色々なIF集   作:超人類DX

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只の続き。

トチ狂い期間中故に……


垢抜けたお友達は遠く思える

 神は何時だって不平等だ。

 元々思ってた事だったけど、今回の事で更に身に染みたよ。

 何なんだよアレ、マジふざけんなし……おかしいだろ、何で私が女子高生になった今でもこれだってのにアレはアレなんだよ。

 意味わかんねーよ、何であんな良い匂いなんだよ、マジ死ねよ。ドブ川に落ちてしまえ。

 

 

「うぇーい、学年首位キープ間違いなし! ヒーハー!」

 

「……………」

 

「ヒーハー!」

 

「………………」

 

「ひーはー……。で、そんなヒーハーの俺の部屋にわざわざ出向いて不幸オーラ撒き散らしてる智子は一体どうしたん?」

 

 

 神は不公平だ。

 それはもう分かった。

 中学時代の友達と久々に遊びに行ったら、その友達がビッチになっていたというショックをぶちこんで来たからそれは間違いない。

 だからこうして私は、自分の家の隣に昔から住んでる腐れ縁の能天気バカ野郎の部屋に上がり込み、この癒える気配の全く無い傷を愚痴で少しでも軽くしてやろうとしたのだが、愚痴ようと言葉にしようとするだけでショックが振り返してくるせいで、私は能天気バカ――つまり一誠の部屋のベッドにあった枕を目一杯締め付けて煎餅みたいに薄くしてやろうとしながら、ただただショックの絶望の大きさを態度で示してやる。

 

 だがしかし、何時までもコイツのしょうもない枕に八つ当たりした所で今度は虚しくなる訳で……。

 私のおかげ(ここ重要)で高校に受かり、私のおかげで近づく試験もパスできるとバカ騒ぎしつつも、私の様子に何か心配してそうな顔をして見てくる一誠に対して私は友達だと思ってた彼女の変貌について暴露してみた。

 

 

「ゆうちゃんがビッチになってた……」

 

「は?」

 

「だから、ゆうちゃんがクソ緩ビッチに――」

 

「あぁ、成瀬ちゃんね。俺もこの前偶然会ったけど、めっちゃ可愛くなってたな。素晴らしきボインだったし――てか酷いな智子、ビッチはねーだろ」

 

 

 うるさい、男も出来たって時点でビッチは確定事項――――は?

 

 

「ちょっと待った。今ビッチ化したゆうちゃんと既に会ったって言った?」

 

 

 今聞き捨てならない台詞が勉強道具を片付けてる一誠から飛び出したので、聞き間違いなのかもしれないと私は思わず持ってた一誠の枕を叶うことなら引き裂く準備をしながら聞いてみると……。

 

 

「おう会ったっていうか、その後お前に言ったぞ俺? 聞いてなかったのか?」

 

 

 能天気バカ一誠は『それがなんですか?』ってばかりのすっとぼけた顔してゆうちゃんと既に会ってましたと言いやがった。

 

 

「聞いてないし! 絶対に聞いてないよ私!」

 

 

 折角ゆうちゃんがビッチになった事を聞かせてコイツのメンタルをぶち壊してやろうと思ったのに、効いてないどころか会ってました? 有罪確定じゃないかとばかりに、何故か私の中でふつふつと沸き上がる妙な怒りをそのまま一誠にぶつける。

 本人は会ったその日に私に教えたつもりだったとほざいてるが、私が聞いてない時点で……。

 

 

『ねぇ、もこっち……。

そ、その、ひょ、兵藤くんは元気? 多分聞いたと思うけど、この前偶然兵藤くんと会って――』

 

『…………。(もう惨めだ、帰りたい。帰って一誠に八つ当たりしたい)』

 

 

 

 

 

 

「いや、ゆうちゃんが言ってたかもしれない……」

 

「だろ?」

 

「でも私は聞いてなかったんだから有罪だ!」

 

「何に対しての罪なんだよ……。

それによ、ただ会っただけの話をそこまで掘り下げて話すもんでも無いだろ」

 

「………。それは、確かに……」

 

 

 言われてみれば確かにそうかも。

 いやでもしかし――

 

 

「それによ、俺目線だとナリは変わってても中身は変わってない様に見えたしね。

相変わらず吃るというか……まるで俺がカツアゲしてる光景になっちゃうというか……」

 

「ぬ……」

 

「おかげ様で中学の陰口がカツアゲ君だぜ? いや別にやってねーから言われようが良いんだけどさ……」

 

