間違わなければ実に平和(変態)だったのに……
力を取り戻した直後のアドレナリン大量分泌でやらかした俺は正味な話、とっとと奴等との縁を切れば良いのだと考えていた。
だってそうだろう、別に俺はリアス・グレモリーに対して忠誠心なぞ無いし、もっと云えば悪魔共のやる事なんぞにも興味は無い。
力を取り戻した時点でとっとと切り捨てて、俺は俺の人生を再開させりゃあそれで終わるんだ。
だというのに……何をしてるんだ俺は。
「だからお前にはセンスが無いんだよ、いい加減諦めてくれねーかな」
「うー……!」
「うー! じゃねーよチビ餓鬼。
0に何を掛けても0の様に、リアス・グレモリーにはたまたま1の要素を持っていたから覚えられたんだ。
持ってないお前にはどう足掻いても理解なんてできねーよ」
「うーうー! 嫌です!」
「……。聞き分けのねー餓鬼だなクソ!」
それから何日か経った。
結局ハイテンションのままある事無いことほざいてリアス・グレモリーを拉致った際、偶々近くに居たって理由でリアス・グレモリーの兄だか何だかの魔王の手足をへし折ってやったのが効いたのか知らんけど、奴等の寄越した使者が『婚約はやっぱり消えました』的な話を持ってきた訳で……。
俺は奴等に処刑対象として見られてるのかと思いきやそうでも無く……。
よく解らないけど、婚約話はリセットされたらしい。
何でも、俺は毒にも薬にもなるらしいから、余計に拗らせて敵対意思を持たれるよりかは穏便に済ませたいとか……。
『条件が一つだけ。
どうかこれからもリアスの力になって欲しいんだ』
両手両足にギプスを装着した車椅子姿の魔王に、リアス・グレモリーにとっては不条理な結婚を白紙にする代わりに、俺をこのまま転生悪魔として位置させる。
…………。ぶっちゃけ殴り殺してやろうかと考えたが、それで穏便に終わるなら別に良いやと思ったので取り敢えず俺はハイハイと頷いておいた。
俺の中にある駒なんざ何時でも自壊して人間に戻れないこと無いし、ぶっちゃけ力を取り戻した今なら誰の指図も受け付けないとはね除けられる自信もある。
それに、リアス・グレモリーは兎も角として俺は悪魔って連中がどうも信じられない。
このまま俺が抜けたらまた婚約話が復活するんじゃないかと考えれば、まぁ抑止力として存在するのは決して不正解じゃないだろう。
……………。俺何でリアス・グレモリーに対してわざわざ此処まで考えてるんだろう……。
「イッセー! 出来たわ!」
そんなオチもあり、無事にリアス・グレモリー達は学校に通える普段の生活に戻った訳だけど、今俺は『要監視対象』に巻き込まれ同然になっちまった奴等相手に、何故か教えてます的な真似をしていた。
「おう、そんな感じだ」
「ぶ、部長だけ……」
事の発端は今、リアス・グレモリーが夜の学園の運動場ではしゃぎながら音速移動しているその姿を絶望顔で膝を付いてる白髪のチビ……えっと、塔城小猫が教えろと喧しかったせいだ。
よく知らんが、部長だけズルいとか言って聞か無かったのだけど、一体何がズルいのか俺にはさっぱり解らない。
というかこの餓鬼、力を取り戻してからの俺と妙に距離が近いというかウゼェ。
具体的に何がというと、まずしつこいレベルで話し掛けてくる。それも無視してるにも拘わらずくっちゃべってくる。
後、学校で昼飯食おうと食堂に行くと待ち伏せ宜しくに現れては、同じメニューを頼んで、ウザいから消えろと言ってるのに俺の隣に座って食べる。
…………。正直マジ何なのコイツ? と何度思ったか。
挙げ句の果てにリアス・グレモリーに教えておいた黒神ファントムを教えろとまで言う。
何度もお前にはセンスが無いから無理だと言ってるにも拘わらずだ。
「見て解るだろ? これが1を持つ者と0の差だ。
どうやってもカスリもしてないお前じゃ千年経とうが無理! まだ人間の要素がある木場と姫島の方が可能性があるぐらいだ」
「う……嫌です」
「だから嫌だとかいう問題じゃねーんだよ!」
大体俺の技術を習得出来ないからって何で泣きそうな顔なのかが分からねぇ。
独自に強くなれば良いだろうが。
「あの、イッセー? 別の技術とかは無いの……? 小猫でも大丈夫そうな……」
「無い。姫島にはあるがな」
「あ、あら……」
「うぅ~!」
「あと木場にもある」
「え、あ、そうなんだ……あはは」
「うーっ!!」
「アルジェントは無い。
てかお前は戦闘センスそのものが無い」
「あ、そ、そうですね……」
「でも金髪だから許せる」
「うぎー!!!」
カッ! めんどくせー餓鬼だ。
「うーうーうーうー☆」
