現在は元執事であり、高校生を渋々やっている兵藤イッセーは肉親である両親との距離感が未だに曖昧である。
取り返しのつかないレベルの不仲というわけでは無いし、この世界の両親はイッセーが友達を作りたがらない人見知りの激しい性格であることや、教えた覚えもないのに妙に家事が上手い等の不可解な点を理解した上で、親としての愛情を注いでくれているし、唯一自分達の息子が素となれるお隣さんの娘さんのことも受け入れている。
よく言えばおおらか、悪く言えば呑気な性格のお陰でイッセー的には助かってると言えなくもないのだが、それでもイッセーの脳裏に浮かぶ『親』とはグレモリーとシトリー夫妻だった。
故に、未だにイッセーは実の親に対する接し方がわからず、お隣さんの娘さんという体のセラフォルーが間に入る形で何とか親子としての関係を維持させているのである。
「い……行ってくる」
「はいいってらっしゃい。
じゃあ今日も人見知り息子のことお願いねマコトちゃん?」
「はーい! マコトちゃんにお任せあれお義母様!☆」
「…………」
ちなみに両親的には、ただ唯一息子の親友である世羅さんところの娘さんには感謝しかない。
「さ、行こっかいーちゃん?」
「ああ……てかくっつくんじゃねぇ、歩き辛いだろうが」
「こらイッセー! 折角マコトちゃんのご好意なのに……!」
「大丈夫ですよお義母様、こんな事言ってますけど拒絶はされませんからー☆」
小さい頃から誰ともはなそうともせず、友達の輪に入ろうともせず、独りで居る気むずかしすぎる息子の友達で居てくれるし、何ならこの性格のままだと永遠に恋人も何も出来なさそうな息子とお嫁さんになってほしいものだ――――と、嫌がる息子に動じず腕を組んで学校へと歩き出すマコトを見送るのであった。
「~♪」
「…………」
母親に朝っぱらから怒られてしまったイッセーは、何を言っても――それこそ突き飛ばしても蹴り飛ばしてもまたひっついて来るであろう、世羅マコトという偽名を現在名乗るセラフォルーと共に学園への道をテクテクと歩く。
「…………。昨日の晩は散々お前に付き合ってやったんだ。
魔力は回復してんだろうな?」
「うーん……多分4割くらいは戻ったと思う」
どうもあの両親に気に入られてる、正体が悪魔でしかも魔王であるセラフォルーに一旦捨てた魔力がどれだけ戻ったのかを確認し、それが漸く4割まで戻っていると返されて微妙な気分だった。
「妙に遅くないか? あれから何年も経ってるというのに……」
「分身体であることがバレないように精度を保たなくちゃいけないからね。
分身体を消せば直ぐにでも元の魔力に戻れるけど、それをしちゃったら面倒でしょ?」
「……まあ」
なるほど、そういうものなのか……と、専門外が故に取り敢えず納得する。
一応イッセー的にも、4割戻れば自分の身を守る程度と事はできるし、この時代で敵になりそうな輩が現れたとしても、自分がぶちのめせば良いとも思っている。
今頃冥界でレヴィアタンをしてるであろう分身体の事がバレてしまう方が厄介な展開になるという意見には同意できるので。
「それよりいーちゃんこそ大丈夫なの?
