色々なIF集   作:超人類DX

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続き。

無意味に長い


開き直る元執事

 

 

 目撃者は居ない。

 だからこそ早くこの痕跡を消さなければならない。

 

 オレの中に寄生している神器を狙った堕天使の襲撃を返り討ちという形でひとまず黙らせたオレは、首と胴体が離れた状態で地面に転がっている堕天使の死体とさっき地面にぶちまいた自分の血をこの時代において人間の身で扱える事すらありえないバアルの消滅魔力で消し去る。

 

 

「時間が無い、早くしないとこの時代のリアスがもうすぐそこまで―――ええぃ! 吐血痕は良し、堕天使の死体も消した! 他に違和感は無い……よな!?」

 

 

 念入りに痕跡が残っていないかのチェックをしたオレは、此方に近づいてくる速度が速まっている『気配』を感じ取り、急いでこの場から立ち去る。

 

 ひょっとしたら死体と痕跡処理の為にやむ無く使うことになってしまった消滅魔力の気配を悟られてしまった可能性だってあるが、時間が足りなかった以上この手しかなかった。

 

 

「クソ堕天使め―――いや、そもそもオレの中に寄生しているクソ神器が引き寄せたんだったなボケ。

ちくしょう、こんなガラクタのせいで……」

 

 

 それもこれもオレの中に寄生している神器が理由だったとするなら、この件に関してはオレにも責任がある。

 スキルを抑え込むような感覚で、勝手にしゃしゃり出て来てくる鬱陶しい赤蜥蜴を抑え込むだけでは、分かる奴には解ってしまう事に気付けなかったオレの間抜けさにな。

 

 

「なんとか取り除かないと今後も同じ事が無いとは限らなくなっちまった」

 

 

 本来がどうだか知らないし、今更取り戻したいとも思ってもなかったオレにしてみれば、赤龍帝なんて概念は最早過去の異物以下の何物でもない。

 そもそもオレはオレに成り代わったとされるその赤龍帝を『ぶち壊して』やった側なのだから。

 プラスどころかマイナスにしからならないガラクタなぞ、捨てられるものなら捨てたいし、今回の件でより強く思う。

 

 

「取り敢えずセラフォルーと合流しないとな……」

 

 

 何もせず、誰にも干渉せず朽ち果てるつもりが、こんなガラクタのせいでよ。

 ちくしょう、使用人やってた時よりめんどくせぇって思うぞ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一生涯不必要と思っている神器に足を引っ張られてしまう形で、堕天使と戦闘行為を行ってしまったイッセーは、出来る限り痕跡を消し去ってから急いでその場を去った後、セラフォルーに電話を掛けた。

 

 

「セラフォルーか、そっちは大丈夫だよな?

―――ああ、どうやら狙いはオレだったらしい。

その事について話す必要があるから、何時ものトレーニングする場所に来てくれ……。

ああ、ああ……頼むぞ」

 

 

 

 今回の件で、神器使いであることの弊害を初めて知ると同時に苦々しい気持ちにさせられたイッセーは、今まで通りの生活ではその内ボロが出ると判断し、セラフォルーとサシで話す為、よく二人が勘を鈍らせない程度のトレーニングに使っていた――町外れに打ち捨てられた廃神社へと足を運ぶ。

 

 

(クソが、クソがクソがクソがクソがクソが! 神器なんてガラクタのせいで……クソッタレ!!)

