色々なIF集   作:超人類DX

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です。

こう、もっとアレな関係になったというか……。


キャット&デトロイヤー※設定微変更編

 壊れた少年が居た。

 

 その壊れた少年は何時でも不気味に笑った。

 

 そして何でも破壊した。

 

 だから少年は何時も独りだったが、全く気にしなかった。

 

 

 少年は壊れていた。

 

 壊れた少年は何時でも自分本意だった。

 

 だから友達なんて出来る訳がなかった。

 

 しかし少年は壊れていたので全然気にせず、我が道を突き進んだ。

 

 

 破壊の龍帝――そう恐れられる様になろうとも、少年は寧ろ嗤い続ける。

 同族である人間に理解させずとも、人で無い様々な存在から攻撃されようとも、少年はこの悉くを真正面から壊して生き続ける。

 

 それこそが壊れた少年の存在意義なのだから……。

 

 

 

 ぜーんぶ壊れちゃえ。

 

 少年が放つその言葉は、それだけで何の効力を持たないものなのかもしれない。

 

 しかし、壊された事により壊れてしまった少年の力は文字通り全部を壊した……いや壊してしまった。

 

 地を、空を、概念を、因果を、時間を、全てを、何もかもを破壊する力を覚醒させてしまった少年は、この世に現れた災厄とも云うべき存在。

 

 破壊の権化。

 人から生まれし災厄。

 

 後世の者達は皆そう語り、彼という存在に恐怖した。

 

 

 壊された事により壊れた皮肉な男として。

 

 

 

 

 壊したから壊し返してやった。

 

 極々普通の人生を歩み始めたのに、その人生を壊した男そのものを壊してやった少年は、悪びれもせずそう思ったそうな。

 

 目の前に蚊が居た。だから壊した。

 

 生き続ける事自体が目的となった少年は、生きる為だけにゴミや泥すら平然と喰らい、時には人の中に混ざる人ならざる存在を壊しては食らった。

 

 名も知らない男に全てを壊され、その直後目覚めた破壊の力は少年の価値観を独自に形成し、優しかったその目はどす黒く染まり、その笑みはどこまでも歪んでいった。

 

 生き続ける目的しか無かった少年はそう悪びれもせず宣い、邪魔する存在は誰だろうと平然と壊していく事で、内に秘める異常性が少年をどうしようも無い化け物へと進化させる。

 

 それはまさに悪夢だった。

 生きる事自体が周囲の災厄となってしまった事も自覚せず、あらゆるモノを無自覚に壊し、喰らい、生きる為だけの糧とする。

 

 それは最早人としての領域を完全に踏み外していると云っても過言じゃない。

 生きるだけで迷惑になる存在へと成り果ててしまっても尚生きようとする事自体が悪となる。

 

 壊された少年は何処までも不運だったのだ。

 

 

 

 少女は魅入られてしまった。

 只唯一の肉親を守る為だけに罪を覚悟し、孤独と戦いながら色々な場所を転々としながら生きる。

 それはとても辛く、とても寂しく、とても苦しい生だった。

 罪を断じようと追い掛けてくる存在からひたすら逃げ続け、傷付き続けた。

 そうなれば自ら生を放棄しようというのも仕方ないのかもしれない。

 死にたいと思う少女を責めるのはあまりにも酷なのかもしれない。

 

 だけど少女は会ってしまったのだ。

 何時もの様に落ち着くこと無く転々し続ける事に限界を感じ、自ら生を終わらせようとすら考え始めていた矢先に出会ってしまった、自分と真逆の考えを持つ生きたがりの少年に。

 

 

『また一つ新しい事を知った。

くく……! クックックッ……ゲゲゲゲ、やはり生きるのは愉しいなぁ? アッハハハハハ!!』

 

 

 生きるから壊す。

 壊すから一人。

 しかしそれでも心は疲れていない……だってもう心は壊れているから。

 

 どこまでもどす黒く、どこまでも歪んでいる。

 でもその歪みが歪んだまま伸び続けている様な少年の不気味な歓喜をボロボロとなった少女は恐怖した。

 独りなのに、味方もいないのに、それでも尚貪欲に生きようとするのが理解できなかったから。

 

 だからこそ……少女が魅入ってしまったのは仕方ないのかもしれない。

 同じ孤独ではぐれ者なのに堂々と生き続けようとするその姿に。

 誰よりも貪欲なその姿勢に……。

 

 

『あくま? よーかい? 良いぞ、実に新しい……!