昔と違って神器が宿ってるみたいだし……」
「別に問題はない。
オレの中に住み着いてたあげく、ごちゃごちゃとうるせぇから大分前に黙らせてあるし、当然だが死んでも使う気は無い」
逆にイッセーは力自体は落としておらず、肉体的にも大人へと成長した今はかつての頃と変わらぬスタイルで戦えるのだが、セラフォルーが言う通り、それとは別にイッセーはかつての頃には無かった―――厳密に言えば在った筈だった力である神器が宿ってしまっている。
「二天龍の片割れの赤い龍だっけ? 昔いーちゃんの皮だけの模造が持ってた……」
「ああ、それもあるからますます使いたくも無い。
例えこの時代が『奴等が居なかった時代』で、本来宿していた力だったとしても、オレはもうオレだ。
赤龍帝とやらの兵藤一誠じゃなく、ただの悪魔の使用人だっただけの――ただの一誠だ」
かつて『清算』した事であるとはいえ、例えこの時代が本来の人生を歩み直せる時代であったとしても、日之影一誠としての生を歩んできた以上、日之影一誠にとってら不要のものだとハッキリと言いきるイッセーに、セラフォルーは何を言うでもなく微笑みながらイッセーに組付くその腕に力を込める。
それが恥ずかしいのか、イッセーはしょっぱそうな顔をする。
「何時までも引っ付くんじゃねぇよ。
そろそろ学校が近いから離れろ」
「えー? なんでよー? この前から思ったけど、もういっそのこと教室までこうしながら行こうよ? いーちゃんが徹底的に陰キャ貫いてるのと、陰キャっぽい変装をしてる私がカップルやってても誰も気にしないと思うんだけどなー?」
「何がカップルだ。
テメーの実年齢考えてから言いやがれ」
「ひっどーい! そんな私に酔っぱらった時のいーちゃんは『あーんなこと』とか『そーんなこと』とか『いやーんなこと』とかしたくせにー!?」
「まったく記憶にございませんな」
昔の事を掘り返してくるセラフォルーに、イッセーは鼻で笑いつつ、どこかの政治家みたいな事を言う。
「うっそだー?☆ 絶対覚えてる癖に~?」
「オメーがアホだって事しか覚えてねーよ」
こんな事を言うイッセーだが、実は普通に覚えているし、本人に直接伝えることはしないが、今後仮に今のセラフォルーの事が向こうにバレて連れ戻しに来られたとしても、意地でも渡すつもりもない……と考えてる。
(セラフォルーが言うには、冥界に居るだろうヴェネラナのババァ達はこの時代の者だ。
まあ、一番驚いたのはミリキャスがこの時代じゃサーゼクスとグレイフィアの息子として生まれてきたらしいがよ)
「? どうしたのいーちゃん?」
(何故オレとセラフォルーだけが並行世界の過去にタイムスリップしたのかは結局まだわからない。
何か知っていそうな、あの人外女も探しはしたがどこにも居なかったしな……。
だからこそだ……)
「え、そ、そんな見つめてどうしたの? も、もしかしてちゅーしたいとか?」
「……。ふ、やっぱり変わらずのアホ女だなオメーは」
「は、鼻で笑って言わないでよもう……」
なんならそれが原因で殺し合いに発展するならするで上等だとイッセーは本気で思っている。
それだけ、日之影一誠として生きた事が大切なものであり、そんな自分を全て知ってくれているセラフォルーだけを本当の意味で信頼するからこそ、どこの誰にも取られたくない―――と、思っているのだ。
(オレは二度と奪われねぇ。
オレから奪う奴は、親だろうが神だろうが――なんだろうがぶちのめしてやる)
セラフォルーという……初めて会った頃から妙にいじめたくやる年上の悪魔女を……。
「行くぞセラフォルー」
「もう、その台詞はいーちゃんよりお姉さんである私の台詞なんだけどなぁ……。後は何時でもどこでもイチャイチャさせてくれたら良いんだけど」
それはそれとしてアホなカップルみたいにベトンベトンするのは普通に恥ずかしいので、ブー垂れるセラフォルーを引き剥がしながらそそくさと前を歩くのであった。
コミュ障を全く治さず、そして治す気もなく人生2週中なイッセーは常に視線を斜め下に向けたまま学園へと到着すると、キャーキャーとオカルト研究部の面々の姿を見て騒いでる生徒達の人だかりを避けながらセラフォルーと共に教室へと入ると、何やらキレ散らかしてる複数の女子達に追い回されてる二人組の男子生徒騒ぎ声に鬱陶しさを感じつつ、俯き加減で授業が始まるのを待つというのが学生生活を送るイッセーのルーティンだ。