 

 

 その道中のイッセーの精神は大分ささくれており、自分自身を罵倒しながらというのもあってか、普段は猫背気味に斜め下を向いて歩いているのが嘘みたいに、ギラギラとした目をしながら前を向いて歩いている。

 

 早い話がかなりイライラしており――

 

 

『あ、あの……! み、道をお尋ねしたいのですが、私の言葉がわかりますか?』

 

 

 例えば、何やらシスター服を着た異国の女の子が、道を訊ねようとイッセーに近寄ろうとしても……。

 

 

「Fuck you bitch」

 

『』

 

 

 あまりにも自分にイラつき過ぎてるせいで、出てくる言葉がただの暴言になってしまい、いきなりの暴言に謎のシスター少女が言葉を失ったまま固まってしまったわけだが、イッセーはそんな少女に一切目もくれず、セラフォルーとの待ち合わせの場所へと足を速める。

 

 

「……………」

 

 

 奇しくもその少女は、日之影一誠として生きていた時代においては、成り代わりの兵藤一誠と関わりの深い少女がこの時代を生きる『もしも』の姿であることは、そもそも記憶にすら留めてないイッセーは気づくこと無い。

 

 

「いーちゃん」

 

 

 待ち合わせ場所に到着すると、既にセラフォルーが到着して待っていた。

 

 

「…………」

 

 

 実に皮肉な事だが、わざわざ自分のスペックを捨ててまで退行させたとはいえ、その精神はまさに日之影一誠として知るセラフォルー・シトリーだと、見るだけで感じ取れるイッセーは苛立ちだけであった己の精神が安堵に包まれていくのを感じる。

 

 

「見た限りは全然大丈夫そうだけど、いったいなにがふみゅ?」

 

「…………」

 

 

 安堵するからこそ、何となく彼女の両頬を指で軽く摘まんで引っ張ったり回したりする。

 

 

「ふっ……」

 

「乙女のほっぺをコネコネといてそれだけってなんだかな……。

全然痛くなかったから別に良いし、イライラも多少無くなったみたいでなによりだけどさ」

 

 

 何度も言うが、イッセーからすれば最早『兵藤一誠としての本来の人生だの力』だのを取り戻したいという気持ちは0であり、彼にとってのアイデンティティは『あくまで悪魔の執事だった日之影一誠』として送った人生なのだ。

 

 

 

「電話で軽く言った通り、狙いはオレ―――というよりオレに寄生している神器が狙いだったらしい」

 

「相手は堕天使だったみたいだけど、この時代のアザゼルちゃんの差し金ではないのは間違いないと思うよ。

多分その堕天使ははぐれだけど……もう始末しちゃったんでしょ?」

 

「ああ、本当なら生け捕りで捕まえて、拷問して吐かせてから始末するつもりだったんだが、この時代のリアスの気配が近くまで来ていたからな。

見られる前に殺して痕跡を消す方にシフトした」

 

「だから魔力を少しだけ解放したんだね。

……リアスちゃんに感知されてなければ良いけど」

 

「ああ……。ちくしょう、そもそもオレにガラクタが寄生しなければ問題なかったんだ。

無理矢理抑え込めばバレないと思ったのに……何故バレたのかもわからねぇ」

 

「確かにその堕天使が今のいーちゃんに目を付ける辺り、正味凄いと素直に思えるよ。

……死んじゃってるけどね」

 

 

 

 さっさと殺してしまった光景が簡単に想像できてしまうセラフォルーが苦笑いを浮かべると、イッセーはふんと鼻を鳴らす。

 

 

「オレを色仕掛けで引っ掛けられると思ってた辺り、ただの自信過剰の野良鴉でしかないだろ」

 

「あちゃー……よりにもよってそういう手で攻めようとしたんだ? そりゃあ無理に決まってるよねぇ」

 

「まあ、もう消した堕天使なんぞはどうでも良い。

問題はその堕天使には他に仲間がいるかどうかと、リアス達があの堕天使の動向をある程度監視していたかどうかだ」

 

「多分知ってると思うよリアスちゃんは。

だからいーちゃんの後を追ってた堕天使を更に追ってたんだと思うし」

 

「だよな。

クソ、そうだとするならオレがあの堕天使を殺した可能性を疑われるかもしれない」

 

「気配をたどっていったらいーちゃんどころかその堕天使まで忽然と消えたともなれぱ、明日学校に行ったら真っ先に疑われるでしょうね」

「クソが、なんやかんやここまで上手くやれてたのに、こんな所で」

 

