モンスターハンター 最弱で最強の少年   作:夢の天鱗

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ほーみんぐ猪

――私はね……カミトを殺すんだ。

 

俺が一人の時に、レナはひっそりと呟いた。

あまりにも唐突な話で、俺は訊いた。

 

――何故カミトを殺す必要がある?

 

レナは、暗い笑みを浮かべて言った。

 

――あんなクズ、消えてしまった方が良いよ。

 

それだけ言って、レナはひょっこりと姿を消した。

最初からわからん奴だとは思っていたが、完全にイカれたらしい。

因みに、ルーンとリオンにその事を話したら、

 

――頭打って、イッちゃっただけじゃない?

 

とルーン、

 

――ユウに訊いたら?いないけど。

 

とリオン。

やはり、女って解らない。

 

と、現実逃避という名の追憶をしている。

俺の目の前で起こっている事を言えば、こうなると思う。

 

――矛盾しすぎだぜ!

 

いや、だって、レナがカミトにピッタリついてるから。いや、しかもずっとこんな事を言ってる。

 

「カミト逃さない……」

 

もう、カミトは諦めがついたのか、完全に無視している。存在に気がついてないかのように。

 

「うはぁ、レナって病んでるよ」

 

俺の後ろに隠れているリオンが、俺にだけ聞こえる声で言った。

 

「病んでるって……どういうコトだよ」

 

「うん、嫌い過ぎて一周して好きに入っちゃうくらいオカシクなってる……で、解るかな?」

 

――ゴメン、全く解かんねぇ。

 

心の中で、古龍という大センパイに謝る。

というか、リオンは何故か俺以外の奴の前に出ようとしない。

そして、とりあえず頭の中のスイッチを切り替えて訊く。

 

「今日さ、上位のドスファンゴ狩るんだけど、ファンゴ程度平気だよな?」

 

自分のあまりの弱さから、ドスファンゴ程度のモンスターにも軽い恐れを感じるようになっている俺は、やはりあの大剣を頼るしか無いだろう。

と、訊いておいて全く違う事考えるという無礼極まりないことをしながら、返事を待っていた。

そして、返ってきたのは……

 

「あの金髪に訊けば良いんじゃない?」

 

金髪ってのが、誰かはすぐに解った。最近毎日温泉にいる女だ。

 

「あいつ……ハンターなのか?」

 

「うん。激龍槍ブチこまれたからね?」

 

――は?

 

最初、言われた意味が解らなかった。そして、少し考えて理解した。

宴にいて、その時ジエンに激龍槍ブチこんだという事を。

 

――見たことあるよう……無いな。

 

思考が塗り潰されるように変えられた事には、全く気が付かなかった。

 

「それじゃ、しゅっぱーつ」

 

「いや、そこ行くだけだろ」

 

この女は知らなかったのか、現在地、つまりカミトの家の裏口は集会所に直接行ける事を。

 

例の金髪は、一人で温泉に浸っていた。時間帯的にあまりいないとは思うが。

俺は特に気にせず裸になり温泉に入る。リオンも裸になって入っていた。そして、初めて気がついた。

 

――こいつ、まな板だ。

 

「今凄く失礼な事考えたヨネ……?」

 

リオンの爽やかな笑顔は、とても恐いものだった。

そして、俺を金髪野朗の所まで押して行く。

チラッとコチラを見た金髪野朗は言った。

 

「子供が来るところじゃ無いわ」

 

絶対にリオンの事だろう。

そして、リオンは金髪野朗に密着して、それはもう甘い声で言った。

 

「お隣、良いですよね?」

 

「帰って」

 

金髪野朗は迷惑そうに手で払おうとしたが、リオンはガッチリその手を握ってから言った。

 

「腹、痛かったんですよ?」

 

「……は?」

 

まあ、俺には言いたい事は解ったが、彼女には伝わらなかったらしい。

そして、俺はリオンを抱いて持つ。そして少し遠くまで連行。背が低いと抵抗できないのだ。

 

「は、離せぇ!このレウス程度が!離せよぉう!」

 

