まだグダる
異常こそ正常。
人でなしであるが故に拒絶された少年が、風変わりで正直な悪魔の少女とその仲間達との邂逅によって『己』を掴み取れた時から、少年の精神は常に燃え盛っていた。
「『ドラァッ!!』」
『ぐっ!?』
拒絶され続けた己の全てを彼女達の『未来』の為に注ぎ込む。
その為なら喜んで化け物になってやろう。
「『舐めるなよヴァーリ、今の俺達をそんな鎧で何とか出来ると思っているのか!!」』
『く……! っ…ふふふ、勿論思ってはいないさ。
かつてのオレはその姿のお前に負けたのは嫌でも覚えている。
だからこそ、オレも本気を出させて貰う……!』
それが、少年の生きる意味であった。
『私はイッセーが思っている程デキた女じゃないわ。
口では綺麗事を語っていても、私はイッセーのその力に寄生しているだけの弱い女なの』
かつて、心の底から慕った
しかしそれでも少年の意思は変わらなかった。
リアスにどんな思惑があって、どんな打算があったとしても、肉親なたすら怯えられた自分をただ普通に迎え入れてくれただけで十分自分は救われたから。
「だからこそ、ヴァーリ・ルシファーとして全力でお前と戦おう……!」
『Dragon Lucifer Drive!!』
生きる意味をくれた……それだけで十分だったのだから。
「『最後に殺り合った時に見た奴か……』」
『そうだ。
しかしあの時のオレとは思うなよ?』
そんな少年がリアスや仲間達を喪った今、かつてのような進化を続けることは叶わない。
それは、南雲ハジメとして生まれ変わり、変人達と邂逅してもまだ……。
『さぁ、始めようかァ!』
「『…………』」
血族であるルシファーとしての力と白龍皇アルビオン・グウィバーの力のすべて発現させたヴァーリ・ルシファーとしての形態。
背中に12翼のルシファーの翼を生やす新白龍皇。
鎧は先程の禁手化と同じく白銀と黒を基調としており、見惚れるほどに流麗なフォルムをしている。
その出力は軽くふるっただけでも山の頂が消滅してしまうほどだが、本質は違う。
『Venom!』
この形態の本質は白い龍であるアルビオンが持つ猛毒と評される『減少』の力が使える事であり、その掛け声と共に、無機物以外の「血」「肉」「骨」「臓器」「魂」といったあらゆるものを徐々に減らしていくという効果をもたらす。
「『ふんっ!」』
まさに『猛毒』とも呼べる能力が、鮮血を思わせる真っ赤な頭髪を持つ、ハジメとイッセーの容姿が合わさった様な風体の青年のみならず、周辺に居る生物にまで襲いかからんとする寸前、融合という形態と化した赤龍帝が放つ気合いで弾き飛ばされる事で、香織達に減少の力が作用することは無かった。
『……気合いだけで減少を無力化するか。
つくづく脳筋な奴だ』
「『お互い様だ。
だが、それがお前の全力だったとしたらガッカリだなヴァーリ?』」
ただの気合いだけで減少の力を吹き飛ばして見せた融合形態のハジメが、その言葉と共に天之河光輝達を吹き飛ばした時と同じく、目を大きく見開く。
「っ……!』
端から見れば見えない衝撃波のようなものが放たれたようにしか見えない。
しかしヴァーリには見えており、目が見開かれたと同時に襲い掛かる数発のパンチと蹴りをしっかり防ぐ。
『お前こそオレを舐めるなよ? その攻撃は見えている』
「『………」』
かつての世界で最後に戦った時には一切見えなかった攻撃が見えると豪語するヴァーリの鎧の手足には軽い皸が入っている。
「『そうか……』」
しかし融合形態のハジメはそれでも焦る事は無く、腕を組みながら口を開いた。
「『この程度の挨拶を防いだ事が、よほど気分が良いらしいな?』」
確かに最後に戦った時よりは遥かに強さを増していた。
しかしそれでも融合形態のハジメは『これが限界なら負ける気がしない』と確信しており、その証拠とばかりに腕を組んだまま忽然とその場から姿を消すと、一瞬で魔王化形態のヴァーリの眼前まで肉薄し、がら空きであったボディに拳を叩き込む。
『ぐっ!?』
「『少しギアをあげてみたらどうかな?』」
その言葉通り、少しだけ出力を上げたハジメの一撃が突き刺さったヴァーリが天井を派手に破壊しながら吹き飛ぶ。
『「弱くなったことも、腑抜けてることも認めるよ。
だが、それでもお前に負けるつもりは更々無いな』」
そう言いながらめり込んだ天井から落下するヴァーリを『見下ろす』イッセーなのだった。
「あの状態のヴァーリがあんなに手も足も出せないなんて初めて見た……」
ただの魔人族のカトレアは、自分をここまで引っ張りあげてくれた男が苦戦をしている事に改めて、赤龍帝の名は伊達じゃないことを理解していた。
