モンスターハンター 最弱で最強の少年   作:夢の天鱗

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焔の鎧/牙を向く氷爪/全てを飲み込む者

俺は、何をしていたのだろう。思い出せない。

 

――そもそも、此処何処だ?

 

そう思い、見回す。青い箱に、今俺が寝ている ベッド。後は、アイルーを管理するボードがある程度か。 つまり、マイハウスだ。

 

「……動かない方が良い」

 

横から、誰かが言う。 そっちを見てみると、青と緑の中間辺りの色をした、長めの髪をした少女がいた。いや、俺と同じくらいか。 碧の瞳が俺を静かに見つめる。寝ながら。そういう俺も、寝ているが。 布団の中で、俺の手を握る。逃さんとばかりに。

 

「あんた、誰?」

 

「ジンオウガ。名前は無い。昨日の事は、覚えてる?」

 

唐突な質問に、「記憶喪失じゃあるまいし」と返す事ができない事は既に理解している。だって、昨日の昼のドタバタの後の事を、何一つ思い出せないからだ。

 

「いや、朝あんたとやりあったのは覚えてる が……夜の事は覚えてない」

 

「君は、私を殺そうとしたらしい。私は、途中までだったら覚えてる。君が、突然速く強くなった所までなら。確か、君の剣が真っ紅になってたと 思う。そういえば、君のお仲間はアグナコトル狩りに行ってる。実は、私も結構怪我してる。君ほどでは無いけど。だから、レウスに来るなって言われて置いてかれた。あのレウス、人の姿になってる間、炎を操れるらしい。私は、雷光虫を呼ぶ事しかできないけど。あのイビルジョーなんかは、体温が高いだけで何も無いし、レイアやアシ ラは何も無いって自分で言ってた。あ、でもアシラは魚を取るのが上手だった。そういえばね……」

 

俺に何も言わせない速さで、だんだんどうでも 良いような話に変わっていきながら話すこいつ は、人間には慣れてないらしい。

 

「……聞いてる?聞いてないんだったら、雷光虫でビリビリさせるよ?」

 

怒った様子も無く、殆ど無表情で恐い事を言って くる。そこは勿論「聞いてるって……」とだけ答えた。すると、今度は俺達の事では無く、妙な話をして きた。 内容が、あまりにも不思議だった為、思わずしっ かりと聞いてしまった。

 

「最近、妙な奴と会った。いるだけで嵐を起こすような奴。しかも、住処取られた」

 

いるだけで嵐を起こすような奴。……知らない。 だが、確実にそれは古龍種だろう。古龍種の中の大抵の奴は、普通では考えられない力を持った奴もいる。 だが、彼女は更に続けた。

 

「そいつ、まるで何かに()()()()()ようにも見えた。 気の所為だと思いたい」

 

――古龍が操られる?そんな馬鹿な。

 

こいつ、もしかしたらそうとうな馬鹿かもしれないと、予測。 だったら、この妙な状況を簡単に脱出できると思った。なので、試してみた。

 

「あのさ!」

 

彼女の無駄話を止めるため、大きな声を出してみる。

 

「俺お腹空いたんだけどさ、何か持ってきてくれない?」

 

「……良いですよ」

 

――馬鹿だ。

 

当然、彼女がちょっと目を話した隙に逃げるつもりだ。 だが、彼女はその場から動こうとしない。

 

「……んじゃ何で動かないんだよ」

 

彼女は、フフッと笑って言った。

 

「自分で行けば良いじゃないですか?まさか、手を繋いでるのを拘束か何かだと勘違いしてるんじゃ無いでしょうか。ただ、気分ですよ。まあ、 私も少しお腹空いていたので、お肉、何か持って きてください。ええ、どうぞ。行ってらっしゃい。……行けるなら」

 

最後だけ聞こえなかったが、こう解釈して良いのだろう。好きにしろと。 なので、まあ体を起き上がらせようとした所……

 

「護符ッ!」

 

背中に激痛。驚いて変な事を言ってしまったくらいだ。

 

「だから言ったじゃないですか、動かないほうがいい、と。ああ、因みに私も動けないんです。残念ながら回復薬なる物は、レウスが全部取ってっ ちゃったので、一つもないですよ。まあ、もう少しお話しましょうよ。皆さんが戻るまで。あ、それとも寝ますか?だったら邪魔はしません。お好きにどうぞ」

 

言われた通りに、俺は寝た。

 