 

 そう言って苦笑いする一誠に私は何故か沸いていた怒りが一瞬にして引っ込んだ。

 確かに言われてみれば一誠の言う通り、ゆうちゃんは何故かこのバカに対してかなり吃りながら受け答えをする変な性質があった。

 というか、酷い時は見てられなくなるレベルでテンパる事もあった。

 

 思い出してみると今回久々に会った時も、一瞬出てきた一誠の話題の際、見た目は劇的ビフォーアフターしたゆうちゃんは変わらずに本人が居ないのにも拘わらずテンパってた気がした。

 

 

「前々から思ってたけど、俺成瀬ちゃんに何かしたっけか?」

 

「隠しきれない変態を察知して自己防衛本能が働いてた……とか?」

 

「え、マジ? …………ま、まぁ、確かに体育の時の成瀬ちゃんの揺れるボインをガン見してた時もあったけど……マジかー……バレてたのかー」

 

 

 いや違う。

 アレはそういうのじゃない。

 私だって断定出来るほど自信がある訳じゃないが、ゆうちゃんは多分一誠を嫌ってるって感じは無かった。

 アレは寧ろギャルゲー主人公とフラグが立つ――

 

 

「だから話し掛けると顔を逸らしてたのかー……。

まさに今明かされる衝撃の事実だぜ……」

 

「………………。いや、無いな」

 

 

 と、思ったけどそれは無いだろう。

 ていうかだったら男作ってビッチ化なんてしないだろうし、アレは多分一誠のバカさにドン引きしてたに違いない。

 寧ろフラグを叩き折るタイプのコイツが上手く無自覚にしても構築させるとかありえないし……うん。

 

 

「というか、人のベッドの上を占領すんのは智子だから良いが、枕を平べったくしようとする地味な嫌がらせ工作はやめろよ。

それ、低反発じゃねー安物なんだから」

 

「ふん、煎餅になった枕で寝て首でも痛めてしまえ」

 

 

 だって一誠って只のバカだもん。

 

 

 

 中学時代の共通の知り合いで盛り上がった(?)二人は、近々行われる試験対策もほぼ終わり、暇を持て余したので取り敢えず今後の事についての話し合いをしていた。

 内容は勿論、智子の唯一の女友達の成瀬優が大成功した高校生デビューの後乗り方法についてだ。

 

 

「思うんだけど、ネットの意見は宛にならない気がするので、今回は互いの意見を纏めてみようと思うんだ。

例えば智子の場合、女子もそうだが男子に対する免疫がミジンコ以下なのを少しずつ対話トレーニングして克服するとか」

 

「例えば? 言っておくけど私、男子と普通に話せるし。

今日だってコンビニのイケメン店員と会話して――」

 

「それ、向こうは業務だからな?

それにお前の事だから、そのイケメンとやら相手にもテンパったんだろ?」

 

「ぐ……」

 

 

 一誠の母親が意味深な笑顔で『お邪魔虫は退散ね♪』と智子の母親と買い物に出掛けてしまい、父も智子の父と夕方なのに打ちっぱなしに出てしまい、只今兵藤家には一誠と智子の二人きりだ。

 そんな空間故に、思春期に入った幼馴染み同士の独特な緊張を互いにしているのか…………と問われればそんな事は微塵も無く、互いに安物の部屋着でダラダラとしながらの会話を見てると実に残念な気持ちを抱かせる。

 

 

「智子は俺とこうして普通に話せるだろ? まあ、智貴は弟だからノーカンとしても、男子に対してまるで話が出来ないという訳じゃないのは昔から実証済みだ」

 

「男子って……一誠と他の男子は色々と気持ち的に違うんだけど。

ていうか、お前に男を感じた事がまるで無いし」

 

「そりゃお互い様だこのまな板。

で、だ……俺と智貴はクリアーという事にして、まずは担任と会話出来る様にステップアップを目指し、徐々に慣らしてゆくゆくはクラスの男子とだね……」

 

「ちょ、ちょっと待って! いきなりお前と智貴からの難易度が跳ね上がり過ぎて意味わかんない!」

 

 

 腐れ縁としての付き合い歴約13年以上。

 母親同士が仲が良くて、スライド式に智貴と共に幼馴染み化した智子の為に、息をするかの如く世話を焼く一誠の提案に、一誠が居ながら何処で道を間違えてしまったのか、チャームポイントの隈が不摂生な生活で更にエグい事になり、まるでゾンビみたいな容貌へとなってしまわれた智子は、急に吐きそうな顔をしながら首が取れるんじゃなかろうかなレベルで横に振りまくる。