「おはよーマコト」
「おはよーアイちゃん」
「……………」
席まで隣同士であるセラフォルーにクラスメートの女子が軽い挨拶と共にやって来る。
「朝から見せつけてくれちゃうわねマコトも? 途中まで兵藤とくっついて歩いてたでしょ?」
「え、アイちゃん見てたの? あちゃー……見られてたみたいだよいーちゃん?」
「……………………チッ」
イッセーは一度も会話もしたことは無く、なんならまともに目も合わせた事がないクラスメートにてマコトという偽名を名乗るセラフォルーとよく話をしたりしている女子生徒が、意地の悪そうな笑みを浮かべながら登校途中までの二人を見ていたと、からかうように言ってくる。
アイちゃんなる渾名の女子に対してマコトは言葉とは裏腹に寧ろ嬉しそうに腕を組みながら机を睨んでいたイッセーに振ったせいで、つい反射的に舌打ちを小さくしてしまう。
「返答が舌打ちだけとか割りと傷つくわー……。
これでも一年の頃からの付き合いだと自負してるんだけどねぇ?」
「………………………………」
「あー……人見知りが強いからねいーちゃんは」
「人見知りっつーより典型的なコミュ障じゃない?」
「…………………………………………」
フォローするマコトに対してアイちゃんと呼ばれる女子生徒は、一切顔を上げないままのイッセーを見ながらため息を溢す。
「見た目とは裏腹に結構明るいマコトはよくこんな暗い通り越してヤバそうな雰囲気してる兵藤と仲良くやれてると思うと、少し尊敬しちゃうわ」
「いやぁそれ程でも~☆」
「…………………………………」
視線を感じて実は今軽く吐きそうになってる―――とまでは気づいていないアイちゃんと呼ばれてる女子は、一年の頃からアンバランスだと思っていた面白コンビが気になるらしい。
(なーんかアンバランスに見えてそうでもないこの二人が気になるのよね……)
(こ、この眼鏡女は何時までこっちを見てる気なんだ? き、気持ち悪くなってきた……)
コミュ障男的には迷惑な話なのだが、逆に徹底して他人と喋ろうとしない方が逆に目立っている事に本人は気づいていない。
加えてイッセーはまだ気づいていない。
神器を――二天龍を宿してしまっている事の意味を。
かつてのように影に隠れようとしても、見つかってしまうだけの『厄介なもの』であることを思い知るのは、これより約半日後の放課後まで時を進めなければならない。
「今日はこのままいーちゃんのお部屋に行くよ。
完成した新しい衣装見て貰いたいし、久しぶりにいーちゃんにあの格好になって欲しいしさ?」
「ああ……」
お察しの通りに部活動には入っておらず、お察しの通りの帰宅部であるイッセーは、変装中のセラフォルーと共に雑談をしながら自宅へと帰っている。
(セラフォルー)
(うん、わかってるよいーちゃん)
そんな二人は学校を出た辺りから、イッセーとセラフォルーの後を付いてくる気配を即座に察知しており、表向きは適当な雑談をしている友人同士という皮を被りながら、後をつけてくる誰かに警戒する。
「あ、帰りに買おうと思ってたのがあるからコンビニに寄らないといけないんだった。
悪いけどいーちゃん先に帰っててくれない?」
「ああ、わかった……」
今の自分達をわざわざ尾行してくる理由を考えるとするなら、世羅マコトという偽名を使って人間界で生活しているセラフォルーの正体がひょっとしたらバレたかもしれないというぐらいしかイッセーには思い浮かばない。
故に雑談しつつ目で合図を送り合った二人は、この後をつけてくる誰かが、どちらに用があるのかを確かめる為、一旦ここで別れて行動しようと、別れ道に差し掛かった所でイッセーは右の道に進み、セラフォルーは左に進んでみる。
(セラフォルーはアホだが、一応周りに悟られないような対策はしていたし、その対策もオレ達の生きた時代のサーゼクス達でもないかぎりバレやしないと思っている。
わざと別れ道で別の道を歩いてみて、もし尾行してきた誰かがセラフォルーの方へ行った場合はそれがバレちまったと考えても良いだろう……)
そう、恥ずかしいので本人には絶対言う気はない評価をセラフォルーに対して信頼の意味もあってしているイッセーは、学園から今まで尾行してくる誰かが十中八九セラフォルーの方に行く筈だと結論付けながら歩いているのだが……。
(なに……? オレの方に来ただと?)
