色々なIF集   作:超人類DX

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なんか変な事にまたなったぜ


ある兵士の『覚悟』

 

 

 

 薄々解っているし、思い出した。

 オレが何故並行世界と言えるだろう過去の世界をやり直しているのか。

 

 オレはオレにとって元の時代といえるあの世界で『失敗』した。

 

 悪魔の癖にお人好しだったアイツ等が居たからオレはオレとして這い戻れたし、本来のオレに成り代わった野郎への報復と精算も出来た。

 

 今もそう思っているが、オレは本来のオレの人生をやり直したいとも思っていないし、本来持つ筈だった力を欲しいとも思わない。

 

 だから捨てた。

 奪い返したと同時にオレは捨てて、ただの日之影一誠として先の先へと到達するつもりだった。

 だがオレは失敗した――いや、精算を果たした事への油断というべきか。

 

 オレの成り代わりを送り込んできた外からの災厄(カミ)がオレどころか世界そのものを『無かったこと』にしようとした。

 

 そこからの記憶は正直今でも曖昧だ。

 

 手足を吹っ飛ばされ、眼を失い、アイツ等を『守る』という意思をも壊された所までは辛うじて覚えている。

 

 オレが弱かったから、守れなかったから……。

 

 

 だからオレは、本来の俺としてやり直させられている現状に抗っている。

 不要と捨てたモノに今更寄生されて喜ぶような精神は持ち合わせて居ない――というのも確かに理由の一つとしてある。

 

 

 けれどそれ以上にオレは――

 

 

「う、うそ……でしょ――がぶばっ!?」

 

「ぐ……あぐぐ……! わ、私とリアスが、眷属達全員で戦ったのに……げほっ!」

 

「………………………」

 

『』

 

 

 

 オレが日之影一誠(オレ)でいることが出来るただ一人の女、セラフォルーだけは失いたくない。

 

 

「ラ、ライザー様……?

やはりレヴィアタン様が仰っていた事は冗談では無かったのかもしれません……」

 

「アイツ、シトリー様とグレモリー様の両方、両眷属を一斉に相手にしてかすり傷ひとつなく返り討ちにしちゃってます」

 

「そればかりか、レヴィアタン様に酷似した魔力すら使うこと無く徒手空拳のみですわ……」

 

「ああ……そう、だな」

 

 

 その為の行動が、どれだけオレの成り代わりだった野郎と同類だと揶揄されようが、嘲笑われてしまおうが……。

 

 

「……………………………」

 

「こ、こっちを睨んでますよライザー様……?」

 

「『今度はお前達だ』と言いたげな目してる気がしますけど……?」

 

「どうするのですかお兄様? 早くしないと問答無用で殺しに掛かってきそうな目ですわよ彼?」

 

「じょ、冗談じゃない!

あんな不気味な男とやりあってもなんの得にもなりゃしない!」

 

 

 オレは日之影一誠として生き続ける。

 そして何があろうと、どんな手を使おうと……セラフォルーだけは絶対に失わない。

 

 

「無神臓・verセラフォルー……」

 

「ばっ!? よ、よせ! お前がレヴィアタン様の眷属候補であることは認める! だからここでは―――」

 

 

 なあ、そうだろ最強(サーゼクス)

 

零と雫の霧雪(セルシウス・クロス・トリガー)

 

 

 アンタが強かった理由が、オレが最後まで超えられなかった理由が少しだけ解った気がするぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 下手にちょっかいをかけたら、頸動脈を食いちぎられる―――的な脅しの意味でソーナとその眷属、リアスとその眷属、そしてついでにライザー・フェニックスとその眷属を単独でセラフォルーの前で『ぶちのめした』イッセー。

 その目論見通り、その日以降の彼等からの接触等の一切は無くなったのだが、代償として自分の存在が冥界にいる一部の悪魔達に知られたらしい。

 しかし、ここに来て半分以上は『開き直ってきた』イッセーにとってすればその程度の代償は最早『些細な事』であった。

 

 

「………」

 

「頼む……!」

 

 

 だが、挑む気も茶々すら入れる気すら起こさせない程度にぶちのめしたつもりだったイッセーは今、この時代を生きる者に対して初めて心から困惑させられた。

 

 

「俺に戦い方を教えてくれ……!」

 

 

 更なる進化の為に、以前町に侵入したはぐれの堕天使一派を殲滅した舞台である廃教会跡地を新たなトレーニング場所として人避けのまじないを仕込んでから使っていたイッセーと、世羅マコトとして行動を共にしているセラフォルーのもとへとやって来た一人の青年が、地面に額を付けながら土下座をし、イッセーに懇願してきたのである。

 

 

「……………………」

 

「匙君だったよね? どうしたの急に?」

 

 

 

 リアスやソーナ……それからライザー・フェニックスが既にセラフォルー・レヴィアタンの眷属候補であるという認識を強制的に持たされているが故に、以前のように安易に近づく事すら出来なくなっているというのに、まさかその眷属の一人が来たばかりか、先日少しマジになったイッセーによって受けたダメージすら満足に回復していないというのに、土下座をしながら『戦い方を教えて欲しい』と懇願されるとは思わなかった。

