……あれ、続き?
ウルの町での騒動を上手いこと掻い潜り、今日も今日とてニート生活が出来そうな安住の地を求めて宛も何も無い旅的なものを続ける元イッセーこと南雲ハジメ――と、色々あってその旅に付いてくるクラスメート&吸血鬼少女は、新たにこの旅に同行することになった竜人族の娘からのリクエストにより、基本的にハジメに宿る龍の意思ことドライグを常時『分離』させるようになった。
「頼むよドライグ。
なんやかんや頭数が増えてしまったのもそうだけど、どういう訳か女しか居ないしよ……」
「昔のお前なら無駄におおはしゃぎしていたではないか。
それに昔のお前の姿に化けるのは……」
「それは構わないよ。
どこの馬の骨ともわからん奴だったらブチ殺してやったかもだけど、他ならぬドライグだからな」
人から竜へと変化する種族とは似て非なる、正真正銘の龍であるドライグが人へと化ける際はかつてのイッセーの姿となる。
瞳の色や声質等の差異はあれど、青年期の頃のイッセーと酷似している姿へと変化するドライグ自身は引き続きハジメの神器として行動することを望むのだが、ハジメがどうしてもと頼むのもあってか、結局は渋々ながら分離して行動することに了承をする。
「約束はしたんだろ? 彼女を最強のドラゴンにするって」
「一言でも弱音を吐いたその瞬間にでも喰い殺してやるつもりだがな」
こうして、本来は先にフューレンの街にてとある人物の捜索をする筈なのが、この時空軸ではそもそもフューレンの街に近づきすらしていないハジメ達は、今頃とある少年が餓死しかけていることにすら気付くこと無いまま宛の無い放浪を続けるのであった。
「次はどこに行こうかハジメ君?」
「うーん……なるべくデカい街とかは避けた方が良いにしても、どこ行くか」
「そうだわ、ここは敢えてク○ピカ法則に乗っ取ってとにかく左側に行ってみるのはどうかしら?」
「HUNT○R×HU○TERのネタなんて久々に聞いたが……それで行くか?」
「のう、特に目的の場所を目指しているわけではないのであれば、是非妾の現在住む隠れ里に招待したいのじゃが……」
「って、ティオが言ってるけどどうするドライグ?」
「オレは別に何処でも構わんが……何となくコイツの意見に乗る気になれんぞ」
世界の事情に関心なぞ向けずに……。
常に陰鬱そうな目をしたクラスメート。
その雰囲気のせいなのか、少し乱暴な他のクラスメート達からいじめの標的にされていたクラスメート。
自分を含めて彼がどういう状況に置かれていたのかをある程度は知っていた。
だけど当時の自分はそんな彼を見てみぬフリをしていた。
それは異世界へと召喚された現在でも変えられなかった……ひとつの後悔。
彼がオルクスの迷宮にて『死んでしまった』事により、永遠にやり直すことも出来ない後悔の筈だったのだ。
『そ、そんな事は無いよ! 僕はただあまり目立ちたくないだけで……あははは――――――――なんて喋り方の方がキミ達的にはしっくり来るか?』
死んでしまってなんていなかった。
いや、それどころか彼はそれまでの『皮』を脱ぎ捨てていたばかりか、これまでの全てが『ただの茶番劇』だと云わんばかりに、異質な雰囲気を纏っていた。
苛められていたのもわざと
気弱な態度や言動もわざと
オルクスの迷宮で堕ちたのもわざと
全てが茶番であり、全てが『死んだ事にしたほうが都合が良い』という理由によるブラフだった。
『白崎と八重樫――っと、わかったわかった、ええと香織と雫までわざわざ俺を追って自分からわざと落ちてきたのだけは正直予定外ではあったし、こんな形でキミ等やそこの社会の先生に生きてるのがバレてしまったのはめんどうだぜまったく』
彼の素は思ってたより怠惰で、思ってたよりも口が悪かった。
誰も彼が彼ではなく、彼女達の死に絶望していたというのに、その彼女達はどう見ても『己の意思』で彼の傍に居る。
