色々なIF集   作:超人類DX

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前回の続き。

このルートの正規ヒロインが本気になり始めただけの話


少女の変わらぬ心

 

 

 

 物凄く今更にも程がある話ではあるのだが……。

 

 

「天翔閃!!」

 

 

 感覚も価値観も精神も全然違う人間なんてどう鍛えれば良いのかさっぱりわからない。

 

 

「………」

 

「ぐっ……片手でオレの天翔閃をかき消すか……!」

 

「それだけじゃねぇ、オレ等は未だに兵藤にカスリ傷どころかその場から一歩も動かすことすらできてねぇ……!」

 

 

 元の世界じゃほぼ全く関わる事の無かったクラスメート達が、俺としても予想外だった『白龍皇』の出現と、その白龍皇が畜生共の軍勢に混ざっていたせいで、彼等なりに『このままでは奴等に殺される』という自覚を持った事で、対抗できる俺達に対して、戦い方――いや、畜生共をブチ殺す手段を教えてくれと言ってきたのが事の始まりだったわけだが……。

 

 

「仮にも騎士団長であるオレをも赤子扱いとは……ぐっ」

 

「………………」

 

 

 気付けば王国の騎士連中まで頭を垂れて来たので、フィーリングで相手になっているのだが……。

 

 

「今日はここまでにするぞ」

 

「っ! もう少しだけやらせてくれ……!」

 

「オレもまだやれるぞ!」

 

「私も!」

 

「あ、アタシも」

 

 

 ……。やべぇな。コイツ等全然強くなってる気配がしねぇんだが。

 流れであのよくわからん白髪――ええとナグモとやらより強くさせるだなんで言ってしまった手前で申し訳ないのだが、彼等の伸び代というか成長速度があまりにも遅すぎる。

 

 いや、確かにほんの少しくらいは強くなっている筈だし、あのステータスプレートって言ったか? それで確認させた限りでは各々微量ながらステータスとやらを上げているらしいのだが……。

 

 

「よく喰ってよく寝るのもトレーニングに必要な事なんだよ。

とにかく今日はここまでだ」

 

『………』

 

 

 恵里や谷口――それから八重樫の時を思えば、やはり遅く感じてしまうし、ここに来て俺はふんわりとなんとなくでしか思っていなかった訳だが、こういう所があの人外女の言っていた普通(ノーマル)人間という奴なのだろう。

 

 

「む……そ、そうか。

兵藤の言う通り、休むことも大切だな……」

 

「チッ、兵藤達に鍛えて貰い始めた辺りから、頭打ちを感じてたステータスの数値が少しずつまた上がり始めたのは良いが、やっぱまだまだだな……」

 

「………」

 

 

 適当に半殺しにしていたら、その内恵里や谷口とタメ張れる程度に勝手に進化していた八重樫は、そう考えるとやはり『コッチ側』なのかもしれないな……。

 それを口に出して言うと、八重樫は気色悪く笑うし、恵里は、恵里で不機嫌になるから言わんけどよ。

 

 

 

 

 イッセー自身が内心実は普通(ノーマル)の人間を鍛える事に苦戦している事を知らない天之河光輝等勇者組達は、それでも頭打ちを感じていた自分達のステータスの数値が再び伸び始めている事を実感しているせいか、寧ろイッセー達を信頼し始めている。

 

 

「流れで彼等を鍛える事を引き受けて暫く経つが、正直言ってここまで難しいとは思わなかった」

 

「何と無く様子を見ていてそんな気はしていたけど、アナタがそういう事を言うなんて珍しいわね。

普段のアナタなら『可能』とは言わないけど、『不可能』とも言わないじゃない」

 

 

 光輝達とは違い、町の宿屋の一室で寝泊まりをしているイッセーは、何故か別々に部屋を取っていた筈なのに、当然な顔をしてイッセーの取った部屋で寛ぐ女子達に、光輝達を鍛える事への難しさを吐露する。

 

 

「確かにボク達と違って上がり幅が狭いというか、遅いのは思った」

 

「それもやっぱりスズ達と天之河君達との違いって奴なのかな?」

 

「俺はそう思ってる。

というか冷静に考えたら、俺は別に誰かを鍛えるのが得意って訳じゃあないからな。

偶々お前達の精神が『コッチ側』だったから、自分の経験をそっくりそのまま実行させたってだけだし」

 

 

 光輝達を鍛えている間に感じた事を話しつつ用意していた水を飲む。

 

 

「本人達は結構感謝しているみたいよ? なんでも、頭打ちだと思っていたステータスが、鍛えて貰い始めてからまた上がり始めたとか」

 

「それも怪しい話だろ。

偶々の可能性の方が寧ろ高い」

 

 

 

 一応約束をしてしまっている以上は『やっぱやめた』と言うわけにはいかないと思っている程度には、やはり人間相手には対応が相応に軟化しているイッセーに、同じく自分達がイッセーに鍛えられている時と比較するまでもなく、速度が遅い彼等にどうすべきかと考えていると、その様子を眺めていた分離して人化中のドライグが口を開く。

