色々なIF集   作:超人類DX

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続きです。

ドイヒーです


普通に最低な男

 

 

 昔からそうなんだけど、俺は割りと短気というか、カッとなると後先考えずにやらかしてしまうことが多々あった。

 

 イッセーとしての子供の頃、自分が少々『まともじゃない』ということを自覚してからは特にそうだった。

 

 もしあのままリアス部長に拾われる事も無く、仲間と出会うことが無いまま生きていたとするなら、きっと俺はそこら辺のチンピラ同然の男になっていたのだと思うと、部長達との出会いはまさにイッセーとしての人生の転換期だったのだと思う。

 

 まあ、それでも部長や仲間達を侮辱するような真似をされたら頭に来てしまって、ついソイツを死ぬまでぶん殴ってしまうこともあるにはあったし、よく怒られてばかりだったのだけどさ……。

 

 

 それなのに、俺は部長や仲間達を目の前で失ってしまった。

 本当につくづく大馬鹿野郎だよ俺は……。

 

 

 

 

 魂を継承したことで、ハジメが『何者』であるかを悟った白崎香織と八重樫雫は、何故ハジメが無気力であるかも同時に理解した。

 

 

「つまり、キミがあの山で理性ゼロで暴れ倒してた理由については、天才的な才能を持つ闇魔法使いとやらに意思を奪い取られてたから――という訳だな?」

 

「うむ、旦那様に激しく張り倒して貰ったお陰で洗脳は一応解けたようじゃし、自信を持って今の妾は正気であると言える」

 

「………………」

 

「? どうかしたのか?」

 

「いや……別に深い意味は全く無いんだが、キミの声が嫌に懐かしいなぁと……」

 

「??? 妾の声とな? お主と旦那様とは以前に会った記憶は無い筈じゃが、どこかで会ったことが?」

 

「いや初対面だよ」

 

 

 常人が聞けばとてもではないが信じられない話だし、恐らく継承をしなければ香織と雫も信じられない事ではある。

 しかし異世界に召喚されるという体験や、明らかに召喚された他のクラスメートとはかけ離れたハジメの戦闘力――――何より元からハジメという男子は何かを隠しているという予感を持っていたことが、二人に確証を持たせた。

 

 

「おい、声に惑わされるな。

確かにこの雌ガキ竜の声の質はリアスに近いが、本人でない」

 

「……わかってるよドライグ」

 

 

 元の世界に居た時から、実はその身に龍と異質な力を宿し……なによりもハジメとして生きる以前の男性の記憶を持つ。

 その記憶に根付くハジメ――否、イッセーという青年の記憶に深く刻まれた仲間達かは託された意思を継承したからこそ、香織と雫はハジメという青年を理解し、その上で彼の傍に居ることを望んだのであった。

 

 

 

(このティオって竜人族の人、確かにハジメ君の昔の記憶にしょっちゅう出てくるリアスって悔しいくらいに美人さんの声に似てる……)

 

(出てくる頻度からしてきっとハジメ君は彼女を……)

 

 

 そんな香織と雫はといえば、ここ最近予期せぬ再会を果たしてしまった同じく元の世界から共に子の世界に召喚された社会科教師とクラスメート数人の記憶をシェイクして消した後、何時ものように宛の無い放浪の――というよりはハジメとの幸せのほほんイチャラブ生活が出来そうな場所を探す旅をしていたわけだが、その道中出会した、明らかに正気じゃない竜に襲われた。

 

 オルクスの最下層までハジメ共に堕ち、彼の異次元の戦闘力を知り、それに追い付かんと死ぬ寸前のサバイバル生活や継承により、二人もまた異次元の戦闘力へと到達した事もあり、謎に凶暴化していた竜を一体相手取るなど造作もなかったのだが、此処に来て『最近オレを使わない…』と不満タラタラだったドライグが、一応種族的にも近い相手ということもありつつ、ほぼ八つ当たり同然にハジメの中から飛び出してきたかと思えば、途中で明らかに正気に戻っていたであろう竜を相手に引くほど無双したのだ。

 これには迎撃しようとしていたハジメと香織と雫とユエも唖然としてしまい、『や、やめてたも~!』と泣き叫んでもガン無視でぶちのめしていた龍化状態のドライグを見るしか出来なかった。

 

 