同刻。火山。 何か噂された気がするが、気の所為だろう。 火山近辺を歩きながら、アグナコトルを探す。

 

――まさか上にはいないだろう。

 

そう考えながら、頼りない仲間を見る。 ユウは暑さにダウン寸前だし、セイカはウロコト ルの大群に襲われて脚を怪我。勿論、回復薬グ レートは、残り二つしか無いので、使うわけにも いかず。アイテムBOXから掻っ攫ってくれば良 かったと後悔。そして、レナは「何処だ何処だ何 処だ何処だ」と呪詛を唱えるように、アプノトス を片っ端から食らいつつ言っている。 そして、見つけた。アグナコトルを。 体は長いというのか大きいというのか、口がくち ばしのように長く、ヒレがある。 全身に、溶岩らしきものを着けている。冷えれば それは鎧と化すだろう。 体色は、赤。同じ炎使いという意味では、ライバ ルだ。

 

――さっさと殺るか。

 

人化できる、固有の気配も感じないし、これは早 く狩るしかない。あのジンオウガのガキも、暇だ ろう。きっと。

 

「お前ら、足手まといだからどっか行ってろ」

 

「何処だ何処だドコだドコダ……ん?何か言っ た?」

 

何時もなら、「あたしが足手まといだって!?」 とか言って逆ギレしそうだが、そもそも聞いてさ えいなかった。

 

「はう……今言うくらいだったらBCで言ってくだ さい」

 

ユウは、ある意味では何時も通りだが、その何時 もよりもポケ〜っとしてるようにも見える。

 

「……足手まといでもイイよね?私、アナタの妻 なんだよ?」

 

「……あっそ。だったら勝手に死んでろ」

 

そして、セイカが一番足手まといだ。適度に冷た い言葉をぶつけて、落ち込ませる。 ……つもりだった。

 

「………死ねって?コウガ……冗談でもそれは酷 い……ウウ…」

 

が、泣き始めてしまった。

 

――もうどうにでもなれ。

 

色々と諦めがついた所で、()() ()()()()()()抜刀して、アグナの首目掛けて 走った。

 

同刻、火山の頂上にて。

 

「あのレウス、元気イイよね……」

 

彼女は、双眼鏡を覗きながら興奮している。まる で変態だ。

 

「此処、アグナコトルの寝床だぞ?」

 

「別に良いよ。恐いんだったらラヴィがさっさと 逃げれば良いじゃん」

 

ある意味、滅茶苦茶正しい事を指摘してくる。 が、当然アグナコトル程度の雑魚の巣から、ビ ビって逃げたりはしない。

 

「まあ、どっちにしても、あのレウスが逃さない と思うけど」

 

「アンナ……逃げるとかそういう問題じゃない。 そもそも、俺達の住処はこの辺りじゃないだ ろ?」

 

「そう?私はそんなこと気にしないけどなぁ。 せっかく白ちゃんがおすすめスポット教えてくれ たんだし、良いじゃん」

 

「そこであいつの名前を出すな。あいつは関係な い。というか、さっさと此処から出てかないん だったら火山消すぞ?」

 

「……分かったよ」

 

ふくれっ面で、渋々そこから飛び降りて行った。 まあ、ハンターも良く飛び降りるらしいが……何 故平気なのかがいまいち解らない。所詮人間って 事には変わり無いし、限界があると思うのだが。 そんな事を思いつつ、自分も飛び降りた。

 

「どらぁあ!!」

 

また一枚、溶岩の鎧を剥がす。 アグナコトルが地面を潜った後は、柔らかくなる 為、簡単に落とせる。 アグナコトルの後ろに周り、尻尾も斬り落とす。 痛みでか解らないが、軽く吹っ飛び、此方に向き 直す。 俺は、直感で真横に跳ぶ。俺がいた所には、熱線 が放たれた。 それをスカッてる隙に、首を狙い、双つの剣を合 わせて斬り落とす。 鮮やかな鮮血と、炎のエネルギーが舞い、吹き飛 ばされる。 アグナコトルの頭も、それで何処かに飛ばされて マグマダイブ。

 

――弱すぎるな。

 

そう思いながら、納刀する。そして、ハンターナ イフをポーチから出して適当に剥ぎ取る。 置いていった馬鹿達の元に戻ろうかと思ったが、 その前に………

 

「不意打ちっ!」

 

「うをお!?」

 

背中に何かが激突し、押し倒される。 直ぐに重さは無くなる。立ち上がって、辺りを見 回すが、誰もいない。 そして、遠くから誰か来た。明るい橙の髪をし た、青年だ。

 