「そういや、あんたの名前ってリオレウスと似てるよな?リオンだもんな?」

 

そのやり取りを見ていた金髪野朗の目が、うっとしそうなものから、とても面白い玩具を見つけたような目に変わった。

 

「そっか。ゴメンね?貴方あのジエンだったのね?」

 

リオンは負けじと言った。

 

「人間みたいな劣等種にそんな言われ方したく無いね!崇め奉れぇい!」

 

「リオン!それは自分の知能の無さを披露してるのと同じだぞ!?」

 

俺の胸の中に収まってるリオンが、苦笑いしながらこっちを見て、「ホント?」と呟いた。

どうやらこの古龍様はオツムがダメらしい。

 

「えーと……なんかゴメンね」

 

「謝らないでぇ!!」

 

そんなやり取りを聞きながらも、一つ思った。

 

――この金髪何故俺達がモンスターだと解ったんだ?

 

そして、金髪野朗は俺と目を合わせてから言った。

 

「貴方は……さっきの会話からしてリオレウスね?」

 

「ああ、そうだが?後俺にはコウガという名前があるので。あ、このジタバタしてる奴はリオンな?」

 

「ジタバタは余計だぁ!」

 

と、その余計なジタバタをしながらリオンが叫んだ。結構プライドが高いらしい。

 

「なら、私はネビュラと名乗っておくわ」

 

「偽名だろ。ぜってーに」

 

「まあ認めるわ。でも、プロハンって皆そうなのよ。例えば帝王破滅(カイザーデストロイヤー)のジグなんかは本名エクサだし」

 

「………誰?」

 

素直に思った事を訊く。すると、意外な事にリオンが解説してくれた。

 

「ああ、その人は数々のテオ・テスカトルとナナ・テスカトリを一人で葬ったハンターで、プロハンの中では凄く有名な方なんだけど、この辺りには全然来ないから知らない人は知らないんだよね。遠方の噂なんて入んないだろうし」

 

そして、俺はその解説の中で全く解らない事を訊いた。

 

「テオなんちゃらとナナなんちゃらって……何?」

 

ネビュラは海のように深いため息を吐いてから、態々教えてくれた。

 

「他の地方の古龍よ。属性は火だし、貴方の上位互換……もっとも、習性は全然違うけど」

 

「上位互換と言えば、やっぱゼルレウスだよねっ♪」

 

「「………説明よろしく」」

 

俺とネビュラは、何故かハモって説明を要求した。

未だに俺の腕の拘束から脱出できてない憐れな古龍は、「本題に戻そ……」と、話を変えた。

 

「ああ、そもそも上位のドスファンゴの事を訊きに来たんだっけ」

 

本来の目的をあえて口に出して再確認すると、ネビュラは面白そうな顔をして言った。

 

「下位のドスファンゴ狩った事ある?」

 

「俺はあるな……」

 

あの雑魚に大剣を叩きつけて潰そうとした所をセイカに止められた記憶はある。

そして、彼女はニンマリと笑って言った。

 

「先入観に囚われてると……死ねるよ?」

 

不思議な事を言って、さっさと温泉から上がってしまった。

もう、何が言いたいのかサッパリ解らなかった。

 

 

「オマエラが行け!」

 

「……いや待て、カミト。話が違うぞ?」

 

困惑してるコウガを殆ど無視して、ずっとペッタリくっついてくるこの蛆虫の排除方を考えていた。

因みに、ブッ壊れたレナを見て、皆苦笑いするだけだ。皆、♀だから。

だが、俺はとても被害を受けている。きっと今なら、下位のジャギィ共にも勝てない自信がある。荷物があるから。

 

「てーか、話がちげぇのはオマエラもだ!」

 

「………は?」

 

コウガの後ろにしっかりと隠れている奴、誰だか全く知らない。

あまりにもちゃんと隠れすぎて、ちょっとズレただけでしっかりと見えている。

 

「後ろの、出て来い」

 

「あはぁ……何で生きてるんでしょうか?あの時殺ったつもりだったんだけどね」

 

蒼いサラサラとした髪をしてる少女は、とても危ない発言をしながら影から出て来た。

そして、瞬時に理解した。

 

「ジエンか、あんたジエンか。はっ、俺はしぶといんだよ」

 

「カミト……あんたもブッ壊れる寸前だぞ?」

 

「ストレスがマッハなんだよ!!」

 

そして、二人をさっさとマイハウスから追い出した。

 

 

――散々だ……!