「あ、ごめんごめん、話を逸らしちゃったな。

えーと、なんだっけ? その闇魔法使いとやらに洗脳されてる最中にキミは聞いたんだっけか?」

 

「うむ、黒髪黒目の男で『俺が勇者なんだ』とブツクサ言っておったその男が、妾の他に闇魔法で操った魔物を使って町を襲おうとしておるのじゃ」

 

「町? てーと……」

 

「さっきお前らが記憶をシェイクした連中の居る町の事じゃないか? 此処からだとあの町が一番近いしな」

 

 

 自らをティオ・クラルスと名乗る竜から人へと変わった少女からもたらされる情報に対し、同じくティオよりも更に強大な赤い龍の姿となって無双しまくり、なんと当たり前の顔でティオと同じく人の姿へと渋いおっさん声の青年が、つい先日立ちよった町ではないかと話す。

 

 

「え、それじゃあ畑山先生達が危険かもってこと?」

 

「話が本当ならそうなりそうね……」

 

「……」

 

 

 あまりにもしれーっと、それも皮肉にも姿が過去のハジメ――つまりイッセーそのものの姿になっているドライグに突っ込みを入れる事をつい忘れて、先日記憶をシェイクして人達に危険が迫っている事を把握するハジメ達。

 とはいえ、割りと全力で記憶をシェイクしてしまった事もあるし、何よりハジメが他人のために動く事はしない性格なのもよく知っているので、誰も『助けに行こう』とは言えなかった。

 

 

「知ってしまった以上、妾は奴の計画を阻止したいと思っておる」

 

「ふーん……」

 

「「「………」」」

 

 

 案の定ティオの言葉に対してどうでも良さげな反応をしているハジメを、香織と雫とユエは黙って見つめてる中、腕を組ながら同じく話を聞いていたイッセーの姿になっているドライグが口を開く。

 

 

「どうするかは貴様の勝手だが、その町に居る連中に対してオレ達の事は一切公言するな」

 

「? 何故ですか? というか一緒に奴の計画の阻止をしてくださらないのですか……?」

 

 

 基本的に今の腑抜けたハジメに対して思うところはあるものの、生き方を否定したりはしないし、ハジメの意思を尊重しているドライグがハジメ達の存在を口にするなと言うとティオは不思議そうに首を傾げる。

 

 

「……私達にも色々と事情が」

 

「ええ、とても残念だけど……」

 

 

 何度も強引に記憶シェイクをしてしまうと、後遺症のようなものが残ってしまうし、一応相手は同じ世界から召喚された者同士という間柄―――そしてやはりハジメ自身のやる気が全く無い事を考えれば同行を願われても断るしかないと少し言いにくそうに話していれば、それまでじーっと――これでもかとじーっとティオの顔と時おり胸元をチラチラ見ていたハジメが口を開く。

 

 

「ドライグにボコボコにされたダメージが残ってる状態のまま行っても、また洗脳されるんじゃないのか?」

 

 

 そのズバリな指摘にティオはうっと言葉を詰まらせる。

 

 

「そ、それを言われるとそうじゃが、しかし見過ごす訳にもいかないのじゃ」

 

「へー?」

 

「だ、だから出来ればお主達と旦那様――えふんえふん! ドライグ殿にも加勢を頼みたいなー……なんて」

 

 

 今さっきまでドライグにボッコボコにされていたダメージが普通に残っているティオも流石にこのまま一人で行っても阻止どころかまた洗脳される事はわかっているが、それでも己の誇りもあってか退くわけには行かないと話すと、実はハジメの目線の動きに気づいていたりする香織と雫とユエの三人からジト目で見られていたハジメが意外にもこう言い出したのだ。

 

 

「オーケー、わかった。キミに加勢するぞ」

 

 

 

 妙に爽やかな笑みと共に、それまで目の前で誰が困ろうがスルーしていた男が手を貸すと。

 

 

 

「……え?」

 

「なに……? おいイッセー――いやハジメ、お前どういうつもり―――」

 

「「「はぁぁぁぁっ!?!?!?」」」

 

 

 

 当然、この言葉に目を丸くしたのはティオとドライグだが、それ以上に香織と雫とユエの三人は納得できませんとばかりの反応だった。

 

 

 

「ちょ、ちょっとまってよハジメ君!? なんで!?」

 

