元ネタは――なんだったかも忘れてる
クレイジーな世界に堕ちた赤龍帝
運は悪い方だと常に考えていた少年だったが、この目覚めは最悪だった。
「カミサマってのは、余程オレ達が嫌いらしい」
人に威張れるような人生を送ってきた訳ではないが、それにしたって、何故自分達はこんな奇妙キテレツな目にあわなければならないのだと、自分の人生をネジ曲げたであろう『神』の顔面を是非ぶち抜いてやりたいと少年は目の前に飛び込んでくる地獄絵図にひきつった笑みを浮かべる。
「負けたら死ぬってのはちゃんと覚悟してきたつもりだったが、こればかりは想定できなかったというか、オレ達はただ死ぬことすら許されないってか? 罰当たりな真似をした覚えはないんだがなぁ……」
明らかに常人ではない――言うなれば死人のような肌色をした人間のような生物が、逃げ惑い、泣き叫ぶ人々に襲いかかり、そして文字通りその肉を食らう。
「昔やってたバイ○ハザードってゲームみたいだなまるで……」
まさしく異常にて狂気そのものな光景を前に少年は、幼少の頃にプレイしたことのあるテレビゲームを思い出す。
「生きててラッキーって思ってたのによぉ……」
ゲームだから許される状況も、リアルに見せられると気分が良いものではない――そんな事を思う少年の背後から、新鮮な人肉を求める理性失いし人間が襲い掛かるが、少年は慌てる様子も無く、そして振り向く事もなく、軽く叩くような裏拳を叩き込む。
「げばっ!?」
「おっさんに噛まれる趣味は無い! 人妻か未亡人とかなら吝かでもないけどな! ………っと? しまった軽くのつもりだったが、つい奴等と闘ってる時の感覚で殴ってしまったぞ」
言動に一切の緊張感が見受けられないものの、理性を失いし元人間――暫定的にゾンビと呼ばれし生物は首から上を消し飛ばされながら数十メートル程吹き飛び、二度と立ち上がる事は無かった。
「完全に死んだのか? うーん、頭を潰せば動かなくなってのはゲームと一緒なのか………とぉ?」
軽い裏拳で頭部を消し飛ばして見せた少年は、冷静に自身が手にかけたゾンビを黙らせる手段がゲームのゾンビとあまり変わらなそうだと理解すると同時に周りを見渡せば、次々と少年の血肉を求めて寄ってくる他のゾンビの群が。
「オレ達がお仲間ではないことくらいの認識はできるらしいな……ふっふっふ」
状況からすれば絶体絶命なのだが、少年はそんな状況とは反対にニヤリと笑いながら構える。
「なら話は簡単だ―――なぁ、ドライグ?」
『ああ、どうやら死後の世界とやらでもなさそうだしな』
異常な光景に対して恐怖ではなく獰猛な笑みを溢す少年の左腕に赤い籠手が纏われると『Boost!』という掛け声と共に赤い閃光が放たれるのだった。
ここが死後に訪れる地獄の世界ではなく、現実の世界であることを、無数に現れるゾンビ達の頭部を潰しながら己の中で租借していく少年。
『しかしここがオレ達が居た世界でもないのは間違いない。
お前も気付いているだろう? どれだけ探ろうとも奴らの気配を感じぬことを?』
「おう。
まあそもそもあの時オレ達は死んでた筈だったのにこうして生きてるって時点で、そうなんじゃなかろうかとは思ってたよ。
でなけりゃああのクソッタレ共がわざわざ無傷でオレ達を生かす訳がないし」
『やはり奴の言う『転生の神』の仕業か……』
「それもどうなんだろうな。
転生の神があの野郎を寄越してきてオレ達を消そうとしてたんだろ? それなのに生かすか?」
『うむ……今ところは何故オレ達が生きているのか、そしてここが何なのかはわからぬな』
「だな。
まぁ、理由はなんにせよ、生きてるだけマシと前向きに思うことにしよう。
………クソッタレってな」
見覚えのない町の空き地で目覚めた少年は、他の誰にも見えければ聞こえることも無い声と会話をしながら、ここが何処であるのかの情報を獲ようと宛もなくフラフラしながら、呻き声しか出せずに人語すら話さないゾンビをおやつ感覚で葬る。
その過程で、とある民家に侵入した事でここが自分にとって馴染みのある『日本』であることを知り、電気が通っていなかったので新聞や雑誌で情報を得ていく。
「おいおい……本当にバ○オみたいな事になってるのかよ……」
『その様だな。
この状況となってどれほど経ってるのかはさておき、生き残りの人間を探して状況を直接聞いた方が良いかもしれん』
この世界が少年が生きた世界でやっていたテレビゲームのようなパンデミック状態であることを。
実に世紀末過ぎる状況に、少年と少年にドライグと呼ばれし声は、意味もなく襲い掛かってくるゾンビ達を肉片にし続けるよりも生存者を探してみた方が良いと判断し、民家に残っていた水と食料を、同じく置いてあったリュックサックに詰め込んでから民家を後をする。