イッセーの予想は完全に外れており、尾行者が自分の方へと近づいている事に気づいて内心動揺してしまう。
(どういう事だ? オレはてっきり冥界の悪魔辺りが、セラフォルーの影に気づいてしまったのかと思ったが……)
間違いなくセラフォルーではなく自分を尾行している事を確認しつつ、これまで目立った行動はしていなかった筈だとここ最近の行動を思い返す。
『いーちゃん見て見て~! 新しい衣装作ったんだ~☆」
昔から全く変わることのない趣味に付き合わされたり。
『ふふふ、やっぱりいーちゃんは
もう悪魔の執事じゃなくなったのに、燕尾服を着させられたり。
『ひ、酷いよいーちゃん! 折角今日のトレーニングの為に作った衣装を吹き飛ばすなんて……って、笑うなー!』
何時ものトレーニングの際に、昔と変わらず、何と無くな理由で魔法少女っぽい格好をするセラフォルーの服だけを消し飛ばしてゲラゲラ笑ってやったり……。
(………うん、別に目を付けられそうな真似はしてねーな)
ここ最近の行動を思い返した結果、イッセー的には特に目立つ真似はしていないと結論付けるのだが、誰も突っ込む者が居ないので本気で目立ってないと本人は思っているらしい。
(となれば、このまま人が寄り付かなそうな場所まで誘導し、この尾行してくる奴が誰かをまずは突き止める。
……いや待て、もしかしたらオレをつけている事自体が誘導の可能性もあるのか? チッ、本当なら即座に手足をぶち折ってから浚って拷問して誰なのか吐かせてやりてぇんだが……)
下手にここで元悪魔の執事として行動してしまった場合のリスクを考えてしまい、内心舌打ちをしながらも人気の無さそうな場所まで誘導せんと歩き続けつつ、セラフォルーの気配はきちんと感じられる事を確認する。
(セラフォルーの気配は感じられる。
……ブラフの可能性は低くなったが、逆に何故オレをつけ回すんだ?」
引き続き十数メートル後方から感じる気配の主の意図がわからず、元々短気な性格をしているのや、コソコソしなければならない現状に苛立つイッセー
すると、それまで一定の距離をとって追ってきていた気配が突然その距離を縮めてきたのだ。
「……!」
恐らくは走り出したと思われるのだが、後ろを急に向けば不可解に思われると思ったイッセーは何も知らない風を装う為にのろのほと斜め下辺りを見ながら歩き続けていると……。
「あ、あの! そこのちょっと猫背気味に歩いてる茶髪の人!」
(な、なに!? 普通に話しかけてきた……だと……!?)
走って距離を縮めてきた気配の正体が背後から声をかけてきたのだ。
これにはてっきり襲撃だのなんだのと想定してきたイッセーも、聞こえる声にまるで覚えも記憶も無いものであるのもあって、盛大に狼狽えてしまい、その場に止まってしまう。
「や、やっと気づいてくれた……! よかったぁ」
「………………………………」
恐る恐る立ち止まって振り返ったイッセーは、ここで完全にフリーズしてしまう。
それはその声が全く覚えの無い女の声であり、その通りに見覚えのない長い黒髪の女だったのだから。
「と、突然でごめんなさい。
その、アナタが学校から帰るのをずっと見てたけど、緊張して話し掛けられなくて……」
「…………………」
その言葉で間違いなく尾行者本人だと確信してしまったイッセーだが、ご存じの通り元悪魔の執事であったイッセーは、極度の対人コミュニケーション能力音痴だ。
そんな男が全く見知らぬ少女に話し掛けられてしまったらどうなってしまうか……。
(ぐ、ぐぉぉっ!? な、なんのつもりだこのアマ! や、やべぇぞ、むっちゃ吐きそう)
態度には出さず、今はまだ無表情をなんとか保っているが、内心はパニックになって吐き気を催し、テンパってしまう訳で……。
「あ、あの……私、天野夕麻って言います。
アナタの事、この前偶然見かけた時から好きになっちゃた―――」
そんな内心を知らない謎の黒髪少女は、自分の名前を名乗ると同時に尾行してきた理由を、日之影じゃない本来の兵藤イッセーなら簡単に墜ちでもしそうなしおらしさで告白しようとしたのだが……。
「ごぼぇっ!?!?」
「ぎゃあ!?!?!?」
相手は日之影の一誠だったので、コミュ障メーターを一気にカンストさせると同時にアスファルト目掛けて盛大に吐血した。
「ごほ! げほっ!」
「ちょ!? だ、大丈夫!?」
アスファルトを血に染めまくるイッセーに、天野夕麻と名乗った少女はぎょっとなりながら蹲ったイッセーの背に手を伸ばそうとする。
しかし後数cmで指先が振れようとした時、人間のものとは思えない血走った目と狂犬のような狂暴性を秘めた形相をしたイッセーが少女を止めた。
「オレに触るんじゃねぇ!!!!」
「っ!?」
あまりの形相と声に天野夕麻は素で驚いて固まっていると、ゲホゲホと咳き込みながら口に残る血を制服の袖で乱暴に拭っているイッセーはギロリと狂気の目で天野夕麻を睨みながら――――――――