やはり生きてて良かったよ、アハハハ!』

 

『……。コイツ等みたいに私を殺さないの?』

 

『殺すだと? オイオイ勘違いするなよ女。

コイツ等は勝手に俺に攻撃して何もしていないのに勝手に壊れただけだろう? 人聞きの悪い事は言うもんじゃない。

 それに仮に殺したとしても、何で俺がお前なんぞを殺すんだ? 美味くもなさそうな奴を殺すのは人生の無駄だ。死にたければ自分で勝手に独りで死ぬんだな』

 

 少女はただ……不運な事に少年に惹かれた。

 

 

 

 私にとっての不幸は、アイツと出会ってしまった事だ。

 死ぬことしか考えてなかった私の前に現れ、私を死なせてくれる追っ手を簡単に壊し、歪んだ鬼の様に嗤う無法者。

 

 全部壊された癖に生きようとする姿勢は狂気すら覚えるし、到底私には理解できないものだった。

 

 

「ん……ぅ……?」

 

 

 眠りから覚めるのは何時でも怠い。

 低血圧なせいで寝起きが頗る悪いっていうのもあるけど、私は朝が苦手だ。

 

 

「んー……」

 

 

 安いベッドから身体をゆっくり起こした私は、眠ってた筈なのにのし掛かる身体の怠さに二度寝をしたくなる気分になりつつ、昨晩寝る直前までの記憶を徐々に呼び起こしながらふとすぐ隣に視線が移る。

 

 

「くかー……くかー」

 

 

 そこには一人の男が間抜けな顔して幸せそうに寝ていた。

 申し訳程度に整えてる茶髪に、見てるだけならそこら辺に居そうな単なる男は何にも着てなく、首まで掛けてるタオルケットの下は全裸であり、同じく何にも着ていない私は昨晩の記憶を鮮明にするのと同時に、無意識に自分のお腹に触れる。

 

 裸の男と女が一つのベッドで寝てるという時点で、何をしたのかなんて今更述べても仕方無いし、別に私も彼も他に相手が居る訳じゃないんで、後ろめたさなんて全く感じやしない。

 

 加えて私から誘った訳だし余計にね。

 

 

「起きて、朝だよイッセー」

 

「んが?」

 

 

 お腹の中にドロッとした何かを感じながら、間抜けに寝ている生きたがりの男の名前を呼びながら揺らして起こす。

 私と一緒で寝つきは良いけど寝起きが悪いイッセーは放っておいたら何時までも起きずにスヤスヤと寝続ける。

 食欲はさほどあるって訳じゃないけど、でもご飯が食べたい私としては、イッセーにご飯を作って貰いたいからね。

 

 

「だる……」

 

「ご飯作って」

 

「あ?」

 

「だからご飯作って」

 

 

 目覚めた途端幸せそうに寝ていたその顔を不機嫌そうなものへと変えながら身体を起こしたイッセーに間髪入れずに私は要求した。

 するとぽりぽりと不機嫌そうな顔しながら頭を掻いてたイッセーが、昔から一切変わらない……私にしか解らない生きたがりの狂気を孕んだ目を私に向ける。

 

 

「……。今8時だろ、二時間しか寝てねーんだけど、俺が飯の用意すんの?」

 

「するの。だってお腹減ってきたし。

まあ、お腹の中はイッセーの子種だらけだけど」

 

「上手いこと言ったつもりかよ。

盛ったお前から頼んどいてモーニングのサービスまで頼むのかい」

 

「一回で良いって言ったのに、結局十回以上したのはイッセーじゃん。二時間しか寝れてないのは自業自得よ」

 

「お前の性欲処理係に途中で微妙に納得が出来なかったからな。

まぁ良い……ちょっと待っててくれ」

 

 

 腑に落ちなさそうな顔をしながら全裸のままベッドから降りて立ち上がったイッセーは、昨日の夜始めた際、適当に放り投げたハーフパンツとTシャツを着ると、のろのろとした足取りで台所へ向かい、ご飯の準備をし始めるその背中を見つめる。

