吉井家に居る時の僕の朝は割と早い。
普通に料理できる人間はそこまで居ないからなんだけど。
「今日から学校だね」
「そうだね。はぁ、Fクラスだと思うと気が重いなぁ」
こっちの僕、こと吉井明乃がため息をついた。
「後悔してるの? 助けたこと」
僕らの学校はクラス分けをテストでするんだけど、そのテストの時に明乃は風邪で倒れた男の子を助けてFクラス行きが決定してしまったんだって、お人好しの明乃らしいなぁ。
「ううん、全然」
「ならいいじゃん」
そういうところが明乃のいいところだと思うし。
「はよ―ございます。マスター」
「おはようございます。ご主人様!」
そこに眠そうな声と完璧にはっちゃけた感じの声が聞こえた。
「おはよ、ロビン、キャスター」
明乃がふわりと笑えば、
「もう! ご主人様ったら、何で私がクラス名呼びでこの緑の狐が名前呼びなんですか!」
「アハハ、ごめんね?」
「反省のはの字も無いっすね。マスター」
いつもの通りの会話になる。
「はぁ、ごはん要らないの?」
これもいつもの台詞。
「いるっ! いるっ! とーぜんだよ!!」
ちなみに明乃、料理が物凄く苦手。別に致命的じゃないと思うけどなぁ。
「マスター、餌付けされてません?」
「そんなのどうでもいいから! ごはん頂戴!!」
「はいはい、召し上がれ」
今日は和食だよ。ごはん、味噌汁、焼き魚、漬物に卵焼き、これ定番だよね。
匂いにつられて起きだしてきたのがもう二人。
「奏者? この匂いは……むっ、余を置いて朝食とは何事か!!」
「おはよう、ん? もう朝ごはんできていたのかい?」
「あ、おはよう。ネロ、アーチャー」
僕のサーヴァント、セイバーのネロとアーチャーの衛宮切嗣(仮)だ。アーチャーは僕を育ててくれた切嗣さんよりもかなり若い。
「それじゃあ、いただきます」
「頂きます」
「頂くぞ」
いつも通りの今日が始まった。
☆
朝ごはんも普通に食べて、学校へ向かう坂を登れば。
「「おはようございます。西村先生」」
「あら、吉井兄妹おはよう」
引き締まった筋肉にすらりとしたスタイルで有名な西村先生だ。趣味はトライアスロンで一部からは鉄人と呼ばれている。まあ、あの男以上の体力やスピードがあれば当然だよね。
補習授業担当で生徒たちからは鬼の補習として恐れられている。
え? 僕? そんなのの巻き添え喰らってたら士郎が凸されるかもしれないし、当然補習は受けないように頑張っている。
「クラス分けの発表ですか? 先生も大変ですね」
「全然かまわないわよ。それにしてもあなた達、惜しいことしたわね」
あー、あのことか。さっき言った通り明乃がクラス分け試験を不意にしたその後、担当教師が「全くこれだから屑はわからん、大体あの屑は――(以下略)」とか言ったのにむかついて、テスト用紙の裏びっしりにその教員がこれまでにやった生徒への暴言の数々やテスト改竄の話を書き込み、次の日呼び出された。
ま、物的証拠は色々あったしその教員は解雇になった。ざまぁ
「まあ、ぼく自身が選んだことですし」
「それについては学校側にも責任あると思いますし……ねぇ?」
西村先生に同意を求めれば先生が呆れかえった。
「はぁ、それについてはこちらも反省しているわ。教員にあんな発言や行動をする人間がいるなんて思わなかったもの」
それに、と明乃が言う。
「別にルールはルールって受け止めます。それを理解してこの学校に来ているんですから」
「でも、これとそれは別です。いくら学力主義の学校だからって生徒の人権がはく奪されていいものではありません」
「「もしもそうなら、僕(ぼく)が相手になりますよ」」
それはやるべきだと思うんだよね。弱きを助け強きをくじく、それが信条なもので。
手段をあまり選んでいないのが問題点といえば問題点かな。
「相変わらず息ぴったいりね。まあ、Fクラスで頑張りなさい。凄いことになっているから」
「「?」」
何だろう?
これは何もかもが引っくり返ったバカテス世界の話。何が引っくり返っていて、何が引っくり返っていないのか。それはお楽しみに。
鯖嗣は個人の趣味です。