短編集。   作:亜莉守

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※「しゃばけ」と「ぽんぽこ もののけお江戸語り」とのクロス作品です。
※一言でいうなら現代パロディー要素入ってます。
※明久の家族構成が大幅に変化してますので注意。


蛇に巻かれる話 弐

「若だんな、大変、大変」

「おや、どうしたんだい。家鳴(やなり)

 

ここはとある高級住宅街に立つ一軒の洋館と江戸屋敷が若干混ざった不思議な屋敷、その縁側でのんびりと本を読んでいた黄緑の縦じま模様の和服に身を包んだ青年に小さな顔の怖い鬼たちが話しかけている。そこに見目整った青年がやってきた。

 

「若だんな、翔子さんが久しぶりに遊びに来ましたよ」

「あれ、翔子さんがかい?」

 

久しくこちらを訪れていない幼馴染の来訪と聞いて和服の青年こと明久の兄一は嬉しそうに笑う。しかし、一の世話係の一人である仁は少々ばつの悪そうな顔をした。

 

「ええ……明久も一緒ですけど」

「あれ、珍しい」

 

幼馴染と弟は親しくないと思っていたので一にとっては本当に意外だったようだ。

 

「どうやら倒れた明久を介抱してくれたようで」

「倒れた? 明が?」

 

一は目を丸くした。丈夫なことが取り柄の弟が倒れるなんて珍しい。

 

「ええ、今明久の部屋に居ます。それから翔子さんの友人も一緒なようで」

「おや、そうかい。とっておきのお菓子持って行かないとね」

 

大抵寝込んでいる一だったが今日は珍しく体調がいいのですぐに立ち上がる。しかし、仁はそれを押しとどめた。

 

「いえ、若だんなはこちらに居てください。翔子さんの連れはかなりの手練れです」

「? それがどうかしたのかい」

 

幼馴染の連れなのだ。ボディーガードか何かだろうと考えた一は仁に尋ねる。

 

「若だんなに手出しさせるわけにはいきませんから」

 

一方、部屋に案内された雄二は顔を少々ひきつらせながら明久の私室だという部屋を眺めた。

 

「はぁー、本当に金持ちだったんだな」

「……相変わらずみたい」

 

自分じゃ確実に手が出せないような高級そうな家具が並ぶ。しかし、明久の部屋はかなり殺風景だった。そんな様子を眺めていると翔子が少しだけ呆れを含んだニュアンスで呟いた。

 

「翔子は明久と昔から知り合いだったのか?」

「……ううん、吉井とは知り合いじゃない。知り合いなのはお兄さんの方」

 

翔子の返事を聞いて雄二は真面目に考え出した。

 

「へぇ、明久に兄貴ねぇ……よっぽどのバカか、それともあいつの脳みそまで持ってくレベルの天才か、どっちかか?」

「……お兄さんはいい人、でも色々と問題がある」

「問題だと?」

 

まあ、明久の兄貴だし当然かとか失礼なことを考える雄二。

 

「……うん、主に周りっていう意味で」

「よくわからん」

 

本人じゃなくって周りってどういうことだと内心ツッコミを入れる。

 

「……吉井の両親は親馬鹿で有名」

「嫌な方向に有名だな」

「……でも吉井には全然甘くない。むしろ吉井は殆ど干渉されないくらい」

「は?」

 

雄二は素で驚いた。普通親馬鹿って両方に適応されるものじゃないだろうか。

 

「……別に贔屓にしているわけじゃないけど、他の人から見たら贔屓にしているようにしか見えない」

「えっと?」

 

もう翔子の説明だけで分かれと言う方が無理だ。

 

「……吉井の家族関係はちょっと複雑」

「そうか……」

 

雄二は無理矢理納得することにした。部屋の外から何やら会話が聞こえてきた。

 

『離しておくれ、私が様子を見に行っちゃあいけないのかい』

『若だんな、お止め下さい。明久の部屋に行ったらいけないってさっき言ったでしょう』

「……あ、来た」

 

部屋の扉が開いた。

 