「まー……元を辿れば悪乗りした私がこの時代を生きてるリアスちゃんとソーナちゃんと同じ学校にしようぜって言っちゃったからなんだけどね?」

 

「いや……。

少なくとも一年はバレずに済んでた事を思えば、オレに神器が寄生してなければこのまま誤魔化せた。

だからお前のせいじゃない……オレが少し甘く見ていただけだ」

 

 

 

 そう言って謝ろうとするセラフォルーに首を横に振って見せるイッセーは、自分が怪しまれてしまっているだけで、変装しているセラフォルーの事はバレていないからと少しだけポジティブに考えようとする。

 

 

 

「それにお前の仕込みに関してはまだバレてない。

だから、最悪オレの事がある程度バレたとしても、そこは割りきる。

オレよりセラフォルー……お前の現状を知られる方が遥かに面倒だからな」

 

 

 

 今回の件で、神器使いの弊害を知ったからには次に生かす事を考え、ある程度怪しまれてしまうことも覚悟した上で、未だにセラフォルーの事は全く怪しまれてもないし、そもそも向こうは認識もしていない筈だと考えるイッセーは、じっと瓶底眼鏡を外し、ポニーテールにしているセラフォルーを見ながら言う。

 

 

 

「知られたら、間違いなく冥界に置いてあるお前の分身についてもバレる。

そして恐らくは冥界に戻れと言い出す」

 

「うん、この時代でも魔王やってるしね。けど正直要らないんだよねー……」

 

「だからこそお前を冥界には返さねぇ。

何があろうと、どんな手を使っても―――それこそそれが理由で殺し合いになってもな」

 

 

 そう宣言するイッセーの瞳はシトリー姉妹のようなアメジスト色に輝いている。

 かつて、人の身でありながら――いや、人の身であるからこそ、自分は悪魔の家族達とは違うのだというコンプレックスを糧に血反吐を吐く鍛練の果てに掴みとった当代のグレモリー家とシトリー家の魔力を掴み取った日之影一誠のアイデンティティ。

 

 

「あのさー……?」

 

「あ? なんだ、何か気になる点でもあるのか?」

 

 

 その努力を知っているからこそ、人の身でありながら到達して見せたその背を見てきたからこそ、セラフォルーを含めた悪魔の家族達はイッセーに対して血の繋がりや種族の違いを越えた『敬意』と『愛情』を抱いた。

 

 

 

「捉え方によっては思いっきりプロポーズされてるんだけど?」

 

 

 

 普段はツンデレ気味な態度ばかりなのに、イザとなれば多勢を平気で敵に回してまで守ろうとしてくれたからこそ、当時の悪魔の家族の女子達は――セラフォルーを含めて、惹かれたのだ。

 

 

「プロポーズだぁ? 馬鹿言うなそうじゃねぇよ」

 

「ふーん、最近一年生の男子に呼び出されて告白されちゃったんだけど、いーちゃん的にはどう思う?」

 

「ソイツの名前とツラの特徴を今すぐ言え、二度とオメーの前に出てこられなくしてやるわ」

 

「や……冗談なんだけど。

そんなバッキバキになった目で言われるとは思わなかったかな……」

 

 

 本来の人生を取り戻せるまで這い戻ったのに、それでも悪魔の執事であり続けてくれた不器用な男の子に……。

 

 

「こ、このアホ女……」

 

「あーもう! そんな怒らないでよー☆ おねーさんがぎゅってしてあげるから~☆」

 

「ばっ!? い、要らねぇわ! 今はそんな話じゃ―――」

 

「大丈夫。

仮に何もかもが向こうに知られても手は打ってるし、戻れなんて言われた所で、私はいーちゃんの傍から離れる気だって全く無いよ」

 

「………」

 

 

 レヴィアタンでも、そしてシトリーでもないただのセラフォルーとしてイッセーの身体を抱き締めるのだった。

 