 

 

「ん……お腹がドロドロ」

 

 

 罪を覚悟の選択をし、逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて……そして死ぬ事を望む様になった私の前に現れた生きたがりの男と一緒になってからもう結構長いんだけど、小さかった背は何時の頃からか私より伸び、みすぼらしかった身体は成長と共に……いや、生きる執念に呼応するかの様に細身だけどガッシリした無駄の無い身体に成長してる。

 

 無限に成長するというあり得ない特性と、どんなモノでも簡単に壊すことの出来る説明不能のナニか。

 その二つがイッセーの生への貪欲さを手助けする強みであり、その強みはこの世に蔓延る色んな存在を簡単に捻り潰せる。

 

 

「そら、出来たぞ」

 

「んー……」

 

「いや、食うなら何か着ろよ。乳ほっぽり出したままとかギャグじゃねーんだから」

 

 

 お陰である意味で前より追われる立場になった気がするけど、独りで逃げていた頃と比べたら今の方が絶対的に安全だった。

 何せまずイッセーを殺せる存在はほぼ皆無な上に、イッセーにほだされたせいで私自身が力を発現させてしまったのだから。

 

 

「またかお前。下着ぐらい付けろよ」

 

「イヤよ。

胸がキツく絞められる感覚がして鬱陶しい」

 

「……。お前の乳は無駄にデカいからな。

ま、部屋の中だから良いけどよ」

 

 

 だから余計に死ににくくなったんだけど、今となってはもう諦めた。

 生きたがりの変人男と一緒居ようとか思っちゃった時点で私は負けたんだから。

 

 

「で、妹とやらと再会する踏ん切りは? わざわざこの街にまで来たんだ、そろそろ対面しても良いだろ」

 

「……………。もうあの子にとって私は要らない奴だろうし、迷惑になるから会わない」

 

「おいおい、そのヘタレさのせいで俺は飯係りのままなんだけど」

 

「見返りはちゃんとあげてるもん、

第一、私の初めて貰っといて捨てるつもりなの?」

 

「記憶が正しければ押し付けられたと云うべきだろありゃ。

人が幸せに寝てる所を無理矢理お前が勝手にヤッてきたんだから」

 

「そうだっけ? 全然記憶に無いにゃーん」

 

 

 ぶっきらぼうなのに、付いてくる私を突っぱねる事無く傍に置いてくれる。

 口が悪いのに、わざと殺して貰うつもりで我が儘ばっかり言う私の面倒を見てくれる。

 

 

「ごちそうさま」

 

「おーう。

食ったら先に歯でも磨いてろ、食器は片付けてやるから」

 

「ん……」

 

 

 追われてる身だから死にたいと訴えたら、何を思ったのか追っ手の元凶を散歩してきたぜとばかりに破壊しに行って来ちゃうし、妹が居ると話したら独りでに様子を見に行って私に教えてもくれる。

 

 何でそこまで只偶然会っただけの、殺して欲しいから付いて来る様な私の為にするのかと聞けば……。

 

 

『死にたがりを見てると逆に生かせたくなる。

理由? そっちの方が死にたがりからすればムカつくだろ?』

 

 

 と、白い筈の箇所がどす黒く染まった目をしながら、歪んだ笑みを見せて宣う。

 全くもってムカつく奴だ……と思ったのは最初の方だけで今は殆ど諦めちゃってる自分が居る。

 

 

「今年で17か……。

はぁ、父さんと母さんが生きてたら学生やってたんだろうな」

 

 

 朝ご飯を終え、歯も磨いた後する事が現状無く、居間に座ってボーッとしてるイッセーの隣に何と無く座り、何かを思うような顔で一人呟くのを聞きつつ、話し相手になるつもりで口を開く。

 

 

「あの子は悪魔の眷属になって学生なんだっけ?」

 

「ああ、ちょっと楽しそうだった。

俺も学生とかやってみてーもんだ」

 

「社会不適合者のイッセーには無理だと思うけどね」

 

「うっせーな、お前にだけは言われたかねーよ」

 

 