「おい、あんた。馬鹿を見なかったか?」

 

あまりにも、解りにくく、解りやすい質問をして きた。

 

「その馬鹿に倒されたんだが……どうも逃げ足が 早いらしくな」

 

「ああ、あの野朗ホントに馬鹿だ。また今度潰し てやろうか」

 

そう呟きながら、彼は何処かに走って行った。 そして、何とか平然を装う事ができた自分に拍 手。 たったの数秒話しただけだが、解った。奴はとん でもない実力を持ったモンスターだと。 だが、ハッキリ言ってそんな事はどうでも良いの である。

 

――さっさと次行くか……

 

俺は、皆を集めて凍土に向かった。

 

妙に温かい。 そう思いながら目を開ける。すると、少女が隣で 俺に密着していた。

 

「何だよ……」

 

彼女は無表情で言った。

 

「忘れてました。あのレウス達は、更にベリオロ スとハプルボッカを狩ってから帰るって言ってま した」

 

火山→凍土→砂原。 どうやら、俺はまた一眠りしただけではベッドか ら離れる事はできないらしい。

 

あの暑い火山から一転、凍土は寒い。 ハンターは、ホットドリンクという物を飲んでか らモンスターを探しに行くらしいが、俺はリオレ ウスなので平気だ。

 

「ねえ、コウガ?」

 

火山ではあまりにも様子がおかしかったレナが、 珍しく自分から話しかけて来た。

 

「何だ?」

 

「黒い奴、見なかった?」

 

「黒い奴……一頭も見てないが」

 

「……そう、なら良い」

 

これまた珍しく、暗い表情をしているレナが、 ちょっと心配だが、イビルジョーだし平気だと割 り切る。 ガーグァ車で移動してる間に、怪我を応急処置し ていたセイカは、心配する理由は無さそうだ。 ユウは、暑いよりは全然平気らしく、普通にして いる。

 

「んじゃ、サクッと狩りますか」

 

「うん。……黒い奴見かけたら教えてね」

 

そして、テンションが低いレナは、笑いながら 言った。 でも、俺には解った。無理している事が。 何が気がかりなのか、何を探しているかは全く解 らないが、一応言った。

 

「あまり無理するなよ。このクソッタレが」

 

「あ……あたしが、クソッタレ?バカにしないで よね!」

 

もう、レナは大丈夫だろう。 安心して、ベリオロスを狩れそうだ。

 

ベリオロスは、少し高くなってる場所にいた。 しかも、昼なのにグータラ寝てる。炎剣リオレウ スを抜刀してから、近付く。 此処から首を狙えば、一撃で殺れるだろうが、流 石につまらないから、尻尾に全力の一撃をお見舞 いした。 ベリオロスは、所謂ティガ骨格のモンスターだ。 つまり、飛竜である。 長い牙に、翼の先にある鋭い爪、そして真っ白な 体。 その、白い体に、尻尾が切れた時に舞った血がつ いて、一部紅くなっている。 のんきに起きたベリオロス、その頭目掛けてレナ が横からフルスイング。 体ごと吹っ飛ぶ。そして落ちた所に待っていたの はセイカだ。 右翼の爪を狙って一閃。バリッと折れた。 ベリオロスは跳んで、距離を置こうとしたが、ブ レーキをかける爪が片方折れていて、見事に滑っ て転ぶ。 そして、ユウがそこを狙って弾を撃つ。通常弾ら しき弾は、正確に左翼の爪を撃ち、破壊。 ベリオロスは、それを本能的に感じ、次の攻撃を 避けようと後ろに跳ぶ。が、爪はもう無い為、ま た転ぶ。 そして、近くに来ていたレナが、頭の前に立ち、 振り下ろした。 容赦の無い一撃をくらったベリオロスは、頭が潰 れた。その辺りに積もってる雪が、紅くなった。

 

「まさか寝てるとはな……」

 

「楽勝楽勝。起きていればもっと楽しめたと思う んだけどね」

 

「はぁ、美味しいとこ持ってかないでよ」

 

ユウだけ何も言わず、高速剥ぎ取りをしてから、 興奮した様子で「ハプルボッカもさっさと滅茶苦 茶にしちゃいましょう!」と言った。 まさか血に興奮してるとは、思わないが……まさ か、な。 それからさっさとBCに戻り、砂原に行くために、 待機していたガーグァ車に乗りこんだ。

 