「うーうーとうるせーんだよ! テメーそれで可愛いつもりかボケ!!」
あぁ……やってらんねーぜ。
サーゼクス・ルシファー達は明確に恐怖していた。
あの突如として凶悪な力を振い始めた赤龍帝の少年を、サーゼクスは心の底から恐怖した。
それはその時近くにいたグレイフィアもライザーも同じであり、ただそこに立つだけで自分達を捻り潰して見せた赤龍帝が怖かった。
『――で、ありまして。今日も赤龍帝はリアス達に自身の技術を仕込んでいました』
「そうか……ご苦労様ソーナさん」
冥界・ルシファードの城。
サーゼクス・ルシファーは人間界で監視の任を与えたソーナ・シトリーからの本日の報告を電話で受け、労いの言葉を描けてから切ると、その電話に対して聞き耳を立てていた悪魔の有権者達全員の顔を見ながら口を開く。
「特に何も無いらしい」
『……』
冥界最強の一人であるサーゼクスの言葉に、会議室は重苦しい空気に支配される。
人から転生した悪魔……それも赤龍帝が起こした騒動によりグレモリー家とフェニックス家の縁談は半ば凍結状態となってから早数日経つが、依然としてあの凶悪な力を持つ赤龍帝を黙らせる方法が悪魔達には思い浮かばないのだ。
「リアス達に今のところ危害は加えられてないらしい。
僕としては、このまま刺激しない方が良いと思うのだが、アナタ達はどう思う?」
「殺すべきだ……とは無責任に言えませんな」
「我々は直接赤龍帝の力を見たから、サーゼクス殿の意見は解る。
だが、見ていない他の者達は殺すべきだという意見が大多数だ」
「そう、それなんだよね……」
魔王の妹を欲望に駆られて拐った。
冥界の悪魔達に広まった転生悪魔の赤龍帝の認識はほぼそれであり、殺すべきだという声が多い。
「正直云うと、僕はあの時殺されるかと思った。
本気を出せなかったにせよ、恐らく出した所で殺されていたと思う。
リアスが云うには本来の力に戻ったからこそらしいけど……」
しかしサーゼクス達からすれば無理難題でしか無い。
嗤いながら殴り飛ばされ、嗤いながら蹴り飛ばされ、嗤いながら捻り潰されたからこそ解る圧倒的な差。
正直、本気で敵意を持たれた時の方が危ういと……たった一人の転生悪魔に思う『見た者達』は、リアスを気に入ったと言った時点で口出しすら出来なくなっており、ライザーに至っては自ら挑んで半殺しにされたせいかすっかり結婚の事なぞどうでも良くなって引きこもってしまっている始末。
「リアス達全員が彼を信頼している……それだけでもかなり厄介だよ」
冥界の悪魔達は突如出現した赤龍帝に今日も頭痛に悩まされるのだった。
元々の先輩はお喋りな人だったのと、力を取り戻してから私の言葉にも返事をしてくれる様になったのが嬉しくて、私は先輩と仲良くなりたくて色々と自分なりに頑張ってみた。
先輩の技を覚えたいのも、先輩とお揃いになってみたいからであるのに……先輩は私にセンスが無いと言ってます。
「アレが監視人らしいけど、誰だっけ?」
「ソーナよ……私の昔馴染み」
「ふーん……」
あの騒動のお陰で部長の婚約話は零になりましたが、その代わりに監視が付くようになってしまい、一番監視に適しているという理由でソーナ・シトリーというもう一組の悪魔が私達というよりはイッセー先輩を監視しており、今日も夜の学校での修行中から帰り道の今まで後ろからシトリー先輩の手の人達の視線を背中に感じる。
「とっとと俺をはぐれ悪魔に認定して成敗して来れば良いものを。
まあ、ぶっ殺してやるが」
「イッセーの力が魔王を越えてるって発覚してからはかなり慎重になってるのよ。
余計な真似して悪魔に敵意を抱かれたらマズイから……」
「是非ともその余計な事をして貰いたいものだね。
大手を振ってぶち殺してやるのによ……ゲッゲッゲッ!」
力を取り戻した先輩の力は凄まじい。
まさかサーゼクス様すらあんな簡単に捻り潰すなんて思わなかったです。
こう、力こそ正義を地で行ってるといいますか……。
平然と嗤う先輩に部長と副部長は苦笑いしている。
「じゃあな……」
と、此処で先輩と別れる事になった私達は、若干猫背気味に一人別の道に進む先輩の背中を見送り、私達も自分の家へと帰る。
本当は先輩のお家に押し掛けたいなー……と思うけど、それは流石にしつこすぎるので自重します。
ええ、だって……。
「ただいm――」
「おかえり白音ー!!」
ちょっとだけ今、私個人で厄介な事になってましまってまして……はい。
「……………」
「白音~ 白音~!」
「……………」
調度部長の婚約話が破棄され、私達が罪に問われないという流れになってからでしたか。
