シリーズの中でも色々と振り切りすぎてる白音たん
今持つ力を超えさせて肥えさせる。
復活したばかりで、『空腹』の状態である白い猫の少女は、偶々肉体的な意味での復活を果たした際に出会した少年少女達を『調理』することを内心決めた。
別に今すぐそのまま愛しの彼のもとへと向かっても良いのだが、それでは面白味に欠けるし、何より今の弱体化した状態では再び殺されてしまう可能性の方が高い。
故に白い猫の少女――白音は、勝手に恩を感じているらしい南雲ハジメという―――話を聞いている限りでは彼に何度も捻り潰された恨みを持つ少年を『調理』してやることにしたのだ。
(先輩とはまだ直接会ってはいない。
でも離れていても私にはわかりますよ? 先輩が本当の意味で『満たされて』いないことを。
人間以外の全ての種族を殺し尽くしても尚収まらなかった『無尽蔵』のあの殺意を受け止められるのは私だけだったのに、その私が死んだ事で先輩はいよいよその
ふふふ、本当に皮肉ですよねぇ……? この世の誰よりも嫌いな存在である私だけが、アナタの欲の全てを受け止められる唯一の存在だなんて……)
前菜として喰らってから改めて彼――イッセーと今度は永遠の
それが復活を果たした白い猫の持つ意思なのだ。
白音の意図を知らない南雲ハジメは、皮肉にも一度は中村恵里によって壊された己の力を『復活』させてくれた白音をほぼ全面的に信頼してしまった。
彼女と共に居れば、忌々しい兵藤イッセーとその取り巻き共を超えられるかもしれないという希望を抱いたからなのかもしれない。
しかしそれ以上にハジメは彼女に惹かれ始めている。
白く、可憐で……そしてイッセーやあのヴァーリ以上にも思えてしまう強大な力を持つ少女に。
「貯水池を作ってそこに水を生成できないか……ですか」
「ああ、あの砂漠地帯を密林に変えた小猫ならできるかと思ったんだが……」
「やってやれないことはありませんけど……」
そんなハジメはといえば現在砂漠地帯を横断中に行き倒れていたとある公国の領主代理の依頼により、飲んだ者の魔力の暴走を促す毒素のある水をどうにかしたいと言う話を聞き、ものの次いでという形で、新たな貯水池を生成する事になった。
現状のハジメ達ならばそのくらいの事なら錬成師としてのノウハウを駆使すればどうにかなるし、なんなら砂漠地帯を一瞬で密林にしてしまった白音が居る。
なのでハジメは白音に頼むのだが……。
「そちらのユエさんの力でも可能ではないのですか?」
「…………」
白音と出会って以降、ハジメには自覚は無いのだが、なんでもかんでも白音を優先させたり頼ろうとするようになってしまった。
当然そんな状況を先に仲間となっていたユエやシアや香織といった面々は面白くなんて無い。
「確かにオレが補佐をすればユエでも出来るが……」
「ならばユエさんに頼めば良いのでは?」
「私でもこれくらいなら出来る。
ただ、魔力の補給は必要になるけど…」
そんな状況もあってか、焦りを見せるユエが自分だって出来るのだとアピールするのだが、ハジメはどういう訳か煮えきらない。
「いや……魔力が少し足りないんだろ? それってつまり」
「うん、ハジメのアレをお願いするけど、良いでしょう?」
「………」
魔力の補給という意味でハジメから定期的に吸血行為をしており、予想した通りの言葉にハジメは目を逸らした。
「……。白音もこの規模となると魔力切れを起こすのか?」
「いえ、私は別に――」
「た、例えば腹が減っちゃうとか」
「あー……それはあるでしょうけど、これくらいでは別に――」
「なら! それならオレの魔力的なものを食べれば良い!」
以前のハジメなら特に拒否感は無かった筈のユエからの吸血行為に対し、白音に見られてしまうという考えが過るあまり、回避しようとする言動が目立つ。
