色々なIF集   作:超人類DX

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リクエストというか、よしやろう! みたいな。

単なるルートIFみたいな。


実に惚れやすく逃げやすい場合
惚れっぽい彼(マイナス一誠・アーシアさんルート)


 それは単なる気紛れかもしれなかった。

 何と無く格好とか見た目とか雰囲気が、他と違うなぁとか思ったからかもしれない。

 だから話し掛けてみた。

 一人挙動不審ぎみにキョロキョロしながら何かを探しているように見えるその子に。

 どうせ話し掛けても気味悪がられて逃げられるんだろうなぁと思いつつも話し掛けてみた。

 

 

「失礼お嬢さん……何かお困りかな?」

 

「!」

 

 

 精一杯の作り笑顔を浮かべて、人畜無害ですよな空気を纏いながら近付き、俺は珍しい格好をした外国人と思われる女の子に話し掛けてみた。

 どうせこんな事しても気味悪がられた挙げ句逃げられるんだろうなと内心苦笑いしながら。

 昔からそうだ……。

 何時の頃からか……いや、最初からか? 只そこに居るだけで不愉快だと言われて育ってきた為、最早嫌というほど自覚してる。

 俺は生きる価値なんて何も無い糞野郎だって。

 でも死ぬのなんて真っ平ゴメンだ。

 どんな糞野郎でも生きる権利はあると思ってる……だから生きる。

 双子の兄である奴がうざったい位に才能に満ちて周りに人が常に居て、それと比べられてしまおうが俺は生きる。

 

 無意味に生きて、無価値に死ぬ。

 それくらいやる権利くらい俺にだってある……だから生きてやる。

 そのせいで周りに謎の被害が起ころうが知らない。

 お前が居るだけで人が不幸になると罵られても、それでも俺はヘラヘラ笑って生きてやる。

 それが過負荷(オレ)であり、俺は悪く無いんだから。

 

 

「――! ―――」

 

「え、何だって?」

 

 

 そんな訳で、気になったからって理由で久々に人に話し掛けてみた俺こと兵藤一誠なのだが、困った事に相手の子の言葉が分からず、首を捻るという結果となってしまった。

 身振り手振りで何かを必死に伝えようとするのは分かるんだが、如何せん何を言ってるのかが分からないし、もっと言えば俺を見ても嫌悪感丸出しな顔はしてないのにちょっと驚いている。

 まあ、大方本人にとっては其ほどに逼迫した状況なんだろうと予想は出来るけど……ふむ。

 

 

「……………幻実逃否(リアリティーエスケープ)

 

 

 仕方ない、何を言いたいのか分からないのなら分かる現実に逃げてしまえば良い……てな訳で何時の頃から持っていた謎能力で、言葉の壁という現実から逃げて取っ払ってみれば、ほらこの通り……。

 

 

「落ち着こうぜお嬢さん。取り敢えずゆっくり、丁寧に説明して貰えれば分かるからさ」

 

「!? つ、通じた……?」

 

 

 言葉の壁から逃げる事なんて訳無いのさ。

 突然こっちの言葉が通じた事に、それまで必死こいてた顔を驚き固まるって感じの表情に変化させた金髪の子に、俺は出来る限りの作り笑顔のまんま続ける。

 

 

「まあ、最初何処の言葉か解らなくて理解するのに時間喰ったけどもう平気さ。

それで、どうしたんだい?」

 

 

 まあ、冷静になったらなったで……どうせ即座に嫌悪感にまみれた顔して『死ね!』とか言ってどっか行っちゃうんだろうからこんな事聞いても無意味なんだよね。

 ほら、案の定この金髪の子も徐々に嫌悪感にまみれた顔に――

 

 

「ょ、よかった……やっと言葉が通じる人と巡り会えました! 主よ感謝します!」

 

 

 顔に……。

 

 

「あ、あの……ありがとうございます! 貴方が話し掛けてくださらなければ私は今も此処で迷ってました! 本当に……ありがとうございます……!」

 

「え……あれ?」

 

 

 ならない……だと……?