場所は変わって砂原のBC。 そこには、二つタルが置いてある。中身は、酒で もネクタイゴリラでも――あれ?今何か俺変な事 考えた気が――無い。爆弾だ。

 

「誰が用意したんだろう……」

 

ユウが、素直に不思議そうな顔して呟く。

 

「ン……他のハンターに頼んどいたんだ。これ 持っていってくれって」

 

「どうせタク辺りにでしょ?」

 

レナは、タクトの事を勝手にタクと呼んでいる。 本人もあれなので、問題無いとは思うが。 まあ、その通りであるが。

 

「コウガ、何に使うのさ?眠らせてドカンといく の?」

 

「セイカ、相手はハプルボッカだぞ?いや、まさ か知らないのか?」

 

「………え?」

 

セイカは基本的に、他種族には興味が無い。初心 者ハンターが知らない事は、セイカも知らないと いうレベルだ。

 

「ハプルボッカはな……樽爆も食っちまうんだ。 しかも体内で爆発する。威力はそれなりに減るけ ど、まあ隙をつくるには充分だ」

 

「コウガって、物知り……なんだ」

 

レナが唖然としながら言う。が、別に普通だと思 う。

 

因みに同刻。

 

「ふーん……ハプルって爆弾食うんだ」

 

「アンナ……お前も知らなかったのか。確かに本 来別の地域に生息してるとはいえども、こっちに 来てどれだけだと思ってるんだよ」

 

「………二年、だっけ?」

 

俺は、改て相棒の馬鹿さに呆れるばかりであっ た。

 

……そして戻る。

 

「お前ら、解ったならさっさと狩り行くぞ。それ と、片方は俺が持ってくからもう一個誰かよろし く」

 

樽爆を運びながら、視線を感じる事に苛立ってい た。けれど、樽爆は衝撃を加えるだけで爆弾する ので、雑に扱うわけにはいかない。 あくまでも冷静にならなければいけない。それ に、皆に悟られたくないので、そういう意味でも 気をつけなければならない。 もう砂漠とも言える場所に移動する。 ハプルボッカは、砂の下に潜んでいる。潜口竜と 呼ばれるだけはある。 樽爆を適当に起き、音爆弾をやはり適当に投げ る。 砂に潜るようなモンスターは、大抵耳が良い。上 手くいけば砂から引きずり出せるし、そうでなく ても気づくだろう。 今回は、爆弾を食ってもらい、その後総攻撃で瞬 殺するつもりなので、気づいてもらえばそれで良 いのだ。 そして、砂の山(小さい)から鼻息が漏れる。 砂ごと凹み、ハプルボッカが姿を表す。といって も、体の上半分だけだが。 全体的に丸いその体の、前半部分は殆ど口になっ ている。今は見えないが、短めの尻尾もある。無 くてもあまり変わらないが。 そして、早速大口開けて突進、あるいは砂を泳い で突っ込んでくる。明らかに砂も口に入っている が、それまで食ってるのかは知らない。 ハプルボッカの突進は、ホーミングはしないの で、直線上に爆弾を置かない。突進は二回するの で、次の突進に向けて自分が置いた爆弾の直線上 になるように調整。

 

「っこらしょ、と!これで良いんだね?」

 

レナが、樽爆を起きながら効いてくる。場所は俺 の置いた樽爆の直ぐ隣なので、全く問題無い。

 

「良い。俺があいつを釣り上げたら殺るぞ」

 

「………へ?」

 

こいつ何言ってんのと言いたげな目線を送ってく る。 説明もしてないし、それは仕方ないと思うが、ま あ見てもらえば解るだろう。 向きを変えて、改めて突進するハプルボッカ。一 応それなりに引き付けてから大きく左に跳んだ 見事に樽爆二つを食らいながら空振り突進をす る。 またこっちを振り返りながら止まる。多分、砂塵 ブレスを吐くつもりなのだろうが、残念ながら、 爆発の方が早い。 ハプルボッカか、軽く飛び上がり、体を上に向け て軽い気絶。 俺は、こっそり持ってきた糸が長く、針しかつい てない釣り竿を取り出して、針を口の中に投げ入 れる。 しっかりと、引っ掛かる。後は、力ずくで引っ張 りあげるだけだ。

 

「うおおぉ!!」

 

「………嘘」

 

ポカーンとしながらその光景を近くで見ているレ ナ。他の二人も遠くで見たのだろう。 釣りあげられた巨体を見て、きっと何故釣れたと でも思っているのだろう。 ハプルの巨体は宙を舞い、ひっくり返って落下。

