色々なIF集   作:超人類DX

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今度はこの√




肉食系虎女子達の囲いに放り込まれたコミュ障執事の記録

 

 

 

 弱いのは罪でしかない。

 己の情けない現状を省みればみるほど思い知るのが日之影一誠という、『主人公』であることを過去に剥奪された青年の今である。

 

 上から下まで、目の前に居たら肉塊になるまで殴り殺してやりたいと思う程度には変態にしか見えなかった謎のオカマによって、外史なんて意味のわからない世界に同意もへったくれも無く飛ばされ。

 

 自分が血反吐を吐き散らかしながら漸く掴めた領域も没収され、挙げ句の果てには条件を満たしたらちゃんと返すと抜かされ……。

 それもこれもあの時点でその一方的な要求を跳ね返せるだけの力を持たなかった自分のせいでもある。

 

 と、最近は『結局は自分(テメー)の弱いのが悪い』と、例の変態は必ずぶち殺すと決めつつも考える様になった悪魔の執事(強制休業中)こと日之影一誠は、外史というあべこべあやふや、意味不明な過去の中国的な世界にて生きるのだ。

 

 

「劉備から書状が届いた?」

 

「ああ。

内容をお前にもわかりやすく説明をすれば、天の御使いを抱える曹操の率いる勢力への対抗の為の同盟を組みたいという旨との事だ」

 

「………」

 

「うむ、そんな顔になるよなお前は? 天の御使いに対して妙に警戒していたしな?」

 

「……。単なる個人的なものだ。

それで? あの猛獣ババァはなんて?」

 

「ああ、話し合いの結果、丁重に断りの書状を返しておいた」

 

「…………は? なんで?」

 

「炎蓮様――というよりは我等としても特に同盟を組んだところで利益になりそうもないし、そもそも同盟を組んだ処で数だけ曹操の勢力に対抗出来るかもしれないが、個々の戦闘能力に難がありそうだからな」

 

「……………」

 

 

 猛獣女子共から逃れんともがきまくったせいなのか、それとも出会ってしまった瞬間からの運命なのか。

 もはや史実に対して中指を立てまくるような世の流れになってしまっている――ということに、実はそんなに学は無い執事は気付かず。

 

 

 

 

 

 知らぬ間に蜀的な勢力から、呉的な勢力である此方に同盟願いの書状が送られていたこと、そして普通に断ってしまった事を後になって孫呉勢力内では軽口を叩き合える程度には話せる者の一人である周瑜――真名を冥琳から聞かされた一誠。

 

 理由の大半が、天の御使いを抱える曹操に対して兵力だけを拮抗させた所で意味は無いという事らしいのだが、意外な事に一誠は寧ろ炎連達の判断に同意していた。

 

 

「脳筋猛獣ババァにしては考えたな」

 

「ん? なんだ、お前に黙って同盟を蹴ったというのに、何も言わないのか? 断ったとはいえ、劉備の軍は決して小さくは無いだが?」

 

「大きかろうが小さかろうが、雑魚が群れた所で高が知れているし、邪魔にしかならねぇだろ。

寧ろ先に潰し合って共倒れしてくれんならそれで良いし、そうでなくても疲弊した所を叩ける。

第一俺は、その天のなんたらってのから帰る方法を手に入れる気なんて元から無かったし、殺し合い以外で下手に接触するのは良くねぇと思っていた」

 

「ほう?」

 

「そんなのをアテにしなくても、自力で戻る方法は探す」

 

 

 仮にも一国の王的な立ち位置に居る女性だというのに、執事の口調は元の時代における悪魔達に対するそれとなんら変わらず、そしてそんな口の聞き方に対して咎める者は誰もいない。

 

 

「それに多分だが、向こうも帰る方法なんでわからんだろう。

加えて、俺の想定しているような人間ならまずテメーから帰ろうとも思わんだろうし……」

 

「? 前々からお前は奴を警戒しているが、何がそんなに気になるんだ? 以前オレ達もあの小僧と会った事はあるが、警戒するだけのモノは全く感じなかったが? 本当にただの小僧としか思えなかった」

 

「その『一見すると無害そうで、誰にもそれなりの愛嬌振り撒いてそうな』のが逆にヤバイんだよ。

……ガキの頃、それで地獄を見せられた事があるんでね」

 

「地獄……?」

 

 

 史実ではとっくにお亡くなりになっている筈の孫堅が現在もピンピンしているという、ナチュラル史実クラッシュをしている事を全く知らない一誠は、彼女がお亡くなりになりそうなフラグをこれまた知らないまま何度も潰していた。

 