 

 

「? どうしました?」

 

「……。いや、キミさ……俺を見て何か思うこと無いの?」

 

 

 んな馬鹿な……。

 俺を前にして笑ってられる人なんてもう居ないと思ってた……だから俺は、それまで浮かべていた作り笑いを引っ込め、多分戸惑ってるんだろうなぁと自分でも分かる顔になって、様子の変化を察してキョトンとしている金髪の子に聞いてみれば、金髪の子は予想の遥か斜め向こうを彷彿とさせる笑顔で俺の両手を握りながら言うのだ。

 

 

「当然思うことはありますよ……。

親切でいい人だなって……えへへ」

 

「…………」

 

 

 ナニヲイッテルンダコノコハ?

 良い人? 親切?

 言われたその二つの単語が理解出来ずに、ただただ呆然とするしか無かった。

 餓鬼の頃、道に迷ってたお婆さんに親切しようと話しかけたら、持ってた杖で袋叩きにされたりした俺に、この子は嫌悪感を見せずにいい人だと言い切った……。

 やばい、解らない……何なんだこの子は。

 

 

「あ、ごめんなさい……あまりにも嬉しくてついお手を……」

 

「いや、良いけど……」

 

 

 人に手を握られるなんて何年振りだったか……もう忘れてしまったが悪い気はしない為、少し落ち着いて来たのか急に謝り出す金髪の子に俺は気にするなと顔を逸らしながら言っておく。

 

 

「…………。それで、キミは何を困ってたのかな?」

 

「あ……そうでした」

 

 

 まあ良いか。そういう人種も居るんだろう……世の中にゃあ。

 そうやって無理矢理自分を納得させ、取り敢えず当初の話に戻してみれば、どうやら忘れてたっぽい金髪の子はハッとしてから話を始めた。

 どうやらこの子はあの街外れにある教会に派遣されたシスターさんだったらしく、その場所が分からず困ってたらしい。

 で、そこ行く人々に道を聞いても言葉の壁が邪魔して聞けず……偶々通りかかった俺がこの地に来て初めて言葉が通じたもんだからテンションが上がった……とまあそんな感じだった。

 

 

「ふむ……その場所なら知ってるし丁度帰り道だな。

良いよ、どうせ年中暇だし案内したげる」

 

「本当ですか!?」

 

「うん、人との会話なんて久々で俺もちょっとテンションが上がってるんだ……このままハイさよならは勿体無いしね。

よし、こっちだよ」

 

 

 案内すると言った途端、また元気になった金髪のシスターさんにちょっとだけホッコリしながら目的地へのガイドを開始する。

 で、その道中互いの名前の交換をすることになった。

 

 

「私、アーシア・アルジェントと申します。アーシアと呼んでください」

 

 

 金髪のシスターさん……では無くアーシアさんは屈託の無い笑顔で言うので、俺も……まあこの場限りの縁だろうけど自分の名前を口にする。

 

 

「俺は兵藤一誠……しがない過負荷(マイナス)さ」

 

 

 知ってる人物がその名を耳にすれば不愉快に顔を歪める俺の名前を教えると、アーシアさんは嬉しそうに顔を綻ばせている。

 

 

「イッセーさん……ですね。覚えましたよ!」

 

「おう」

 

「ですが、マイナスとは何でしょうか? 職業ですか?」

 

 

 名前は覚えて貰えたが、どうやら過負荷(マイナス)という言葉は当然だけど知らないらしく、首を傾げているアーシアさんに俺はヘラヘラと笑いながら口を開く。

 

 

「いいや、職業は単なる学生さ。

過負荷(マイナス)ってのは…………まあ、何て言うか、俺の人間性(キャラクター)みたいなもんさ」

 

「キャラクターですか……」

 

「特徴みたいなもんだな。ま、あんま深く考えなくても良いよ」

 

 

 どうせ知れば即座に離れるんだろうしね……知らない方がキミにとっては幸せだろうよ。

 

 