 

例えどんな物事にも複雑な理由が存在する。石に躓いて転ぶ事も、喧嘩することも、そしてカミトに今追い出されたのも。

それは、レナの暴走によるカミトのストレスと、リオンがずっと隠れていた事、更に相手がドスファンゴという基本雑魚だから、ザッとこれだけの理由がある。

要は………

 

「巫山戯てんじゃねぇぞ憐れ古龍!」

 

「な、なんの事かな?」

 

胸ぐらを掴み――そして自然と持ち上がり――俺は声を荒げて叫んだ。

そして、俺は直ぐにそれに対する興味を失い適当に投げる。

それは、豪速球になったが、そこにいた誰かが見事受け止めた。

 

「喧嘩でもしたの?」

 

彼女は、ニヤニヤと笑いながらそれを置いた。

そして、サラッととんでもないことを吐いた。

 

「貴方、もしかしてドスファンゴ程度に勝てる自信が無いの?」

 

「ンなわけ……ある、か」

 

彼女の笑みは、完全に俺の考えを見透かしてのものだった。だから、素直に言った。

 

「少し前によ、圧倒的な力の差を見せつけられて……自分に自信が持てないんだ」

 

「ああ、それってあの時の……」

 

ラヴィにボコされた当人は、いかにもそんなことあったな程度の反応で思い返してる。

彼女……ネビュラは、そっと笑った。

 

「昔、私もそんな事あったわ。でも、私はね、私が弱いんじゃなくてその人が強いって考えたの。じゃね」

 

彼女は、それだけ言って集会所を出て行った。装備をしっかりと着てたから、これから狩りなんだろう。

 

「ほら、コウガはボケッとしてないで行くよ?」

 

いつの間にクエストを受注していた――受付嬢に絶対怪しまれるよな?――リオンは、俺を引っ張ってガーグァ車まで連行した。

 

辺り一面水に浸かっているのを見て、嫌だなぁと思った。それが渓流みたいな綺麗な水なら良かったが、濁っている。

 

「水没林なんだから……仕方ないよ」

 

リオンは思ってもいなさそうな事を歩きながら行った。

俺は支給品BOXから応急薬を幾つか取って後を追った。

そして、お出迎えは派手だった。

BCから少し歩いていると、突然後ろから水が跳ねる音が聞こえて、横に跳んだ。リオンもだ。

そして、俺達がいた場所を凄い速さで通り過ぎて行った猪。

 

――おし、ドスファンゴ発見。

 

攻撃するために追いかけようとした、その時、見てしまったのだ。華麗にカーブして戻ってくるドスファンゴを。

 

――先入観ってそういう事かよ!

 

下位のドスファンゴは、曲がれないのだ。それをドスファンゴの特徴だと勘違いしていて後ろから突っ込まれた死ねる。彼女はそれを言いたかったのだろう。

 

「糞がっ!」

 

抜刀する間も無く、右に跳ぶ。そして、ドスファンゴも少し右に曲がる。

 

――マジ?

 

そして、しっかりと足が地面に着いた時には殆ど目の前にいた。もう本能的な恐怖で左に大きく跳んだ。

流石に曲がって来なかったが、見てしまった。

 

「また来るよー!」

 

「テメェは見て楽しんでんじゃねぇ!」

 

彼女の背中にあるランス(盾無し)は何のためにあるのか。

そして、またターンしてきたドスファンゴを引きつけて………跳ぶ。

そして、スルーからのターン。どうやら俺は奴のスタミナが切れるまでずっと繰り返さないといけないらしい。

そして、何度目か判らなくなる程避けた所で、リオン眼に殺意が浮かんだ。

 

――俺が避けた瞬間横から刺すつもりだ!