 妹を守る為に眷属やってた主を殺したのに、別の悪魔に庇護される形で悪魔に転生した妹の事はショックだけど、本人は主さんや仲間と楽しそうに生きているとイッセーから聞いてるので、不安はあまりない……複雑だけど。

 

 

「やっぱり今更顔なんて見せてもしょうがないかもね……」

 

「今の所は、だろ。

事情が変わって主とやらが殺られたらそうもいかなくなるかもしれねーし」

 

 

 口調は悪いけど、何処と無く気を使ってくれてる言い方にちょっとだけ心が軽くなる。

 心優しい好青年――なんて笑っちゃうから思う事は無いけど、こういう所を見せるイッセーは嫌いじゃない……というかズルいと思ってる。

 どうせなら私が殺してしまったあの悪魔みたいな性格だったら、今頃こうして付いていってた事もなかったのに……。

 

 

「主とやらは魔王の妹らしいし、その内どっかの輩に狙われたら否が応にも危なくなるだろう。

そうなったらヘタレになってる暇もなくなるな……げげげげ」

 

「また変な笑い方になってるよ」

 

「おっと……油断してた」

 

 

 変に気にかけてくれるから……離れられない。

 壊されたせいで壊れて、ただ生き続ける事だけしか頭に無いのに、私だけには何処と無く人間らしさを見せるイッセーから……。

 

 

「ねぇイッセー、私も暇だから……ね?」

 

「暇だからって昼間っからやんのかよ。

お前も相当だな」

 

 

 離れたくない。

 殺してくれと懇願した相手に気付いたら依存してるバカな女……それが私の今。

 

 

「駄目?」

 

「……。チッ、わーったよ! 分かったからんな顔向けんじゃねーよ……と!」

 

 

 『色々』とした結果手にした資金で買った広くもないお家に引きこもり、する事が無く暇そうに天井を見ていたイッセーの太ももに手を起きながら密着した私に、イッセーは嫌そうな声を出しつつもその手を掴んでくれると、そのまま乱暴気味に……でも痛くはない程度の力加減で押し倒される。

 

 

「何時から俺は覚えたての猿になったんだろうか。

色を知ると碌でもないな」

 

「イッセーが二次成長に入った辺りから、見てると身体が熱くなって欲しいって思うようになってから、かな?」

 

 

 了承しちゃう自分に対して嫌そうな顔をするイッセーの首に腕を回しながら答える。

 まだお腹の中で昨日の分が残ってるけど、私の身体は熱くて堪らなくなっているので関係無い。

 

 

「まともな恋愛無しでお前と――「名前」あ?」

 

「名前で呼んでよ? お前って言われるのは嫌」

 

「…………。死にたがってた黒歌とこんな事するなんて、先に逝っちまった父さんと母さんは怒ってんだろーな」

 

「じゃあイッセーが好きって言ったら、イッセーの考えてる恋愛ってのになるの? じゃあ今から言うよ? 大好きよ……だから来て、イッセー」

 

「………。取って付けた様に言われるとガン萎えなんすけど」

 

 

 わざとらしい声で告白っぽく言ってあげたのに、凄い嫌そうな顔をするイッセーは解ってないんだね。

 生きたがりのイッセーに依存してる時点で、私は好きだと自覚してるのよ? 今更言うのも恥ずかしいから黙ってるけどね。

 

 

「もう! そんな顔してないでまずはキスしてよ?」

 

「へーへー……仰せのままに、猫のお嬢さん」

 

「んぅ……あは♪ イッセーの事好き、好きぃ……♪」

 

「げ、もうスイッチ入りやがった」

 

 

 破壊の力を持つ男に惹かれた少女・黒歌

 

 所属・なし

 備考・安察願望(キラーサイン)

 

 

 壊された事により壊れた男・一誠

 

 所属・なし

 備考・絶対殺しの破壊者(デストロイヤー)

 

 

 

 

 この黒歌という女と妙な縁で行動を共にしてから何年経ったか等は一々数えちゃ居ない。

 居ないのだが、この女には妹が一人居るらしく……これまた皮肉な事に悪魔の下僕をやっている。

 

 下僕故に玩具にされ、それから逃げた女の妹が下僕……。

 しかも妹は姉である黒歌の異常性を恐れて偽名まで使って人間に混じって生活しているなんて、皮肉通り越して腹抱えて笑ってしまうぜ。

 