 それもこれも、この炎蓮という女性があまりにも猛獣過ぎるせいであり、力の大半を失い続ける一誠にとっても現状最強クラスの修行相手を失うのは痛手だからという理由である。

 

 

「……。なんでもない、此方の話だ。

まあ、例の曹操ってのが最近勢力を飲み込んでデカくしているって噂程度は俺も聞いてはいる。

あの天のなんたらってのが曹操の所でどんな立ち位置かは知らんが、ソイツの一言で戦争になるかもしれない……」

 

「?」

 

「……………。けど要はアンタ等の故郷であるこの場所を取られないようにすれば良いんだろう?」

 

 

 この世界に落とされから何百着とコピーした燕尾服姿の青年にとって『進化』とはそれだけ重要なのである。

 

 

「俺は誰かに貸す事も借りる事も嫌なんでな」

 

 

 

 

 

 

 現状孫呉の総大将的な存在である炎蓮を筆頭とした軍団は、最近台頭した曹操や劉備の軍と比べると実は領土も含めてそこまでの数ではない。

 しかしその代わりに個々の戦闘力と結束力は三国の中でも郡を抜いており、更にその中の一握りの者は、未来から飛ばされてきた青年により人を越えた戦闘力を身に付け始めている。

 

 簡単に言ってしまえば少数精鋭軍団であり、ここ最近では『とある理由で』同盟相手であった荊州・南陽を拠点とした勢力を持つ軍勢を完全に滅ぼしたりすることが可能な程度の戦闘集団である。

 

 

 

『verセラフォルー、零と雫の霧雪(セルシウス・クロス・トリガー)(10%)』

 

 

 その戦争において数多くの武功を示したのが、先の陽人の戦いにおいて『異様な戦果』を残した『孫呉の狂犬』であったりするのだが、それは今は置いておこう。

 

 

 

『チッ、ここまで魔力を取り戻してもまだこの程度―――』

 

『おうコラ!! オレ達の前で知らねぇ女の名前を呼ぶんじゃねぇって約束だったよなぁ!?』

 

『むぷっ!? て、テメェ! 止めろババァ!! んなことしてる場合じゃ――』

 

 

 

 

 

 

「全力でやっと本来の30%まで戻れた。

けど、やっぱりまだ何かが足りない……」

 

 

 そんな狂犬執事こと一誠はといえば、実は各勢力の人間達から異質な術使いとして妖怪の類扱いされていて、ある意味その存在が広まっている―――なんて知らない。

 何なら別にこの世界での武功だの名声にも興味は無い。

 

 あるのはただ、己のフルパワーをどうにかして取り戻すという意思だけである。

 炎蓮等に拾われた――というよりは捕まって以降、元の時代と変わらない量のトレーニングをどれだけ詰め込んでも戻る気配が無い己の本来の力。

 正直フルパワーにさえ戻れれば、今すぐにでも周辺の国を滅ぼしに行って炎蓮等にテッペンを取らせてしまえるのだが、残念ながらスタミナ的な問題でそんな大それた真似はまだ出来ない。

 

 

「あのババァやら雪蓮やら小蓮――最近じゃ冥琳や雷火のババァすら『進化』しているということを踏まえると、トレーニングを間違えてるとは思えないんだがな……」

 

 

 逆に、人間の範疇であった炎連、孫策こと雪蓮、孫尚香こと小蓮、周瑜こと冥琳――果てには内政担当でお目付け役的な立ち位置であった張昭こと雷火ですら壁を乗り越えたというのに、同じかそれ以上のトレーニングを積んでいる自分だけ異様なまでに遅く、今現在に至るまで決定的な理由もわからないままだ。

 

 

「…………」

 

 

 故に執事はひたすら己を追い込む。

 全ては力を取り戻し、ここに居る人達への借りを返すと同時に、どこかでほくそ笑みながら観ているだろう、神気取りのカスをぶちのめす為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………」

 

 

 とまあ、一誠的にはシリアスな空気が展開される訳なのだが、周囲の人達はといえばそうでも無く、黙々と上半身裸の姿でトレーニングを続けるその姿を物陰から覗く影があった。

 

 

「むむ……」

 

 

 この地に生きる多くの者達の特徴である褐色の肌、暗めの赤い髪を持つ女性。

 普段はムードメーカー的な明るい性格をした女性が何やら緊張した面持ちで足を振り上げた体勢からピタリと制止している一誠を見つめていた。

 

 

「今日こそ、今日こそは……!」

 

 

 大史慈……真名を梨晏であるこの女性は、初対面から現在に至るまでただの一度も一誠と目を合わせて貰った事も無ければ、当然会話も出来ず、寧ろ目の前でゲロまで吐かれた女性だった。