 

つまり、俺は囮として何度も避けさせられていた。

そして、ドスファンゴはまだ疲れずに突進してくる。そしてパターン通り引きつけて避ける。

 

「ラアァ!!」

 

リオンの気迫の一撃。だが、俺は避ける直前に奴の体が光ってた事に気が付かなかった。

ランスの下を見事少女――幼女☓――がスライディングを決めて、それはまた光り猪に戻る。

要は………

 

「リオン……助けてくれ!」

 

「囮ファイト!」

 

本当にスタミナが切れるまで繰り返さないといけないらしい。

 

それからまた何回、何分それを繰り返したか判らなくなる程続けていた。もう、リオンは応援しかしてくれないし。

そして、ドスファンゴをギリギリまで引きつけて、跳んだ。いや、跳ぼうとした。

足がズルッと滑った。そして、跳べなかった。

 

――マズイ!

 

そう思って思わず目を閉じた次の瞬間。

 

「おわあぁ!?」

 

情けない悲鳴をあげて、それは俺にどスッとぶつかり、軽く飛ばした。本人同伴で。

茶色の毛をした少女は、ゼェゼェしながら俺にいった。

 

「なんで、あたら、ない、の?」

 

「誰かがそう簡単に当たってやるかよ!」

 

自分も多少おかしな言葉を返していた。

その少女は、青い目でジッと見て、笑顔でいった。

 

「休憩休憩……」

 

俺に衝突している状態のままで目を閉じた。もう寝られたらオシマイな気がして突き放した。

 

「むふぅ……」

 

そして、バタリとそこに倒れた。

どうやら、本当に体力がすっからかんになるまで暴れていたらしい。

そこに、冷ややかな眼をしたリオンが近付き、ランスを構えた。凄い、殺る気満々だ。

だから、俺も結構疲れてるのを我慢して走り、リオンの顔面に蹴りを入れた。

 

「な、何するの?こいつ殺るのは最初から変わらないよねっ!?」

 

所謂殺る気スイッチがオンになってるらしい。

 

「この豚がっ!恥をかかせやがって!」

 

見事に知能の無さと本音が両方伝わってくる発言をするリオン。

そして、脚がガシッと掴まれて、彼女は倒れたままいった。

 

「ありがとう!」

 

スタミナが尽きても、どうやら無駄口を叩ける元気はあるようだ。

そして、さっきまでゼェゼェ息をしていたのが、しっかりと呼吸している。

 

――まさかもう治ったのか!?

 

そして、サッと立ち上がり即座に猪に戻って全力で逃走していった。

 

「体力多い癖に回復早いよ、あの野朗」

 

リオンは、あの空振りを本気で恥ずかしがっている。そして、怒りにコンバートした結果がこれである。

マジで、やめてほしい。

苛立ちを抑えるために、別の事を考えた。

ウチの猟団……いや、俺は人になれるモンスターは絶対に狩らない。そう決めている。

だって、コミュニケーションを取れるから、殺し合う必要も無い。なので、

 

「クエスト失敗か……」

 

「……追えば良いじゃん。それから肉片バラ撒く勢いでグシャグシャに斬っちゃえば良いじゃん。それが、一番だと思うよ?」

 

俺の発言の意味を瞬時に悟ったリオンは、流石に少し怖い事を平然と、訂正、嬉々としながら言う。

どうやら、本気で殺りたいらしい。

 

「てめぇの寂しいプライドなんぞ捨てちまえ。帰るぞ」

 

しっかりと暴走寸前のリオンの手を握り、歩き始めた。

握った瞬間、少しだけ顔を赤くしたような気がしたが、やはり気の所為だろう。

そして、少し歩くと、水の跳ねる音が聞こえて来た。既視感満載の。

だから、俺は振り向きはしたが、避けはしなかった。少女が突撃して来たから。

 

「やっぱやめた」

 

