修正はしたけど……
外史という不思議な世界に来てしまい、訳も解らないまま華琳――つまりこの世界の曹操(女の子)に拾われ、天の御使いとして生きている俺には、外史に来る直前……正直あまり思い出しくは無い出で立ちのナマモノにこんな事を言われた。
『ご主人様が外史に渡る際、手ぶらでは可哀想だからご主人様に私からの贈り物をあげるわぁん』
自分を
『その力は、ご主人様と同い年くらいの子が持っていた力よん。
本来の役割を『奪い取られ』て朽ち果てる筈だった彼が、道を外れた先に掴んだ『あってはならない力』』
説明の大半は意味不明だったけど、どんな力であったのかだけはわかった。
『彼は数多の世界を『管理する者』……そうねぇ、ご主人様に解りやすく説明すれば『神』の決定に逆らおうとした。
それが『管理者達』の怒りに触れたのよぉん』
無限に成長する力。
鍛えれば鍛える程、常人を遥かに凌ぐ速度で成長し続ける力。
『彼は自分の個を剥奪される原因となった『神』を憎悪している。
そんな男が神にも届きうる力を発現させてとなれば困るのよぉ。
だから私はその管理者の依頼を受ける形で、彼の力を剥奪することにしたのだけど……』
そんな力が俺に与えられたと聞いた時は、正直言ってワクワクしてしまった。
けれど……。
『困ったことに彼の自我は私一人でどうにか出来なかったのよぉ。
幸い力の大半は取り出せたのだけど、全てとはいかなかったわ。
そこで私は外史に渡るご主人様に彼の力の大半を渡そうって考えた。
……彼の中に残る力をご主人様に回収して貰う為に』
力を得た代償は正直軽いものではなかった。
『ご主人様と同じく、彼も外史に送っているわ。
だからご主人様はその力を使いこなし、信頼出来る仲間と共に成長し、彼を打ち倒して欲しいのよぉん』
なんて一方的に言われた俺は外史へと渡り、華琳達と知り合う事になる。
最初はパラレルワールドも甚だしい……されど本物の殺し合いがまかり通る三国志的な世界での生活には苦労した。
けれど少しずつ生活に慣れ、力を鍛えていく事で俺は確かに強くなった。
いや、それだけではない、華琳達との交流を重ねていく内に男女の関係になったりもしたのだけど、その時間を重ねる事で華琳達も『強くなっていった』
そう、恐らく……いや間違いなくこれが俺に与えられた力なのだと思う。
自分と……そして繋がりを持った相手と共に成長し続ける。
今となってはこの力は俺にとって無くてはならないものになっていった。
だからこそ、この世界のどこかに居るであろう『元の持ち主』を探さなければならなかった。
別に彼には恨みなんて無いが、あのマッチョから聞いた限り、力を持ったままの彼は野放しにすると世界を滅ぼす可能性がある。
それだけは何としてでも阻止しないといけない。
そして元の持ち主が誰であるかも既に検討が付いている。
以前、黄巾の乱の際に討伐対の一つとして現れた……執事のような服を着た男。
孫堅の――呉となる勢力に居た魔法のような力を使う男。
間違いなく、彼が元の持ち主だ。
近い内に彼とは直接戦う事になるだろう。
だから勝つために俺は――いや俺達はもっと先に進まなければならない。
「きゃぁぁ!!? い、い、一誠!! な、なんでこんな事するのよ!?」
「………さぁ、なんとなく? 本能的に?」
「そ、そんな理由で一誠は女の服を消し飛ばすの!?