 

 

「そうだ。俺はソーナ・シトリーの兵士の匙だ。

兵藤、多分お前は覚えてないだろうけど、あの日お前に完膚なきまでに叩きのめされた中の一人だ」

 

「………………」

 

「それはわかってるけど、どうしていーちゃんに戦い方を教えて貰いたいのよ?」

 

 

 

 無言で目を凝らすように細めて怪訝そうな顔をするイッセーに代わり、マコトが匙元士郎から話を聞く。

 イッセーとマコト――つまりセラフォルーは、匙元士郎という名を知っている、否、覚えている。

 

 それは元の時代に置いて彼が今の時代と同じくソーナの兵士であったからというのもある。

 

 勿論、彼もまたこの時代を生きる匙元士郎であることは解っているし、故にイッセーとしても他と同じく『ただの他人』としか見なしてなかった。

 

 そんな匙元士郎が自分達を訪ね、戦い方を教えて欲しいと地面に額を付けながら懇願してくるのだから、なんの期待もしていなかったイッセーとしては良い意味で裏切られた気分なのである。

 

 

 

「お前一人に負けた……! 俺はお前に何も出来なかった……!

王である会長を守ることも出来ずに……!」

 

「…………」

 

 

 額を床に付けたまま自分の弱さを吐露する匙に、マコトが口を開きかけたが、イッセーが手をあげて制止させると、ゆっくりと口を開く。

 

 

「理解が出来ないな、負けた相手に教えを懇願するのが」

 

「っ……」

 

「少なくとも、あの時のオレはお前達の『敵』だったというのに、お前はその『敵』にそんな格好までして教えを乞おうというのか?」

 

「俺はっ……! 強くなりてェ……!」

 

 

 額を地面に付けているのでその表情は見えないが、全身が震えているのを見れば、歯を食い縛っている顔が容易に想像できる。

 

 

「俺は、どうしても強くなりたい……! たとえそれが『敵』だったとしても、強くなれるのなら何でもしてやる!」

 

「…………」

 

(前の時代の匙ちゃんに近いかも……)

 

 

 

 イッセーの傍で見ていたマコトも、この時代を生きる匙は確かにもとの時代の匙ではないにせよ、根が似ていると感じる。

 

 

 

「いずれはお前も倒す! だが、今までの自己流のトレーニングだけで、お前を倒せると付け上がれるとは思っちゃいない……!」

 

「………。あくまでオレを敵と見ているというのに、何故オレに頭を下げて教えを乞おうとする? 理由はなんだ?」

 

 

 

 元の時代の匙を思い出しながら問い掛けるイッセーに、匙はボコボコに腫れ上がった顔を上げ、ギラギラとした強い眼光と共に言った。

 

 

「お前を越え、交わした約束の為だ……!」

 

 

 イッセーの強さを体感した上で越えてみせ、己が交わした約束の為だと宣言する匙にマコトとイッセーは少しの間その目を――そう、幼少期のイッセーを思い起こさせるギラついた目を見つめ――

 

 

「将来オレを殺すかもしれない敵をオレが鍛えろってか?」

 

「無茶苦茶な事を言ってる自覚はある……! だが――」

 

「オレを越えるのは建前だろう? 多分お前が強さを求める理由はその『約束』とやらだ」

 

「……っ!?」

 

 

 図星だったのか、固まる匙にイッセーは珍しく笑う。

 

 

「深くは聞かないし、興味も無い。

だが、お前のその『目的の為ならなんでもやろうとする意思』には興味がある。

……マコト、そいつの傷の手当てをしてやれ」

 

「ん、りょーかい☆」

 

「良いだろう教えてやる。

だけどまずはその傷を回復させてからだ」

 

「っ! あ、ああ……!!」

 

 

 自分には無い選択肢で力を求める匙の精神にちょっとした好意を持ったイッセーは、傷を回復させてから鍛えることを約束する。

 

 

(思えば、キミもそうだったな匙君。

オレとは考え方も手段も違う癖に、何故か行き先だけは同じだった……。

キミはそう……彼女を守る為に貪欲に力を求めていたな)

 

「随分いーちゃんにやられたんだねキミ? よくみたら全身凍傷だらけだし」

 

「キミは確か兵藤と同じくレヴィアタン様の眷属候補の世羅さんだったな……」

 

「ん、よろしくねー☆?」

 

 

 他力本願ではなく、目的の為ならそのプライドすら捨てられる意思を持つ少年、匙元士郎はこうして『終わった』のかもしれないし、『始まった』のかもしれない。

 

 

「で? その約束ってなんだ?」

 

「……。すまねぇ、全部は言えない。

だが俺が悪魔に転生した理由は言える。

オレは悪魔として出世して、ある人を『自由』にしてあげたいんだ。

だから誰にも文句を言わせない強さが俺には必要なんだ」

 