いや、なんなら『食べる』という特性を持つ白音には寧ろ自分のものを食わせると宣う始末。
これにはユエもショックを受けつつ思わず自分と同じくらい小柄な白音を睨み付ける。
「……」
「別に取って食べたりなんてしませんよ。
趣味じゃないですしね」
早い話が嫉妬なのだが、白音からしてみれば現状『餌』にもならないハジメに興味なんて無いので、ただただ鬱陶しいだけの話だ。
「別にアナタの力なんて食べませんよ。
どっちにしろ、そんな薄味以下のものなんて食べる気にもなれませんからね」
「う、薄味なのかオレの力は……?」
「ええ、早い話が今のアナタは食べるに値しません―――とはいえ、もう少し肩慣らしをしておきたいので、その頼みは一応聞いておきましょう」
そう言いながら勝手に落ち込んでいるハジメと、ハンカチでも噛んでそうな顔で睨んでくるシア達の視線を背に、事前に依頼主から案内された土地の前に立った白音は、かつての世界にて、夢の中に現れた『額に目を持ち、座禅しながら宙に浮かぶ妙な老人』を喰らった際に得た『力』を発動させる。
「水遁・大瀑布の術」
こうして砂漠の国に巨大な『湖』が出来上がるのだった。
一切の疲弊も無く一瞬で湖を作り上げた白音に、先の密林を作り上げた事もあってハジメ達はおろかそれを目撃していたアンカジ公国の人々は、白音を神のように崇めた。
「もしやアナタ様は女神なのでは……?」
「な、なるほど、女神とその御使いでしたか……!」
「そんなものになったつもりはございませんよ私は」
緑の無い場所に緑を作り、干上がった土地に広大な水を作り出した白音は人間にしてみれば神に等しき者に見えるだろう。
しかし白音はそんな人々に対して否定の言葉を送ると、最早興味がないとばかりにハジメに『後はご勝手にどうぞ』と後ろに下がる。
「………………」
その間もずっとユエ、シア、香織の三人は嫉妬めいた視線を白音に向け、愛子はおろおろとしており、ミュウはきょとんとした顔だったのだが、白音は先程の力を使った事で掴んできた自身の現状について考える。
(元の世界で私の夢の中に出てきた――確か六道仙人とか名乗っていた変なおじいさんを喰らった際に得た力はそのまま使えるみたい。
けれどやはり今の私はあの時到達した領域から落ちてしまっている………か)
長い間死んでいたせいか、ブランクがあると感じる白音は、やはりこのままイッセーのもとへと向かってもすぐ殺されると判断し、この世界の生物を喰らって力を完全に取り戻そうかと考える。
(………。いや、無理だ。
この世界の生物をいくら喰い尽くしても完全に力は戻らない。
やっぱりこの連中をある程度『肥えさせて』から食べた方が良いかもしれない)
そう考えながら、なにやら領主と話し込んでいるハジメ達を見やる白音には、どうなってもハジメ達が『食糧』にしか見えないらしい。
(この連中と、連中が言う先輩の周囲を飛び交ってる鬱陶しい蠅共を喰い殺せば……ふふふ、また昔のようになれる)
彼女の思考はどこまでもイッセーただ一人なのだから。
魔力の操作に長けたユエですら、自分からの吸血による補給がなければあれだけの規模の貯水池を作ることは出来なかっただろう。
しかし白音は先程砂漠を密林にしてしまうだけの規模の力を使ったばかりだというのに、全くの疲弊も無しに砂漠に湖を作り上げてみせた。
やはり彼女は兵藤イッセーと魔神族側に居るヴァーリを超える為に必要な存在で間違いない―――と、本人の知らぬところでますます白音に対して傾倒してしまっているハジメ。
「オアシスを汚染していた魔物は倒せたが……」
だからこそハジメは己の非力さを改めて自覚していた。
それはアンカジ公国に蔓延していた病の元凶とされるオアシスに住み着いた謎の魔物を相手に戦った事でより実感したらしい。
「浮かない顔ですね?