せ、責任取ってよそろそろ!!」
「そんなペラペラもん着てるオメーが悪い――ブワッハハハハ!!」
「ま、またやってるし……」
「曰く、雪蓮はなんとなくセラフォルーなる女に似てるからついやってしまいたくなる――らしい」
「やられてる本人からしたら堪ったものじゃないのだろうけど、よくよく考えたらあんな楽しそうな顔を引き出せてる雪蓮って結構凄いよね?」
「その度に雪蓮の服は消え去るがな……」
「対談?」
「ああ、前に劉備側から我等に同盟願いの書状が送られてきただろう? その同盟に対して断りの返答を出したら今度は会合を申し込んできたのだ」
「劉備達からしたら、自分達の勢力だけで曹操の所と事を構えたら負けると思っているから必死なんだよきっと」
「うぅ……また一誠に裸にされたぁ」
最近、普通に会話が成立可能な人物が漸く一人増えた一誠は、雑務仕事の休憩をしていた所に突然そのような話を聞かされた。
その前に軽く雪蓮相手に模擬戦をやったのだが、ついサド心が爆発した結果、器用に雪蓮の服だけを消し飛ばし、恥ずかしがりながら身を丸める彼女を相手にゲラゲラと大笑いしていたらしく、未だにそこら辺の精神ダメージから抜け出せてない雪蓮を横に、割りと真面目な話をしている。
「それでババァ達はなんて?」
「前と同じくそのまま突っ返しても良いけど、向こうがそこまでして同盟を望むという事は、こっちが有利な条件を突き付けられるかもしれないと、重鎮達との話し合いをしている」
「天の御使いを擁する曹操に対抗するには、『江東の悪鬼』を擁するウチの戦力が必要なんだと向こうの軍師辺りが考えてるんじゃない?」
「……………? なんだその江東の悪鬼ってのは?」
「そりゃあ一誠の事だよ」
「また如何にも馬鹿が考えました的な呼び名だな……」
さりげなく自分が他所でそんな呼ばれ方をされていると知って絶妙にショックを受ける一誠だが、最近になって一誠が茶葉から完全自作した紅茶とクッキーを実に美味しそうに楽しんでいた梨晏が他の呼び名があると、一誠の通り名を出していく。
「他には孫家の狂犬なんて呼ばれてたっけ?」
「犬……」
「あと女を全裸にひんむいて笑う変態……」
「それは雪蓮の主観でしょうが。
まー……知らない者からしたら一誠って普通に理解不能というか、戦場出ると江東の虎なんて呼ばれる炎蓮様とは正反対に『無表情』で敵を殺していくし……」
「加えて妖術まで使うしな。何も知らぬ者からすればまさに悪鬼だ」
「人前で笑いながら女の衣服をひんむく時点で悪鬼だわ」
「………」
付けるにしてももっとマシなのは無かったのかと内心思う一誠は、恨めしそうな目で此方を見てくる雪蓮をスルーしつつしょっぱい顔をする。
「話を戻すぞ。
要は特に戦力にもならなそうな連中が寄生したがってるって事なんだろ?」
「その言い方に語弊はあるかもしれないが、否定も出来ぬし大まかに言えばな……」
「本当に曹操と戦争になった場合を考えたら駒は多いに越したことはないと思う」
「お願いだからもしそうなったとしても、そいつ等の服を消し飛ばしたりしないでよ? こんなの私だからこの程度で済ませてあげてるんだから」
これまたわざわざ西洋風に自作したティーカップを梨晏が空にした瞬間には、おかわりを察してささっと淹れながら一誠は『フルパワーにさえ戻れていたら、こんなかったるい駆け引きなんぞ考えなくて良いのに……』と、自分の不甲斐なさに微妙にセンチな気分になるのであった。
「それと仮に劉備達と話し合いの場が設けられた場合、一誠も出席しなければならないぞ?」
「はぁ!? な、なんで俺が!?」
「寧ろなんで自分には関係ないって顔なのよ? 劉備達の目的は間違いなく一誠なのよ?」
「…………………………」
「あ、久しぶりの嫌そうな顔だ……。
私もこの前までこの顔か無表情しか知らなかったんだよなぁ……」
何が原因で戦争になるかわからないという、世間的には実は割りと緊張状態の最中、劉備達側からの懇願に対する返答はどうしようかと考えていた炎蓮達の下に、何故か嫌そうな顔でやって来た一誠。
「……。劉備だかなんだかは会合依頼が来たとかなんとかって件なんだが」
「ああ、その事なんだが……」
「決めるのはアンタ等だ。
けど、もし受けるって話になったらについての確認が俺はしたいんだが……」
「? なんじゃ一誠?」
「…………………………。その連中と会合に俺は出なくて良いよな? 小難しい話とか苦手だし……」
受ける場合、自分はその場に居なくて良いよなと言い出す一誠に、炎蓮達の目は丸くなった。
「それはまた何故?」
「何故って言われても、嫌だから……」
よくも知らん人間にジロジロ見られたくはないし、その視線だけで吐きそうになるとは言えず言葉を濁す一誠に、『ババァ共』は大体を察した。
「恐らく劉備共は一誠、お前の力を見定めるつもりで場を設けたがっている。
つまりお前が居ないと意味が無い」
「………」
「向こうもアナタを出せと言い出すでしょうしね」
「…………………」
「一応此方側もある程度の礼を示さなければならぬしの」
「………………………………………」
「………。そんなに嫌か一誠?」
「…………………………………………………」
何時もは行動も言動も雷火を除いてアッパラパーな炎蓮、黄蓋こと真名を祭、程普こと真名を粋怜の三人ですら、礼儀の問題と正論を言ってくるので一誠は閉口していると、態度で察した雷火に訊ねられたので無言で頷く。
「戦場だと率先して敵をなぎ倒していく癖に、こういう事はどうしてそう消極的なんだお前は?」
「俺は悪意だ殺意を向ける奴は得意だが、そうでもない奴は何を考えてるかわからないから苦手なんだよ……」
「別に自分から愛想良くする必要はないのよ?」
「うむ、向こうの話に適当に相槌でもしておれば良い」
「…………」
「そうじゃ、無理はしなくて良いし、耐えられなくなったら儂を頼れば良い」
「…………」
なんやかんや一誠より年上の女性だけあって、一誠の性格を把握した上で諭すように話す四人なのだが、先程から無自覚状態で子供みたいな不安顔をしている一誠。
(おっと……?)
