短編集。   作:亜莉守

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蛇に巻かれる話 参

明久が眠るベットがある部屋を離れて、廊下へと出る。そして、ぽんぽこが明久に取り憑いたものの正体を告げる。

 

「蛇?」

「いえ、人の心に宿る淀みそれが土地に宿り、(こご)ることによって変化したのです」

 

雄二の発言をぽんぽこは首を振って否定してから訂正を入れる。さらに一息吸ってからまた言った。

 

「蛇というのはただの姿に過ぎません。でも、凝ってしまえば意思がなくても目的は出来てしまいます。そうなれば祓うのは容易ではありません」

「……確かに、意思があるのとないのでは祓うときの力が変わる」

 

翔子がぽんぽこの意見に同意した。ぽんぽこはそれに頷いてから、言った。

 

「ええ、ですから私たちが出来るのは明久様が返すのを待つだけなのです」

「返す? どういう意味だ」

 

また普通とは違う言い方を聞き雄二が尋ねる。

 

「今回明久様に取り付いたのはある意味呪いなのです。無自覚とはいっても、行き過ぎた嫉妬は呪いになってしまいます」

「……つまり、吉井がその呪いを返すのを待つことしか出来ないってこと?」

 

翔子が少し緊張した面持ちでぽんぽこに聞いた。ぽんぽこはあっさりと頷く。

 

「はい、明久様がご自身でどうにかするしかないのです」

「はぁ、相馬の狸といえば有名なのにそれしか出来ないのかよ」

 

雄二が皮肉気に告げれば、ぽんぽこが雄二に笑いかける。

 

妖怪(われわれ)なんかより人間(あなたがた)の方が恐ろしいものですよ? よく娯楽作品にもそう書かれるではないですか」

「っ」

 

雄二にはその笑顔が恐ろしくてたまらないようだ。

 

「……『げに恐ろしきは人の心』ってこと?」

「はい、人を蝕むほどの陰の気を発するなんて普通ないですよ」

「で、明久は何時目が覚めるんだ?」

 

それが一番重要だといわんばかりに雄二が詰め寄った。

 

「早くて一日、悪くて一生目が覚めない可能性もあります」

「俺達に何かできねーのかよ」

「……うん、見逃してしまっていた私達にも責任がある」

 

雄二と翔子の真剣な表情を見て、ぽんぽこは何かを感じ取ったらしい。真面目な表情でぽんぽこは告げた。

 

「それなら、原因となったであろう場所を祓ってください。それだけでも変わるはずです」

「分かった」

「……行ってくる」

 

雄二と翔子は廊下を走っていった。それを見届けたぽんぽこは廊下に残っていた一と仁に向き直る。

 

「そういうわけです。お引取りくださいませ、若だんな様」

「引くわけにいかないよ」

「若だんな、ここは危ないんですよ」

 

こんなことに首を突っ込むなんて絶対に体調を崩すに決まっていると仁は言い出す。それを制して一はぽんぽこに言った。

 

「明はわたしの弟だよ」

 

だから傍にいさせてほしいと一は言う。ぽんぽこは首を横に振って一に告げた。

 

「はぁ、そういうわけにはいきません。貴方は人の身、もし明久様が返した場合に貴方に呪いが移る可能性があります。だから貴方がここにいることを認めるわけにはいきません」

「……わかったよ。でも、明が目を覚ましたらすぐに連絡をおくれ」

 

それが条件だと一は言った。それにぽんぽこは笑う。

 

「はい、それはもちろんですよ。明久様は貴方の事を一番に気にしておいでですから」

「本当にすぐにおくれよ」

 

そういって一は去って行こうとする。すると仁はぽんぽこに詰め寄った。

 

「若だんながそういっているんだぞ。絶対にしろ」

「私は明久様にお仕えする身です。貴方にどうこう言われる筋合いはございません」

 

バチバチ、二人のにらみ合いで火花が見えるようだ。

 

「仁?」

「はい、今すぐ」

 

一に呼ばれて、仁はすぐに去った。それを見届けてから部屋の中に戻る。そして、ベットに眠り魘されている明久の汗をぬぐいながら呟いた。

 

「……明久様、すぐに目を覚ましてくださいね」

 

                     ☆

 

「……と、いうことがあったんです。目を覚まして本当に良かったです!」

 

ぽんぽこがこれまでの経緯を説明してくれた。そ、そんなことが起こってたとは。それにぽんぽこの事どうやって説明しよう。もう一つ気になることがある。

 

「そ、そうだったんだ。ちなみに何日寝てたのかな?」

「二日です。こんなに早く済んでよかったのですよ」

 

二日って……皆勤賞の夢が、いやそれどころじゃないよね。一体どうすれば。

悶々と悩んでたらバタバタと走ってくる音がした。一体誰だろう?

 

「明!」

「い、一兄?!」

 

まさかの一兄だった。そのまま僕に飛びついた。え、ちょっといきなりなんで?

 

「無事でよかったよ」

「若だんな! そんなに走らないで……おや、明久目を覚ましたのか」

「それよりもどうにかして」

 

佐助兄も入ってきた。思わず助けを求めた。

 

「大人しく抱きしめられていろ、若だんなが食事が喉を通らないほど心配していたんだぞ」

「うわ、本当?」

 

そこまで一兄が心配してくれるなんて思わないよ。

 

「心配してたんだよ」

 

それだけ言うと一兄はまたぎゅうと僕の事を抱きしめた。まるで蛇に絞められてる気分なんだけど。

 





お疲れ様でした。
蛇は嫉妬の権化みたいな設定でした。嫉妬って怖いよね、まあそんな話
嫉妬してたのはFFF団かもしれないし、もしかしたら他の人かもしれない。嫉妬なんて誰でもするものだから
今回、一番の参考は安珍・清姫の清姫、嫉妬に焼かれて蛇に変化してしまった女性。あれはあれで悲しい話だと思う

それから心配していた人たちにぎゅうううと抱きしめられるから二重の意味で『巻かれる』ってことを込めてみた……無理やりすぎたか

そんなわけで蛇に巻かれた話終了です。気まぐれに増やす予定
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