「そ、そうよ! この前の兎人族の時は歯牙にもかけなかったのに!?」

「意味がわからない。納得の行く説明をしてハジメ?」

 

 

 自分達にではなく、今会ったばかりのティオに対して妙に爽やかな態度であることも含めた全てに納得できない三人がこれでもかとハジメに詰め寄るのも無理はない。

 

 しかしハジメはといえば、これまた妙にキリッとした顔をしつつ三人にいうのだ。

 

 

「だって困ってるんだろう? だったら助けなきゃ。

助け合いって素敵やん?」

 

「「「「………」」」」

 

 

 最早嘘丸出しなダブルスタンダードにも程がある言動に、ティオ以外の面々は当然なにか裏があると感じ取っていると、ハジメは困惑したままのティオに向かって、腹が立つくらい無意味に爽やかな笑顔を浮かべながら地面から拾った小石を錬成して簡易的な紙切れとペンを作ると、サラサラと走り書きで何かを書いてからその紙切れを渡す。

 

 

「取り敢えずさ、今書いたそれをやってくれるなら手助けするって条件でどうだ?」

 

「は、はぁ……」

 

 

 ほぼ初対面のティオですら今のハジメから向けられる無意味に爽やかな笑みに嘘臭さを感じつつも、渡された紙切れに書かれたこの世界の文字を読んでみる。

 

 

「………なんじゃこれは???」

 

「どれどれ」

 

 

 一体何が書かれているのか悔しげにティオを睨んでいる香織達の方からは見えないのだが、どうやら意味がわからずに困惑している様子であり、気になったドライグがティオの後ろからひょいと顔を近づかせてその紙切れの文字を読んでみる。

 

 

「お前はバカなのな? いや大バカだ……引くぞこれは」

 

 

 読み終えたドライグの表情はあきれつつも引いており、そのリアクションだけでろくでもない事が書かれているのだけは香織達も理解した。

 しかしティオからすれば理由も状況もよくわからいからこそ、逆に『え、これだけで良いの?』と思ってしまう程度の条件がと書かれていたらしく……。

 

 

「ではこのままの通りに言うぞ? んっん――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――お願い、私の為に頑張ってイッセー♪」

 

 

 

 

 それまでのティオの喋り方とは明らかに声のトーンから何から違うそれが放たれたのだった。

 

 

 

 そして……。

 

 

「よっしゃあ! 久々に漲って来たぜリアス部長ォ!!!」

 

 

 

 基本普通に単純な男の精神は期間限定で漲りまくったのだという。

 

 

「「「………………」」」

 

「あの、すまん……あとでひっぱいて必ず謝らせるから」

 

 

 ひゃっほー! と、全身から世界全土を揺るがすパワーを迸らせているハジメを前に本気で泣きそうになっている三人の娘さんに対し、ほぼ父親の代わりでもあったドライグが本気で謝ったのだという。

 

 

「声ってどうやったら変えられるのかな? できればアーシアさんとレイヴェルさんの声に切り替えられたりとか……」

 

「私も思ったわ……」

 

「ハジメのばか……」

 

「本当にすまん」

 

 

 多分、過去の仲間達が聞いても全力で怒ってくるだろう展開により、謎の闇魔法使いはとても可哀想な事になるのであった。

 

 

「うー……!」

 

「く、声はどうにもならないとしても、この大きさは反則だわ……」

 

「割りとある方だと思ってたのに……」

 

「な、なんじゃ? だ、旦那様? さっきから彼女達からの視線が怖いのじゃ」

 

「この件に関してはあのアホが悪いから気にするな。

それとさっきからなんだ旦那様とは?」

 

「え? あ、い、いえ……妾の尊厳を旦那様にまるごと踏み潰されてしまったのと、屈辱以上に気持ちよかったので、これはもう旦那様と一生を添い遂げなければと思いまして……」

 

「お前のようなガキを娶る趣味なぞオレには無いんだが……」

「だ、旦那様からすれば妾は木っ端小娘竜かもしれませぬが、ちゃんと子は産めますし……。

なによりあの赤く、逞しい竜としてのお姿といいその聞いているだけで孕みそうなお声といい、妾はもう旦那様無しでは生きて行けなくなってしまいました……! ですからどうか妾を!」

 

「……」

 

 

終わり

 

 




補足

部長さんの声にそっくりという理由だけで掌返しする男にぐぬぬさせられる女の子達なのであった。
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