待っていてくださった方には感謝です!!
冒険王から出発した所です。
あれから、飛鳥達はまた歩き出した。すると、エステルがユーリに話しかける。
「ユーリは魔術を使わないのです?」
「使わないんじゃなくて使えねえの。オレ、そっちの才能はないらしくてね」
「でも、
「……」
「だから、その魔術の理論を学ぶ才能ってのが、オレにはなかったって話だよ」
「それってつまり、ユーリは勉強が嫌いなんですね」
「そうとも言うな」
「ク~ン」
飛鳥はこの会話を聞いて、原作通りだとわかると、少しほっとする。自分の発言一つで物語がどう転ぶ変わらない状況だとわかっているため、自分の方に何か話を振られるか、話さなければならない状況にならない限り飛鳥はほぼ何も言わない。
「アスカは魔術使えるんです?」
「え?……どう、でしょう…昔、使えてたのかも、覚えてませんから…」
「でも、お前は魔道器も持ってねぇよな?」
「あぁ、確かに持ってないですね……だったら、昔は使えてたとしても、今は使えませんね」
「そうですね。アスカは武器で攻撃するのが一番に見えますし」
「武器というか…私はコレで援護するくらいしか、できませんよ…?」
「援護でもいいじゃねぇか」
「ですね!」
エステルに話しかけられ、考えるような、思い出すようなしぐさをしつつ、覚えていないという。そのまま話は自然に終わったので、飛鳥は一息つく。そこでふと顔をあげてみると、砦が見えてきた。
「お、見えてきたな」
「はい!」
ユーリが先頭を歩き、見えてきた砦へと足を進めた。
・・・
中に入ってみると、騎士団の人達がたくさんいた。これでは、騎士団に見つかるのも時間の問題ではないか、と思いつつも成り行きを見守る。
「ユーリを追ってきた騎士でしょうか?」
「どうかな。ま、あんま目立たないようにな」
「うん」
飛鳥は、この会話で、このデイドン砦で起こることを思い出した。飛鳥自身、あまりヴェスペリアのことについては大まかなあらすじは知っているが、細かなところは知っている所もあるがほとんど覚えていない。何せ、現実世界で動画を見ていただけなのだ。それも、特に覚えようと思ってみたのではなく、なんとなく話が面白いからどんなのだったか見直そう、そんな気持ちで見ていたため、あまり記憶に残っていないのである。大きな事柄なら、思い出せるのであるが。
「あれ?」
考え事をして歩いていると、ユーリ達と離れてしまったらしい。だが、目立つ格好をしている2人組なので、案外すぐに見つかった。
「ま、待ってください…」
「おーいたいた」
「はぐれちゃダメですよ!」
「すみません…ぼーっとしてたら…って何処に上ろうとしてるんです!?」
「ちと様子見だ」
「え…」
ユーリはいかにも関係者以外立ち入り禁止だろう所に、足を踏み入れる。そしてそのまま砦の見晴らしがいい場所に上る。すると、銀髪の長い髪を持った人が立っていた。飛鳥はこの人物を見ただけで、デューク・バンタレイだとわかった。理由はこの人物は、ヴェスペリアのラスボスだからである。現段階ではユーリ達はそんなことはみじんも知らないだろうが。
「…おい。お前、何をしに来た」
「!」
「ん?アスカ?」
「私は……記憶を、私の記憶を…探してるだけ、です」
「……そうか」
飛鳥の答えに、一応は納得をしたのか、短くそう答えてそれ以上は何も言わなかった。ただ、このやり取りで飛鳥にはまた一つ、わかったことがある。それは、デュークが飛鳥はこの世界の人間ではなく、イレギュラーな存在だということに気付いている、ということだ。
飛鳥は、ふと、遠目ではあるが雑貨屋を見つける。それを見て、自分の武器であるチャクラ無を使うには分厚い手袋が必要だろう、と思いユーリに買い物をするといってから、雑貨屋で手袋を買い、すぐにその場でつけてみる。すると、案外、着け心地がいいものだった。買い物が済んだので、すぐそこで待ってくれているユーリ達のもとへ戻ろうと思った途端。橋の方から鐘の音が聞こえてきた。