「翔子さん、久しぶりだね」

「……うん、久しぶり。相変わらず」

 

顔を合わせてすぐに一と翔子は挨拶をし始める。

 

「ああ、もう子どもじゃあないからいい加減にしてくれって言っているんだけどねぇ」

 

苦笑いを浮かべる一の背後にいる仁を見て雄二は驚いた。

 

「!」

「………」

 

それを仁はやや冷ややかな目で見つめる。

 

(あやかし)を守に付けるとは随分と古い血筋なんだな」

「え、妖が見えるのかい?」

 

一は驚いた。妖の見える人間はそんなにいない。

 

「見える。で、翔子 こいつは?」

「……吉井のお兄さん、一。一兄さん、こっちは雄二、私の婚約者」

「翔子?!」

 

慌てて訂正を入れようとするが時すでに遅し、一はにこやかに笑って挨拶をした。

 

「へぇ、そうなんだ。よろしくね」

「ああ、よろしく」

 

それから真面目な表情に戻って、一が聞く。

 

「明の様子は?」

「見事に喰われてるわ」

「くわれてる?」

 

雄二の一言に一の目は丸くなる。まさかそんな返答をされるとは思っていなかったのだ。

 

「見て分かるだろ。旧校舎に集っていた陰の気があいつに乗り移っていやがる。大体、大妖怪白沢、こんなのも見破れないとかどうした?」

 

じろりと雄二が仁を見る。その目には若干の非難が込められていた。

 

「……雄二、それは無理」

「どうしてだ? 守をしてるってことは明久も守る対象だろ?」

 

普通、妖が守るのは家族そのものだ。雄二から見れば、仁は一家全員を守るための妖と見えるのだろう。

 

「……ううん、この人は一兄さんを守るだけ、吉井は含まれない」

「は?」

「……吉井には守が居なかった」

 

おいおいと雄二は内心呟きつつ、気になったところを指摘した。

 

「嘘だろ、ここまで兄弟揃って力が強いのにか? 明久の奴、可笑しいくらいに見えているのにか?」

「……うん、吉井は多分見えてることを隠してる。最近になってようやく相馬の狸が守に付いたはず」

 

翔子がすぐに答えを出した。隠されては気が付くわけがない。

 

「明が見えてる? そんなこと全然言わなかったのに」

「こちらも初耳です。相馬の狸といえば江戸川の守護に当たっている高位のお方でしょうに」

 

一も知らなかった事実に驚き、仁もややずれた方向に驚く。

 

「あー、そういえば相馬の狸が主を変えたって噂は耳にしてたけどこいつとは。てか守が付いているのにこのざまかよ」

 

雄二がちょうど守へ文句を言っているその時に、

 

「明久様おかえりなさ……」

 

艶やかな着物姿の美少女が入ってきた。言わずもがなぽんぽこである。

 

「えっと、誰だい?」

「我らが万全の守りを規している離れに入り込むとは何者?!」

 

住民二人が驚き、警戒している横をすり抜けてぽんぽこはベットに寝かされている明久の方へ走った。

 

「明久様?!」

 

すぐに頬を叩いたり、揺すってみるが明久は気が付きもしない。

 

「大丈夫ですか? だから学校に行くのを控えるように申し上げたのに」

 

わぁぁぁと嘆くぽんぽこを見て雄二が翔子に話しかける。

 

「翔子、こいつもしかして」

「……多分、相馬の狸」

 

先ほど噂になっていた高位の妖がまさかこんな若干抜けた雰囲気を醸し出す美少女とは思いたくなかった二人だった。

 

「おいあんた」

「! どなたでしょうか?」

 

雄二がぽんぽこに話しかけた。

 

「……!」

「っ こいつの学友の雄二、こっちは翔子」

 

それだけでぽんぽこの力量がわかってしまった。念入りに警戒しながら雄二が自分と翔子の紹介をする。

 

「なるほどですね。お二人が明久様をお運びになられたのですか?」

「ああ」

 

その答えを聞いたぽんぽこは雄二に深々と頭を下げた。それから顔を上げて二人に真面目な顔で話しかける。

 

