はじまりの日
昔からだったけどあの子はずっとひとりでがんばろうとしてた。僕はその背中を見ているしかなくって、それにすごくいらいらしていた。何で僕の事は頼ってくれないんだろうって心配になる。
「ここがはやての家……本当に久しぶりだなぁ」
目の前にあるのは大きな家、あの子はここに一人で暮らしてる。あの子…はやては元気にしてるのだろうか、そう不安になりながらチャイムを押した。
『はーい、ちょっと待っててなー』
昔と変わらないちょっと気の抜けていて、僕とはちょっと発音の違う声を聞いて安心した。いつも通りのはやてらしい。そう言って、玄関で待ってることしばらく。
「はいはい、どちらさ………アキ君?」
「久しぶり、はやて」
茶色の髪に黄色のバツ印のヘアピン、白のインナーの上にカーディガン、そしてロングスカート。玄関から出てきた車いすに乗った僕の幼馴染、八神はやては僕の顔を見てびっくりする。それから車いすを動かしてこちらへとやってきた。
「うわぁ、久しぶりやね。元気にしとった?」
「うん、はやては? 無茶してない?」
それが一番心配だよ。はやてって気が付かないところで無茶していることが多いし。
「全然、大丈夫やよ」
「ならいいけど」
こういう時って注意した方がいいかもしれないよなぁ。それからさらにしばらく玄関先でしゃべっていると、玄関からまた人が出てきた。ん? 誰かいたっけ?
「はやてちゃん、こんなところで……あら?」
「え?」
玄関から出てきたのは全然知り合いでもない女の人だった。金色の髪に緑の目、誰だろう? 僕が驚いているとそれに気が付いたみたいで、はやてが笑う。
「あ、アキ君は知らんよね。この人はウチの知り合いでな。今、家でお世話してるシャマルや」
「どうも、こんにちは」
「こんにちは。貴方は……?」
あいさつをした僕にシャマルさんが首を傾げた。そうだよね。はやての事だから僕の事とか全然説明してないだろうし。
「この子はな、ウチの友達なんよ」
「僕の名前は吉井明久です。はやてとは幼馴染で昔この辺に住んでたんです」
「そうなの、でも明久君はなんでここに?」
う、やっぱりそう来たかー。これが一番大変なところなんだよね。どうやって説明しようかな。
「そうやな。アキ君なんでここに来たん? 今住んでるとこ遠いはずやろ?」
「あはは、うーん。はやて、怒らない?」
「……内容によるわ。というか、そういうこというてるアキ君が言い出すことは大体びっくりすることやけどね」
流石はやて、大体僕が何かやった時にはすぐに気が付くよね。うわぁ、余計に言いづらくなってきたし。僕が黙ってるとシャマルさんが慌てたように言い出した。
「あのね、言いたくなかったら……」
「シャマル、アキ君甘やかすとロクなことにならんからダメや」
あーあ、何とか言わずに済みそうとか思ったのに。シャマルさんって優しい人なんだなぁ。
「でも……」
「いや、大丈夫ですよ。普通に言いますし………じゃあ、はやてお願いがあります」
こうなったらしょうがない。言うしかないか。毒も食らわば皿まで…だっけ? 前に学校でやった気がする。
「ん、なんよ?」
「しばらくはやての家に泊めて。できれば一年ぐらい」
これって絶対に理由聞かれるよね。どうやって説明しよう。あれは僕が説明するには起こったことが難しすぎるよ。
「なんや、そんなことならはよいうて欲しかったわ」
「ええ?! いいの? はやてちゃん」
シャマルさんが驚いた顔をした。それはそうだよね。いきなり止めてってきたらみんな驚くよなぁ。
「アキ君とは知った仲やもん。気にせーへんよ」
「え、いいの?」
あれ? もうちょっとくらい掘り下げてくるかと思ったのに。はやてにしてはすこしやさしめ?