 

 

 話し合った結果、結局は『出たとこ勝負』という方向に落ち着き、敢えて『普通に』学校へ登校したイッセー。

 その隣には当然のように『世羅マコト』という偽名を名乗るセラフォルーが居るし、桐生藍華という世羅マコトとしての友人も何時も通り絡んでくる。

 

 

「…………」

 

「昨日の家に帰る途中、道に迷ってたシスターっぽい格好した外国人の女の子に道聞かれてさー」

 

「へー?」

 

 

 何も変わってない何時も通り過ぎる一日に、少しばかり肩透かしを喰らった気分であるイッセーだけど、勿論警戒は怠らない。

 

 

「金髪でかなりの美少女でさー」

 

「へー? 美少女なんだっていーちゃん?」

 

「ああ」

 

 

 なんか横で桐生藍華の話を聞いていたセラフォルーがいきなりこっちに振ってきたので適当に返事を返しておく。

 その返答が予想していた通りだったのか、半ば呆れた顔をする桐生藍華。

 

 

「思ってた通り過ぎる反応で面白味の欠片もないわねアンタって。

別に向こうで女子に追いかけ回されてる奴等とまでは言わないけど、思春期の男子らしい反応したらどうよ?」

 

「…………………………」

 

「おおぅ……完全に『虫けらを見下す』ような目をどうもありがとう」

 

「たまに思うんだけど、アイちゃんはいーちゃんになにを求めるのよ?」

 

 

 これまで一度もまともに彼女と言葉を交わした事は無いイッセーにしてみれば、桐生藍華という存在はただの一般人な他人という認識である。

 親しくする気も無く、ましてや友人になる気も無い以上、相手にするのも煩わしいと本気で思っているイッセーは、それ以上桐生藍華を見ること無く、軽く目を閉じるのだった。

 

 そして……。

 

 

「あ、あのー……世羅さんにお願いがあるんだけど」

 

「ん、どったの?」

 

「今教室の外で隣のクラスの木場君が来てて……」

 

「あら、学園の王子キャラが何の用なのかしら?」

 

「うん、何か兵藤君に用があるみたいなんだけどー………」

 

「…………」

 

 

 その時は遂に来てしまったらしく、何事も無く一日が終わった放課後の教室は、少々異様な空気になっていた。

 

 

「私が話しかけても多分無視されると思うから、世羅さんにお願いしたいのよ」

 

 

 学園の人気者の一人が、陰キャ通り越してただのヤバそうな奴認識をされている男子生徒が呼び出されたという話に、クラスに居た生徒達がざわついている。

 

 

「聞いてたでしょいーちゃん。

何か木場君が用があるんだってさー?」

 

「アンタ何かしたの?」

 

「…………」

 

(あ、相変わらず無口な奴ね……無口過ぎて不気味だわ)

 

 

 セラフォルーに言われるまでもなく聞こえていたイッセーは、教室の外からこちらを伺っている金髪の男子生徒を一瞥しながら無言のまま席を立つ。

 

 

「いーちゃん、大丈夫?」

 

「ああ、……悪いが先に帰っててくれ」

 

(マコトしか見てないわ)

 

(完全に私達は視界の外ってか……)

 

 

 他の女子には一切目もくれず、セラフォルーとだけ目を合わせて話をすると、教室の外で女子達から黄色い声を出され、男子達からは嫉妬めいた視線を独り占め中の木場祐斗のもとへと向かうと、女子に囲まれていた木場祐斗は実に人の良さそうな笑みを溢す。

 

 

「突然で申し訳ないね兵藤君。

実はウチの部長にキミを連れてきてくれと命じられてね、一緒に部室まで来てくれたいかな?」

 

「………………」

 

 

 木場祐斗の言葉に男女関係ない驚きの声が出てくるのと同時に、何故この根倉男に? という疑問の視線を向けられるイッセー

 