 

 孫呉の主要面子は既に一誠が『そんな性格』だというのも把握しているし、把握した上で接しているのだが、当然彼女のような一部の人達は絶妙に納得はできない。

 

 何せ彼は話せる相手には寧ろお喋りなのかと思うくらい喋れる癖に、そうではない相手との差が露骨なまでに酷いのだ。

 

 ましてや友人である雪蓮やら冥琳とはペラペラと口が回るのになんで自分だけ……と思う訳で。

 

 

「という訳で協力してね雪蓮! 冥琳!」

 

 

 現在『日之影と楽しくお喋りしよう勝負』に全敗中の梨晏は今日こそはと一誠と普通に話せる側である雪蓮と冥琳に無理矢理頼み込んで協力をして貰うという、割りと万全を期した状態で機を伺っているのだが、付き合わされている側である雪蓮と冥琳はなんとも言えない顔だ。

 

 

「協力はするはするけど……」

 

「同じことの繰り返しにしかならない気がするんだがな」

 

「そ、そんな事無いよ! 二人が日之影と話をしている所に然り気無く私が加わる! そうすれば日之影だって流れで話をするでしょ?!」

 

 

 一誠のかなりめんどくさい性格はほぼ把握している雪蓮と冥琳とて、別に意地悪を言っているつもりはないのだが、本人がああな以上は梨晏が自信満々に言っている作戦も無駄にしかならないと思ってしまうわけで。

 

 

「ほら! まずは二人で行ってきて!」

 

「「………」」

 

 

 逆に目の前で吐かれたり、露骨に逃げられまくっているのに尚諦めようとしない梨晏の根性というか執念が絶妙にわからないと思いつつ、背中をぐいぐい押される形で仕方なく巨木を使って懸垂をしていた一誠の元へと近づき、話しかける。

 

 

「一誠、少し話せるか?」

 

「鍛練の邪魔をして申し訳ないんだけど……」

 

 

 まるで猫科のようなしなやかな上半身を晒しながら懸垂をしていた一誠を見上げるような形で声を二人が掛ける。

 するとこれが他人なら完全に聞こえないフリをかましていた一誠がトレーニングの手を止め、そのまま手を離して地面に着地する。

 

 

「どうした?」

 

 

 考え事をしながらトレーニングをしていたので、二人が近づいていた事に気付かなかったらしい一誠が、傍に置いてあった濡れた手拭いで身体を拭きながら、雪蓮と冥琳の呼び掛けに応じている。

 

 

(わかっていたけど、本当に二人だと簡単に応じる……)

 

 

 そのあまりにもアッサリさ加減に梨晏も解ってはいたけど、モヤッとしてしまいつつ、絶妙に表情が自分達を前にしている時とは違って柔らかめの一誠をじーっと見つめる。

 

 

「うむ、大した事ではないというか……」

 

「少しだけお願いしたいことがあるというか……」

 

「?」

 

 

 そんな状況の中、かなり言いにくそうに冥琳と雪蓮が口を開くと同時に絶賛隠れている真っ最中の梨晏の居る物陰へと視線を向ける。

 

 

「一言でも少しでも、一瞬でも構わないんだ」

 

「あそこに居る梨晏とお話してあげて欲しいのよ。

あ、勿論私達も加えてだけど……」

 

「…………………………………………」

 

 

 

 作戦と全然違うのだが、然り気無くだろうとそうで無かろうと同じと判断した雪蓮と冥琳が正直に梨晏のことを話す。

 すると一誠はここでやっと二人の他に気配を察知したらしく……。

 

 

(い、嫌そう!?)

 

 

 それはもう……本当に嫌そうな顔をしていた。

 

 

「嫌だと言ったら?」

 

「……。うむ、梨晏がかなり可哀想だなと思う」

 

「何度も一誠に逃げられてるのに、それでもめげずに頑張ろうとしているのを知ってる身としては……うん。

それに梨晏は嫌な子ではないわよ?」

 

「性格だの人柄だの俺にとっちゃあどうでも良い」

 

「……」

 

 

 ばっさりと切り伏せるような物言いに、ちょっと泣きたくなる梨晏は、飼い主以外には全く懐かず唸っている犬みたいな一誠の前へとトボトボとした足取りで出ていく。

 

 

「や、やあ……!」

 

「………………」

 

「本日は実にお日柄も良くて――」

 

「………帰る」

 

 

 冥琳と雪蓮が見守る中、まずは持ち前の明るさを全面に押し出して挨拶をしてみるが、やはり一誠の表情は青白くなっていく一方であり、普通にそのまま立ち去ろうと背まで向ける始末。

 

