼さに、絶対的な強者の威厳も感じる声。

 

「誰だ!?」

 

「………どうしたの?カミト」

 

レナが近づいてきて、心配そうに声を掛けてきた。

 

――貴方の力はそんなモノじゃない筈。

 

「だから姿を出せよ!」

 

「……ッ!」

 

不思議そうな顔をしていたレナが、突然目を見開いて、しっかりと舌打ちをしてハンマーをジンオウガのいる真逆の方向にぶん投げた。

そっちを見ても、誰もいない。

 

――探したければ探しなさい。絶対に見つからないでしょうけど。

 

「………打開策があるのか?」

 

俺は、誰かに問いかける。小さな声で。

 

――別に声を出さなくても結構。

 

この刹那に、レナの姿が消えていた。一体どうしたのか。

 

「いや、良いだろ?……んで、何だ?」

 

――貴方の力は、ギルドが秘匿してきた力。利用とかそんな理由では無くて、恐れてだけど。

 

俺はつい、「何故そんな事知ってる!?アンタ誰だよ!!」と言いそうになったが、控える。

どうせそんな事言っても答えてくれないだろうし、そこで動揺してはいけない。冷静さを保たないといけないだろう。

 

「それがどうした?」

 

俺は平然として答えたつもりだったが……

 

――ああ、ゴメン。言わなくても解るよ?

 

馬鹿にされた。

 

「嘘は通用しないってか……」

 

――まあそうね。それで、早く続きを言わせなくて良いの?状況覚えてる?

 

……現在、ジンオウガの狩猟中。

突然聞こえた謎の声に戸惑って、見事状況を忘れていた。

 

「カミト速くしろ!何独り言言ってるんだ!」

 

「カミトー!弾切れしちゃうよぉ!」

 

――ほら、仲間もお呼びで。

 

ウザい!超ウザい!

これ以上詮索しても、逆に馬鹿にされて終わるのをよーく理解したので、「だったら早く言え」と続きを促す。

 

――まあそんなギルドが、貴方に事実を伝えるかしら?否、そんなわけがない。貴方の力は、その気になれば何時でも引き出せるのよ。

 

本当かよ?と思ったが、考えるのをやめた。

もう、それしか打開策が無いのだ。信じてやるしかない。

聞こえる騒音を、全て無視。考えるのを文字通りやめる。無心にする。

 

――来た!

 

あの、ズッシリとした重い感覚。スタミナが凄い速さで奪われていく感覚。

 

「死」

 

一言、一文字、呟く。

風となり駆けた。ジンオウガを、()()為に。

 

 

――彼は何者か。

 

テレパシーを終えた今でも、不思議に思う。

彼は、私の助言の通りに使った。これで、あの目障りなジンオウガは死ぬだろう。

問題は……

 

「どりゃあぁ!!」

 

ハンマーが、私に向かって飛んで来る。私は右手で弾き落とす。

黒い髪に、紅い瞳。彼女はやはりやって来た。

 

「こんにちは。イビルジョーのお嬢さん」

 

私は、初めて会った彼女に、人間らしい挨拶をした……つもりだ。

 

「やっと見つけたよ!この糞野郎!」

 

 

カミトが、あの時見た速さで駆けた。

血のように紅く輝くスノウツインズを、回りながらジンオウガの体に何度も斬りつけてから、止まり、ジンオウガの脚に片方だけ刺して、更にそれを蹴り飛ばす。

ジンオウガは、カミトの変化に気がついたんだろう、逃げた。俺に向かって。

 

――マジか。

 

炎を掌に作り出し、地面に放つ。

水は、瞬間的に蒸発。それが湯気となり、白い靄を作る。

ジンオウガは、さっとUターン。追わずに立ってるだけのカミトを見て、咆哮。

 

――こっから形勢逆転か?

 

そう思ったのもつかの間。ジンオウガの周りにより一層強く雷が集まる。

それが、ジンオウガを包み、白く輝く。それが折れた角に集まり、仮想の角が生まれた。

 

――それが何だ!