 そんな視線を受けながらイッセーは、十中八九昨日の事であるなと確信するのと同時に、やはりあの堕天使は目を付けられていたらしい……と、自分で既にこの世から消したレイナーレに向かって舌打ちをしつつ無言でうなずく。

 

 

「じゃあ僕についてきてくれ」

 

「…………………」

 

 

 そう言って前を歩く木場祐斗の後をついていくイッセー………を見送るしか出来なかったクラスメート達は、何故あいつが? という疑問しか出てこない中、同じく見送ったセラフォルーもまた密かに行動を開始するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 兵藤一誠としての人生を意味もわからずやり直させられて以降、イッセーはただの一度もセラフォルー以外の悪魔との絡みは皆無であった。

 それ故にこの時代を生きるリアスやソーナが何を考えて生きているのかも知らないし、正直興味もなかった。

 

 ただ、イッセーが降している現在の評価は『あまりバカでもなさそうだ』というものであり、事実昨日の件から一気に自分の存在を認識し、対話を求めてきた。

 

 

「ようこそオカルト研究部へ。

アナタを歓迎するわ」

 

「……………」

 

 

 もっもと、気取ったような台詞で迎え入れられたイッセーが直にリアスと向かい合った感想は『コイツ、思ってたより弱すぎる』という感想だった。

 

 

「いきなり呼びつけるようで悪いわね。

どうしてもアナタから話を聞きたくてね……」

 

(種族としてのフィジカルだけで、殆ど鍛えて来なかったのかがよく見なくてもわかる。

勿体ない、ちゃんと鍛えていれば――)

 

 

 旧校舎にあるオカルト研究部の部室に入ったイッセーは、前の時代のリアスとの違いをここで漸く初めて――いや改めて認識しながら、無言のまま促されるようにソファに座って向かい合う。

 

 

「お茶ですわ、どうぞ召し上がって?」

 

「………………ッス」

 

 

 座っても尚無言のままであるイッセーに、オカルト研究部の副部長であり、悪魔としてはリアスの女王であるハーフ堕天使の姫島朱乃がお茶を出す。

 

 

 

「………………」

 

「? お口に合いませんでした?」

 

「………………イエ」

 

 

 普段なら他人の出すものは絶対に口にしないことに定評のあるイッセーだが、敢えて口を付けたわけだがその感想は―――

 

 

(20点だな。雑味がある――入れ方の問題だな)

 

 

 つい元執事目線で、出されたお茶に対するダメだしを内心してしまう。

 

 

(改めて眷属は見覚えのある面々だ。

他の部屋からギャスパーと思われる気配も感じる……。

が、全員に話にならねぇ)

 

 

 姫島朱乃

 木場祐斗

 塔城小猫

 

 そして別の場所にギャスパーの気配を感じ取ったイッセーは、全員が元の時代の頃のこの時期と比べてもお話にならないレベルに弱い事を把握しながら呑気にお茶を飲むリアスを見据える。

 

 

(中身は違えど見てくれは同じなせいか、あまり緊張はしないで済みそうだ。

さて……十中八九コイツ等が知りたいのは昨日の件だろう)

 

「さてと、アナタとお話をしたくてここまで来て貰ったわけだけど、早速いくつか質問をするわ。

まずはこの写真に写ってる女なのだけど、覚えはあるかしら?」

 

 

 ほら来た。

 そう内心呟きながらリアスが朱乃から渡された写真をテーブルの上に置く。

 そこには昨日首と胴体をおさらばさせてやった人間の女に化けた堕天使が写っていた。

 

 

「……。昨日オレは確かにこの写真の通りの女性に話しかけられました。

しかし、それがなんだというのでしょうか?」

 

 

 今だけは目の前の者達が知り合いと同じ容姿で良かったと、思ってた以上に口が回る自分に思いつつ当然惚けるイッセーに、何故か目を丸くするリアス達。

 

 

「………? なにか?」

 