 

「待った待った!」

 

「そうだぞ一誠。

私達だってそんなに強要したくは無いのだが、身内同士に亀裂が入るのは見過ごせん」

 

「ぶっ!? や、やめろ! いきなり揃ってひっつくな!」

 

 

 要は逃げようとしたのだが、今回は雪蓮と冥琳が身体を張って阻止した事で逃亡不可能となり、そのまま連行されるような形で城まで引っ張られた一誠は、他の重鎮達が目を丸くしている中、現代風に言えばお見合いみたいな形でのトークタイムを強いられるのであった。

 

 

「…………」

 

「あ、あははは! な、なんかごめんね? こんな大事になるとは思わなくて……」

 

「……………………………………チッ」

 

「う……!? し、舌打ちされたぁ……!」

 

「こら一誠!」

 

「も、もっと笑顔笑顔!」

 

 

 

 

 

「ありゃなんだ?」

 

「どうやら一誠がもっと他の者とも話せるようになる為の特訓のようじゃのぅ……」

 

「ほう? しかし既に梨晏が泣きそうになってるな」

 

 

 

 

 とにかく対人コミュニケーション能力が死んでいる一誠からすれば、他人との会話なんて避けられるものなら避けたい道なのである。

 そりゃあ確かにこの梨晏だか大史慈なんて女は性格的にはコミュ強なのだろうが、そもそも初見の際は主が違った敵同士だったし、その時半殺しにしてやった相手でもある。

 

 気付けば雪蓮と馬があってここに居るようになっていた様だが、一誠にしてみれば、炎蓮の次女とその配下共並にそれだけの存在なのだ。

 

 それをどいつもこいつも話せ話せだ等と……。

 

 

「ねー、そこまで一誠に話させる必要なんて無いんじゃないの?」

 

「うむ……先程から一誠の顔色が悪い。

確かに今のままでは良くないのはわかるが、あまり無理をさせるのは……」

 

 

 と思っていた一誠側にまさかの助け船が出でくる。

 その助け船を出した人物こそ、最早ミリキャス・グレモリーばりに一誠に対して重い感情を向ける娘さんこと小蓮と、何故か時を経るに連れて一誠に対して異様に過保護になっていった雷火の二人だった。

 

 これには一誠も二人に対して『そーだそーだ、もっと言え』と内心思うのだが……。

 

 

「面倒な、だったら今から一誠が梨晏を抱けば良いだろ。

そうすりゃあ少なからず情も生まれるだろうしな?」

 

「へ?」

「あ゛?」

 

『!?』

 

 

 流石肉食系女子共のトップを張るだけあって、大雑把というか、倫理的にアウト過ぎる炎蓮の一言にその場の全員が一斉に固まった。

 

 

「ちょ、ちょっと母様? それは極端というか……」

 

「じゃあ雪蓮と冥琳もやれ。

オレもやるから」

 

「え!? あ……ま、まあそれなら別に良いかな?」

 

「確かに裸と裸の付き合いというものもあるのかもしれないな……」

 

 

 咄嗟に反対しようとする雪蓮と冥琳だが、炎蓮の暴論にあっさりと掌を返してしまうチョロいん具合を発揮してしまう。

 

 

「わ、私が日之影と……!?」

 

 

 そして梨晏はといえば、いきなりの展開にあわあわしており、すぐ近くから小蓮による殺意の視線を向けられていることに気が付いていない。

 

 

「な、何を言っておる! 一誠にはまだ早いじゃろうが!」

 

 

 勿論、雷火は烈火のごとく怒って反対しながら目を伏せてプルプルと震えている一誠を庇う様に抱き締め始める。

 

 

「それなら雷火も入れば良い」

 

「んな!? わ、儂はそんな不純な動機で動かぬぞ!」

 

「ほーぅ? 何度か一誠の意識の無いのを見計らってあれやこれややってたお前が言うのか?」

 

「ち、違う! あ、アレはそうじゃない!! そ、そういう意味ではない……!」

 

 

 気付けば迷い混んだ草食動物を全員で頂こうぜ的な話となってしまい、当初の出来事が完全にどこかへと行ってしまった。

 そんな中、雷火に抱かれて居た一誠が何気に優しく彼女を押し退けてから放すと、ゆっくりと席を立つ。

 

 そしてこれまた勝手に盛り上がる面々を取り敢えず一通り一瞥してから炎蓮にメンチを切ると……。

 

 

「勝手に盛り上がってる所恐縮だが、そんなくだらねぇ話になるのなら俺は帰るぞ」

 

『…………』

 

 

 その言葉に、一人で妄想してイヤイヤしていた梨晏もろともシーンと静まり返る。

 

