ハジメとして生まれ変わった現在は微妙に言動や態度や価値観が擦れ気味であるのだが、根っこの部分はそう簡単には変わらない。
擦れた態度ではあるものの、基本的におっぱいは大好きではあるのだ。
「あー……眠い。
お前らがギャーギャー騒ぐせいであんま眠れなかったぞ」
「だ、だってミュウちゃんだけハジメくんと一緒に寝るなんてズルいもん」
「そうよ、私達が同じことをお願いしたら鼻で笑って『嫌だね』って言ったのにこの子だけが良いなんて不公平だわ」
「不公平ってなんだよ、しょうがないだろ? ミュウは母親と離れ離れになって寂しかったんだろうしよ」
「……。そんな純粋な理由じゃない。
ハジメはわかってない」
そんなハジメ一行は、先日紆余曲折あって一時的な保護をすることになった海人族の少女ことミュウを親元へと送り届けることを次の旅の目標とすることとなったのだが、朝っぱらからハジメは昨晩の出来事によりあまり眠れないことに不満を洩らしていた。
その理由は会話の通り、出会って僅か2か3時間程で傷心の幼女の心を開かせたばかりか懐かれ―――いやガチにさせた事による女子達の焦りと猛攻によるものだった。
「ハジメお兄ちゃん」
「おーどうした?」
ガキは嫌いだと吐き捨てていたハジメだったが、接し方が子供に対して『パーフェクトコミュニケーション』を連発させていたのと、言動とは裏腹に明らかに子供には甘い態度を取っていたハジメは現在、完全に懐くどころか実はガチ化してしまっているミュウからこんな質問をされる。
「カオリお姉ちゃんやシズクお姉ちゃんやユエお姉ちゃんは、ハジメお兄ちゃんの事をハジメって呼ぶのに、どーしてドライグおじちゃんはハジメお兄ちゃんの事を『イッセー』って呼ぶの?」
昨晩のハジメ達のやり取りを子供ながらに見ていた過程で、イッセーの姿へと変化中だったドライグだけがハジメをイッセーと呼ぶことに疑問を感じていたらしい。
「それはアレだな。
どっちも俺の名前で合ってるからかな」
「イッセーとハジメってお名前がどっちも?」
「そうそう。
俺はハジメでもあり、イッセーでもある……って言うべきかな? んー、よくわかんないか?」
「お兄ちゃんはどっちのお名前で呼んで欲しいの……?」
「どっちでも良い。
ミュウの呼びやすい方でな」
そう言いながらポンポンとミュウの頭を撫でながら笑うという、またしてもなパーフェクトコミュニケーションを噛ますハジメに、香織、雫、ユエは『自分達はあんな事してもらえないのに……』とハンカチでも噛んでそうな顔で悔しがっているのであった。
「ふふふ、とて幸せな夜が過ごせて妾は嬉しゅうございますぞ旦那様?」
「イッセーの鈍さに巻き込まれただけだ、あんなくだらん事はもう二度とせん」
そんなこんなでミュウを親元へと送り届ける為にエリセンを、目指す事となったハジメ一行は、基本的に全員が三日三晩活動できるだけの体力を兼ね備えているのと、別に急ぐ旅でも何でもないというのもあってか徒歩での移動を基本としている。
「…………」
そんな一行の一人にて、ティオを仲間として迎えて以降、ハジメの意識から分離して単独で行動するようになった赤い龍ことドライグは最後と決めた相棒であるハジメが、おんぶをしているミュウについて女子達にやいのやいの言われている姿を数歩後方を歩きながら見ていた。
「…………」
イッセーからハジメとして生まれ変わった当初は、最早再起すら不可能だと思ってしまうほどに精神的に落ち込んでいたのが、異世界に来てからは少しずつその精神を復活させつつある。
その事自体はドライグとしても歓迎するべき事であるし、その理由となってくれは娘さん達にも実は感謝している。
しかしドライグはそれでも『物足りなさ』を感じていた。
「? どうかされましたか旦那様?」
そんなドライグの様子に気付いたティオが横から声を掛けてくる。
「当初の頃と比べると、アイツは少しだけだが本来の騒がしさを取り戻し始めいると思ってな……」
「ハジメの事ですか……」
ハジメには見えない所から、香織達に向かってドヤ顔をして煽るミュウに対する対抗心からか、一斉にハジメに飛び付くといったドタバタな光景を見ながら一人呟くドライグに、ティオは自称妻兼弟子として、兄弟子のようで未来の義理の息子になるであろうハジメを共に見つめる。
「良い事ではないでしょうか? あ奴等もなんだかんだ楽しそうですし」