(そんな顔されちゃうと……)
(ついこのまま連れて帰りたくなる……)
(っ……一誠)
その顔に、雷火はただただ純粋に母性が爆発していたりするし、逆に炎蓮や祭や粋怜は美味しそうな獲物を目の前にした肉食虎よろしくに内心『ジュルリ』としていた事に気付かず『この話はまた後で……』と部屋を去る一誠なのだった。
「ふぅ……危ない危ない。一誠の奴はたまにああいう時があるからなぁ。
あと少しで強引に閨に連れ込んでいた所だった」
「炎蓮ですらそう思わせるなんて、凄い子だわ一誠って……わかるけど」
「普段が懐かない野良犬のような気性だからのう。
だから余計、ああいう弱った姿を見てるとつまみ食いがしたくなるのはわかるぞ?」
「こ、この女共は……」
結局トボトボと肩を落としながら出ていく姿を見送った三人の超肉食系女子達がにやにやしているのを、雷火だけは軽蔑交じりの目をするのだが……。
「はん、自分だけ違うって顔しているお前が一番一誠をどうこうしたかったんじゃないのか? え?」
「そうよ、雷火は何時も然り気無く一誠と一緒に居たりするし」
「この前も眠っていた一誠を半裸の姿で抱きながら寝ておったじゃろ? 儂等の事なんて言えんじゃろうに」
「わ、儂はただ疲れて眠っている一誠が身体を冷やさぬようにと思っただけじゃ! お主等のようや不純な事なぞ考えては――――――お、おらんぞ! 本当じゃ!」
大人女子達もこうして、大概をダメ女にナチュラル製造する一誠にやられているのであった。
曹操の勢力からは最近ちょっかいを掛けられているし、その勢力の無駄なデカさを考えたら、確かに雑魚だろうが数は多いに越した話ではない――というのは頭ではわかっているものの、顔合わせだなんだをしなければならないのだと思うと嫌で仕方ない一誠は、捨て子犬みたいなオーラをバシバシ垂れ流しながら城の廊下を歩く。
「あ、ひ、日之影……こ、こんな所で会うなんて珍しいわね?」
「ぐ、偶然だな! 実は今蓮華様と鍛練をしようと思うのだが、貴様がどうしてもと言うのなら共に――」
「どうしても嫌だ」
何か途中で地味コンビ(一誠が勝手に命名)こと孫権と甘寧がとすれ違った際に何か言ってた気がしたけどガン無視し。
「あら日之影さんではありませんか~
実は珍しい書を手に入れましたので是非ご一緒に――」
「一人で読んでろ」
なんか間延びしたしゃべり方をする冥琳の補佐をやってる軍師にも話し掛けられたけどスルーし……。
「お猫神様! 今日こそ私にお猫様と戯れられる極意を――」
「知るか。勝手に寄ってくる」
猫を惹き付ける謎体質の一誠を勝手に猫の神呼ばわりする孫権親衛隊の子もシカトし。
「ひ、日之影様! 本日は日之影様の戦術論を――」
「気にくわない奴はぶん殴る。以上」
新米軍師の少女の勇気も一蹴し。
「ひゃわわわー! 日之影様――」
「うるせーです。黙れです。さようなら」
もう一人の慌ただしい新米軍師の少女をも塩対応を貫き。
「? あれ、今誰かと立て続けにすれ違った気が……まあ良いか」
未だにまともな会話をしたことが無い少女や女性達を盛大に凹ませたという自覚も無いまま、来るべき時の為の―――というかただの日課となっているトレーニングをしようと城を出る。
基本的に一誠がトレーニングをする場合、他の兵士達が行うような訓練場では行わず、人目の付かない――なんなら町やら城から若干外れた山の中やら湖の畔やら平原といった……とにかく人目の無い場所で細々とやるのを好む。
「…………」
ストイックと言えば聞こえは良いのかもしれないが、事実は単に人目に晒されるのが普通に嫌なだけである一誠の鍛練は一日たりとも欠かした事はない。
しかしここ最近の一誠は元の時代の時以上の『壁』に直面していた。
(トレーニングの量だけを考えれば、間違いなく元の時代以上にやっている。
相手はただの一般人とはいえ実戦も積んではいる――それなのに、何故かこれ以上強くなる実感が沸いてこない)
それはこの外史に飛ばされて以降、ずっと一誠の精神内に寄生する『巨大な重石』。
思いどおりに自分の力を十全発揮することが出来ない枷。