「……?」

 

けれど、やっぱ避けた。当たったら飛ばされそうだったから。

そして、少女は止まることが出来ずに木に衝突して、折った。避けて良かった。

 

「よ、避けなくても良いのにぃ……」

 

まだ疲れてる様子を見せるこいつ。何故戻って来たのかはさておき、こいつの軽めの天然に一つ知識を与えた。

 

「誰だって、そこの木みたいになりたく無いんだよ。俺だってな」

 

そして、俺が教えた直後、殺気が満ち溢れる。きっと周りの小型モンスターは皆逃げてしまいそうな程。

 

「アハハ?さっきぶりだネ?早速死んで貰おうかナ?」

 

「そう、じゃああんたには用は無いね!命乞いしにUターンしてきたんだから!」

 

まるで決め台詞のように言うこの少女は、やはり天然ではあるのだろう。

 

「命乞いってどういう事だよ」

 

俺が説明を要求すると、ガクッと項垂れてから言った。

 

「他のハンターに見つかった挙句変な臭いの当てられて……」

 

「「帰れ」」

 

多分初めてリオンとハモった。

変な臭いを出す物といえばペイントボール。ペイントボールはモンスターの位置を大まかに把握させる物である。

それを当てられたモンスターは、どうやってか嗅覚をも鍛え上げられたハンターに居場所を把握させられてしまうのだ。

そして、少女からは今も臭っている。そしたら今一緒にいる俺達も何かと巻き込まれるのは絶対だ。

 

「ほんっと迷惑なんだけど!帰ってくれない?」

 

「わあぁ……助けてよっ!」

 

今にも泣き出しそうな顔で俺に助けてと懇願してくる少女。

 

「疫病神を助けるような馬鹿はいないっての!」

 

「あんたには訊いて無いよ!」

 

「コウガは私の所有物なんだから決定権は私が持ってる!」

 

――俺は奴隷かっ!?

 

リオンが唐突に変な事を言うので、ツッコミが喉まで上がってきた。なんとか耐えたが。

二人の喧嘩をどうにかしないとな……喧嘩?

今俺は、名案を思いついてしまったと思う。

リオンの手を改めてしっかりと掴み、少女の手も掴んで俺はBCに向かって走り出した。

 

「ちょっとっ!?どうしたの!?」

 

俺の突然の行動についてけてないリオン。

 

「解らないなら黙ってろ!」

 

そう叫ぶ中、臭いがBCに向かって動いてる事をハンターに悟られない事を願った。

 

BCについた直後、誰もいないのを確認して、リオンをベッドの下に無理矢理収納してから、支給品BOXの中を漁り、ペイントボールを二つ出す。

そして、一つを全速力で少女に投げた。少女は慌てて躱す。

そして、二つ目を自分に当てた。炸裂して臭いがつく。臭い。

更に、持参した二つのペイントボールを出して、片方を少女に軽く投げる。ちゃんと受け取ってくれる。

そして、俺は投げる構えをした。そして、何をしたいのか察してくれたようで、彼女も構える。

そして、バシャバシャ音を立ててBCに誰かが入ってくる。

姿を確認せずに、叫びながらぶん投げた。

 

「この馬鹿野朗がっ!!」

 

サッ躱して彼女も叫びながら投げて来た。

 

「だから五月蝿いって言ってんのっ!!」

 

俺もしっかりと躱す。そして、ハンターらしき人が話しかけて来た。

 

「ちょっと、喧嘩は良くないよっ!」

 

「「黙れっ!」」

 

そして、そのハンターを迎撃すべく一言プレゼント。

 

「だから、喧嘩して何にもなんないよ……そんなんでモンスターに殺されたらどうするんだよ!」

 

モンスター二人に向かってそういう憐れなハンターは、背中に納刀してる狩猟笛に手をかけた。

 

「あー?やるってか?」

 

俺も、大剣に手をかける。

 

「……それで良いんだ」

 

彼は、微笑んで言った。トチ狂ってるのかと思ったが、冷静に考えたら解った。

 