「いえ、少し驚いてね。

アナタって学校では誰とも――いえ、世羅さんだったかしら? その子以外とは一切誰とも喋ろうとしないと聞いててね……」

 

「…………」

 

 

 

 『話せるのなら少しは早く済みそうだわ』と呟くリアスにイッセーはしまったと内心舌打ちをしたが、逆を言えば徹底的に否定さえすればゴリ押せる可能性もある。

 それこそいざとなれば、目の前のリアスと、イッセーを取り囲むように立つ眷属達の脳を物理でシェイクしてやるという考えも端に置きつつ。

 

 

「そうね、この女について話すその前に、先ずは私達のことをアナタに知って貰わないとならないわ」

 

「…………」

 

 

 実に物騒な事を考えている事に気づいているのか居ないのか、リアスは自分達の正体を――イッセーからすればとっくの昔から知っていた悪魔であることを明かした。

 

 

「……………………」

 

「………。あまり驚かないのね。

まるで最初から知っていたかのように」

 

「昔から感情表現が苦手なだけです。

十分驚いてます」

 

「……。まあ今はそういうことにしてあげるわ」

 

 

 

 あまりにも薄いリアクションであるイッセーにリアスはそう締めると、早速とばかりに先日イッセーが殺した堕天使の女について話し始める。

 

 

「……………………………という理由で、この堕天使の女はアナタが宿す神器の為に狙ったというわけ」

 

「………神器?」

 

「…………………。神器については後で説明するわ。

それよりもまずは―――」

 

 

 予想していたことと同じ話をするリアスに、イッセーは適当に頷いていると、リアスはここからが本番だとばかりに、イッセーを鋭い目付きで見据えた。

 

 

「昨日の放課後、アナタがこの女と接触をした事はこちらも把握していたわ。

何故ならこの女はアナタが学校を出てからずっと後をつけていた」

 

「…………」

 

「私としても同じ学園に通う者が……それも神器使いが勝手に私の管理する町に入り込んだ堕天使に害されるのは嫌な気分にさせられると思って勝手ながら、少し遅れてこの堕天使のあとをつけさせて貰ったわ」

 

「………………」

 

「するとどういう訳かこの堕天使は忽然と『消えた』わ。

しかもアナタが言った事が本当だとするなら、アナタと接触をしてからということになる」

 

「…………………………………………」

 

「そして、ほんの一瞬だけ私達が把握していない『悪魔に近い魔力』を感じた。

つまり私が聞きたいのはこうよ兵藤君―――――――――――――――アナタはどこの誰なの?」

 

 

 じゃじゃ馬姫の片割れにしては随分と考えてるらしい……と嫌味ではなく割りと本気で、この時代のリアスに対する評価を上方修正するイッセーは、じっとこちらを見るリアスに対してただ無言無表情で見つめ返す。

 

 

「私の予想がそのままなら、アナタはこの堕天使の女を何らかの方法で蹴散らした――いえ、殺したかもしれない。

それが事実なら、私達はアナタを放っておくわけにはいかないのよ」

 

「…………………」

 

「答える気が無いのなら、答えるまでアナタをここから帰さないわ。

生憎時間はたっぷりあるのでね?」

 

 

 その言葉と同時に騎士の木場祐斗と戦車の塔城小猫がソファに腰かけるイッセーの真後ろに立ち、逃げる素振りを見せた瞬間拘束せんと無言の圧力を感じる。

 

 

「ちゃんと答えてくれたら、私達はアナタに何もしない。

いいえ、寧ろ私はアナタを仲間として迎え入れたいとすら思っているわ」

 

「…………………………」

 

 

 人が良さそうな笑顔を浮かべるリアスに、イッセーは内心鼻で笑う。

 どうやらバカではないのは認めてやれるが、肝心の自分との力量差を正確には計れてないらしい。

 

 

 

(このリアスじゃあ一万年掛かってもオレを眷属には出来ない)

 

 