「ドライグ、どれだけ小さくても構わないから気配を探れるか?」
『……。そういう細かい真似は面倒だが、やってはみよう』
最早この世界が自分達の生きた世界とはまるで別の世界であることを確信している少年は、相棒であるドライグに気配の探知を頼むと、人の集まりそうな建物を襲い掛かるゾンビをぶちのめしながら探し続ける。
『……居たぞ、ほんの僅かだが、この畜生共とは違う小さな気配を複数感じる』
「どこだ?」
『あの大型スーパーの中からだ』
結果、半日以上休むことなく街を歩き続けた少年は、相棒によってゾンビ達とは違う気配がある建物を発見する。
「ナマモノ系は駄目になってんな」
大型スーパーに入ると同時にゾンビの歓迎を受けた少年だが、1分もかからずに全滅させると、売場に残っていた食料を確認しながらドライグの案内の通りに歩を進め、バックヤードへと入る。
「む、バリケードか? ということはこの中に居るのか……」
バックヤードへと入ると入り口に机や椅子を積み重ねた簡易的なバリケードが張られており、少年はここで何者かが中に居ると確信する。
「もっとも、ゾンビ化しちまってるってオチかもだけど……」
ここまで適当に歩いていても生存者とは会えなかった少年は、実を言えば生存者が居る事に対して半ば諦めなような気持ちがあったし、そもそも生存者が居たところでなにをどうするかのプランなんて考えてはない。
「……」
「!?」
無いのだが、誰かと会話はしたかった。
故に少年はバックヤード内に居た――顔色が自分と同じ男児を発見した時は無意識に目を見開いた。
「子供……?」
「…………!」
「あ、ちょっと……」
小さな気配と言われていたとはいえ、まさか子供の生き残りが居るとはおもなかった少年は、自分を見るなり急いで逃げるように走り去ろうとする男児に声をかけるが、聞こえてなかったのか、男児はバックヤードの奥の部屋へと入っていく。
当然生身の人間の生存者は貴重だったので、後を追ってその部屋へと入ると……。
「……!?」
中に居たのは先程見つけた男児と、眠る男児――そして自分を見てぎょっとした顔をしている年頃はあまり少年と変わらなそうな少女だった。
「な……え……?」
「確かに小さい気配が三つ、精度は完璧だなドライグ……」
これが少年にとっての再起の始まり。
そして少女にとっての『奇跡』の始まり。
その人は先の見えない真っ暗な穴倉のようなこの場所に現れた。
「他にも生存者が居たけど……外に出たっきり帰ってこないのか」
「は、はい……」
その人は背負っていたリュックに入っていた食料や飲み物の全てを私と弟達に与えてくれた。
当然最初に私はそんなに貰えないと断った。
けれどその人は涼しい顔で『ああ、腹減ったら表の売場から貰って行くから食えよ』と……。
私はその言葉に驚いた。
だって売場にはゾンビ達が徘徊している。だから私と弟達は何も食べられずに隠れていただけだったのに。
でもその人はその証拠とばかりに10分程部屋を出ていくと、涼しい顔をしながら戻ってきて、売場に残っていた缶詰や水を持ってきた。
なんでも、この人は私達とこうして会う前で普通に街を歩いていて、襲い掛かってくるゾンビを返り討ちにしてきたらしい。
……正直私とそんなに年の変わらなそうな男子といった風体なのもあってとてもではないけど信じられなかった。
「それで今後キミ達はどうするんだ? 外歩いてたけど救援とか期待出来なさそうだぞ?」
「あ、アナタはどうするの……?」
「オレ? オレは当然『帰る』よ。
キミ達には悪いけど、オレはこの世界が滅ぼうがどうなろうが正直どうでも良いんでね」
でも彼はその左腕にあり得ない現象と共に見せてくれた。
そして私達の目の前で手からビームのようなものを放ってゾンビ達を消し飛ばしながら言った。
『頭のおかしい奴と思ってくれて良いけど、オレはこの世界の人間じゃない』って……。
「どうやって?」
「さぁ? 全然わかんないけど、何時までもここに引きこもる気も無いからなオレは」
「………」
あの時見せられた光景と衝撃は忘れられない。
あれだけ逃げて隠れることしか手立てがなかった私達とは違って、彼は涼しい顔をしながらゾンビ達をなぎ倒し、ビームで消し飛ばしたあの衝撃は……。
いえ、何よりも私が驚いたのはその名前だった……。
「そ、その……私だけじゃあ弟二人を守ることは出来ない。
だから、もし行くのなら私達も連れていって欲しいの……」
「まぁ、生き残るって事だけを考えたらそうなるだろうね」