 

 

「もっとその間に何かを挟めよ! もっと私に気を使え!」

 

「えぇ……? この上なく気を使ってるつもり―――っ!?」

 

 

 傲慢と我が儘が服着た様な言い方に一誠は苛立つ事はせずも、困ったような顔をした……その時だった。

 

 

「え、あれ……一誠?」

 

「………………」

 

 

 突然、それまで緩い顔をしていた一誠の表情がこれまでに無く真剣なものへと変化し、どういう訳か窓の外を睨む様にして見据える。

 そのあまりの変化に流石の智子も内心『え、ちょっと言い過ぎちゃった?』と心配になるが、一誠は決して無視しない筈の智子の声にも反応せず、ただただ薄暗くなってきた窓の外を睨んでいた。

 

 

「お、おい一誠……?

似合わない顔したって此処じゃ意味なんて無いと思われますけど……?」

 

「…………………」

 

「ね、ねぇってば……?」

 

「……………………」

 

「おーい……?」

 

「……………………」

 

「わ、わかったよ。無理なんて言わずにちょっとはチャレンジしても良いよ、お前に免じてな……ははははー」

 

「…………………………………………」

 

 

 無反応だった。

 流石に怒ってしまったのかと思った智子の、微妙にオロオロとした態度にも反応せず、ただただそこに何がある訳でもないのに外を凝視している一誠は……。

 

 

「…………チッ、またか。最近マジ鬱陶しいな」

 

「うぇ!?」

 

 

 聞いたこともない様な低い声で悪態を付いた。

 タイミングといい、正に今自分が言われたんだと思った智子は、今まで何を言ってもヘラヘラ笑いながら『しょうがねーなお前は』と聞いてくれた一誠の態度に、優が垢抜けて彼氏までゲットしてましたという事実よりも大きなショックを受けてしまい、思わずその場で硬直してしまい――

 

 

「……。ま、良いか――――っと、悪い悪い話の途中で……………えぇ?」

 

「ぐぅぇ……! うぇぇ……おぇ……!」

 

 

 自分でも意味も分からずボロボロ泣き出した。

 それはもう、窓から視線を智子に戻して話を再開させようとした一誠がギョッとするレベルのホラー顔で。

 

 

「え、え? え!? お、おいおいどうした智子?」

 

「おぇ……うげぇ……!」

 

 

 先に断っておくと、一誠は決して智子に対して悪態を付いた訳じゃなく、最近『頻繁』に外から感じる様になった『昔から感じる人じゃない何か』の気配に対して、鬱陶しさから思わず舌打ちをしたのだ。

 だが智子からすれば、そんな存在なんて知りもしないし状況が状況だったので自分が舌打ちされたと思ってしまう訳で……。

 

 

「え、そ、そんなに先生は難易度高かったのか? じゃ、じゃあやっぱり間に何か挟む?」

 

「おぅおぅぅ……!」

 

「お、おい……まさか吐きそうなのか!?」

 

 

 既にリバース手前の形相でボロボロ泣いてる智子に慌てて近づいて、その全然成長せん小さな背中をスリスリしながら部屋から連れ出すのだった。

 

 

「……。年を取ると涙腺が緩くなるのは本当だった……」

 

「いやお前まだ16手前じゃねーか」

 

「煩い、お前のせいだ」

 

「おう……こればかりはマジにごめん」

 

 

 数十分後、トイレから出てきて歯磨きさせてから部屋にまた戻った一誠は、泣いて目が真っ赤で某G-ウィルス生物兵器みたいな事になった智子に睨まれて平謝りしていた。

 

 まさか智子に『人じゃない何かの気配が感じて思わず悪態を付いた』とは説明できず、アレはふと思い出しイラつきをしてしまったと、相当な労力を消費しながら説明し、何とか智子に対してじゃない事を理解して貰った訳だが、代わりに悪態を付かれまくっていた。

 

 

「まあ、突拍子の無い所は昔から知ってるし……智子様と呼べば許してやるよ。私は心が非常に広いからな」

 

「ははー智子さまー!」

 

 

 だがそこはそれなりの付き合いの長さ。

 人として色々と辞めてしまってる面を知ってて軽く慣れてしまっている智子は、取り敢えず一誠を一時的に下僕扱いする事で憂さ晴らしして許す事にし、取り敢えず一誠のベッドに偉そうに腰掛けて女王様気分で一誠を足下に膝付かせながら、本題に戻る事にした。