なんならまるで元から気安い仲だったといわんばかりの空気すら出してるし、なぞの金髪美少女までもが彼を慕っている。
『バレてしまったからには仕方ない。
今からキミ達の記憶をシェイクして俺達とここで会った事に関する全部を忘れて貰おうか』
そんな彼は、自分達の痕跡を消そうと獰猛に笑う。
あの大人しい、気弱な顔をしていた彼とは思えないような。
そして何より彼は―――
『いやー、久々のリアス部長ボイスでの応援のおかげでつい張り切ってしまったぞ! がっはっはっはっ!』
町ひとつを容易に壊せるだろう軍勢を相手にたった一人で立ち向かい、まるで遊園地に来てはしゃぐ子供のように笑いながら殲滅したのだ。
まるで、自分達の事は押し並べて平等に何時でも踏み潰せたのだぞと云わんばかりに―――
それが他の仲間達は忘れさせられても、自分だけは覚えている園部優花の記憶。
『あ、ごめん。
あんまおっぱい足りてない子の言うことは基本ガン無視するんで』
『いやー……見るだけでわかるぞ。
あの四人と比べるまでもねぇわ』
『心配すんな、昔のまな板後輩とひんぬー先輩よりはあるとは思うぜ?』
自分の胸を鼻で笑って『足りない』と言いやがったことを必ず後悔させてやるという『覚悟』と共に継承した事で彼の立つ
まるで初めから南雲ハジメ達なんて存在してなかったとばかりに普段の生活が緩やかに流れるウルの町。
どういう訳かクラスメートだった清水が魔物の軍勢を使って愛ちゃん先生こと畑山愛子を殺そうとしていたという事だけは全員認識しているのだが、誰も彼もそれを止めたのがハジメであることだけは誰も覚えては無い。
それはハジメや同じく死んだとされていた白崎香織と八重樫雫等が、自分達の記憶をシェイクして消去したからなのだが、その事すら誰も覚えは居ない。
ただひとり、園部優花を除いて。
「………」
そんな優花は、自分だけがハジメ達に関する全てをしっかり覚えている事を踏まえつつ、その内自分をペチャパイ呼ばわりしたことを全力で謝らせる為に、クラスの仲間達や先生には内緒の特訓をしていた。
「
『ええ、少しばかりセオリーからは外れているけれど、今のアナタには白音さんが持っていた『力』を神器という形で持っているわ』
『加えてユウカさんにはソーナ先輩の魔力が扱えるようになっている筈です』
ハジメに記憶を消される寸前に自身の意識に宿った二つの魂。
その二つの魂により記憶を消されずに守られた優花は、ハジメの過去に大層驚かされた。
イッセーという名の青年の記憶に。
「確かに最近妙に魔力を介して水を簡単に操れるなぁとは思ったけど……」
『私のかつての魔力性質がまさに水属性でしたからね。
もっとも、鍛え込めば私の姉のように『凍結』も可能だけど』
異質なまでの強さがそもそも召喚される前からの自前であったことにも驚いたが、なによりイッセーとしての頃の彼の女性遍歴こ多さになんとなくムカついたのは記憶に新しい。
もっとも、本人はイッセーの頃からもそうなのだが、異様なまでに自己評価がかなりひくいせいか、そういった関係となる女性は居なかったわけだが……。
「ステータスプレートを確認してみたら、魔力と力の数値が引く程上がってたのはそのせいだったのね」
『私は元々リアス部長の戦車でしたからね。しかしまさか私が神器として人の意識に入るとは思いませんでしたよ』
『イッセーくん――いいえ、今はハジメ君だったわねわ。
彼の傍に勝手に居座っているカオリさんとシズクさんにはそれぞれ『居る』みたいね』
『ええ……特にあのカオリさんでしたっけ? あの人からあの焼き鳥アホ女の気配がします』
「…………」
そんなこんなで、まな板じゃないのにまな板呼ばわりした事への悔しさから、リアルでまな板な二人の少女に選ばれてしまった優花は、二人の意識を宿した事で手にした力をモノにする為の特訓を暇さえあればやっているのだが……。
「ある程度はわかったけど、白音の力を使おうとすると何で猫耳と尻尾が生えてくるのよ……?」