「ああ、しかしまだ足りん」
「足りぬ、とは?」
「この世界に来てからのオレとイッセーはまともに苦戦する戦いをしたことがない。
……早い話、もう一度くらいは死ぬかもしれぬ戦いをしたいのだが」
かつての世界でリアス達の仇討ちの為に世界そのものに喧嘩を吹っ掛けた頃の、死と隣り合わせの戦いをもう一度してみたいと呟くドライグにティオは意外な様子を見せた。
「そういうのはハジメが思っているものかと思っておりましたが、意外と旦那様も……あ、いえ、なんでもございませぬ」
「なんだ? 言いたいことがあるなら言え」
「いえその……意外と旦那様も子供っぽいところがあるのですなと……」
「……………………」
早い話がめっちゃマジな喧嘩がしたい的な事を言うドライグにティオはそれまでは感じなかった意外な子供っぽさを感じたと話すと、ドライグは言い返す事ができずに苦い顔をする。
「敵が居ないことがこんなにも不便なものだと今更になって気付いたからな。
それに、この世界で戦う相手は今までもオレを使うまでもない連中ばかりであったからな。
……このままでは本当にオレは要らなくなってしまうのではなうと――――あ……」
ドライグにとってハジメとはイッセーであり、そして最後の宿主と決めた存在だ。
その相棒が苦戦をしなくなることで自分の存在が必要なけなるのではないか――という本音がポロリと出てしまったドライグはハッとしながら目を丸くしていたティオを見る。
「違う、要らぬなら要らぬで別に。
オレとしても悪ガキの面倒を見ずに済むのならそれに越したことは――」
「流石にその誤魔化し方には無理がありますぞ旦那様」
「…………」
「旦那様が心配されるような事は起きませぬ。
妾から見てもハジメは間違いなくアナタ様を常に必要としていますまからね。
近い将来ハジメの母となる妾が言うのですから間違いございませぬ」
悔しいほどにハジメとドライグは異心同体であるのだと外から見るからこそ思うティオの言葉に、ドライグはフンと鼻を鳴らす。
「お前に言われんでもわかっている」
「ふふ……」
「チッ、小娘が何を笑っている……」
「いえいえ、アナタ様の心の内を妾に話してくれた事が嬉しいだけです。
今後もあ奴等には話せない事があれば遠慮せず妾に吐露していただけると妾はそれだけで幸せです」
微笑むティオにドライグは再び罰が悪そうに舌打ちをすると……その何とも言えない気分を誤魔化すようにティオの頭の方へと手を伸ばし、ぺしんと軽く叩くのだった。
「あぅ♪ 程よい力加減のせいでもっとして欲しいのじゃあ……!」
「無駄に懲りぬ奴め」
しかしドライグはこの時まだ気付いていなかった。
自分の発言がまさに『フラグ』であった事を……。
時と場所は変わり、ここはオルクスの大迷宮。
白崎香織と八重樫雫――――ついでに南雲ハジメが『行方不明』となって早四ヶ月が経った現在、ハジメはともかく香織と雫は必ず生きているという、状況からして普通はその可能性が低いと思われる事を盲目なまでに信じてより深い地層へと進もうとする所謂勇者組は――『最悪』だった。
「いい加減こっちの話を聞いてくれても良いんじゃないかい?」
突如現れた魔人族の女と魔物の軍勢に、勇者組達はあっという間に一網打尽にされ、満身創痍の状態だった。
加えて王国騎士のメルドは敵の手に落ちてしまっており、身動きも取れない。
「だ、黙れ魔人族! お前は必ず俺が倒す!!」
その勇者組のリーダー的な存在である天之河光輝は精一杯強がるが、状況が最悪なのは変わりなく、更に光輝達の士気はある意味で最低値をマークしていた。
「おやおや怖い怖い、なんでそんなに睨むのかわからないよ。
私の記憶が正しければ、アンタ等とはここで初対面な筈なんだけどねぇ……? そうだろう――――
――――――ハジメ?」
そう、女魔人族の傍らに立つ………存在する訳が男子が居ることに。
「確かに初対面といえば初対面だな。
――――――――――この世界の彼等とはな」
行方不明になった男子、南雲ハジメにあまりにも酷似した白髪の少年の出現が光輝達を驚かせ、更に言えば自分達が『知らない力』を使ってあっという間に壊滅寸前まで追い込まれた事は少なくないショックを光輝達に与えるに充分だった。
「な、何故だ南雲! どうしてお前が魔人族と共に居る!?」