 

「はぐれ悪魔を討伐しに行くらしい、そしてどうやらあの悪魔は眷属を増やしたらしい」

 

「増やした?」

 

「あぁ、まあ、増えたといっても一人だが……ふっ、此処から面白いせ黒歌?」

 

 

 やる事が無い。

 世間から抹消されている俺は普通の人と同じ生活は出来ないし、ましてや幼稚園中退が最終学歴なので学生も出来やしない。

 故に俺の目標はこの世に蔓延る全ての生物より『長生き』する事であり、偶々の縁で今は行動を共にしてる黒歌という猫娘の妹についてはものの次いでというか……ま、暇潰しで近況を探っている。

 

 

「面白い……?」

 

 

 紛いなりにも父さんと母さん以上に一緒に居る年月が多いからな。

 何年も何年も妹に対してヘタレ全開な姿を見てるとどうにかしてやりたいとは違うが、いい加減前に進めやとは思うわけで、例の妹が今居るこの街に潜伏し、ヘタレ乳女の代わりに探ってやってたのだが……クク、その過程で一つ笑える事が分かったんだなこれが。

 

 

「その新しいってのは……どうやら『赤龍帝』らしいんだわ」

 

「え?」

 

 

 キョトンとする黒歌に『赤龍帝』という言葉を聞かせると、今度は驚いた様に目を見開く。

 

 

「それって……え?」

 

「な、笑えるだろ? げげげげげ!」

 

 

 何時からか、無意識になると出てしまう変な笑い方で笑う俺に黒歌は『そんなバカな』って顔だ。

 まあ、当たり前だわな? そりゃあそうわな? だってよ……。

 

 

「なぁドライグ? お前……双子でも居たのか?」

 

『そんな訳無いだろ。解ってる癖に聞くなイッセー』

 

 

 赤龍帝が宿す龍――赤い龍(ウェルシュドラゴン)は俺の中に宿っているんだから。

 

 

『恐らく俺様の名前を語るだけの只のバカか、それとも精巧に偽装した似非だろう』

 

「お前が偽物って事もあるかもしれないがな……何せお前の事なぞ知らんし俺は」

 

『ふざけるな、お前は前に歴代の宿主の思念と邂逅しただろうが――ま、『喧しいんだよ蚊が!』と全部壊してくれたが』

 

「そうだったか? まあ、偽物だとは思っちゃ居ないから安心しろよドライグ」

 

 

 声だけで憤慨していると分かる声のドライグを半笑いで諌めながら、話を戻す。

 

 

「まあ、とにかくだ。

おかしいだろ? ドライグは俺の中に宿ってる……だが例のその新入りは赤龍帝と名乗ってる……」

 

「それって……あの……イッセーの事を壊した変な奴って事?」

 

「可能性は否定せん――と、いうか俺は確実にその線と思っている」

 

 

 例の自称赤龍帝とやらの存在について、嘗て俺の両親を殺して俺も殺しかけた男と同じ気配を感じると話す。

 

 

「試しにお前がソイツの前に姿を現してみるのが一番だな。

もしそれで『何故か』お前を知っていれば俺の予想通りになる」

「えー……何で私が」

 

「何で……簡単だ。お前が女だからだよ」

 

 

 

 俺は今でも覚えてる。

 もう随分前に原型残らずぶっ壊してやったあの男が両親を殺して、俺にトドメを刺そうとした時の言葉を。

 

 

『主人公は俺がなってハーレムしといてやるから、お前は死ね』

 

 

 クソみたいに醜悪なツラで、何の事だかわかりゃしねぇ事をほざきながら俺の首を切り落としやがった事は未だに忘れられん。

 まあ、何の因果かその後にどいう訳か俺は生きてて、その後にドライグと意思疏通を交わして強くなって。

 そのまま奴に復讐して全部終わらせてやったけどな。

 

 まあつまりだ……そういう奴は何故か俺の顔と名前を知ってて、尚且つ邪魔に思っていて、逆に女だと妙に態度が軟化するというのが定石なんだよ。

 

 もう10以上もそんな奴と出会して、その度に憑依がどうとか、何でその時点で黒歌とフラグがどうのとかほざいて最終的に殺しに来るのを返り討ちにしてブッ殺して来たんだ……間違いない。

