模倣者と明晰夢
さて、冬の雪がまだ舞っている寒い頃。僕は奇妙な夢を見た。暗い中を歩く夢、他人はそれを悪夢と呼ぶだろうけれども、僕個人にとっては割とどうでもいいほどに普通と感じてしまう夢だった。
悪夢ならたった一つだし。
さてまあ、夢って普通は同じものを見ることは少ないんだけどこれはおかしい、毎日のように見るのだ。最近夢に関する不思議な噂がある。同じ夢を何回も見た人間が自分の夢をなくすらしい。まあ、只単なるうわさかなって思ってたしあんまり気にしたこともなかったんだけど……。
「よー」
気にする以上の大混乱に出くわした。いや、誰かな? 黒ずくめのフードを目深にかぶって目と口だけが赤くて、顔も見えないし。変な仮面付けてるし中身も外見も真っ黒だ。
「あー、怪しい奴じゃないぜ」
「えっと、君は?」
「
「模倣者? 他人の物まねでもするの?」
一瞬思いついたのは贋作者と書いてフェイカーと読むだけどあれは違うし。そういえば今度新作出でるんだよね。アレ
「おお、流石察しがいいな。悪夢だって気が付いてるだけあるな」
「で? その模倣者さんは何か御用事かな?」
やっぱりここは悪夢なんだ。
「実はなー。お前の体貸してくれね?」
「見ず知らずの人に体貸すほどピンチでもないんだけど」
てか体貸すって何?
「はぁーしょうがねー。事情説明すっぞ」
彼の説明によると、彼らは夢魔と呼ばれる生き物で
「ふぅーん、こっちに来て何がしたいの?」
「いや、行きたいだけだよ。ほら、お前らがカンコーチ?だっけに行きたくなるのと同じく」
あー、わからなくはないかも。
「へぇ。あのさ、こっちの意思は尊重される?」
それ大切、意識乗っ取られるとかは勘弁願います。
「おう、おれは別にそっち行って暴れたいわけでもねーしな」
「そっか。じゃあ、いらっしゃい。ユメもキボーもない現実へ」
ふと、大きな門を見た気がした。でもそれはそれで気のせいだとは思うけど。
☆
気が付けば机に突っ伏していた。
「あれ?」
随分と不思議な夢を見たものだ。そんなことを考えていると………
《へぇ、ここが
「うわ、頭の中から声が?!」
おおおお、超常現象だ。さっきであった模倣者の声がする。
「そうだ。何かやりたいことある?」
一応やりたいことあるのかなって思って聞いてみた。
《そうだな。ちょっとでいいからさ、体貸してくれないか?》
「貸すって、できるの?」
さっきも言ってたけど本当にできるの?
《出来るぜ。あ、そうだ。なんか合図決めよう。急に入れ替わったらお前も迷惑だろ?》
「そうだね。じゃあ、フードを被るとかどう? 君らしいけど?」
さっき見た姿はどう見てもフードを深めにかぶってる仮面姿の妖しい奴だったし。ハロウィンかって感じだった。
《nice idea! んじゃ、早速やろうぜ》
いつも着ているパーカーのフードを被る。途端に自分のいる場所が変わった。言ってしまえばコックピットの後ろに乗ってる感じ?
「すっげー、体の感覚が全然違う!」
《体が勝手に動いてるよ》
自分が自分じゃないみたいだ。僕の体はきゃっきゃと腕をぶん回す。
「おもしれー」
《初めてだよ》
ふいに僕の体は動きを止めた。
「とは言え慣れるには時間がかかりそうだな」
《まあ、ゆっくりやってこ》
「じゃ、体返すぜ」
気が付けば目線は元に戻っていた。
これが悪夢を悪夢としてみない僕、吉井明久と何にでもなれて何にもなれない、名前のない
さぁ、ユメもキボーもないかもだけど、そんなことでは立ち止まってなんて居られない。
これは
『夢喰いメリー』との設定クロスですた。本当はキャラも出したかった。
明久の悪夢についてはご自由にご想像ください。個人的には某美術館を想定してましたけど。適当にどうぞ。
夢を見ながら明晰夢の自覚がある少年と自分の意味を探す模倣者のお話でした。
夢路みたいに「夢」を見る能力はなさそうだけど、普通に夢魔のあれこれを嗅ぎ付けそうな明久が出来上がりました。