――怒りの対象を自分に変えたのか。

 

このハンターは良い奴なのかもしれない。だから、俺がリオレウスだと、少女がドスファンゴだと解ったら絶対に殺るだろう。人間を守る為に。

 

「ハァ?イミフな事言ってんじゃねぇよ!」

 

だから、必死に演技をした。それを理解できず、ただ怒るだけの残念な奴を。

 

「……これから正体不明のモンスターを狩るんです。勿論、依頼主がしっかりと解ってないから……ですよ?」

 

依頼主、その名を出した。つまり、それは俺みたいに素材だとかランクとかだけを考えてモンスターを狩ってるわけじゃない、と暗に言ってるようなモンだ。

 

「はっ?邪魔されたくねぇってか?だったらとっとと失せろ!」

 

勿論、その事にも気がつかなかった事にしたが。

 

「あんたさ……私の事忘れてるよね?」

 

今更ながら俺に喧嘩ふっかけてくる少女。それを見たハンターは、もう諦めたのか、判断を託したのかBCから去って行った。

それをしっかりと見届けた少女は、崩れ落ちるように膝をついた。

 

「恐かった……」

 

それだけ呟いた。それだけが彼女の言いたかった事なんだろう。

彼女を起こして、ベッドに座らせてあげた。

そして、今更ながら気がついた。しっかりと人間らしい服装をしている事に。自然過ぎて気が付かなかった。

だから、一つ訊いてみた。

 

「なんであんたそんな服持ってるんだよ」

 

「……ふふっ」

 

笑っただけだった。少し無理して笑った、それ以上の応えは無かった。

その応えだけならば。

俺の胸ぐらを突然掴み、俺をベッドに倒す。それから少女も横になり、ニコニコと笑う。

 

「な、なんだよ……」

 

「用はこれだけ♪」

 

少し近づいて来て、更に頭はもっと近付き……

 

「ストォーップ!!」

 

下から何故かリオンの叫びが聞こえた直後、唇に柔らかい感触。勿論、もう何されたか解ってるが脳内を制御して解らないフリをする。

それから両手が伸ばされて、俺を抱き締めた。

そこで、脳内の制御の限界が訪れた。その瞬間に頭の中が真っ白になり、気絶しそうになった。

やっと彼女の唇が離れて、俺の口は解放された。だから早速行使する。

 

「何するんだよ突然っ!!」

 

「一目惚れって奴だと思うなぁ」

 

相変わらずニコニコと笑ってそう言う。全く気にしてないようだ。

それから、何か思い出したように言った。

 

「こういうの……初めてって言うのかな?」

 

そんな発言に反応したかの如く、下からリオンが飛び出して来て、早口で殺気と共にぶち撒けた。

 

「チョット何シテタのカナ?コウガニキスナンテ早イト思ワナイ?思ウヨネ?シカモワザトラシク初めてッテ言ウノハ喧嘩売ッテルノカナ?ソンナニ死にたいノカナ?ランスデソノ生意気ナ口抉っテアゲルヨ?痛クナイカラ安心シテ?」

 

とても激怒してるのだけは理解した。理由は解らない――というフリ――のだが。

だけど、ニコニコとした笑いを維持して少女は言った。

 

「そんなに義理でやって欲しいの?もう、仕方ないなぁ」

 

呪詛のように未だに何かを呟いているリオンに、自ら近付く少女。

それから身を屈めてから、そっと顔を被せた。

 

――もう何も見ないぞ!

 

そうだ。方向的に被っただけで何もしてない。そうだ、それしかない。何かアカン事なんぞしてない。

だが、現実とは非情なものだった。

 

「な、ななな何するの!?」

 

顔を超真っ赤にしてるリオンに、未だにニコニコしてる少女は告げた。

 

「キ・ス♪だってしてほしそうだったんだもん」

 

見ないで良かったと本気で思った。

というか、あの呪詛を唱え殺気を剥き出しにしてランスに手をかける姿を見てしてほしいように見えたのなら、リオンとはまた別の意味で馬鹿だ。

 

「じゃあね♪さっきから視線が気になって仕方ないし」

 

リオンにトドメを刺してから、俺に近付いて小声で言った。

 

「さっきの本気だから」

 

さっさと退散していった。

そして、二回も攻撃――精神に――されたリオンは、パタンとその場に倒れた。

流石に、そこまで効くものかと考えてしまったのは仕方ない。

そして、一つ大切な事を忘れていた。

 

――名前訊くの忘れた!