 

 

「イヤよ。だってもしイッセーの言う通りだったら、また嫌な視線を向けられるし……」

 

「まあ、無駄に乳がデカいからな。

これまでの意味不明共はほぼお前のデカ乳ガン見してたし」

 

「それが嫌なの。

いくらイッセーと居ようとすると『ソイツは変態だ』とか自分が言うなよって思う様な事を言うし……。

スキルがコントロール出来る前の時は無理矢理連れてかれそうになったし……」

 

「あー……あったなそんなこと」

 

『珍しくイッセーがキレたアレか。

確かソイツは手足をちぎって目玉をくり貫いた後、獣の餌にして殺したんだったな』

 

 

 が、黒歌に囮になって貰おうにも、本人が本気で嫌そうな顔で拒否をする。

 何というか、会話にもあった通り……その意味不明共に共通する事の中に、どういう訳か会ったこともないのに『俺や黒歌を知っている』んだ。

 

 ぶっちゃけ気色悪いと思う黒歌の気持ちは俺もよーく分かる。

 酷いパターンに『俺が幸せにしてやるからそんな奴から離れろ!』と頭の中身が心配になるようなフザケタ台詞を宣って黒歌を拐おうとしたバカが居たしな。

 

 まあ、ドライグの言うとおり、ソイツの事は手足を引き千切って、目を潰して耳を切り落としてから山の熊共の餌にしてやったがな……げげげげ!

 

 

「顔も体型も悪くないからなお前は。

ま、中身を知ってるのは俺だけだが」

 

「あ、当たり前でしょう!?

私だってイッセーしか知らないもん!」

 

 

 俺の言葉に心外だと怒る黒歌は基本俺目線ながらだが、良い女だと思う。

 そして奴等は外見で判断でもしてる気があり、基本男は死ねとすら思ってる箇所がある。

 故に奴等にとっちゃ黒歌は上物で、近くに居る俺はゴミ屑であり殺す対象。

 

 まあ、実に欲に忠実で結構だが……残念ながら俺はそこまで甘くはない。

 というか二度とあんな思いをしたくないから、今まで力を付けてきた。

 ドライグ曰く『多分お前に勝てる奴は居ないんじゃね?』というレベルくらいまでな。

 

 

「それも知ってるよ。

ほら、お詫びに何かしてやるから機嫌直せって黒歌」

 

 

 俺の言い方に怒った黒歌のご機嫌を直す為、プイッと横を向いた黒歌の頭に手を乗せつつ何かしてやると言う。

 

 コイツの妹の様子を把握する為にこの街に訪れ、ボロボロのアパートで今は狭さを感じながらも一緒に住んでる。

 お陰て寝る時も高確率でひっつきながら寝るんだけど……気付いたら妙な関係を結んでしまったというか。

 いや別に別の女に気がある訳じゃないし、多分コイツじゃないと勃たねぇから良いんだけどさ。

 

 

「じゃあ……布団の上で寝て」

 

「あいよ」

 

 

 好きか嫌いかとなると……考えたことはない。

 何せこうなったのもいつの間にかというか、何をトチ狂ったのか、コイツから迫ってきたのを単純に受けただけだった。

 それ以降、味を占めたのか知らんけど毎日のようにせがんでくるもんで、俺も俺で欲があるから乗ってと繰り返してて。

 

 

「おい、髪がくすぐったい」

 

「ん……待って……ムズムズしてきた……から……!」

 

 

 気付いたらこうなってた。

 今だって、布団に寝ろと言われた時点で予想は付いてたが、仰向けになってた俺の下半身辺りに馬乗りになった黒歌が、艶かしい声なんざ出しながらもぞもぞと身体を揺すってる。

 

 

「えへ、イッセー好き……しゅきぃ……❤」

 

「もう百回は聞いたぜ、その台詞」

 

 

 生き続けるだけしか目的が無いが、コイツが俺に飽きるまではコイツに付き合ってやろう。

 身体を預けてきた黒歌を抱き締めながら……ボーッと思うのだった。




補足

ドライグ&デストロイ一誠。

つまり危険度が更に跳ね上がる。

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