織斑一夏、初めての専用機を開発した研究者は後に語った 。
「ああ、Mr織斑の専用機ね…… ありゃあ僕の最高傑作って呼ばれてるらしいけど、僕にと っては駄作中の駄作だね。……え?なんでだって? あんた、兵器とそれを操る人間の関係を知ってるかい? そう、それだよ。あくまで人間は兵器の力を限界まで引き 出すためにいるんだ。
……Mr織斑の専用機を作れるって聞いた時は初め凄く喜ん だよ。 だって、そりゃそうだろう!今はFack'nな女共に独占され ている空をまた男が飛べるかもしれない。そう思ったらさ ……わくわくしちゃってね。 でもさ、Mr織斑を一目見た瞬間……ああ、僕みたいな存在 とこの人は器が違う。僕みたいな小物とは規格が違うって 思い知らされちゃってさ……
おっと、話がズレちまったね。 どこまで話したんだっけ? そう!兵器と人間の関係性だったね。 Mr織斑はまさにスペシャルさ。 兵器のために人がいるんじゃない。Mr織斑のために兵器 があるんだ。 いやぁ、本当に苦労したよ! 何せ当時の第三世代機を装着したMr織斑が何て言ったか わかるかい?
「脆い」
ちょっと力を籠めたら、ISが弾け飛んじゃってさ。あれ は自分の目を疑ったね。 仕方ないから、頑丈さだけが取り柄の第一世代型を必死に 改造して、Mr織斑に合わせたよ。 あれは……技術者からしてみれば本当に屈辱だったね。 必死に作った研究成果を完全に否定されたようなものだっ たからね……あれは忘れられないや」
――つまり、あなたは織斑一夏を恨んでいるのですか?
「おいおい、君は今まで何を聞いてたんだい? 僕がMr織斑の『百式』を作ったのは僕の人生最大の誇り さ! 『白式』はMr織斑という力を加え、付け加える事の無い パーフェクトな百に生まれ変わったんだ。 それが僕の力じゃなくて、ちょっとばかり悔しかったけど ね」
民明書房「織斑一夏という漢」
そんな未来を現時点のセシリア・オルコットが知覚する術 はない。 だが、織斑一夏の規格外のパワーを感じられない者がいた としたら、すでに生物として当たり前のように持つ危険察 知能力が欠けている者だけだろう。 だからこそセシリアは自らを鍛える事に決めた。
たった一週間で何が出来ると言うのか?
そんな疑問は一日目ですでに投げ捨てた。 三日目を数えるセシリアの訓練は授業が終わり、すでに五 時間を超えたが休まない。
「497、498、499……!」
腕立て伏せは腕が太くなるから嫌だった。 もう、セシリアは誰が見ても限界だ。
しかし、ありとあらゆる方法で織斑一夏にセシリア・オル コットを理解させると決めたのだ。 ブルーティアーズ得意の中距離射撃戦のみで戦わせてくれ るような甘い相手ではないはずだ。 不得意な近接戦闘に備え、持久力をつける事は必要な事だ 。 銃口を横に向けエレガントさを追求した『スターライトm kⅢ』の展開イメージを常に相手に銃口に向けて、どんな 体勢でも展開する事が出来るように修正した。 近接用武装『インターセプター』の展開はまだ一秒近くか かってしまうが、それでも言葉にしなくても展開出来るよ うになった。
「もういいでしょう?ここまでやれば十分ですわ」
弱いセシリアが囁く。 確かに三日前のセシリアからすれば、長足の進歩だろう。 それにセシリアは織斑一夏に勝てるのだろうか?
「無理に決まってますわ。あんな規格外の男に負けてるの は仕方のない事ですわ。こんな無駄な事はもうやめなさい 。今の貴方は無様ですわ」
確かに仕方ない事なのかもしれない。 戦っている所を見た事はないが、あの織斑一夏が弱いはず がない。 セシリア・オルコットでは存在自体が違いすぎる。 最初から勝てるはずがない。 そんな事はすでに理解している。 だが、
「このくらいで負けてらんないのですわぁぁぁぁぁぁぁぁ !……500!!」
乳酸が溜まり、ぱんぱんになった腕でもセシリアは五百回 の腕立て伏せをやり遂げた。 必死に歯を食いしばり、乙女としては見せられない形相で 。 セシリアの肢体を包む青いスクール水着にも似たスーツは 汗ですでにドロドロ。
「織斑一夏……絶対、貴方にわたくしの存在を刻み込んで あげましてよ……!」
だが、織斑一夏に最高のセシリア・オルコットを魅せつけ てやるのだから。 こんな所でうずくまっている暇は無いのだ。 次は腹筋五百回。まだまだセシリア・オルコットは突き進 む。
残りは後四日。セシリアはその日が来て欲しくないような 、待ち遠しいような不思議な気分の中にいた。
一方、織斑一夏の後ろの席の子は、
「うん、明日はパンツ三枚持って行こう」
色々とダメになっていた。