「そうか、くくく……なるほど、納得したぜクソがァ」
「え……」
ふざけた台詞をペラペラ宣いながら近寄ってきた女が完全に『皮』であることを見抜いた。
「ちょ、ちょっと本当に大丈―――」
「くくくく、心にも無いこと抜かすなや?」
「そ、そんな事無いよ! こ、こんなに血を吐いてるのに心配じゃないわけが――」
「へぇ? 面白いな……『純粋鴉』にそんな精神があるとな思えねぇぞ?」
目の前の少女が、少女でもなければ『人間でもない』事を完全に察知したイッセーは、昔からそうだが『敵』と断定した相手には、戦意と殺意がコミュ障を一時的に抑え込む。
「な、なんの事? よくわからな――」
「堕天使に目を付けられる覚えは無いんだが」
「…!?」
それでも困惑するような表情でシラをきろうとする天野夕麻に、イッセーはハッキリとその正体である種族名を口に出すと、今度こそ天野夕麻の顔が強張った。
「まあ理由なんぞどうでも良いし、逆に狙いがアイツじゃなくて
安心した」
「……………」
「さて、二度も言わすなよ? ――――――堕天使がオレになんの用だ?」
この時点で人間に化けてるつもりらしい女堕天使を、生きて逃がす気は無いイッセーは、素直に吐いてくれるとは思わないが、この女の目的を敢えて訪ねつつセラフォルーと別の場所から、この時代のリアスが単独でこちらに向かっている気配を察知する。
(チッ、今からコイツを半殺しにして拉致って拷問するには時間が足りない。
このままだとこの時代のリアスにバレちまう……)
口封じで殺すのは確定だとしても、目的や他に仲間が存在するかまで聞き出すには時間が足りないと判断したイッセーは、気付けば冷笑しながら『予定と違ったけど、仕方ないからここで死んで?』と、天野夕麻が堕天使特有の光の力で生成した槍を心臓めがけて投げ付けてきたので、その光の槍を片手で掴んで受け止める。
「なっ!?」
自分の攻撃がこともなく掴み防がれた事に目を見開く天野夕麻の顔面目掛けて、その掴んだ光の槍を投げ付けるイッセー
「ぐっ!?」
「む……」
本人が投げ付けたよりも遥かな速度で天野夕麻の顔面を貫くつもりだったイッセーだったが、割りと必死に上体を逸らしたせいで避けられてしまった。
(……。チッ、殺しの勘が鈍ったか? 殺すつもりだったのに避けられた)
「く、自覚の無い神器保有者だから楽に殺せると思ったのに……! あ、アナタこそなんなのよ!?」
プライドでも傷つけられたのか、一気に堕天使としての中身を現すような歪んだ形相となる天野夕麻の問いなぞ耳に入ってすら居ないイッセーは、トレーニングだけでは維持どころか進化もせず、寧ろ退化すらしてしまった今の『敵を殺す』感覚に舌打ちをする。
「しかもこの町の管理をしている悪魔の気配が近づいてきてるし……!」
(せめてこの時代のリアスとソーナが取りこぼした『はぐれ』を相手に勘を磨いておくべきだったか)
しかしこの程度の堕天使なら勘は鈍っても消せると気持ちを即座に切り替えたイッセーは、セラフォルーと同じアメジスト色の瞳色に変色させながらリアスの接近に気を取られた堕天使としての名前も知らない―――いや、もう知る必要もない女堕天使の眼前まで一瞬で移動する。
「なっ……!?」
「…………」
保持はしているけどここ暫くの監視の結果、自覚すらしていない人間風情と高を括っていた。
それでも念には念――主にこの町の管理をしている悪魔共に悟られぬように色仕掛けをして油断したところを殺すという遠回りな作戦まで立てたというのに。
「……………」
その作戦の一歩目でいきなり吐血され、触るなと怒鳴られ、挙句ただの何も知らない人間だと思っていたのに堕天使だと見抜かれ、ならばと殺してやろうとしたら呆気なく防がれ――
「な、なんなのよお前は……!?」
「テメーが知らない――そして最早二度と見ることもない人間」
寒気のするようなアメジスト色の目をした人間の男の放つ切り裂くような手刀が自身の首筋に冷たく触れる。
「あ゛ろ゛っ……!?」
それが女堕天使の――レイナーレが最後に見た最期の光景であり、その瞬間レイナーレの首は撥ね飛ばされるのであった。
補足
ここに来て神器を保有してることが見抜かれるだけで面倒な事になると知る元執事。
なので取り敢えず始末したが……ここから色々始まる。
その2
恥ずかしいので言いませんが、セラフォルーさんが自分の知るセラフォルーさんそのものなので、無自覚の重さが発動してる模様。
具体的には、仮に細工がバレて冥界から悪魔達がセラフォルーさんを連れ戻しに来た場合、何の躊躇いも無く単独で戦争仕掛ける程度です。
その3
相変わらずセラフォルーさんにだけは子供じみたことをする模様。
主に元執事式ドレスブレイクで服だけ吹っ飛ばしたり。
ただし他人が同じことをしたら、速攻その他人に狂犬悪魔の執事スイッチが入るらしい。