『まあ、元は猫妖怪的な種族でしたし?』
「………」
神器的な感覚で宿した白音の力を解放しようとすると、何故か頭部辺りに猫のような白い耳と、お尻の辺りに猫のような白い尾が出てくるようになってしまった優花は、ぴょこぴょこと出てきた耳と尻尾を揺らしながらしょっぱい気分になる。
「私のキャラじゃないんだけどなぁ……」
『大丈夫ですよ。
先輩は猫耳好きですから』
『伊達でも良いから眼鏡をかけなさい。
猫耳に眼鏡になれば最強よ。間違いなく押し倒してくるわ』
「……」
確かにこの状態になると自分でも引く程腕力が上がるので、あまり文句は言えない。
言えないのだが、果たしてこの状態の自分と再会した際にハジメはどんなリアクションをするかと思うと、さっきから猫耳と眼鏡フェチだからと連呼する二人の言葉なんて信じられるわけもない。
「いや、私別にアイツにそんな感情無いんだけど……」
『『………』』
「な、なによその無言は?」
『いえ、昔の私達みたいなことを言っているわー……と』
『ストレートに言うと負けな気がしてたあの頃の自分を張り倒してやりたいなぁと……』
「だ、だから本当だってば! だ、第一アイツには香織や雫とか金髪の美少女まで居るんだし……」
『大丈夫よ、イッセー君の頃だってリアスや姫島さんやその他大勢居たわ』
『というか、レイヴェルにだけは負けて貰ったら困るんで、次あったらさっさと全裸で誘ってみてください』
「だ、誰がするか!!!」
こんな調子で園部優花は着実に『アッチ側』への道を歩んでいくのである。
「これがソーナ&白音モード……。
スゴい、こんな感覚というか世界があったなんて」
『ふー、二人で考えた甲斐があったわね白音さん?』
『ええ、これである程度先輩に近づけたし、あの二人にも劣らないでしょう』
まな板同盟の全面バックアップにより、その力を高め続け……。
「確かにスゴい力なのはわかるけどさ……」
『? なにかしら?』
『何か違和感でもありますか?』
「そうじゃなくて――
―――――――この格好になるのはなんでよ!?」
飛翔するのだった。
「なによこの女児アニメに出てきそうな服は!?」
『私の姉の趣味を忠実に再現させてみたのよ』
『魔法少女っぽい格好に加えて猫耳という贅沢属性なら先輩も即座にベッドまで連れ込んでくれること間違いなしですよユウカさん』
「アホをみるような目をするアイツが嫌でも目に浮かぶわよ!!!? そ、そうでなくてもこんな格好で出歩けるか!!」
『ダメダメ、そこは語尾に☆か♪つける感じで喋らないと。
魔法猫耳少女・ユウカリンだゾ!☆ ……みたいに』
「言うわけないでしょうが!! だ、大体尻尾があるせいで後ろのスカートからもろにパンツが……!」
『敢えての大胆さも先輩には必要ですよ?』
「痴女じゃないのよ私は!!」
色々とはっちゃけてる妹のせいで勝手に二代目魔王少女化させられてしまっているとしても……だ。
『ついでにセラフォルーお姉さまのような変身ポーズも練習なさい』
『あと魔法のステッキ(鈍器)も装備しましょう』
「いやー!!!」
終わり
補足
変身した園部さんの格好は猫耳と尻尾装備のもろ魔王少女だと思え。
ちなみにまだ第一形態だ。
園部優花
何の因果か、まな板というハジメの言葉に呼応してしまったナイチチ同盟二人に住み着かれた女子生徒。
本人は正直そこまでナイチチでもないのだが、ナイチチ同盟二人からは完全に同志扱いされると同時に惜しみ無くその力を与えられた。
しかし生前叶わなかった想いを彼女を介して意地でも成熟させてやらんという執念のせいで、彼女は強さと共に斜め上の方向に飛んでいく事になる(主に格好が)
白音たんの力を宿した神器(名称不明)
ソーたんの魔力とセラフォルーさんの魔力のハイブリッド。
両方解放すると白音モードのような乳と魔王少女のような衣装を兼ね備えた眼鏡っ娘に変身だ!