「う、うん。イ……イッセーくんが良ければだけど」
私達に食料を全部渡してくれた時に名前も聞いたのだけど、私はその名前を聞いてハッとなった。
その名前に覚えがあるのもそうだけど、よくよく彼の顔を見ればあまりにも似ていたから。
『どうするつもりだイッセー……?』
「どうするって言われてもな。
流石に女の子と子供二人と出会しといてそのままサヨナラってのはな……」
『だろうな。お前ならそう言うだろうと思ったぞ』
世界がこうなる前に、偶々見ていた深夜にやってたアニメの主人公とあまりにも……。
「ま、良いだろ。
正直話し相手が相棒だけだと侘しくてな……」
「「……!」」
兵藤一誠という主人公にあまりにも……。
「じゃあそう決まればここを出るぞ。
保存のきく食い物や飲み物はあらかた失敬しつくしたしな」
偶々深夜にやってるのを観て、ハマってしまったアニメの主人公と同じ名前、同じ顔、同じ力を持つ人と出会った事は紛れもない奇跡だと私は思った。
「先に言うけど、なるべくキミ達のことは守ろうとはするけど、オレの目の届かないところにフラフラされたら保証はできないぞ?」
「う、うん! わかってる……!」
「オーケー、なら暫く宜しくな?」
「う、うん……よろしく……」
「?」
「「………?」」
だって私……変かもしれないけど、イッセーという主人公が好きになりすぎて現実の男性が同じ顔にしか見えなくなっちゃったから……。
バ○オみてーな世界での奇跡の出会いと再起篇――始まらない。
『Boost!』
「龍拳・爆撃!!」
バ○オみてーな世界で目覚めた赤龍帝は、生存者の三人姉弟と共に、クレイジーな世界をさ迷う。
「ほれ、キミも食いな」
「でもイッセーくんは……」
「オレはまだ食わなくても良い。
まあ、これも信じられないかもだがオレは一度食えば2ヶ月は飲まず食わずで動けるんでね」
非戦闘員というお荷物を抱えている感は否めなかったが、イッセーはそれでも三人姉弟をゾンビ達から守る。
そのあまりにも非現実的過ぎるパワーを目の当たりにしたせいなのか、三人姉弟の弟二人はイッセーが異世界から来たヒーローだと思うようになり、姉は密かなるミーハー心を段々と隠さなくなってきた。
「あ、あのーイッセーくんって女の子に興味ある……よね?」
「は? なんだ急に……?」
「いやその……イッセーくんに付いていってから暫く経つけど、なんというか思ってたよりイッセーくんってアレだな……なんて」
「アレってなんだよ? そりゃあこの世界がなんでもない普通の世界だったら、人妻とか未亡人をナンパしまくるだろうけど、未だに人妻やら未亡人とか年上のお姉さんの生存者とは出会えないしな……」
「…………………。え、あれ? あ、あの……じょ、女性の胸とかに興味ないの?」
「……。具合でも悪いのか? どうしたんだよ本当に? キミらしくないぞ?」
「だ、だって! 何故かはわからないけど、こうやって守って貰ったりご飯を食べさせてくれる見返りに……そ、その……無理矢理にでもアレな事をしろって言われるのかなぁって思ってたから……」
「……。え、オレそんなやべー奴に見えたの?」
「ち、違うの! イッセーくんがとかじゃなくて! な、何でかは私もわからないけど、もしイッセーくんじゃなくて他の誰か違う男の人と会ってたらそういう事強要させられてたのかと思っちゃったから……」
「あぁ……。(探索中に女のゾンビとヤッてる奴が居たのを見ちまった事はこの子には黙っておこう)」
しかし思ってたより、自身がアニメで見た一誠と違って歯痒いレベルで何にもしてこなかったので、少女は途中で恥ずかしくなりながらも切り出してしまう。
「取り敢えずしないよ。
そんな真似したらキミの弟二人にどの面下げられるんだって話だし。
そもそもキミ、オレとそんな年変わらないか下だろ? オレの趣味じゃないというか」
「……………………」
『お前の言葉にショックを受けて泣き始めたぞ……』
「い、いやいや寧ろほっとする場面じゃねーの? あ、えと、ごめんな?」
想像してた一誠より、変に片寄った好みなせいでなんもされない事に寧ろ悲しむ少女に困惑させられたり。
「あ、あのさ。
いつもイッセーくんだけ一人で寝るのは変だから、一緒に寝ない……?」
「「………」」
「ほ、ほら二人も一緒が良いって!」
「そんな目ェ血走られたら怖くて嫌なんだけど……」
ゴールの見えない道を彷徨う赤龍帝の行き着く先は誰にもわからない。
終了
補足
バ○オみてーな世界(日本)
生き残りの姉弟とほのぼのゾンビ蹴散らしスローライフによる再起。
……って誰の脈絡もオチもクソもねぇネタでした