 

俺は、背を屈めてカミトがまだ触れてない脚を狙う。

だが………ジンオウガがまた短く咆哮。それだけで雷が幾つも落ちた。威力も昼の比で無く、水に触れて伝わる前に水が消し飛んだ。

更にジンオウガは俺の目の前に跳んできて、爪で一掻き。

避けた筈なのに、全身に激痛。また雷が流れたのか。

 

――息ができなっ……!

 

一瞬だった。攻撃をくらう直前、確かに息ができなかった。

何か関係があるのか。解らないが気をつけた方が良さそうだ。

 

 

「「……!!」」

 

私は、確かに一瞬だけ空気が無くなったのを感じた。

ハンマーを、私が作った透明の壁に押し付けている彼女も、驚きの表情。

 

「……あんたが何かしたの?」

 

「できない事は無いけど、やってないね。ジンオウガがやったのだと思うけれど?電気は真空だと良く伝わるからね」

 

彼女は動こうとしない。折角仲間がピンチだと教えたのに。

 

「まあ、でもあんたの作戦通りなんでしょ?」

 

「……人間程落ちぶれては無いけど、私だって完璧じゃない。まさか、ね?」

 

「………いいえ。あんただったら予測できるでしょその程度。答えろ!UNKNOWN!!」

 

……あまりにも酷い勘違いだ。私はそんなモンスターでは無いのに。

 

 

カミトは、暴れた。私にはそう見えた。

ジンオウガの摩訶不思議な攻撃も、速さで全て躱し、体をあちこち傷めつけて、最後には脚を全て斬り落とした。

そして、ジンオウガの体は光、レナより少し大きいくらいの少女になった。

緑色の、適当に繋ぎ合わせたような服を着ている。

傷は、獣の姿と人の姿では引き継がない――痛みはついて来るけど――ので、手足がしっかりとある。

カミトを褒めて、それからコウガに抱きついてあげようと思い、近づいた。

けれど、そこで私の予想を覆す行為を、カミトはした。

 

「死ね」

 

カミトは、双剣を逆手持ちにして、少女の首を狙った。

コウガが見事な反応速度でそれを大剣で弾きながら、初めて見る冷ややかな目線で言った。

 

「あんた誰だ?」

 

カミトだ。そんなのは私達にも解る話。

コウガは、カミトに剣を向けて、「正直に答えろ」と訊いた。

返事は無かった。代わりにと言っては難だが、突然倒れた。そして、死んだように動かなくなった。




サブタイ……メインモンス編だったので、ちょっとカッコつけた結果があれである。
UNKNOWN……フロンティアのモンスター。今作にはいつかゲスト出演してもらおうかと……
ジンオウガ……モンハンプレイヤーなら当然解るけど、第二の変化はオリジナルです。
謎の女性……多分、暫く出てきません。早くてもモガの村編でしょう。
カミト……今回は色々とはしゃぎまわってもらいました。
サブタイ2……3rdのジンオウガのムービーを見て、「月に吠える」というのを思いついたけど、「雷鳴が鳴り響く刻」にするのを決めていたので英語に直して後ろに着けました。
え?何故full moonにしたか?訊かないでください。
レナ……ユクモ村編では重要キャラですね解ります。実は、モガ以降で飢餓イビルとして出てもらおうか悩みました。でも、アシラとレウスとレイアだと何か微妙だったので、ネタキャラ兼重要キャラとして出てもらいました。
ジンオウガ2……結局チート化してもらいました。カミトのチートが上回ったけど。
※今更ながら、《●●●2……》となってる部分は、それに関するもう一つの情報です。それが二つ出てるワケでは無いです。

一話に書けば良い気がした。

次回もよろです。あ、ジエン戦での一隻or総力の件、募集してます。自分で決めろと?意見が一つも無ければそうします。
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