 このリアスでは間違いなく自分を眷属にすることは不可能だという意味で。

 しかしどうであれ、この町の管理を実家のグレモリー家から任されているという点だけは前の時代のリアスと同じであり、その管理の手伝いをかつてはしていたイッセーとしても、自分という異物を不透明のままにするわけにはいかないだろう。

 

 

 

「わかりました、お話しましょう」

 

 

 故にイッセーは昨晩セラフォルーから提案された『リアスどこらか大抵の悪魔達を黙らせられる切り札』を切ることにした。

 

 

「まずあの堕天使は昨日間違いなく殺しました。

アナタの言った通り、オレが神器を持つからとかそんな理由で近寄ってきましてね。

黙って殺されてやるつもりなんて無かったのでそのまま殺し返しましたよ」

 

「死体も一切残さずに……かしら?」

 

「ええ、此方としても証拠は消しておくに限ると思いましたが、神経質になりすぎてどうもアナタ方にバレてしまったようで……」

 

 

 正直舐めていたと内心思いつつ自白するイッセーに、リアスはイッセーの背後に然り気無く立っていた木場祐斗と塔城小猫に向かって目で合図を送り、イッセーから少し離れるように指示を出す。

 

 

「そう……。

驚いたわ、ただの人間が堕天使を殺すなんて……」

 

「………どうも」

 

「当然、何故そこまでの力を持っているかも教えて貰えるのでしょう?」

 

「………。これ以上誤魔化して乗り切っても、アナタ方はオレを今後監視するのでしょうしね。

正直それが鬱陶しかったから今まで隠していた訳だけど、ここまで喋ってしまったのなら言うしかないでしょう?」

 

 

 すぐ背後に感じた気配が少し離れていくのを感じるイッセーの観念するかのような言葉に、リアスは内心『さっき神器に関して惚けてたような態度だったけど、やっぱりブラフだったというわけね……』と思いながらも話を聞く。

 

 

「オレの名前は『兵藤一誠』、年齢17歳。

自宅は駒王町北西部にある住宅街であり、職業は学生……部活には入っていない。

学校から帰宅後は毎日体力維持の為のトレーニングを行い、どんなに遅くても夜23時には床につく」

 

「はい?」

 

『?』

 

 

 しかしイッセーは突然自分の自己紹介を始め、思っていたのと違った話を突然聞かされるリアスは目が丸くなる。

 

 

「急に自己紹介なんてどうしたのよ? そもそも私が聞きたいのはそういう話では―――」

 

「オレは常に『何もない日々』を願って生きているだけの人間だということを説明しているだけだ」

 

 

 リアス達の困惑を半ば無視する形で話を強引に進めていく。

 

 

「誰かに『奪い取られる』事に怯えたり、頭をかかえるような『トラブル』とか、夜も眠れないといった『敵』をなるべく作らずに生きる…というのが、今のオレの社会に対する姿勢であり、それが自分の『幸福』だとオレは思って今日を生きている―――」

 

 

 

 瞳をアメジスト色に変化させると同時に吐く息が白くなる。

 

 

 

「っ!? (気のせいではない……! 明らかに室内の温度が急激に下がっている……!?)」

 

 

 焦げ茶色と頭髪までも漆黒に染まり、身震いする程の冷気を放つイッセーにリアス達の顔が強張る中、イッセーはここで漸く――そして見せつけるように己の掴んだ魔力のひとつを解放する。

 

 

「――もっとも闘ったとしても、オレはもう誰にも負ける気はないがね」

 

 

 悪魔の魔力を。

 

 

「うっ!?」

「なっ!?」

 

「ぶ、部室――いや旧校舎が、こ、凍った……!?」

 

 

 

 それはまるで――魔王一人のように。

 一瞬で凍てつかせる規模の魔力を解放するイッセーに、ここで初めてリアス達は戦慄する。

 

 

「あ、アナタは一体……!? この魔力はどうして……!?」

 

「つまりだリアス・グレモリーとその眷属達。

キミ達はオレの安眠を妨げる『トラブル』であり『敵かもしれない』連中というわけだ」

 