 

 

「実力差があるお前達があのガキ共の相手をするのは早いのかもしれん。

ならば、実力が拮抗しているであろうガキ共同士で実践形式で手合わせをさせたり、以前のようにどこからかそこそこの力を持つ者を拉致して戦わせてみたりすれば良いのではないか?」

 

「ああ、そういや恵里と谷口を鍛え始めた時はそうしてたっけ。

悪くないかもな」

 

 

 ドライグの助言にイッセーはなるほどとうなずいていると、ひっつこうとしては避けられているティオが、それでもめげずにドライグにひっつこうとしながら言う。

 

 

「あ奴等のレベルに合わせる形で竜化した妾が相手になっても良いぞ?」

 

 

 そう言いながら、しつこすぎて諦めたドライグが抵抗をやめた事でひっつく事に成功したティオは機嫌が良さそうだ。

 確かに対人に加えて竜に変化出きるティオは実戦訓練の相手としてはかなり最適だ。

 

 

「そうしてくれんなら試してみたいが……」

 

「礼なら構わんぞ。

ドライグ様から頂くつもりじゃからな!」

 

「なんでオレが……」

 

「あ、そう。なら頼むわ」

 

「……おい」

 

 

 

 実に嫌そうな顔をしながらティオに頭を抱き締められいるドライグが何か言いたそうな顔をしてイッセーを見てくるが、そこに関してはイッセーも敢えてスルーすることにした。

 声こそ忌々しいあの赤髪の悪魔女に似ているティオだが、内面がこうも違いすぎるのと、あまりにもドライグに懐いているせいで、今現在ではすっかり対等に話をするようになれたイッセーは、話し合いを終わりにして解散を告げ、そのまま寝ようとしたのだが……。

 

 

 

 

 

 

「わざわざ金出して部屋別々にしたのに、なんで全員同じ部屋で寝なきゃいけないんだ……」

 

 

 

 わざわざ男女に分かれて寝るつもりで二部屋は取ったのに、その女子が我が物顔で男子であるイッセー&ドライグの部屋で寝るのだ。

 しかもあきらかに大幅に許容人数を越えたベッドに入り込んですらくるのだ。

 

 

「こんなんなら俺床で寝たいんだけど」

 

「だったら鈴とマゾビッチが床でいいでしょ? ほら、ボクとイッセーが寝るんだから二人は床で寝なよ」

 

「えー? でもスズはこの中じゃちっちゃいから邪魔にならないよ? だからシズシズだけ床で良いんじゃない?」

 

「体格的に私が一番イッセー君と相性が良いわ」

 

 

 誰が床で寝るかどうかで、イッセーを挟んで牽制し合う三人に『譲り合い』の気配は全く無さそうだ。

 

 

「ふふふ、あっちは楽しそうですね旦那様?」

 

「オレはちっとも楽しくない。

オレはイッセーの中か、独りで寝るのが好きだというのに……」

 

 

 そのとなりのベッドでは何度も蹴り出しているにも拘わらず、潜り込んではひっついてくるドライグとティオのペアが居る。

 

 

「谷口と八重樫の二人は降りろ」

 

「え~?」

 

「中村さんはいいわけ?」

 

「ガキの頃から何度かこうして恵里とは寝てたから、変な抵抗感は無いんでね。

そうでなくてもオメー等まで入られると狭いんだっつーの」

 

「ふ、ほら見ろ。

ボクと二人とじゃあイッセーと一緒に生きてきた年季が違うんだよ年季が」

 

 

 こうして夜は更けていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 イッセーが何者であるかだなんてボクにとってはどうでも良い事だ。

 トータスでも無く、そしてボク達にとっての元の世界でもない――もっと別の世界を生きただとか、その世界がこのトータスなんか比ではなく狂っている世界だったとか、それ故にイッセーが『歪んだ』だとか――その全てがどうでも良い。

 

 

「はぁ、やっと寝たか。

ずっとブツクサ言ってたせいで何回キレそうになったか……」

 

「あー……うん、ごめんね? 余裕こいてたらイッセーを取られると思って……」

 

 

 

 歪んでしまったイッセーこそボクにとってのイッセーなんだ。

 どうしようもなく、そして逃げることもできなかった地獄のような場所から、あの男や母の返り血塗れの姿で『来るか?』と手を差し伸べてくれた時の事はずっと忘れない。

 

 だってイッセーは確かにキレると見境が無くなるけど、決してボクを傷つけたりはしなかったし、これまでずっと口には出さなかったけど、ボクを守ってくれた。

 

 

「なんか寝付けないし、ちと外出てくるわ」

 

「ん、それならボクも行く」

 

 

 確かにイッセーは普通とは違う。

 普通とは違うからこそ普通の人達から本能的に恐れられていた。

 でもボクは決して恐れたりはしない。

 恐れる理由なんてどこにも無いから。

 

 

「ドライグしゃま~……」

 

「ぐぅ……こんなにデカい肉まんは喰え……ん……zzz」

 