 

「まあ、そう言うだろうとは思ったぞ。

けどなぁ一誠よ? お前もそろそろ女の5人や6人くれー抱かねーと男になれねーぞ?」

 

「オメーの物差しで測るなよ。

俺は今までもこれからもこれで良いんだよ。

第一な――」

 

 

 炎蓮の言葉を一蹴しながら、ここで初めてまともに梨晏と目を合わせた一誠は、きょとんとする梨晏にズイッと顔を近づかせながら一言。

 

 

「ご心配なさらずとも、私にそのような気は毛頭ございません大史慈様」

 

 

 わざとらしく畏まった口調の一誠に梨晏は、なんとなくここで機を逃したら終わりだと思ったので食い下がる。

 

 

「い、いやいや! で、でも言われてみたら日之影のことがずっと気になってたのって実はそういう事なんじゃないかなーって思ってたし、そ、その……それで日之影が私を真名で呼んでくれたら良いなって……」

 

 

 

 何時もの彼女らしくないしおらしい態度に、ちょっとだけ雪蓮と冥琳はむっとなり、雷火は『ま、まあ若い女の方が良いに決まっておるよな……こんなババァじゃのぅ……』と若干寂しい気持ちになり、小蓮は――理性でこそ抑えているが、今にも後ろから刺し殺しに来そうな顔で睨んでいた。

 

 

 

「……。私が少々頑なになりすぎていた事は謝ります。

ですので、そういった言葉は軽々しく言うものではありませんよ」

 

「か、軽々しくなんてそんなことないよ! 私は――」

 

 

 尚も食い下がろうとする梨晏。

 そんな梨晏に普通に短気である一誠はめんどくさいとばかりに一度顔を伏せてため息を吐き、今度はチンピラのような顔付きでたった一言。

 

 

 

「じゃあもうハッキリ言ってやる、オメーなんぞで勃たねぇんだよアホ」

 

「」

 

『』

 

 

 

 もう色々と台無し過ぎる台詞を吐き捨てるのであった。

 

 

 

「まあ、このくだらねぇ話でオメーに対する吐き気は薄らいだ気はしないでもない。

今後は不愉快にならねぇ程度の態度になることだけは努力してやらぁ」

 

「」

 

「あのね一誠……?」

 

「あ? んだよ?」

 

「ある意味女の身としては致命的過ぎる言葉だったぞ今のは……」

 

「こういうのはハッキリ言うべき―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぅ……ぁ……ひっく……」

 

「…………は?」

 

 

 

 

「うわぁぁぁぁん!!!」

 

 

 

 

 そして梨晏は泣いた。

 それはもう、子供のように大泣きした。

 

 

「……。何泣いてんだ急に?」

 

「そりゃあまあ……な?」

 

「うむ」

 

「どっちが悪いとかではないが……」

 

「多分私が同じこと言われたら立ち直れないわ」

 

 

 焚き付けた側の炎蓮ですら微妙に悪いことをしてしまったと罪悪感が伺える顔をする程度には梨晏が言われた言葉には同情する程だったらしく、言った本人だけが『寧ろ安心するべきだろ』と理解していない様子なのが余計に追い討ちをかけているわけで。

 

 

「えっへへ♪ イッセー♪」

 

 

 小蓮だけが、驚くほど輝く笑顔なのだから怖い世の中である。

 

 

「ひっく、じゃ、じゃあ聞くけど……。

雪蓮とか冥琳とだったらどうなの……? ぐすん……」

 

「あ? ……………………………………………………。いや、無いな」

 

「ぜ、絶対嘘だ! 答えるのに凄く今迷ってたし! なんでよ!? 私だって脱いだら二人に負けてないよ!!」

 

「うるせぇボケ!! テメーなんぞとヤるくれーならそこのババァ共相手にするほうがまだマシ―――」

 

「え……」

 

「ほーーーーーーぅ?」

 

「ババァ共とはつまり儂等も入っておるのかのぅ?」

 

「まさかの告白だわ~?」

 

「え、わ、儂も? そ、そうなのか?」

 

「ものの例えだババァ共! ニヤついてこっち見てんじゃねぇ!!」

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ……私と何が違うのさ~?」

 

「さ、さあ?」

 

「うむ……しかしあの様子から見ても脈があるのだけは確信出来たな雪蓮?」

 

「そ、そうね……。

い、今の内に身体洗って来ようかしら?」

 

「うわーん!! おざなりにのけ者にされたぁ!!!」

 

 

終わり




補足

この√だと三馬鹿とは違って次女さん達の影がすげー薄い。

そして上の方達が基本腹ペコ虎状態。
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