イッセー先輩の家から惜しむ気持ちを押さえながら自分の家に帰ると、何故か私の部屋にこの人が居たんです。
「苦しいので離れてください黒歌姉さま」
色々とあって生き別れになった筈の……私の姉が。
「あ、ごめんね?」
「……」
最初は当然驚いた。
というか生きていたのかと驚愕した。
けど何故か知らないけど、昔は姉の力に怖いと思ってたその感情が無くなってて……。
気付いたら一緒に住むようになってて……。
「あの人は? あの人の何かとかは!?」
「……………。一応ジャージをすり替えてみたけど……」
「よっしゃあ! 貸して貸して!」
………………………。こんな所で姉妹らしくなるなよと思ってしまう訳で。
私は今、今日の修行で使ってた先輩のジャージを新品とすり替えて入手したと鞄から取り出しながら黒歌姉さまに教えると、姉様は物凄いスピードで私の手から先輩のジャージを掠め取ると、変態みたいにスーハースーハーと……。
「あはぁ……♪」
「イッセー先輩の匂い……」
私と一緒に姉妹らしく堪能する。
驚く事に、何とこの黒歌姉様が無事に生きてた理由がどうやらイッセーに先輩にあったらしく、その昔偶々通り掛かった先輩がはぐれ悪魔として追い込まれていた姉様を助けた―――――と、黒歌姉様は自称しており、先輩が今私の仲間と聞いた途端、じゃあ白音と一緒に居る! あれ、確執は? と突っ込みたくなる宣言をしたまま……今はこうして先輩の私物でハァハァしています。
まあ、先輩は黒歌姉様の事なんて記憶に無いみたいですけどね……然り気無く名前を出しても『誰それ?』って言われましたし。
「そっか、イッセー……えへ、イッセーかぁ……♪」
「…………。姉様の事は全く覚えてないみたいですけどね」
「うーん、確かに覚えないかも。
あの時も私を助けたというよりは修行の相手として追っ手の連中をぶちのめしてたっぽいし」
そう……頬を染めながら先輩のジャージの下で勝手に盛ってる黒歌姉さま。
股間に位置する箇所をスーハースーハーしてるのは見なかった事にしておくべきなのでしょうか……いや、変態なのはもはや覆りようも無いので今更ですね。
「んっ……んふぅ……! えへへ、ココがじゅんってしてきたにゃ~ 白音はどう?」
「姉様と違って変態じゃないのであり得ません」
私はそう簡単に盛る程の変態じゃない。
ただ先輩ともっと仲良くなって、しつこいとか言われて殴られて、叶うなら無理矢理滅茶苦茶にしてくれるだけで良いんです。
「会いたいな……んっ……やぁ……ん……!」
「私は毎日会えますよ……ふふん」
姉様とは違う。
私はもっと健全だ。
「あっ……!? ぁ……あ、あはぁ♪ お風呂に入り直さないと……えへ」
「せめて下着を履いてくださいよ。
お陰でお布団がビショビショになるんですから」
「あはは、ごめんね? でも白音も最近はパンツがビショビショばっかりで……」
「私は先輩に殴られたりするからしょうがないじゃないですか。
あぁ、姉様知らないからしょうがないか……お尻を蹴り飛ばされた時なんてもう足腰立たなくて物凄いんですよ?」
「良いな良いなー……私もイッセーに蹴られたいな~」
私は、姉様とは、違う。
私は結局イッセーのおんぶに抱っこだったわ。
ライザーに負けた事実は覆らないし、本来なら結婚させられていた。
全てを取り戻したイッセーのお陰で私は今自由になれている。
…………情けないにも程があるわ。
「我を通すためにはイッセーの様に強くならないと……」
今回の事で私は反省しないといけない。
我を通す強さを持つべきだという事を。
もっともっと強くなる事を。
「イッセーから関心を向けられる結果を……興味を持って貰える女に……!」
イッセー自身に本当の意味で気に入って貰う為に。
私はもっと強くなる……それが今の私の道。
「自分を知って受け入れる……それがイッセーの場所に行くための最初の一歩。
……やってやるわ、アナタはそうやって強くなれたんでしょう……イッセー?」
正真正銘……私の道を歩むために。
補足
冥界的にはイッセーを最も危険な存在として認識しており、何れは排除も視野にいれてます。
まあ、現時点で魔王の攻撃を『蚊に刺された方が痛い』と平然と言えるレベルで、更に云えば進化も再開してるので、何時になるかは不明。
その2
然り気無く紛れてる姉ちゃん。
しかも完了してました色々と……。
厄介なのが、姉妹揃って似すぎてるという所か……。
その3
小猫さんの特技『イッセーの私物を新品とすり替えて持ち帰り、お姉ちゃんと半分こハァハァしてる』はまさに芸術的なレベル。
最近の悩みはそっちの意味でのお漏らしが多い……らしい。