【トリップ】それでも、私は生きている   作:月乃夜桜

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ということで、ようやく第2部のはじまりですよ!

今回は街を出た後~になります。


今回は胸糞案件ですので、苦手な方はご注意ください


第2部
34戦目


・・・

 

ダングレストを出発したものの、出発前に色々あったため、少し休憩。そんなところだった。だが、もう少し本格的な休憩は先だという事になり、ヘリオードという所までになった。しかし、それでもクタクタなカロルはもう少し休憩する回数を増やそう、と提案していた。そんなこんなで進んでいくと、どこからだったか、雨が降り出した。そして追っても来ない、というわけで一旦休憩に入ることにした。休んでいると、雨もやみ晴れてきた。

 

「一休みしたらギルドの事も色々ちゃんと決めようね」

 

「一休みしたいのはカロル先生だけどな」

 

「ギルドを作って、何をするの?あなたたち」

 

「何を、か……」

 

「ボクはギルド大きくしたいな。それでドンの後を継いでダングレストを守るんだ。それが街を守り続けるドンへの恩返しになると思うんだ」

 

「立派な夢ですね」

 

「オレはまぁ、首領(ボス)についていくぜ」

 

「え?ボ、首領(ボス)?ボクが……?」

 

「ああ、お前が言い出しっぺなんだから」

 

「そ、そうだよね。じゃあ、何からしよっか!」

 

「とりあえず、落ち着け」

 

「うん!」

 

どうやら、自分がギルドの首領(ボス)になったのがうれしくてはしゃいでいるようだ。声も若干高い。落ち着け、と言われても雰囲気からしてお花が飛んでいるあたり、無理な話かもしれない。

 

「ふふっ……なんだかギルドって楽しそうね」

 

「ジュディスもギルドに入ってはどうです?」

 

「あら、いいのかしら。ご一緒させてもらっても」

 

「ギルドは掟を守ることが一番大事なんだ。その掟を破ると厳しい処罰を受ける。例えそれが友達でも、兄弟でも。それがギルドの誇りなんだ。だから掟に誓いを立てずには加入はできないんだよ」

 

ギルドの事となると、真剣になるカロル。やはり、ギルドを作りたい、と言っていただけあって詳しいようだ。

 

「カロルのギルドの掟は何なんです?」

 

「えっと……」

 

「お互いに助け合う、ギルドの事を考えて行動する、人として正しいことをする

それに背けばお仕置きだな」

 

「え?」

 

「ひとりはギルドのために、ギルドはひとりのために。義を持ってことを成せ、不義には罰を、ですね」

 

「掟に反しない限りは、個々の意思は尊重する」

 

「ユーリ……それ……」

 

「だろ?首領(ボス)

 

「ひとりはギルドのために、ギルドはひとりのため……う、うん!それがボクたちの掟!」

 

「今からは私の掟でもある、ということね」

 

「そんな簡単に決めていいのか?」

 

「ええ、気に入ったわ。ひとりはギルドのため……いいわね」

 

「じゃあ……」

 

「掟を守る誓いを立てるわ。私と……あなたたちのために」

 

「あんたの相棒はどうすんだ?」

 

「心配してくれてありがとう。でも、平気よ、彼なら」

 

「相棒って……?」

 

ジュディスの相棒について何も知らないカロルは首をかしげる。否、ジュディスの相棒の事を知っているのはユーリとジュディスを除いて、飛鳥だけであるため、カロルだけがしらない、というわけではない。

 

「前に一緒に旅をしていた友達よ」

 

「へえ、そんな人がいたんだね。じゃあ、今日からボクらがジュディスの相棒だね」

 

「よろしくお願いね」

 

「よろしく!」

 

「ワン!」

 

「わたしは……」

 

「ま、とりあえず今日はもう休むか」

 

「そうだね。クタクタなの忘れてた」

 

ということでひと段落つき、休むことになった。それぞれが就寝までに自由に過ごしている。飛鳥も一人でいたのだが。ジュディスの声をかけられ、話すことになった。

 

「あなた、さっき一言もしゃべってなかったけれど、どうするの?」

 

「え?んー、そうやね。うち、記憶喪失やったからさ。粗方戻ったけど、まだ全部じゃないから、まだ戻っていない記憶を探すためと、あとカロルからギルド作る~~ってなった時に名前上げられたからね。それに、このギルドなら、入っても、いいかなって」