「ええってええって、それにしても何で家出なんてしてきたん?」
あ、やっぱり聞くところは聞くんだね。まあ、家出って思ってくれて正直助かったなぁ。家を出たのの直接的な原因じゃないけど、もう一つの原因をはやてに教えておく。
「あははは……姉さんと二人きりって危ないって思わない? しかも一年間」
僕の姉さんは周りにはすごくいい人って言われてるんだけど、正直僕から見るとちょっとおかしい気がするんだ。そんな姉さんと今度父さんと母さんの仕事の関係で二人っきりで生活することになった。
まあ、一番の理由は別のところにあるけど、これも同じくらい不安だからこれではやてには通じるはず。
「……あー、あのお姉ちゃんか。それはそうやな」
「だよね……。だから助けてはやて」
「ええよ。なんて言ってもウチとアキ君の仲やろ」
本当にこの幼馴染が居てくれて助かったと思った。それから、一つだけ気になったことがあった。……はやて、また無茶してるんだね。昔からそうだけど、無茶しているときってなんか雰囲気で分かるんだよなぁ。
「あ、こんなところで立ち話もなんやから中に入ってーな。それからウチの『家族』紹介するわ」
「え?」
……確か、はやてって一人で暮らしていたんじゃ。あ、シャマルさんみたいな人が他にも居るってことか。
「驚いた顔せんでほしかったなぁ」
「ごめんごめん、車いす久々に僕が押すよ」
「あ、ええの? 頼むわ」
いつも一緒に過ごすときはこれが僕にできることだったからね。ずっとやってたから慣れてるし。シャマルさんが心配そうな顔でこっちを見てくるけど大丈夫。
「とりあえずリビングに行こう。お茶出さないとなぁ」
「あ、いいよ。気にしないよ?」
別にお茶欲しくてここに来たわけじゃないんだし。そう言ったらはやてが首をこっちに向けて左手で僕を指さした。
「親しき仲にも礼儀あり、やで」
「はいはい、承知しました。お土産なにもないなぁ」
「家出してきた人にそこまで期待してないわ。そこの突き当りや」
「ま、その分は何かするよ。はーい」
話しながら僕ははやての指示に従ってリビングへとやってきた。するとどうだろう、ソファーではピンク色の髪の女の人がお茶を啜っているし、赤い髪の女の子はそわそわとこっちを見てきている。あ、目があった。いつの間にこんなに増えてんのさ。しかも女の子の足もとには青くて大きな犬がいるし。
「……はやて、誰?」
「ああ、今ウチと一緒に住んでる家族や」
この人たちと一緒に生活するのか……どうしよう、不安になってきた。
「そっかー……キャラ濃いわー」
「? どうかしたん」
首を横に振ってなんでもないってことだけははやてに伝える。すると赤い髪をお下げにした女の子がこちら側へと寄ってきた。
「おい、お前。なんでお前がはやての車いす押してるんだよ! それに誰だお前!」
「え、えっと」
凄く気が強いみたいだ。なんか凄い睨みつけてくるしちょっと怖いかも。
「こらこら、アキ君がとまどっとるやろ。ごめんなアキ君」
「うん、大丈夫だけど……君は一体、誰?」
名前も知らないし。はやてがお茶入れるからここからは自分で車いす動かすわーとか言って移動しちゃったからはやてに聞くことも出来ないし。
「名乗るなら先に名乗るもんだろ?」
「あ、ごめんね。僕は吉井明久、はやてとは幼馴染なんだ。君の名前は」
ヴィータはちょっと驚いた顔をした。どうしたんだろう?
「……ヴィータ、八神ヴィータ」
「そっか、ヴィータっていうんだ。よろしくね」
僕は手を差し出した。八神っていうのは多分こっちで生活するために名乗ってるのかな? もしかしてはやての隠れた親戚かも?
「お、おう。よろしく」
ヴィータが手を握ってくれた。そしたらいきなり傍にあのピンク色の髪の女の人が立ってた。そして、僕を見おろすとちょっと硬い感じの笑顔で笑う。
「私はシグナムだ。よろしく」
「あ、はい。よろしくお願いします」
シグナムさんかー。やっぱりこの人たち外国人とか何かなのかな? ちょっと首を傾げていると足元にあの大きな犬がやってきた。
「えっと、この子は……」
二人に犬の名前を聞こうとしたその時。
「ザフィーラって言うんよ。アキ君、お茶入ったから飲んでー」
「あ、うん」
キッチンの方からはやての声がした。へぇ、ザフィーラか……無駄に凝ってる名前つけてるなぁ。食卓の方に行けば、はやてが人数分のお茶を用意していた。一つに手を付けて飲む。うん、はやてはやっぱり料理とか上手だね。
「おいしい?」
「うん、いつも通り美味しいよ」
「それはよかったわ」
それにしてもなんか他の人たちの視線が痛いよ。
「あ、あの……何か僕の顔についてますか?」
「あ、いや。何でもない」
「…………」
なんかシグナムさんは露骨に目を逸らすし、ヴィータは無視してる。これでこの先やって行けるのかな? ちょっと不安になる僕だった。
活動報告に乗っけていた「りりなの×バカテス」のはやて幼馴染設定の方を唐突に書きたくなってこうなりました
連載が一つ終了したので気が抜けててすみません
プリヤ見てたせいか衝動的に魔法少女モノを書きたくなる罠。ノリと勢いでプロット書いてふと気が付く。設定が無駄に濃くね? そんなわけで黒歴史量産中です
いい加減連載の方をどうにかしないといけないことはわかってるんですけどなんかやる気が起こらなくて……どしよ