「ふむ、ハジメと旦那様の精神が文字通りひとつとなっておる。
それにより二人の力が合わさった上で更に力が増しておるようじゃな」
「いつぞやの魔物の群れを一人で狩った時とは更に次元が違うということね……」
「あの状態のハジメを相手に何秒持つと思う?」
「うーん……今の私達なら3秒持てば良いと思う」
チラリと横を見れば、既に赤龍帝の方のハジメが勝った気で居る女達の話し声が聞こえる。
確かに魔王化形態である今のヴァーリでは、あの形態の赤龍帝に勝つのは難しいだろう。
神にすら届いた猛毒の減少すらもはね除ける差がある以上、通常の出力にも大きな差がある。
「ま、それでもアタシはヴァーリが勝つと思うけどねぇ……」
しかしカトレアには不安も心配も無い。
何故ならカトレアだけは知っているのだ。
「そろそろだねヴァーリ?」
先程のイッセーと同じく、全身を覆う鎧が皸割れ始めたその瞬間、半端者が掴んだ真の領域が解放されるのだ。
『やはりこの形態では真骨頂となる減少が無意味である以上、無駄だったな』」
『「……?』」
『オレがこの形態のまま停滞させていたとでも思うのか? お前へのリベンジを果たす為に
「『!?」』
その気配になにかを察した融合形態のハジメが始めて身構えたその瞬間、先程の意趣返しとばかりにヴァーリを覆っていたひび割れた鎧の節々から白銀の光が、殻を破らんと輝き始め……やがて覆っていた鎧が剥がれていくと……。
『Vanishing Dragon combine!!』
掛け声と共に眩い閃光が迷宮のフロアを照らす。
「『お前……!」』
一瞬の閃光が少しずつ止んだ先に立つのは、ヴァーリと南雲ハジメのどちらの面影を感じる容姿の白銀の頭髪とオーラを放つ青年だった。
それはイッセーとハジメのどちらの面影を感じさせる今の融合形態状態の姿のようであり、静かに開かれたその瞳は灰色の輝いている。
「『
今のオレは魔王ではない――ただの『身勝手』な男だ……!』」
放たれる白銀のオーラはあまりにも神々しく、思わず膝をついてしまいそうになる程に美しく……。
「『出し惜しみしてすまなかったな赤龍帝。
ここからが本当の戦いだ……!』」
「『上等……!』」
他の何者も触れることすら叶わぬ、神を越えた領域だった。
赤と白がオルクスの迷宮の大半をぶち壊しながらぶつかり合っているその頃、別に貧乳じゃないのに貧乳呼ばわりされてしまったことへの『訂正』を目指すネームドモブであった園部優花は、当然クラスメート達が居るオルクスの迷宮から自分に近い強さが複数と、それを遥かに凌駕する強大な気配を察知しており、取り敢えずウルの町に居る仲間達や先生に内緒で町を抜け出し、ハイリヒ王国へと急いでいた。
「ま、まただ。
片方がものすごい力を出したかと思ったらすぐまたもう片方が同じくらいの力を出してる……」
『む、この感覚はやはり白龍皇で間違いないわね』
『みたいですね。
今の先輩と同じ……いえ、もしかしたら先輩を越えてるかもしれません』
ひょんな事から胸の戦闘力が低い、ハジメの過去の先輩と後輩を名乗る女子に住み着かれてしまった優花は、個人的な動機もあってこの二人からこの世界には無い色々な術を叩き込まれた事で、密かに香織達と同等の領域までたどり着いていた。
だからこそ、オルクスの迷宮から感じ取れる強すぎる気配を察知してしまい、片方がハジメであることを理解したのだが、もう片方の気配がそのハジメと同等――下手をすれば越えているかもしれないという話を聞いてしまえば大人しくしている訳にはいかない。
「急がないと……! 私を貧乳認識のまま南雲の奴に死なれたら困る……!」
『そうね。
アナタには是非『感覚を共有している私と白音さん』の為に、さっさとイッセーを押し倒して貰わないと』
『私達にも肉体があれば3人で――と言えたのですがね』
「す、するわけないでしょうが! なんで私が南雲なんかと……!」
日を追うごとに、勝手にハジメを押し倒させて来ようとしてくるソーナと白音に優花は毎度のように否定せんとする。
「こ、これはあくまで南雲の奴に私は貧乳なんかじゃないってわからせる為であって……」
『逆にわからされるのね? わかるわ』
『くっ……殺せ! みたいなシチュエーションが良いと。
ユウカさんも好きですねぇ?』
「ちがーう!!」
なんでもかんでもソッチの話に持っていこうとする、精神統一するれば見ることがある見た目大人しめな美少女二人とは思えない台詞に全力否定をする優花。
『セラフォルーお姉様のような衣装を最近は割りとノリノリで着ている時点であまり説得力なんてないわよ?』
『わざわざツインテールにまでしてますしねぇ?』