 

「総攻撃だ!」

 

「りょ、りょーかい……」

 

その後、ハプルボッカはぐちゃぐちゃとも言える 形容に、レナが変えてしまったのには驚いた。

 

ドスンと衝撃が走り、深い眠りから覚めた。

 

「いい感じに寝てたな」

 

笑いながら、コウガが薬さんグレートを渡してく る。

 

「……お疲れ」

 

が、後ろから何者かの手が霞むような速さで奪っ た。 そういえば、ジンオウガの奴と寝てたんだったけ と思い出す。

 

「はあ、あんた食いしん坊か?」

 

コウガが呆れた様子で言う。

 

「……んっ、んっ、ぷはぁ」

 

「温泉のジジィか!?」

 

後ろで回復薬を美味しく飲んでる声は、ジジィが ドリンク屋で何か飲んでる時みたいで、思わず 突っ込んでしまった。

 

「……」

 

俺を、彼女が無理矢理自分のいる方向を向かせ た。体を物理的に操作して。 そして、顔がだんだん近づいて来て……

 

――ちょい待て!

 

柔らかい物が唇に接触。頭の中が真っ白になりか けたが、口の中に何かが入って来て、正常稼働に 戻る。 回復薬の味だ。 つまり、口移しをしたと。いや、イエローゾーン だと思う、それならギリギリ。

 

「やらかしやがった」

 

やれやれといった様子で、コウガは離れていく。 足音で判断しているが。そして、何かが落ちたよ うな音。そして……声。

 

「か、カミト……?知り合ったばかりのソイツと やっちゃうの?私とはやってくれないのに?」

 

回復薬を飲まされて、動けるようになっているこ とも忘れ、寝たまま振り向く。 すると、ユウが家と外の境界線の上からジィーと 見てる。

 

「別に、その方が効率がいいと思ったからやった だけ」

 

明らかに見当違いな訂正を入れるジンオウガさ ん。 それを聴いたユウの目が、だんだん瞳孔が開いて いく。

 

「……効率?巫山戯てるの?」

 

「別に巫山戯てない」

 

そう言いながら、後ろから俺に抱きつく。 それを生暖かい目線で見ているコウガはこう思っ ていた。

 

――見事に噛み合ってないな、こいつら。

 

だから、ユウに言った。

 

「安心しろ。ルーンは下心あってやったわけじゃ あ無い。キスじゃない、口移しだ」

 

「どっちも同じ、です」

 

ルーンというのがジンオウガの名前か。そのルー ンはフッと耳に息を吹きかけてくる。

 

「何すんだよ」

 

「……いえ、別に、です」

 

ルーンは立ち上がり、ピョンと跳ねてベッドから降りる。

そこで、彼女はホントに文字通りの薄着しか着てなかった事を。

そこで、俺は改めてマジかよと軽めに動揺する。

コウガは、もう飽きたのか、はたまたどうでも良くなったのか、出て行ってしまう。

 

「……カミト、たっぷりオハナシしましょ?」

 

もう、逃げたい。

 

 

「ラヴィ!良い情報入手してきたよ!」

 

何時もよりも微妙にテンションが高いアンナが、スキップしながら俺に近づいて来て、そしてすっ転ぶ。

 

「……服濡らしやがって、誰が乾かしてやってると思ってるんだ?」

 

渓流の近くの水辺だから、アンナの服はびしょ濡れだ。

ため息をつきながら起こすと、「ありがと」と聞こえた。

 

――幻聴………か?

 

アンナが俺にまさかそんな事を言う筈無いと、凝視してみる。

 

「……何か悪い?」

 

少々怒ってるように見える。

つまり、言ったのだ。………嘘だろ?

が、忘れてしまう前に訊いた。アンナが、だ。

 

「良い情報って何だよ。くだらなかったら脳天ブチ抜くぞ?」

 

「……やっぱ何でもない」

 

くだらない事と自覚しながら良い情報だと態々言ったのだ。それは、自分のみ特する話の時のパターンだ。

 

「………訂正、言え」

 

「……ジエン()()()が来たんだよ。ユクモ近くに」

 

……何故ちゃん?あの勇ましい姿を見てちゃん?可笑しい。可笑しすぎる。

 

「……馬鹿か?」

 

「どうしてそうなったの!?」

 

しかも自覚してないらしい。

 

「……あ、そういう事。いやね、前に一回会った事があるんだよね」

 