「しかも香織と雫はどうした!? どこに居る!?」
光輝達からすれば行方不明となっていた男子が白髪になって現れたばかりか魔人族の仲間のように居るわけで、当然彼等と疑問はそれ以上に香織と雫の所在だった。
しかし白髪のハジメと酷似した少年は首を傾げる。
「白崎と八重樫だと? ………む、そういえば二人の姿が無いのか?」
「とぼけるな! 言え! 二人はどこに――」
「知らないな。
正直『オレは』彼女達とそんなに接点があったわけじゃあないんだ。
寧ろこの時期にはキミ達と共に居たと記憶していたが………………………………――――――――いや、そうか、なるほど……『赤』の彼と居るのか」
「何をごちゃごちゃと訳のわからねぇことを! いい加減に――」
「おおっと、熱くなってるところ悪いけど、こっちには人質が居るのをお忘れかい?」
「ぐっ!」
配下の魔物に持たせていたボロボロのメルドをみせつけるようながら話す女魔人族に光輝達は動けずに居ると、女魔人族は白髪のハジメに酷似した少年の肩にたれ掛かる。
「話してた通り、こっちのアンタも相当嫌われてるみたいだね?」
「らしいな。
しかしオレの想像が正しければ、此方のオレの精神は『アイツ』の筈だ。
アイツがこうまで他人に嫌われるような奴ではない筈―――あぁ、もしかして変態さが加速して嫌われたのだろうか? だとしたらありえるな……」
もたれ掛かる女魔人族を特に抵抗もせず受け止める白髪のハジメに酷似した少年の言っている言葉の意味が分からず悔しげに歯を食い縛る光輝達は、次の瞬間には絶望する。
「ならば確かめるだけの事だ。
オレ達を餌にしてこの世界のオレを釣ればいい」
その背に白銀の翼を広げる白髪のハジメの全身から異質なまでの力が放たれる事で……。
「この世界のキミ達にとってのオレ――南雲ハジメがどんな存在なのかは何となく想像できた。
その上で改めて自己紹介しよう」
異質で、それでいて神々しい白銀のオーラを放つ白髪の南雲ハジメはニヒルに笑う。
「オレの名は南雲ハジメ――そしてヴァーリという名前でもあるただの
最後の赤龍帝と対を為す、最後の白龍皇としての己を。
「そしてアタシは魔人族のカトレア。
ハジメ――いいや、ヴァーリの相棒ってだけのただの
その相棒を自称する魔人族の女と共に、白き光翼を背にする南雲ハジメは降臨する。
(よ、よし決まった! これで名実共にヴァーリはアタシのモノだ!)
(熱でもあるのかカトレアは? さっきからくっついて居るが、妙に熱いぞ……)
終わり
補足
すんげー簡単に言うと、ハジメ(黒髪)と一緒のD×D世界を生きたヴァーリ・ルシファーが、別のありふれた世界の南雲ハジメとしての生まれ変わった姿です。
何かしらの方法により強引にこっちの世界に元・ヴァーリチーム全員の意思と魂を継承した相棒の魔人族と共に乗り込んだらしい。
南雲ハジメ(白髪)
中身は尻龍皇の南雲ハジメ。
大体は乳龍帝の方の南雲ハジメと似た経験を経て異世界に来たのだが、まったく違うのは召喚されてすぐの訓練にて自分から興味本位で最下層に降りたのと、降りた先に出会ったのがユエだはなく調査に来ていた魔人族の女だったこと。
それにより彼の世界における歴史は大分変わったのだが、その後彼の世界かどうなったかはまさに神のみぞ知る。
ハジメとして生まれ変わっても残っていたハーフ悪魔としての血とフィジカルを軸に、宿敵であるイッセーと同等レベルに力を極めた上で歴代の誰もが掴まなかった領域まで到達している。
カトレア
召喚された勇者組の調査に来ていたら、上から白髪の男が落ちてきてびっくり仰天という出会いを果たしたことでその後の運命がねじまがった。
当初はラッキーと思い拉致しようとしたのだが、逆に返り討ちにされたばかりか、『勘を取り戻すトレーニング相手』にさせられることでメキメキとフィジカルを進化させまくった。
その内『別にこの世界の行く末には興味はないが、強い奴が居たら戦いたい』という生粋のバトルジャンキーであるハジメに個人的に惹かれて、魔人族の任務を放棄して宛なき旅に付いていく事で、彼に宿っていたかつての『仲間達の魂』が彼女を後継者として認めた事で、魔人族でありながら魔人族には存在しない領域へと到達する。
具体的には、力を解放すると黒い猫耳と尻尾が出てきて仙術を使えたりとか。
こらそこ、それだとおっぱり足りない夜一さんになるとか言わない!