まだ未登場キャラの過去編です。ネタバレが嫌な方はご注意を
どうぞ。
※出会ったのはお人好しのバカだった。
あたしを一言で例えるとするのならば、規格外……らしい。
あたしは普通の親の元に生まれた普通の人間のつもりだった。父が居て、母が居て、兄が居て、それが当たり前だと思っていた。
その当たり前は一気に崩壊する。兄とあたしに超能力があったのだ。しかも天然物、『原石』と呼ばれる存在だった。兄は親を捨てて自分で生きる道を選び、あたしは能力をひた隠しにして生きる道を選んだ。それでもどこか歪になってしまったあたしたちの道は戻らない。
父と母が交通事故で死んだ日、あたしは二択を迫られた。生活を保障されながらも研究所で一生過ごすか、兄と同じように一人の道を歩くか。あたしは結局兄の道を進むことにした。でも、所詮は小学から中学になって半年ほどの子供、そう簡単に行くわけもなく行き倒れた。
「えっと、大丈夫?」
そこに現れたのは一人のあたしと同じくらいの年の子供。倒れているあたしを心配そうに覗きこむ。
「えっと、怪我してるとか」
「ない」
「う、うーん。あ、命の象徴を奪い取られてひん死とか」
「ない。てか、それだったらあんたと喋ってない」
というかなぜその発想にあんたは行きついた。
「そ、それはそうだね。あれ、大の大人でも痛かったらしいし。それじゃあ…お腹減ってる?」
「減ってな…グギュルルルルル
訂正、そこまで減っていない。
「お腹すいてたんだ。えっと、何か持ってたかな?」
がさごそと鞄を漁ったらしいが何もなかったらしい、しけてるなぁ。
「あ、そうだ。今日炊き出しの日じゃん。よっと」
「え?」
あっさりと抱き上げられる。いわゆる『お姫様抱っこ』で
「ななななな」
「じゃ、大人しくしててね」
そのまますたすた歩きだした。今あたしの頭は混乱でいっぱいだ。どうしてこうなった。
そして、走り出す。恥じらいも何もないなこいつ。何やら教会らしき場所に着く。
「こんちわー、佐倉さん」
「おや、いらっしゃい」
この教会の主なのだろう、そこそこ年のいった男が出迎える。あたしの状況については何もツッコミを入れない。
「炊き出し余ってます?」
「ああ、余っているよ」
「お、どうしたー…ってそいつ誰だ?」
赤い髪の同い年の女がやってきた。
「あー、行き倒れ。腹ペコ状態」
「なっ、食い物はちゃんと食べなきゃダメだろ! 待ってろ、今すぐに持ってきてやるからな!」
そこまで言うと赤い髪のは走って行った。何でだ?
近くにあった椅子にあたしを下した後、そいつが言った。
「昔色々あって、食べ物に関してはうるさいからさ。それから餓死とかされたら嫌だろうし。そういえばどれくらい食べてないの?」
「二週間」
「にっ、よく生きてたね。もしかしてあれ? 修行僧とか」
「ちげーよ」
「そっか」
そうこうしている内に赤いのが戻ってくる。手にはプラスチック製のお椀があった。
「ゆっくり食えよ」
「ありがとう」
ゆっくり、ゆっくりと中に入っていたものを飲み干す。どうやら豚汁のようだ。だが、
「何で具が入ってねーんだよ」
「あのな。何も食ってない胃にいきなりもの流し込むと大変なことになるんだぞ」
「あはは、うん。そこは正しいと思う。キッチン貸して、何か作ってくるよ」
「おう、よろしくな」
「何なんだよ。あいつ」
「全力で他人のために頑張るバカ」
「ああ、なるほど」
つまりはお人好しってやつか。その後、そいつが作ってきたおかゆの美味いこと美味いことこれ以上に美味い料理は無いかっていうくらいだった。ま、何も食ってなかったところに来たんだから美味くて当然だな。
そして、別れようとしたあたしをそいつらは普通に引き留めた。
「んだよぉ」
