決戦前夜〜になります。
また飛鳥ちゃんのことを掘り下げてます。
・・・
エステルが無事に帰ってきてから、ユーリ達は城で休ませて貰うことになった。それぞれが好きに過ごす中、ユーリは仲間の様子を見に行くことにした。
それぞれが決戦に備えてやるべき事をしていた。誰も、絶望的になどなっていない事に安心したユーリは最後に飛鳥の元に向かった。部屋に入ると、飛鳥は起きていた。
「よぅ、アスカ。大丈夫か?」
「うん、まだちょっと身体が重いけど大丈夫だよ」
「……頑張ったな」
「――!」
「お前が頑張ってくれなかったら、落ち着けなかったからな」
ユーリにそう言われて、目を見開く飛鳥。それから、すぐに目を閉じて頷いた。
「うん、頑張ったよ。とっても疲れた。でも、よかった。これであとは半分だ」
「半分?」
「使命の半分。エステルの力の抑制か制御。それから、もう1つ」
「アバウトな使命じゃなかったのか?」
ユーリがそう言うと、しまったという顔をした飛鳥。だが。ポツリポツリと話し始めた。
「そうだよ。使命自体は『世界の危機を救え』だよ。変わらない」
「ならなんで」
「知ってるんだ。ぜーんぶ。だからだよ」
「知ってる?」
「そう。知ってるの。大丈夫、上手くやるから。エステルの力の事も何とかなったし、この力もなんとか使えるだろうし」
「無茶すんなよ。お前にとってその力は、負担がでかいんだろ」
「んー、多分。もっと、力を使いこなしてたらね、へーきだったと思うんだ。けど、うちはポンコツだからね。使いこなすのも時間かかった。アレだって土壇場で、やらなきゃ死ぬって思ってやっと出来たんだから」
そう言って飛鳥は視線をふ、とそらす。ユーリは否定しようとして飛鳥の手の甲にあるモノに目がいった。黒の印だ。輪っかを交差させて中央に丸がある、印。前までこんなものあったのだろうか?
いや、最初はなかったはずだ。そう思ったユーリは飛鳥に問い掛けた。もしかしたら、はぐらかされるかもしれないが、一か八かだ。
「おいアスカ、その手のはなんだ?」
「え?……あ。これ、リタを
「そうなのか?」
「……覚醒したから、かな。大丈夫、力が強くなりましたよーって証みたいなもんだよ。最初より力を使いこなしてたきたから、多分ね」
「そうか」
しばらくそうやって話しているうち、ユーリはふと思いついたことを言ってみた。前に言っていたことだから、忘れてるかもしれないが。
「“飛鳥”、お前自分の気持ちを表に出すのが、素直に出来ねえんだろ。過去の事があって、他人を頼ること、信じることが怖くて、偽った。それが染み付いて、今でも素直に言えない、違うか?」
「っ!!」
飛鳥は、ユーリに言われた事が正解で、何か言おうとしたのに、言えなかった。そして、ユーリの言葉により、ずっと、奥底で蓋を閉めていた感情が溢れ出した。それは、涙となって外へ出てしまう。ずっと、ずっと誰かに聞いて欲しくて、でもこんな気持ちは他人を不快にさせると分かっているが故に言えなかった気持ち。
「うん、そう、だよ……ずっと、誰かに助けて欲しかった。助けてくれる人が現れて欲しかった。うちは、何の悪いこともしてないのに、悪者扱いされて、ずっとずっと辛かった。うちは、何もしてないのに」
「………」
「
「お前は、ギルドに必要だ。これまでに何度もお前に助けて貰ったしな。特にアレクセイにぶっ飛ばされた時なんて船から落ちるかと思った。けど、お前が助けてくれただろ?」
「うん…!でも、でも……!!」
ここに居ていいよ、と。そう言われても飛鳥は泣き止むことはなく、ポロポロと涙を流し続ける。まだ、納得出来ていないらしい。
「“飛鳥”、お前は“飛鳥”でいいんだよ。無理に『アスカ・ツキシロ』になろうとしなくったっていいんだ。お前は、『月城飛鳥』なんだろ?」
「うん、だけどいいんだ。ありがとう。うちは『アスカ・ツキシロ』。ギルド
アスカがそう言って笑った途端。アスカの手にある紋様が、変わった。スッと黒い輪っかが浮かび上がって、3重に輪っかが重なって、中心にある球が八面体のような、アスカの持っていたお守り(今はユーリの服のベルトに括りつけてある)と、同じような形に変化した。
驚く飛鳥だが、どこか納得したらしく、もう大丈夫だと言ってからもう寝るといってベッドに潜り込んだ。ユーリはそれを見届けてから、部屋を出ようとドアノブに手をかける。すると。
「この先何があっても、大丈夫だよ。何とかなるから」
そう聞こえた。ただ、それはユーリに対して言ったのか、自身に言い聞かせるために言ったのかまではわか、なかった。
・・・
そうして、一夜があけ、全員が揃った所で出発しかける。すると、そこへヨーデルとフレンが現れた。見送りかと思えば違ったらしい。
「こちらのフレンを連れて行って下さい」
どうやら、フレンをユーリ達と共に行動させるために来たらしい。隊の指示があるからと断るフレン。何か言われても「はい」とは言えないフレンにヨーデルは。
「帝権を代行する者としてヨーデル・アルギロス・ヒュラッセインが命じます。帝国騎士フレン・シーフォ。ギルド
「……はい!」
ということで、フレンをパーティに加えて再出発となった。バウルも復活。だが、そこで少し寄り道をすることに。なんでも、少し気になる事があるだとかで一行はダングレストに向かう。するとレイヴンが少し待っていろと言って、行ってしまった。
戻ってきたレイヴンは、アスカに何かを手渡した。それは、服だった。それはダングレストでアスカが一時期着ていた服で破れたとかで修繕に出していたものだった。
「これ……」
「修繕終わってたの、忘れてたのよ」
「あれ、このカーディガン黒じゃなかったっけ?」
「腰に青色の紐使ってるから、青の方が統一感あっていいって修繕してくれた人が言ってて、作り替えてくれたのよ」
「ふふ、そっか。青、か…」
「ダメだった?」
「んーん。大丈夫。青は、好きな色だから寧ろ嬉しい」
その日、アスカは実際に着てみて、動いていた。ただ、それは皆が寝静まってからのお話。1人で訓練をしていると、フレンが現れた。どうやら、彼も訓練をしに来たらしい。
「アスカも訓練を?あ、その服……」
「うん。懐かしくなって、着てみた。こっちでも動く分には問題ないしね」
「そうか。似合ってるよ」
「そう?なら良かった。んー、フレン。手合わせ、してくれる?」
「え?手合わせ?」
「うん。
そんなこんなでアスカとフレンは手合わせをするのだった。そうして手合わせをする中、アスカは奥義を完成させる。それをみたフレンは驚きつつも凄いと褒めていた。褒められたアスカはどこか、嬉しそうにしていた。
―よし、大丈夫。これで、確実に強くなってる。あとは、力を使いこなすだけ。
というわけで、飛鳥は、現実世界の自分を捨てて、アスカになる事をきめました。
それから、服回収。奥義習得。
次回はザウデ不落宮〜になります。