「「「!!」」」
橋の方を見ると、外の様子が見える。すると、遠くから砂煙が固まってこちらへとやってくるのが見えた。遠すぎてみてないだけで、姿は見えずとも足音は聞こえる。しかもその足音は複数だ。足音の主はどう考えても魔物しかいない。鐘が鳴る中で、外に出ていた住民たちは中へと走ってくる。
―…?足が、震えてる?あぁ、そっか。怖いんだ、うち。そりゃそっか…でも、大丈夫。大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫……
慌ただしい中、飛鳥は目をつぶり心の中で大丈夫、と繰り返していた。そして、何度目かの大丈夫、を言い終えた時だ。飛鳥は目を開き、目の前の状況を見る。すると、魔物の中に一際大きい魔物が居るのに気付く。
「数も多いけど…あの大きいのは…」
「あれ、全部、魔物なの……」
「帝都を出て早々にとんでもないもんにあったな。オレ、なんか憑いてんのか?」
そう言ったユーリは閉まりかけている門へと走り出した。それを見て、橋の上の見張り台に居た女性が何か言いかけるがもう遅い。そう、思った時だった。
ラピードが門を閉めようとした兵士に器用に尻尾で叩いてからひと吠え。
門を潜ったユーリは後ろからエステル来たのを止めようとするが、その制止も聞かず、エステルはユーリの横を通り抜ける。すると、飛鳥もすぐに横を通り抜けたのが見え、ユーリは叫ぶ。
「おい!何する気だ!!」
「女の子を、お願いします」
「はぁ!?…わーったよ!」
飛鳥は魔物の軍から1体、黒いドラゴンの形をした魔物がこちらへ飛行してくるのを見つけ、チャクラムを両手に構えてすぐに狙いを定めて投げる。狙い通りにちゃんとチャクラムは飛んでいき、2回切ると飛鳥の手元に戻っていく。それを器用にキャッチしながら、まだ倒せていない黒いドラゴンと対峙する。大きさは3、4メートルと言った所でそこまで大きいわけではないが、血のように赤い目をみたアスカはまた足が震えだすのを感じた。
―はぁ…いい加減、慣れろ。もう2回目だろ、会うの。
そう言い聞かせ、再び武器を構えた時だった。後方から声が聞こえたのだ。
「お人形、ママのお人形~!」
その声に後ろを振り返ると、そう遠くない場所にピンクの人形が落ちていた。そしてユーリがこっちへと近づいてきたのを見た飛鳥は人形を拾い、ユーリへとパスする。そして、銃をホルダーから抜いて撃った。ちゃんと黒いドラゴンに当たったようだが、確認してる暇はない。銃を撃ったら全力疾走だ。
―くっそ、なんでこうなった!ほっとけばいいのに…!
自分でも何故動いたのか分からなかった。そして最後はユーリに引っ張られなんとか門が閉まる前に門の内側に入ることが出来た。
「ったく、お前危なっかしいな」
「…すみません」
そうやって話してると、住民達からお礼を言われる。飛鳥は何もしてないと言ってそっぽを向いていた。住民たちはなんとか魔物の襲撃を防げたので、元の場所へと散っていく。ユーリ達も一安心して、息をついた。
「お前やるじゃねえか」
「すごいです!アスカ!」
「えっと…?」
「お前、あの黒いドラゴンの魔物に最後、銃で撃ったろ?」
「はい…何か、問題でも…?」
「いや。むしろ逆だな。アレ、眉間撃ち抜いてたからな」
「はい…?」
「やっぱりアスカは強いんですね!」
「あ、あの時は…無我夢中、でしたし…!そんなこと、ないですよ…」
今までほめられたことのない飛鳥は何とも言えない気持ちになり、そっぽを向く。だが、内心では
―……良かった。シューティングの腕が役に立ってるんやね…
と思ってホッとしていたのだった。
というわけで、6話目でした。
次はデイドン砦~になります。
不定期更新ですが、よろしくお願いします。