 

「そう。………あなた、狙われていたわね?」

 

「あちゃ~……見られてた?でも、なんとなくわかってた」

 

「……どうして?」

 

「フェローは、実力行使するでしょ」

 

「!……あなた、知っているの?」

 

「かなり訳ありでね、一方的に知ってる。もちろん、貴女のことも」

 

「まあ。それは怖いわね」

 

そういわれるが、本当に怖がってなどいないように見える。どうにもジュディスは苦手である。否、飛鳥からすればここにいる全員、あまり得意な相手ではない。何故なら、自分の周りに、このような優しい人たちはいなかったから。まだ、完全に信じられていないのだ。

 

「あなた、何者?」

 

「それ聞いちゃう!?ん~~、的確な言葉が見つからん。けど、そやね、――何もできない、出来損ない、ってやつかな」

 

「それは笑えない冗談ね」

 

「たはは、事実や。でもまぁ、そうね。強いて言うなら。魔術も使えないし、フェローが言う、世界の毒となる力とかもない。だけど、周囲のエネルギーを弾とかに変換する、変換能力を持ってる咎人(トガビト)、というべき存在かな」

 

「………あなたは、何かしたの?」

 

「してへん。何も、してへんよ。あぁでも、フェローを知ってるならきっと隠しても無駄やんね」

 

「…………」

 

「世界の調和を崩し者……フェローはうちのことをそう言った。それは、うちがここにいることで、きたことで、全身が黒く、目だけが赤い魔物を呼んでしもたから。この世界に」

 

「!」

 

「まだ、皆には秘密やで。あと、変にうちを庇おうとしやんとってな。あいつらに邪魔者認定されんの、うちだけでじゅーぶんやから」

 

飛鳥の話を聞いてジュディスは違和感を感じた。自分とさして変わらない年齢の子が、何故そのようなものを背負っているのか。闇を抱えているのは何となくわかる。だが、それを表に出さない。それに加え、体にある傷痕。戦闘中に見えたものだったが、この年齢で痕が残るほどの大怪我であれば、戦争に巻き込まれたか、事故にあったかだろうか。

 

「ジュディスも、はよ寝ぇや」

 

「ふふ、あなたもね」

 

飛鳥は離れ、少し夜空を眺めた。そこへ、ユーリが来る。

 

「よう。寝ないのか?」

 

「ん、うん。うちがいたとこじゃ、こんなきれいな夜空なんて見れる場所は少なかったからね」

 

「そうか。………お前、なんか記憶戻ってから無茶増えたな。あと無理してるだろ」

 

「そーね。正直、死にたいほど、疲れてるし今すぐこの場から消えたいね」

 

「!おま、それっ!」

 

「――けど、まだや。やんなきゃならない事がある。それを果たさないまま、ソレはできひん」

 

「やんなきゃならない事?」

 

「そう。あぁ大丈夫、もう傷つくのは慣れてる。あの白い目も、暴言も、暴力だって。全部、全部、もう慣れた。せやから、この先、何があっても大丈夫」

 

「…………」

 

ユーリは何も言えなかった。ドンから聞いて、危うい精神状態だろう、とは思っていたがここまでとは思わなかったのだ。一体、飛鳥に何があったというのだ。何が彼女をここまで追いつめているというのだ。

 

「なんでそこまでって顔してんね」

 

「っ……そりゃ、な」

 

「クス。大丈夫だって。前も言ったでしょ。よくあるお話、ありふれた話だって。フツーに実の親から暴言暴力、刃物で傷つけられる。あぁ、あと存在否定。よく『お前は間違えて生んだんだ』だの『どうしてこんなこともできないんだ、屑』とかね」

 

「!!」

 

「ね?よくある話でしょ?」

 

なんてことない、といった風に自分の過去を語る飛鳥。そこでユーリは自分の違和感に気づく。そうだ、随分と達観して諦観しているな、とは思っていたのだ。こんな過去を背負っているからだ。でなければ、あんなにあっさり死にたいだなんていわない。

 

「……前に見た、傷痕って」

 

「うん。お察しの通り。だから今更傷つくとかないわけ。そりゃ痛みはある。残念ながらあんだけアレコレされた割には、痛覚神経生きてるから。でも、慣れたから大丈夫。別に、大げさに痛がれってんならそうするし、逆に痛がる素振り見せんなってんなら、それなりに涼しい顔してられんで」