 

もう、手遅れだった。

 

 

「カミトォ……逃げないでよ」

 

ナイフ片手に笑顔で近づいてくるレナから逃げて一時間。渓流をモンスターや他のハンターを全力で無視して逃げ回ってもしつこくついてくるのだ。ナイフをちゃんと構えて。

 

「待て!いいから少し話を!」

 

「言葉ってね?口で発さなくても良いんだよ?」

 

体力の限界により、レナに交渉を持ちかけたが変な言い方で却下された。

それから、初めて通る道を通った。アイルーがいる橋の前である。

アイルーが無残な死を遂げる姿しか想像しなかった。そして、予測通りレナはナイフを捨てて全力で一匹のアイルーの元に向かって行った。

だが、此処からが違った。

 

「もう逃さないぞぉ!」

 

アイルーに飛びかかり、ぎゅぅと抱き締めた。そして、動かなくなった。

 

「何やってんだ!?」

 

この場にいない筈の、猟団の俺以外の唯一男の声が聞こえた。

それから、リオンとか言う奴がまた全力――多分――でレナの抱きしめてるアイルーを蹴り飛ばした。

そして、突然の展開にボケェーっとしてるレナの上に馬乗りになり、レナを指さして言った。

 

「動かないでよ!」

 

そして、後ろの温度が急上昇した。つまり、コウガの体温が急上昇した。チラッと見ると、顔を真っ赤にして固まっていた。

そして、視線を戻した時、俺も真っ赤になったと思う。

リオンが、レナにキスをしていたのだ。

 

「なんか口直ししてるっ!?」

 

コウガが不思議な事を口走り、リオンが離してから「ありがと!」と無神経な事を言って何処かに去ってしまった。

そして、コウガはレナの元に言って「おーい、生きてるか?」と、やはり顔を赤く染めてるレナに言ってから、それを担いでリオンを追いかけた。

そして、一人残された俺は、コウガを追いかけた。

 

 

リオンの凶行は、止められなかった。

猟団の皆を次々と精神攻撃していって、全員終わった時に「これだけやればイイカナ?」とドス黒い笑みを浮かべて言った。

そんなにあの少女に二回やられたのが嫌だったのか、単にやつあたりしたのかは解らないが、凶行であった事には変わり無い。

そして、次の日にはもう無駄な対策会議が行われたりもした。

俺は参加しないで、俺の知り合いのマトモな女性は誰かと考えて、夜中に――会議は一日中続いた――温泉に突入。そして目立つ彼女を一目で発見してリオンの凶行とその前にあった事を説明したら、こう返ってきた。

 

「もしかして、嬉しかったんじゃないの?」

 

と、絶対に見当違いな返答が。

だが、顔を見れば冗談というのが良く解る。

もう、俺はどうすれば良いのか解らず、彼女の家に――ユクモ出身らしい――逃亡までしたのだ。

これが、ドスファンゴというかあの少女とリオンの組み合わせが完全にトラウマになった原因である。




ドスファンゴ少女……ドスなのに群れてないというか子分がいない。また、名前は無い。
リオン……暴走すると止まらないタイプ。
レナ……考えが一周すると相手に恐怖を与える結末となる。
ネビュラ……ちゃんと出番ありますよ?まだ少ないだけで。
優しいハンターさん……出番は……アルカナ?って所。
ドスファンゴホーミング……初見殺しだと思う。あれは。
ドスファンゴネタ……V字開脚やらせたい。

次回もよろしくですっ!
↑今回多かった「(なんとか)っ!」で締める作者。
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