「…………」
まるで『二代目魔王少女だぜ☆』的な格好で全力で走り続ける園部優花の精神は絶賛グラッグラなのだった。
終わり
嘘予告
気づけばオルクスの迷宮の大半を破壊し、そこに住まう魔物達も巻き込まれ事故のように死にまくる中、激闘は続く。
最早クラスメート達は戦いの余波で余計ボロボロになる中……彼女は彗星の如くやって来た。
「二代目猫耳魔王少女・レヴィアたん参上☆
暴れてる悪い子はこの魔法のステッキ(重量50㎏のただの鈍器)でおしおきだゾ♪」
『……………………』
ちょっとヤケクソ感丸出しな顔をした、コテコテの魔法少女衣装にツインテールの園部優花の出現とその名乗りに、二人のハジメのドン引きな殴り合いに向けられていた全員の視線をある意味釘付けにさせた。
「そ、園部さん……よね?」
「……………そうだけど? それがなにか?」
「その……なんでここにというか、その格好はどうしたのかなというか……」
「私の正装だけど? なにか?」
『…………』
一応クラスメートで今はウルの町に居る筈の一人であるという認識はされたのだが、その奇抜すぎる格好のせいで、当然ながら戸惑われてしまう。
しかし若干ヤケクソで吹っ切れてる優花は、そんな視線を半ばスルーして、互いに息を切らせながら睨み合っている南雲ハジメ(イッセー)に近づき……。
「南雲」
取り敢えず自分を見ろと言わんばかりに睨み合っている両者の間に入り、ハジメの眼前に立つ。
「ひ、久しぶりね南雲……? アンタには色々と言いたいことが……」
「『誰だお前?』」
「」
イザ目の前に立つと妙に緊張してしまい、ちょっともじもじとする優花だが、肝心のハジメ(イッセー)はその格好のせいなのと、元々園部優花に関しては名前すら記憶しなかったこともあってか、あっさりと誰だと返されてしまった。
これには優花も貧乳呼ばわりされたこともあって激おこプンプン丸だ。
「ふ、ふざけんじゃないわよ!? アンタが貧乳じゃないのに貧乳だと笑った園部優花よ!!?」
「『……? その園部がなんの用だっつーか、なんだその格好は?」』
「アンタの元先輩と後輩に言われてこうなったのよ! ソーナと白音に!!」
「『………は?』」
よくわからん女子の口から聞く筈もない名前が出てきて思わず戦闘の手を止めてしまったハジメ(イッセー)は、同じく戦闘の手を止めて優花を凝視するハジメ(ヴァーリ)を背にしながら、ちょっと半泣きになっている白い猫耳と尻尾――そして伊達メガネを掛けているツインテールの女子の目をジーっと見つめる。
「『………確かに二人の感覚がお前からする』」
「そうでしょうよ。
アンタに記憶を消されても覚えていたのは私の中に住み着いた二人のお陰だったわ」
「『だけど何故……」』
「アンタが私を貧乳じゃないのに貧乳呼ばわりしたから、シンパシーを感じたとか言ってたわ」
「『あー……」』
貧乳呼ばわりの辺りで少しだけ思い出してきたハジメ(イッセー)に、すかさず胸を張りながら身体を揺すって揺らしてみせる。
「見ての通り、私は貧乳じゃないわ。
よく見なさい……てか見ろ」
「『今忙し――」』
「見ろ! というか触って確かめなさい! 私の尊厳をめちゃくちゃにしておきながら責任を取らないとは言わせないわよ!!」
「『……』」
「うっ!? こ、この重圧のせいで動けなく……!?
く、私をどうするつもり? 動けなくなった私を押さえ付けて、また尊厳をめちゃくちゃにするつもりね!? でも私は負けないわ! 猫耳魔王少女は悪に屈しない!!」
「『………………………』」
「……。妾と同じ匂いをあの小娘から感じるのじゃ」
「急に地面に仰向けに倒れたかと思ったら紐のようなもので自分の手足縛ってるわね……」
「ハジメくんも流石に『どうしたら良いんだ?』って顔してこっち見てるし……」
「あーあ! 動けなくなっちゃっなー? これからナニされるのかなー!? 強すぎな赤龍帝変態男に無理矢理押し倒されるんだろうなー?」
「『いい加減に――』」
「困ったなー! こんな奴に無理矢理ヤられるなんて泣きたくなるくらい辛いなー? 昔のソーナと白音がされた時みたいに、南雲なた犬みたいに後ろから孕むまでヤられるんだろうなー? やめてって言っても、悪人顔でニヤニヤしながらやめずにさー? でも言っておくけど、アンタに身体を汚されても、心までは穢されないからねっ!!?」
「『おいコラ、オメーに住み着いてるらしい先輩と後輩に話あるんだけど」』
ナイチチ同盟は意外とドストレート過ぎるのだった。
終了
補足
魔王の血を乗り越えた領域。
例えるなら某身勝手の極意(完成)のようなそれ。