「ある人? ある人って誰のこと? シトリー様――じゃないように聞こえるけど?」

 

「……すまない。

今はまだ言えないんだ……だがこれは嘘じゃない。

俺があの人を自由にできる力を持った時に必ず話すから待ってくれないか?」

 

「………。良いだろ。

人には言いたくない事の一つや二つや三つはあるものだしな。

けどその様子だと、お前の王や仲間達にも言ってないな?」

 

「………ああ」

 

「別にチクらないよ。

てか向こうからしたら関わりたくないだろうからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 我を通す為には何よりも力が必要だ。

 あの人に本当の自由を差し出す為には、文句を言わせないだけの力と権力が必要だ。

 

 その野望の一歩目が転生悪魔という立ち位置だ。

 ソーナ・シトリーという悪魔の兵士として転生をし、悪魔としての仕事をし続けて名を上げれば、いずれ自分でも眷属を持てる地位になれる。

 

 そうすればあの人を自由に出来る。

 

 

 でも世の中というのはそんなに甘くないのはわかっている。

 自己流のトレーニングをしていた程度では強くなれるのにも限界がある。

 

 しかし『本物の力』を持つ無口なアイツを身を以て知った俺は、その力をモノにする為に、アイツから受けた傷もまだ癒えない状態で懇願した。

 

 恐らく会長達は兵藤に関わることを俺達に厳禁させるのはわかっていた。

 だからこそ傷を負ってバタバタしているこの隙に俺は兵藤を訪ねた。

 

 結果としては……断られると思ってたけど、兵藤は約束してくれた。

 俺に戦い方を教えてくれると。

 

 殆ど喋らないことに定評のある兵藤がまさか俺を相手に喋りかけてくるとは思わなかったとか色々あるけど、俺はこの機を絶対に逃がさない。

 

 親兄弟の全てを失ってしまった――ちっぽけな人間でしかなかった俺に生きる意味をくれたあの人の為に。

 

 

「………………」

 

「? 帰ってきてからずっと真剣な顔をしているけど、何かあったの? まさか私の事がセラフォルーの妹にバレた……とか?」

 

 

 同族に見捨てられ、故郷に帰れず、恋人にも裏切られて疲弊していたこの人のために。

 

 

「いや、バレてないよ。

ただ、この前ボロカスに負けた相手に土下座して頼んだんだよ、俺を強くしてくれって」

 

「この前って……例のセラフォルーの眷属候補と言っていた?」

 

「ああ。

そのセラフォルー・シトリー本人が来て言ってたから間違いない」

 

「……そう」

 

 

 俺よりも地獄に落とされたくせに、俺を見捨てなかったこの人が自由を取り戻すために。

 

「あの強さは本物だった。

だから俺はアイツ等からその強さの秘訣を盗んでやる。

そして誰にも文句を言わせない力を手に入れてやる」

 

「元士郎……。

もう良いのよ? こうして身を隠して生きていられるし、アナタが無理をしなくても――」

 

「無理じゃない。俺がそうしたいだけだ。

誰にも文句を言わせない強さを持てば、コソコソしなくても貴女と一緒に居ることが出来るから」

 

「……」

 

「へへ……ガキの頃から惚れちゃったからな! 俺はなんでもやるぜ! だからもう少しだけ待っててくれ――

 

 

 

 

 

 

―――――カテレアさん」

 

 

 

 ガキの頃、死にかけていた彼女と会ったその瞬間から、俺の生きる理由は決まったのだから。

 

 

「……。アナタにとったら私なんておばさんのようなものなのよ?」

 

「年なんて関係ないよ。これまでも、これからも絶対に変わらない」

 

 

終わり




補足

簡易人物紹介


匙元士郎

実は本来の人生とは違う人生を経てソーナの兵士になった少年。

まぎれもなくこの時代の匙元士郎なのだが、大体イッセーとセラフォルーさんが再会した時期辺りで死にかけで逃げ回っていたカテレアさんと出会った。


そして紆余曲折の果てにその野望が『カテレアを自由にする為に力が欲しい』というものになっていく。
故に実は原作のこの時期よりはかなり強いし、神器もある程度使いこなしていたりはしているのだが、『化け物』の力を身をもって体感したことで、その領域へ進まんとイッセーに弟子入りする。

 ちなみに、高校一年時辺りで『大人』になった模様



カテレア・レヴィアタン

 精神も機嫌も最悪時期とセラフォルーさんに一瞬で敗け、あまりの差に旧派にも使い捨てにされ、這う這うの状態で逃げ続けたことでその後の人生を変えた女性悪魔。

 人間風情と当初は屈辱からツンケンしていたが、あまりにもカテレア・レヴィアタンとしてではなく、ただのカテレアとして見てくるし、なんでもやろうとする元士郎に情が沸き、彼が家族を失った辺りで『独りにしてはいけない』と、レヴィアタンの称号への執着のすべてを捨て去った。


 セラフォルーに対しては正直かなりのトラウマがある。
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