一応元凶らしい魔物とやらは倒したじゃあありませんか」
浮かない顔をするハジメに声を掛けた白音だが、ハジメは素直に喜べない。
何故なら先程の魔物を倒すのにハジメはユエやシアの協力があっての事だった。
これが白音であるなら一人で、それも一瞬で片付けられた事だろう。
「オレは弱いと思ってな……」
「はあ……」
「小猫だったらあの程度の魔物を一人で片付けられるって思えば余計思ってしまうんだよ……」
「別に一人だろうと三人がかりだろうとも勝ちは勝ちだと思いますけどね」
白音は勝ちは勝ちであると言うものの、ハジメはやはり白音の立つ領域に到達しなければ意味が無いと考えてしまっていた。
「それに、折角ユエさんとシアさんが一緒に戦ってくれたのですから、そんな浮かない顔をするものではありませんよ?」
「ああ……」
白音にとってすれば自分はそこら辺の雑草にしか思われていないだろう。
それは言い方を変えればハジメの最も嫌う『見下されている』と同義だろう。
しかしハジメは不思議な程白音に対して怒りが無かった。
それだけの差があるのが現実だからのか。
「早く用事を済ませてあげましょう。
町に残して治療やそのお手伝いをしているカオリさんやミュウちゃんや先生も南雲さんを心配してしまいますからね」
「おう……」
絶望しかなかった自分を救ってくれた事への情景があるからなのか……。
「っとと……なんですか?」
「ハジメに近い」
「ええ、近いのでちょっと離れましょう」
「な、なんだよお前ら? 別に近いなんてことは――」
「「近い(です)!!」」
「――お、おぉ、わ、わかった……」
その思いの果てに待つモノが何であるのか。
それはまだ誰にもわからないのだ。
終わり
一度は力の全てを壊された南雲ハジメだが、白音との出会いにより全てを取り戻し、そして更にその先の領域へと導かれていく。
それと同時にその傾倒っぷりも凄まじいものへと変わっていくのだ。
「なあ小猫。
前々から気になっていたんだが、お前が良く言う『先輩』ってのはその―――男なのか?」
「ええ、そうですけど、それが?」
「そ、そいつは強いのか?」
「大分甘めにアナタを見積もったとしても、今のアナタの数億倍は強かったですね……ふふふ」
「…………………」
それ故に、彼女が愛しそうに語る『先輩』とやらが気になって仕方ないお年頃となっていたハジメは、躍起になってその先輩とやらを超えて白音の気を引かんとする。
そんなハジメの態度に嫉妬爆発のユエ達もまた白音を超えてハジメの気を引こうと今よりも先の領域に進化せんとする。
「わ、私の魔法が消えた……!? それにその右目は……!?」
「秘術・少名毘古那。
私の瞳術のひとつですが……ふむ、どうやらこの世界の概念に対しても行使できるみたいですね」
それぞれの――なんというか、一方通行にも程がある思いと共に。
「やぁぁぁっ!!」
「…………」
「―――んなっ!?」
「ご、ごふっ……!」
「な、なんでユエさんが……!? わ、私は確かに小猫さんを……」
「瞳術・天手力」
彼等は駆け上がらんとするのだ。
「は、ハジメ!?」
「は、ハジメさんが泡を吹いて気絶しています!」
「ちょ、ちょっと小猫さん!? 一体どういうことですか!?」
「ハジメくんになにをしたの!?」
「部屋で寝ていたら勝手に入ってきて、鼻息荒くしながら私に触れようとしながらベッドに入ってきたのでぶっとばしただけですけど、それがなにか?」
『はぁっ!?!?!?』
ちょっとギスギスしながらも……。
「ち、違う! そ、その……あ、あれだ! い、いつも小猫には世話になりっぱなしだから、日頃の礼を言うだけのつもりだったんだ! だ、だけどその……小猫の寝顔を見てたら気持ちが押さえ切れなくなって……」
『………』
「は? 今の話を聞いても私に落ち度なんてないでしょう? この人が勝手に盛った雄犬のように私を犯そうとしたのに、何で責められなくてはならないんですか?」
「お、犯すなんてしねぇ! た、ただオレは――」
『黙ってて!!!』
「――――――は、はい」
いや、大分ギスギスさせながらも。
「なるほどね、前と比べて強さを増したのは、あのバカ猫の仕業だったか…」
「そうだ……! 後はテメーをぶっ殺せば小猫はオレと……!」
「だから、あんな悪食バカ猫なんぞこっちから願い下げなんだよ。
ヤりたきゃ勝手にヤれや」
終わり
補足
南雲ハジメ
ありふれの主人公でありザマァ系の開祖……かどうかは不明。
しかしザマァしたい相手がよりにもよって人外絶対殺すマンルートのイッセーのせいで、逆にコンプレックスが肥大化してしまう。
一度はそれまでの努力が壊されたのだが、これまたよりにもよって『最強最悪の白い猫』こと白音たんと出会ってしまい、そして壊された力を復活させて貰うことで、彼女への傾倒が凄いことになってしまった。
一応白音たんが『肥えさせてから喰らう』の為に異次元の力へと到達するにはするのだが、代わりに白音たんしか見えなくなっていくという、大切ななにかを見失う状態に突入することになる。
今後は色々と耐えきれなくなって夜這い仕掛けるわ、お風呂中の白音たんを偶然と事故装って覗くだのといった――なんか原作イッセーに近い事をやらかし始める事になるとかならないとか。