「よく解らないですが、イッセーさんは中々ユニークな方と見ました。

やっぱりお友達とかも多いんでしょうね……ふふ」

 

「…………」

 

 

 一度も行ったことの無い教会目指して並んで歩く最中、アーシアさんが何気無く口にしたその言葉に、一瞬だけ足を止め、また歩き出す。

 友達……ははは、俺を知ってる連中に同じことを言ったら何て言われるのか大体予想出来るぜ。

 

 

『居るわけねぇだろ! あんな気持ちの悪い奴と一緒の空気を吸ってる事じたい吐き気がする!』

 

 

 とか言われるだろうさアーシアさんよ。

 というか、キミ……人を見る目が無さすぎんぜ。

 

 

「? あの、どうかされました?」

 

「ん、何でも無いよ。俺に友達は全く居ないからね……そう言われると少し考えさせられるものがあっただけ」

 

「え……」

 

 

 何て事無いぜ……的な感じでサラリと言った筈なのに、何故か歩く足を止めてまで驚いているアーシアさんに俺は思わず吹き出してしまう。

 

 

「はは、そんな驚く事かい?

世の中にゃあ、そういう人間だっている。

無意味に嫌われたり、親切が毎回仇になったりする人がな」

 

「………」

 

「まあ、その点キミがこうも俺を気色悪がらずにしてるのには驚いてるんだぜ?」

 

 

 どんなに作り笑いをしても、無害なオーラを頑張って出しても駄目だったのに、何故かこの子にはそれが通じているという事に関しては真面目に驚いている。

 だからこうして道案内の真似事をする気になれたんだからな。

 

 

「その理由は解らないけど……ま、キミが良い子だからって事で自己解決するさ」

 

 

 ケタケタと笑いながら再び歩き始めると、アーシアさんもその後ろに黙って付いて来る中、俺はハッとする。

 あれ、何でこんなしょうも無い話を会って数分にも満たない子に話してるんだろうと。

 どうせこの道案内が終われば会うことも無いのに、俺は割りきった筈の自分について話をしてしまっている。

 ……ま、どうでも良いか、もう目的地だし。

 

 

「ほら、着いたよ」

 

「あ………」

 

 

 教会に到着し、道案内はこれにて無事終了…………の筈なのに何故かアーシアさんの顔はあんまり嬉しそうでは無かった訳だが、気にする必要も無いだろうと俺は元来た道を戻ろうと背を向ける。

 

 

「後は中に居る人が何とかしてくれるだろうし、一人で平気だよね? だから俺はこの辺で失礼するぜ。ばいばい」

 

 

 いやあ、久々に親切するのも悪くないや……なんてガラにも無い事を思いながら帰ろうと歩く俺だが、突如後ろからアーシアさんの声が耳に入り、思わず立ち止まった。

 

 

「あ、あの……この街に居ますから! い、何時でも遊びに来てください!

わ、私もイッセーさんともっとお話がしたいので!」

 

「…………」

 

 

 だってさ……。

 変な子だね……歩いてる最中、素の雰囲気出してたのにまるで気持ち悪がら無かったし、今もあんな事言ってるし……。

 あーもう、どうしてくれるんだよコレ……。

 アーシアさんよ……キミは俺を知らなすぎるぜ……。

 

 

「そんな事言うと、ほぼ毎日来ちゃうよ?」

 

「全然構いません……イッセーさんだって、神の子なんですから……!」

 

 

 嫌がらせ発言にも笑顔で構わないと返す。

 あー……どうしようと、これはあの時振りだわ。

 

 

「そう。ならアーシアちゃん……『また明日とか。』」

 

「はい、お待ちしてます!」

 

 

 過負荷(オレ)は惚れっぽいんだぜ、どうなっても知らないからな?




補足

このIFの場合、ソーナとの接点も無いし、イリナさんは兄者ルートになってます。

だからというか、本編よりも早く幻実逃否(リアリティーエスケープ)に目覚めて、しかも精神もある意味キツい事になってます。

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