「……ドライグがこんなわっかりやすい寝言を言うなんてな」

 

「ティオの肉まんに押し潰されてるせいだねこれ……」

 

 

 ボクにとっての普通とは、イッセーと一緒に居ること。

 他に望む事なんてひとつもない。

 

 だからボクの全てはイッセーのモノだ。

 

 

「ふぃー 風が良い感じに冷たいぜ」

 

「今日は星が綺麗だ」

 

「ん? あぁ、確かにそうだな」

 

 

 前にそう言ったこともある。

 でもイッセーは、ボクの『過去』の事を思ってたのか、そんな言葉を言ったボクに『間違っても俺にそんな事を言うな』とボクを叱った。

 

 その時はただ残念に思ったけど、この世界で更にイッセーを知ったことでボクは気付いた。

 

 

「ん……」

 

「? どうした恵里?」

 

「ここ最近ボクだけのイッセーの時間が少なくなってきちゃったからつい……」

 

 

 イッセーがボクの全てを受け入れないのは、イッセーの過去のせいだって。

 過去―――イッセーの邪魔をし続けたあの白い猫女のせいだって。

 

 

「言われてみりゃあ、こうしてお前とサシでぬぼーっとするのも久しぶりな気がするな。

ガキの頃はバカみたいに一緒だったもんなぁ」

 

「それは今もだよ」

 

 

 イッセーの過去のトラウマのひとつが邪魔をしてる。

 もう存在すらしない奴のせいでイッセーはボクを本当の意味で受け止めてくれない。

 ああ、ムカつく……叶うならこのボクがこの手で直接壊してやりたい。

 

 

「変わらないし、これからも絶対に変えない。

ボクはこの先もずっとイッセーの傍に居る」

 

 

 それがボクの生きる意味だし、それ以外の生き方なんてするつもりだってない。

 ボクがどれだけ癇癪を起こしたり、我が儘を言っても『わかったわかった』と苦笑いしながら撫でてくれるイッセーが大好きだから。

 

 

「ねぇ、ボクを見てよイッセー?」

 

「なん―――っ!?」

 

 

 好きで、好きで、好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで……。

 

 気が狂いそうなくらい、ボクはイッセーが好きだから。

 

 

「んっ……ふふ、久しぶりにイッセーとキスしちゃったぁ」

 

「久しぶり? 久しぶり……か。確かにな」

 

「今度はイッセーからしてよ? ふふ……なんならここは町の外で周りに誰もいないし、ここでシちゃう?」

 

「やらないよ。

そうやって自分を安売りするな」

 

「何を言ってるの? ボクはイッセーだから言うんだよ? ボクの全部はイッセーだけのものだから」

 

「…………」

 

 

 複雑そうな顔をするイッセーに、ボクは眼鏡を外す。

 外した事で景色がぼやけて見えるけど、イッセーの姿だけは眼鏡がなくてもはっきりと見える。

 それ以外の全てがどうでも良いというボクの気持ちの顕れなのかもしれない。

 

 

「この世界に来てひとつだけ良かったと思うよ。

だって元の世界じゃあ教えてくれなかった、イッセーの居る場所への『扉』の開け方を教えてくれたんだもん。

これで本当の意味でボクはイッセーの傍に居続けられる」

 

「ホント、ブレないな恵里は……」

 

 

 そんなボクの言葉に、イッセーは困ったように笑いながらボクの頬を撫でてくれる。

 

 ああ、やっぱりそうだよね。

 ボクがどれだけウザい事を言っても、鬱陶しいと普通の人間なら思うであろう真似をしてもイッセーはこうやって受け止めてくれる。

 

 

「ぁ……いっせー……♪」

 

 

 ボクを優しく抱いてくれる。

 こんな、壊れたまんまのボクであっても。

 

 

「そろそろ戻るか」

 

「……」

 

「? どうした恵里?」

 

「…………えへへ、なんでもなーい」

 

 

 あの時と変わらずにボクの手を握ってくれる。

 その安心感と、まだ自分の唇に残っている感触を指でなぞりながら、ボクはイッセーの過去を必ず壊してみせると改めて決心するのだった。

 




補足

簡易人物紹介(現時点)


中村恵里

 原作では割りと笑えない過去やらなにやらで勇者君に対する執着が爆発してしまった少女。

 しかしこの世界線の場合、返り血塗れの過去を持つ赤龍帝と出会った事で運命をねじ曲げることになり、その執着対象も変わった。

 精神度合いでいえば正直原作軸と然程変わらないのではあるのだが、赤龍帝ことイッセーの精神性が人外絶対殺すマン世界の彼なので、そんな彼女を割りと平気で受け止められているので安定性は高い。

 そんなイッセーによって『こちら側』に導かれたので、現時点で原作の数千倍の戦闘力があり、現時点の原作主人公をも簡単に捻り潰せる。

扉を開け放った際に掴んだスキルは、『物理も概念も問わずに破壊する』というスキル。

 そしてイッセーへの想いによってもうひとつ発現しかけているナニか。

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