「行かせるわけないだろうが。また行き倒れてもいいのか!」
「ちょっとくらい他人を頼ってもいいと思うよ? 佐倉さんいい人だし」
「いいんだよ。あたしは一人で生きていくって決めたんだ」
「その年齢で一人で生き抜けるとは思えないけどねぇ?」
「!」
突如加わった声に振り向けば、お人好しそっくりな髪色の女が立っていた。あたしより何歳か年上だろうと…と思っていたら衝撃的な事実が判明した。
「あ、母さん」
「?!」
「よー、息子。帰りが遅いから玲が徘徊はじめてさ、帰らない方がいいぞ」
「うげ、姉さん……了解。こっちでお世話になるね」
「おう」
「これがお前の母親なのか?」
「うん、お恥ずかしながらウチの母です」
どうやってもこの年齢の息子がいるとは思えないほどに若い。
「で、この白いのは?」
「行き倒れ」
「ふーん、何かわけありか?」
「誰があんたなんかに」
「ガキはガキらしく大人を頼れ」
わしわしと頭を撫でられる。
「母さんが珍しいね。初対面を気に入るなんて」
「うーん、そうか? 初対面でもビビッときたやつとはなるべく仲良くなるように心がけてるぜ」
「ソウナンダー」
「なんだその棒読みはっ!!」
「うぎゃあ」
何なんだこの親子漫才は。付き合ってられる―――
そこであたしの意識が切れた。
☆
「あ、気が付いた」
気が付けば知らない天井。ここどこだよ
お人好しがあたしを覗いていた。
「気が付いてよかったよ。ここ病院ね」
「お、白いの気が付いたか。栄養失調だってよ」
お人好しの母親が覗き込む。
「でだけどな。あんたの親亡くなってんだな」
「え?」
「何処で調べた」
「いや、普通にあんたの保険証を提示したんだよ。そしたらそう言われたんだよ」
なるほど、それなら…って
「何、人の保険証勝手に出してんだよ」
「しょうがないだろ。病院に運び込んだのはいいがあたしら赤の他人なんだから」
「……チッ」
「かわいげねーな。お前」
「二人ともだけどね」
「「るっせぇ!!」」
黙れ。
「さて、白いのあんた行く当てあるのか?」
痛い所を突かれた。
「ねーよ」
「ふーん、行く当てないならさ。ウチ来るか?」
いきなり衝撃的な発言が出た。
「母さん? いきなりどうしたの」
「これからさ、あたしも父さんも玲もアメリカ行くだろ? あんたが心配だしな」
「母さん」
「金遣い荒いもんなお前」
「そこかぁぁぁっ!!」
相変わらずの親子漫才だな。オイ
「はー、金遣いが荒いことに関しては認めるよ。でもさ、他人をいきなり家に入れるのは」
「他人じゃなきゃいいんだろ? ほい」
「「……は?」」
目の前に差し出されたのは養子縁組の紙、しかも手続きはすべて完了している。
「母さぁぁぁん?!」
「マジかよ」
そんなわけで、あたしこと鈴科百合子は吉井百合子となった。
★
高校一年の時。リビングで百合子がくつろいでいると。
「妹さん、悪いけど僕の友達来るから」
「へーい」
そそくさと部屋を出ていくふりをして物陰に隠れた。
チャイムが鳴り、兄が玄関へと向かう。
「まあ、くつろいでて」
兄は案内すると飲み物を取りにすぐに引っ込んだ。そこに居たのはウニのような黒髪の少年と白くて細く女顔負けの髪をした……。
「あ、兄貴?!」
「……は? ……百合子」
彼女の実の兄が居た。
えー、新キャラ 旧姓 鈴科、現在 吉井 百合子。
一方通行を女にした。そのままな感じで。口の悪さはそこまでじゃない。
一方通行の実の妹で明久の義理の妹、なにこれややこしい。本人たちは気にしていないけど。
兄と同じ能力持ち、頭もいい。でもそれを隠すことの天才。
そして、母はやりすぎた。とりあえず明久母は大体こういう人。このシリーズだとさらにそんな感じ。暴走……いや、爆走してます。