 

 ただの神器使いだと思っていた男の放つ圧力と、それこそ『魔王』を錯覚させる強大な冷気の魔力にリアス達は一瞬で腰から下全体を凍結させられて身動きを封じられてしまう。

 

 

「くっ!?」

 

「い、一瞬で私達も凍らされて……!?」

 

「ぶ、部長……!」

 

「な、なんてこと……! こ、これだけの魔力をどうして人間のアナタが……!?」

 

「……………」

 

 

 戦慄するリアス達とは正反対に、のんびりとソファに座っているイッセー 

 

 どちらが有利で不利なのか一目瞭然という光景であり、リアス達は命の危機を悟った。

 しかし何かが引っ掛かる。

 

 人間が何故魔力をという疑問もあるが、そもそもこの魔力性質はどこかで見た気がしてならない。

 そう、幼馴染みにて同じ学校で生徒会をしている親友の姉にて魔王の一人である彼女のような……。

 

 

 

「さて、望み通りオレは話したぞ。

だから今度はオレがアンタ等に要求させて貰おう。

今後一切オレを探るな、干渉するな、関わるな、絡むな、話しかけるな、巻き込むな、疑問に思うな」

 

「ぐっ、そ、それはどういう意図が?」

 

 

 一切の身動きが取れないリアスは顔を歪める。

 

 

「さっきも言ったでしょう? オレはただそのまま朽ち果てたいんだ。

こんな神器(ガラクタ)だってただ持ってるだけで一度も使った事もないし、この先使う気も無い」

 

「そ、そんなこと! 悪魔(ワタシタチ)に近い魔力を扱えると知った以上、アナタの要求通りにできるわけがないでしょう!?」

 

 

 ただの神器使いならいざ知らず、悪魔の魔力性質を扱える人間なんて普通の人間な訳がないし、ますます野放しにはできないと返すリアスに、イッセーは鼻で笑う。

 

 

「いーや、アンタはオレの要求を必ず呑む」

 

「ど、どうしてそんな事が言えるのよ!? 言っておくけどアナタの事はきっちり冥界に報告するわ!」

 

 

 自分をこのまま殺せば自動的に冥界に伝わるぞと脅すリアスだが、イッセーはその余裕を崩さない。

 

 

「セラフォルー・シトリー」

 

 

 

 何故ならここで彼女達を黙らせる為の切り札を切ったのだから。

 

 

 

「っ!?」

 

「名前くらい知ってるだろ? アンタ等悪魔のトップの一人なんだからな」

 

「な、何故アナタの口からあの方の名前が……」

 

 

 流石にここでその口から聞くことなんてあり得ない名前を出されたリアス達は驚愕に目を見開いている。

 

 

「決まっているだろ? オレは候補なんだよ……。

セラフォルー・シトリーの眷属のね」

 

『!』

 

 

 『こうなったら私のお飾りの権力を利用しちゃおうぜ☆』そう言ったセラフォルーの魔王としての権力を盾に黙らせる。

 単純だが一番効果のあるまさに切り札を晒したイッセーは、両手をひとつ叩き、旧校舎全土を覆う凍結魔力を解き、リアス達を自由にする。

 

 

「嘘だと思うのなら今すぐ本人に確認してみたら良い。

ああ、この学校で生徒会をやってる妹さん――確かソーナ・シトリーさんに聞いても知らないから悪しからず」

 

『…………』

 

 

 こうしてあまり使いたくは無かった手を使って、干渉されることを封殺させたイッセーなのであった。

 

 

終わり




補足

要は権力使って黙らせたって訳だな!



その2
元執事に宿ってしまった運無き赤い龍は意識すら出てこられないように厳重に封じられてます。

それなのにバレたので焦った次第です。



その3
旧校舎の外では、突然姉と酷似した魔力が旧校舎全土を凍結させたのでパニック状態だとかなんとか。
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