 

 

「男と話すよりも前に良い匂いの出す方法を教えろ。

まずはフェロモンを自在に操れる様になってからだ」

 

「はぁ……」

 

 

 垢抜けた優の女子スペックの高さに対して危機感を覚えた智子の偉そうな物言いに一誠はわざわざ膝付いたまま気の抜けた声で返事をする。

 それがちょっと気に食わなかったのか、少々睨みつつも智子はこの無神経の腐れ縁に対して問い掛けた。

 

 

「ぶっちゃけ今、私って良い匂いをしてると思う?」

 

 

 女子特有のあの甘美な匂いの追求……の、前に取り敢えず現状の自分は他人からどう思われてるのかを知る為の質問に一誠はふむと膝付き体勢を解除し、立ち上がりながらどっかで聞いた事がある記憶をそのまま智子に語り始める。

 

 

「まずひとつは女性ホルモンの影響らしい。

何でも、男と比べて女の子は臭いの元である皮脂の酸化を抑える作用があるってのは何か聞いたことぐらいあるだろ?」

 

「うん」

 

 

 何気に元の態度に戻ってる一誠だが、智子は別段気にしてる様子も無かったので、引き続きそのままの態度で話す。

 

 

「美容品とシャンプーの影響もあるだろうが、エストロゲンっていうホルモンが生理の終わりから排卵に掛けて多く分泌されてるのも大きい……らしい」

 

「へー、という事はゆうちゃんはそういう日だったから良い匂いがしたんだ」

 

「いやまあ、只のどっかの受け売りでしかねーから一概には言えないと思うけどな?」

 

 

 とまあ、何時何処で知ったのかさえ自分でも覚えてない知識を語った一誠だったが、智子としては肝心な事が聞けてなかった。

 

 

「大体わかった。で? 私は良い匂いがするのか? 正直周期はこの前過ぎてしまったけ……ど!?」

 

「智子は……うーん……」

 

 

 が、正直この無神経男に聞くのは間違いだったと智子は後悔した。

 何せ聞いた智子に対して一誠はひょいと軽々しく智子を抱っこの要領で持ち上げると、そのままスンスンと抱き締めてます的な体勢で匂いをかぎだしたのだ。

 流石にこれは許容範囲外だった智子は、ふざけるなとばかりにもがくが、悲しいかな一誠との体格差も去ることながら、スペックの差が蟻と恐竜以上にも離れてる為、いくらヘッドバッドを噛まそうが一誠は平然とくんかくんかとしてからやっと智子を下ろすと……。

 

 

「うん……普通だな!」

 

 

 無駄に爽やかな顔して、普通でしたと宣った。

 

 

「死ね!!」

 

 

 そんなあんまりな回答に激怒して脛を蹴っ飛ばした智子は恐らく悪くない。

 遠慮という概念が消えてるとはいえ、これはあまりにもあんまりなのだから……。

 

 

「お前マジで最低だな! 云うに事欠いて普通ってどういう事だコノヤロー!」

 

「いやだってそれしか答えようねーし。

別に臭い訳じゃないとだけは自信もって答えられるけど?」

 

「この無神経が! だからお前はモテないんだよ!」

 

「聞いたら答えたのに、酷い言われ様だなオイ」

 

 

 解せんと本気で思った顔の一誠に吠える智子。

 今日も二人は気色悪いレベルで仲良しだった。

 

 

終わり

 

 

オマケ

学校での二人……その2

 

 

 とあるクラスメートは思う。

 

 

「おーい智子~ 昨日くれた分だぜ」

 

「…………」

 

「何か言えし。

まあ良いや、こっち座るぞ」

 

「ぬへ!? ひ、ひとりで食べろし……!!」

 

「良いだろ別に。てか今更取り繕っても、リカバリーはもう無理だぜ? ほら、もうクラスの中でもグループ別けが完了しちゃってる感じだし……」

 

「ぐぬぬ……!」

 

「つー訳で一人で食うのも侘しいし、一緒に頼むぜー」

 

「チッ……!」

 

「へいセンキュー。

あ、ちなみに今日は俺作だから感想よろしく」

 

 

『…………』

 

 

 何だあの二人は……と。

 

 

終わり

 

 




補足

まあ、イッセーなんで基本セクハラじみた真似もするだろう……相手も相手だし。


その2
元ネタでは一方的に妬んでるが、此処でのお話では程度は違えど『互いに妬んでる』という……。



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