「……同一なのか?今回のと」

 

ジエン・モーランは、古龍種なのだが、探せばそれなりの数がいる。しかも、他の地方では亜種までいるらしい。

その事に気がついたのか、口をあんぐり開けてフリーズ。それから頭を横にぶんぶん振る。そして力説した。

 

「いや、絶対そうだよ!気配で解るそのくらい!あの愛らしくてプニプニしてるあの娘を間違える筈が無い!!」

 

ビシッと指をさしてドヤァと顔で表現した。

色々とツッコミたい事があるが、一番思った事を言う。

 

「……残念ながら、見た目は全く関係無いぞ?何せ人化させなきゃどいつも殆ど同じだし」

 

「……あ」

 

論破。残念ながらオツムが弱いのだ。

流石に、夢を壊して可哀想なので、一つ言ってあげた。

 

「だったら、狩猟に参加してみたりとか、先に喧嘩売ったりすれば良いじゃないか。それならハッキリする」

 

「ラヴィ君頭良い!」

 

「お前が馬鹿なだけだ」

 

……しかし、ジエンが愛らしくてプニプニとは一体どういう事なのか。というか、♂じゃないのか。

 

 

「マジかよ」

 

最初に反応したのは、カミトだった。

 

「ジンオウガ騒動の次は宴かよ。……燃えてきたぁあ!!」

 

宴。ジエン・モーランの狩猟の事を指す。

ジエンは、砂の中の有機物を食べながら泳いでいる。因みに全長は10000cmはある。

砂漠にユクモ村があるわけでは無いので、特に被害あるということは無いが、それを態々狩りに行くのだ。

……背中に大量の鉱物があり、鉱山とも呼ばれる事があるのだ。

それに、ジエン・モーランはこの地方からしたら珍しいので、元々価値ある素材が、更に価値があがっている。

なので、宴と呼ばれる。

 

「カミト、テンション上がり過ぎ」

 

ルーンが不思議そうに見る。多分、今此処にいる、俺とカミト以外の皆が同じ事を思ってるだろう。

そもそも、ジエンを知らないのだろうから。

 

「おにーちゃん……ジエンってそもそも何?」

 

「「………はぁ」」

 

カミトと、ため息がハモった。何も嬉しくないが。

 

「ジエンは、鉱物だらけ何だぜ?しかも、ジエン自体の素材も中々良いもんで!それが下位相当でも他とはまたワケが違うんだ!」

 

彼の実力からして、忘れがちだが上位にも行ってないし、プロとは言い難い。

勿論、装備もウルクスス程度――しかも下位だし――の物だ。ジエンの素材で作る装備は相当欲しいだろう。

 

「おめえら!絶対に……狩るぞ!」

 

――誰も行くなんて言ってないぞ?

 

そう思いながらも、このメンバーなら皆行くだろう。

……しかし、古龍がまさか人の姿にならないわけが無い。あんな巨体で無ければ適当な所で竜に戻ってもらって剥げば良いのだが、無理だ!

つまり、カミトは絶対的に無駄な事だと知らず張り切っているのだ。

 

――まあ精々頑張って、元気に暴れてる所を剥いでやりな。

 

面白いので、声に出さず俺は言ってやった。




ジエン……やっぱやっちゃいます。村編は次回で終わりという事で。
出てきてない奴ら……上位編とかモガ編とかで登場させるので我慢我慢。
ジエン2……結局コメ無かったので今回は総力戦で。あ、募集は上位編の分もまだやるので。つまり上位でまたジエン出てきます。
アンナ&ラヴィ……ちょくちょく出しますが、容姿や種族等はなるべく秘密に。勿論、最終的には判明させますが。しかし、ラヴィってちょっと男らしく無い……
三体……カミトはお休みで、他の奴(主にコウガ)に暴れてもらいました。コウガはPS(プレイヤースキル)?がかなり高めです。サブタイの区切りはそういう事です。
秘薬……本編ではあえて書きませんでしたが、コウガはカミトに秘薬を飲ませるつもりでした。
前回の謎……あえてスルー。本人もド忘れしてるし、皆スルーした(という設定)。
ルーン……ネーミングセンスが無くて(ry
ジエン100m……10000cmって100mだよね……?それで、100mと言っても実感がわかない。
ジエン古龍……確かに災厄ではあるが、古龍に分類されるのがいまいち解らない。誰か教えてー!
宴……クエスト名にある。やってる人なら誰でも解るか。←おい!

次回もよろしく。
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