 

「んなことしなくていい。痛かったらちゃんと痛いって言え」

 

そうユーリが言うと、飛鳥は目を見開いた。そしてすぐ後に

 

「――その言葉、もっと早く聞きたかったっ……!そしたらきっと、“壊れずに済んだ”かもしれないのに……」

 

と、泣きそうな笑顔で言った。

 

「え?」

 

「ごめんね、うちは、もう手遅れや」

 

「は、ちょっと待て。意味わかんねえぞ。どういう事か説明しろっての」

 

「クス……そやね、どういうことか、当てたらね」

 

「いや、だからわかんねえから聞いてんだろうが」

 

「だから、うちはもう“手遅れなほど、壊れてる”。何がどう壊れているから、どうなっているのか。当ててみて。そしたら、たぶん、素直になれる」

 

「………わけわかんねえけど、お前はその壊れてるせいで素直になれないんだよな?」

 

「うん。大丈夫、もうこれ以上壊れへんから、ゆっくり考えて」

 

「ほっといて大丈夫なのかよ」

 

「〝トリガー〟さえ引かなかったら、別にへーきよ」

 

飛鳥は、それきり何も言わなかった。どうしていきなりこんな話をしたのかはわからない。だが飛鳥は度々様子がおかしいことはあった。雰囲気が変わることだってあった。だが、それは過去の記憶が戻ってパニックになっているものだからだ、と思っていた。だが、どうにも話を聞いている限り違うようだ。

 

 

 

―これで、嫌ってくれたら楽なんやけどなぁ……でも、壊れてんのも、慣れてんのも、ホント。素直になれへんのも、ホンマ。もう、うちはきっと戻れへん。もう色々と限界。

 

 

―ねぇ。うちを選ぶなら。辛かった時の記憶なんて、別のモノにすり替えて、消してほしかった……!!だったら、こんなにも辛くなかった……!!素直に、ユーリ達と旅を楽しめた……!!例え、使命があったとしても……!!

 

 

 

飛鳥は、わかっていた。吐き出さなければ、自分が自分でいられなくなることに。勢いに任せて何を言うかわからない。だから、ユーリには悪いと思いつつ話したのだ。これでユーリが自分を嫌ってくれればそれはそれで万々歳だから。自分のことなど、そこまで気にかけなくていいのだから。

 

・・・

 

翌日。それぞれが起きたところでこれからどうするのかを話し合った。結果、エステルは自分を狙ったフェローという鳥型の魔物を探したいらしく、それについていくことになった。

 

「あ、アスカ!」

 

「ん?」

 

「アスカは、どうするの?」

 

「?……あぁ、そっか。言ってなかったもんね。うちも、皆に誓いを立てる。うちのできる範囲で全力で事を成すよ」

 

「!」

 

「せっかく、カロルが言ってくれたんやもん。それに、このままやとうち、行くとこあらへんし」

 

ということでギルドの初仕事はこんな感じで決まったのだが。

 

「よーし!じゃあ勇気凛々胸いっぱい団出発!」

 

「ちょっ、それなんです?」

 

「え、ギルド名だよ」

 

「それじゃだめです!名乗り挙げるときに、ずばっと言いやすくないと!」

 

「そ、そうなの?じゃあ……」

 

凛々の明星(ブレイブヴェスペリア)なんてどうです?夜空にあって、最も強い光を放つ星……」

 

「一番の星か、格好いいね!」

 

凛々の明星(ブレイブヴェスペリア)……ね。気に入った、それにしようぜ」

 

凛々の明星(りりのあかぼし)……か。うちにはまぶしすぎる気もするけど……でも、カッコいいな」

 

「大決定!じゃあ早速トリム港まで行って船を調達しよう!デズエール大陸まで船旅だ!」

 

ということで、出発するユーリ達であった。




飛鳥のことで寄り道したら、かなーり長くなってしまいました…!

申し訳ないです……

飛鳥がユーリに話したのは嫌われるため(面倒なヤツだと思ってくれれば)、精神的にもう無理だ、となったからですが。

実は、これ、もう一つありますw簡単な事ですが、わかってもらえたら、うれしかったりします。

ヒントとして、精神的に無理になったから話したということは……?です。

では次回はヘリオード~になります。
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