今回はカプワ・ノール〜です。
またアスカの事で寄り道してます。
苦手な方はすっ飛ばしてください。
・・・
カプワ・ノールに着いて、星噛みの眷属を倒したユーリ達は、
少し話して、ユーリ達もその場を離れ、残りの3体の精霊を生み出す元である
(あぁ、結局そうしなくちゃなんなくて、オマケにデュークの力を借りなきゃなんなかったよ。でも、それでも成し遂げだんだよ、貴方は。貴方達のギルドは。原作通りであるなら、うちは本当に要らないんだよ)
なんて考えていた。船に乗ってから、1歩引いた所でそんな事を考えていたアスカは、既に距離を置かないといけないのに、その距離を縮めに行ってしまっている事に気付いていた。だけど、もうどうすることも出来なかった。もう、言う前には戻れない。
ユーリ達はアスカという名の余所者を、仲間だと思ってしまっている。アスカ自身、嬉しくもあり、同時に怖かった。
1度仲間認定されてしまえば、彼らは自分みたいな奴でさえも、命をかけて守ろうとするから。それが、怖かった。自分みたいなのに命なんてかけなくってもいい。それがアスカの考えだった。
そんな時だ。不意に、ユーリの言葉が耳に入る。
「聞いてくれバウル。オレたちは世界を護りたい。けど、そのために誰かを犠牲にしていいとは思ってない。一方的に
その言葉を聞いて、あぁ、と安心した。この後は、確か
「あ、あいつは!!」
「……」
アスカは、空中にいて相手が動いているにも関わらず、相手の頭を撃ち抜いた。
「ひゅー!やるな、アスカ」
「そんな事ないよ」
そう言って他にも居ないか確認をとるアスカ。どうやら、一体だけだったようだ。安心して、息を吐き出すと、ユーリが背中を軽く叩いてきた。意図が分からず、首を傾げるアスカ。
「そうやって、何度も確認してくれてるんだよな、いつも」
「!」
さりげなくやっていたことは、バレていたようだ。1度襲撃を凌いだからと言って、油断ならない。そう思っての行動だった。別に苦でもなかった。だからやっていただけのことで、そこまで褒められるものでもない。そう思ったアスカは、「出来る時だけね」と返した。
・・・
ほかの
皆が声を掛けると、地に伏したまま話をするフェロー。
ユーリ達が諦めるフェローに、精霊になって欲しいと話をすると、少し考えた後、
「心では世界は救えぬが、世界を救いたいという心を持たねばまた救うことはかなわぬ、か……どの道遠からず果てる身……そなたらの心のままにするが良い……」
そう言うフェロー。言い終えたと同時に体が光り、
イフリートは、語るだけ語ってそのまま飛んで行ってしまったが、ウンディーネが言うには、エステルと結びついているため、エステルが呼べばいつでも傍に現れるらしい。それを聞いて安心するユーリ達だった。
「異界の子よ、そなたの抱える闇は、いずれ消えよう」
「は、ウンディーネ……!?」
そんな事を言われて、驚くアスカ。しかし、精霊の言うことだ。恐らくはそうなのだろう。だが、自分の抱えるこの闇は、簡単には消え去らないことも、分かっている。根強く残ってしまっているコレは、トラウマというやつだろうことも、わかってる。
「闇?アスカ、何したの?あ、まさか呪いとか!?」
「違う。……まぁ、この場の誰よりも縁遠いモノ、かな」
「もー!アスカはそうやっていつもはぐらかすんだから!……もしかして、ボクがまだ、頼りないから?だから「違う!」え?」
「違うから。カロルが頼りないとかじゃない」
「ホントに?」
「あーもー、分かった!分かったよ、話す。話すから、そんな悲しい顔せんとって」
アスカはそう言って先に船に向かうのだった。
船に戻ったアスカは甲板にいた。ユーリ達が集まって、いざは話そう、となると、素直に言えず、あーだのうーだの言っていた。が、決心したのだろう。ちゃんと話し始めた。
「ウンディーネの言う闇っていうのは、きっとうちの過去の事だと思う。トラウマ、って言ったらわかる?それも、わかんないかな?」
「過去?」
「そ。うちの両親はクズ野郎共でね、子どものことをタダの自分たちの欲求を満たすための道具としてしか見てなかった。殴る蹴るは当たり前だし、タバコを押し付けたり、熱湯を被せたりね。寒い時に冷水もあったかな。そして、妹と出来を比較するし、存在否定もするし、罵詈雑言なんて当たり前。そんなような事をやる親とも呼べない奴ら。それが、うちの両親な。
で、学校……えーと、同じ歳の子どもを集めて、教育する……教育機関って言えばわかるかな?そこでも、凡人以下、いや、未満かな。のうちは、虐められたんだよね。だから、その経験が、忘れたくても忘れられなくてさ。ふとした時に、フラッシュバックするんだよね」
そう言って、アスカは悲しげに笑った。否、懐かしげ、のと言った方が合っているのかもしれない。そんな風に笑うアスカの目は、濁っていて。とてもじゃないが、正気とは思えなかった。そして、改めてユーリは思った。アスカは、ずっと死にたいと思っていることは、間違いでは無いんだ、と。
「そん、な……じゃあ、アスカの身体にある傷跡って……!」
「うん。その名残だよ。そりゃズバズバ切られてたり、ジュウジュウ焼かれたり、熱湯に付けられりゃ傷痕残るよ。マトモな処置なんて、出来やしないからね。止血程度に包帯巻くとか、保護のために絆創膏貼るとか、炎症や熱をとるために冷やすとかそんな程度だもん。ま、もう残っちゃったモンはしゃーないから、いいんだよ。けど、やっぱり記憶ってのは覚えてんだ。忘れたと思っても、ここにあるぞって主張してくんの」
困っちゃうよね、なんて言うアスカに、ユーリ達は何も言えなかった。
今まで、ずっとそんな思いを抱えていただなんて。そして、それを悟らせなかったのも、凄いと思ったが、悲しくもあった。仲間なんだから、もっと頼ってほしい。そんな思いがあるのだ。
「でも、もういいんだ。皆が居てくれる。こんな奴を心配してくれる。それだけで、うちはまだ、ここに居てもいいんだって思える」
「あなたは、ずっとそんな思いを抱えていたのね」
「そーだよ。そんなベラベラと話す内容でもないし。あーぁ、黙ってようと思ったのになぁ……」
「お前、溜めすぎ。もっと吐き出せ」
ユーリにそう言われ、アスカは「嫌だ」と答えた。だが、その後にはこうも答えたのだ。
「気持ちの整理が付けられたら、聞いて欲しい」
と。まだアスカの中では昨日のことのように思い出せる数々の非道。だからこそ、まだまだ気持ちの整理がついていないようだった。
「もちろん!聞くから安心してね!」
「嬢ちゃん、逞しくなったわねぇ」
レイヴンが、少しだけホッとした目でアスカを見て言った。
今回はここまでです。
次回はエンテレケイアを探すところ〜になります。