「それは感謝申し上げます。では即刻お立ち去り下さい。これは人の身が触れてはならないものです」

「そういうわけにはいかないな。こいつに取憑いた陰の気は学園に蔓延している。対処法がわかっていないんだ。こいつを助けることでそれがわかるならそれに越したことはない」

「……それに吉井が心配」

 

二人に反論されても、ぽんぽこの表情は崩れない。

 

「そういうわけにはいきませぬ。これはもはや陰の気などではないのですから」

「へ?」

「は?」

 

ちなみに元々の住民たちはもう起こっていることに若干頭が追いつけなくて呆然としているのを世話役が勘違いして、部屋に戻る戻らないの押し問答になっていた。

 

 

 

 気が付いたら黒く暗い所に居た。何処、ここ? じめじめと湿気ったように嫌な空気がぞわりと肌を撫ぜる。一歩進んでみた、足はちゃんと踏み出せる。どうやら前には進めるらしい。それがわかるとこんな空間はごめんだとばかりに足が勝手に走り出す。いや、逃げなくちゃいけないという警告が頭をよぎる。

 しばらく走るけど、一向に前に進んでいるような感じはしないし、もちろん出口らしきものにも出くわさない。一体どうなってるんだろう。

 

「――――!!」

 

 思わず叫びたくなって叫んだ。でも声が出ない。まるで声という音を切り取ったかのように聞こえない。こうなってくると不安で胸がいっぱいになりそうだ。それでも足を止めるわけにはいかない、頭の中の警告はまだ止まない。

 さらに走るけど、まだ何も見えてこない。もしかしたらここはそういう場所なのかもしれない。誰も居ない真っ暗な箱、その中をぐるぐると走らされている。そんな光景が浮かんだ。

 それからまだ走ったけど何もない。いい加減に走るのも疲れてきた。でも、まだ逃げなくちゃいけないという警告が聞こえる気がする。でももうそろそろ限界、これは鉄人から逃げるのよりももっと疲れるよ。

 足が自然と歩くくらいのスピードに変わっていった。すると聞こえていなかった物音が聞こえたような気がした。ずるずるとそう、なにかとても重いものを引きずるような……。振り返る気持ちは起きなくて、ちらっと後ろを見てみた。赤い目が見えた。!? なにあれ、生き物? いや、この感じってまさか蛇? あり得るかもしれない。ずるずるという音は嫌なくらいに大きくなっていく。僕の足が鈍くなるのと対照的に向こうの速度は上がっていく。どうしよう、また走りたいけど今度は足に強力接着剤でもつけられたみたいに足が動かない。音は大きさを増すばかり、嫌だ。嫌だ。いやだ。顔だけ後ろを向いてみれば、丁度蛇が大きく口を開けているところだった。

 

 

「うわぁぁぁぁぁ」

 

 がばっと起き上がった。どうやらあれは夢だったらしい、凄く荒い息を整えてから周りを見れば見慣れた自分の部屋だった。一つ違いを挙げるなら、普段だったらどこで寝ているのかもよくわからないぽんぽこが僕のベットの脇で寝ていることだよね。……本当に見た目はすごく可愛いんだよなぁ。普段振り回されてる身としては可愛いだけじゃすまないんだけど、それでも可愛い女の子が一緒に居てくれるとか珍しく幸せだなぁとしみじみ思った。ふと、ぽんぽこの目がうっすら開いた。あ、起きたかな?

 

「明久様?」

「あ、おはよ」

「明久様、ご無事で何よりでございます」

 

 うわっ、いきなり抱きつかれた?! いったい何がどうなってるんだろう?

 





俺得妖怪ものクロス第二段です。
別に明久自分の境遇をおかしいとか思ってません。一応弁明しておくと虐待とかではなく明久が「手のかからない子」だから放って置いているだけ、しょっちゅう死にかける子どもと人並みに元気な子どもだったら、しょっちゅう死にかけている子どもの方が心配されるのは多分当然? 妖怪が見えるのは明久は普通じゃないからと内緒にしていたからおばあ様は知ってたけど母親からはスルーされることに
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