(最初は何かに無理矢理『押さえ込まれている』と思っていた。
しかしこれは枷というより俺の
当初はトレーニングを積めばフルパワーを取り戻せると踏み、地道にやってきた。
しかし本来の約3割程の力を想定よりも大分遅い期間で取り戻した辺りから一誠は気がついたのだ。
制限されているのではなく、異常そのものの大半が消え去っているということに。
「……………ちっ」
正直認めたくはないし、なんならこのまま怒りの赴くままに暴れ倒してしまいたくなる。
あの変態褌カマ野郎が目の前に居るのなら是非バラバラの死体に変えてやりたい。
だが、この世界に堕ちて以降どれだけ探してもあの存在は見つけられなかった以上、暴れても解決にはならない。
「30%でどれだけやれるかだなまずは……」
自身の最大出力を失ったのであるなら、今はまず自身の現時点での限界値を受け入れ、出力の進化ではなく技術の向上を目指す。
勿論何れはフルパワーを取り戻すし、何のつもりで外史なぞという世界に同意無しに飛ばしてくれた例の変態褌マンはそれ相応の返しをする。
「verグレモリー兄妹&シトリー姉妹」
幸い、ちっぽけな子供の頃から見上げてきた悪魔の家族達と同じ魔力だけはこの身に残っているのだから。
「ちっ、こんな事ならもうちょいアイツ等から魔力の扱い方を聞いとけば良かった」
無い物ねだりをする暇があるのなら、もっと更に先へと走る。
それが日之影一誠という『兵藤一誠』の残骸なのだから。
「……」
そんな一誠を追いかけてきていた一人の少女が居る。
名を孫尚香……真名を小蓮という、ちょうどミリキャス・グレモリーと同じくらいの年の少女だ。
「…………」
小蓮は母である炎蓮が意識の無い一誠を拾って帰ってきた時が初対面だった。
姉達や他の者達が得体の知れない男に警戒していた段階だった頃の時点から小蓮は一誠という謎の青年に惹かれていた。
早い話が一目惚れというものなのだが、彼が何者であるか、どんな人間であるかが掘り下げられていく程に、最初は得体の知れない奴と言っていた側の者達の何人かが一誠に惹かれ始めていく事に不満を募らせていた。
そして何よりも、小蓮は会ったことも話をしたことも無いが、一誠が言う『未来』に存在する悪魔なる存在はかなり気にくわなかった。
特に一誠がよく話す、ミリキャスという小蓮に年の近い少女の事は『なんか似ている』と言われたこともあって、とても『気に入らなかった』。
「イッセー!」
しかし小蓮はそんな黒い渦の様な気持ちをひた隠しにしながら、今日も元気に一誠の下へと走る。
「小蓮か……」
「えっへへ~来ちゃった♪」
天真爛漫な笑顔と共に魔力を繊細に扱う特訓をしていた一誠に飛び付く小蓮は、簡単に受け止めてくれたその胸元に顔を埋める。
「一人でここに来るのを見たから、今なら皆に邪魔されないと思って……」
「邪魔? ……ああ、鍛練を見て欲しいのか?」
「そうじゃないんだけど……んー、似たようなものかなぁ?」
敵を石像のような冷たい表情で次々と躊躇い無く殺し、かと思えばその激情を爆発させれば王にすら噛みつくような狂犬へと豹変する。
おおよそ『まとも』な人間では無いのだろうが、それでも小蓮は『認めた』相手に示す一誠なりの『優しさ』が……お日様のように暖かさが小蓮は大好きだった。
(ふふ、きっと貴女もそんな一誠が大好きになったんでしょう? そこだけは解るよミリキャス?)
皮肉にも、気にくわない相手の一人であるミリキャスの気持ちが、会ったことも話した事も無いのだが誰よりも理解しながら、一誠との時間に幸福を感じるのだ。
「? どうしたのイッセー? 鍛練は?」
「ん、ああ……いや、たまにはな。
最近お前の相手になれなかったし」
そんな小蓮はてっきり鍛練をするのだと思っていたのだが、暫く小蓮の頭を不器用に優しく撫でていた一誠が『鍛練はやらん』と言い出したので目を丸くしてしまう。
「サービスで――あー違う、つまり特別に今日はお前がしたいことに付き合ってやるよ?」
「え……」
一誠的には、最近忙しくてあまり相手になれていなかったし、ましてや小蓮はまだ子供だからという意味であったのだが、言われた本人からすればそんな事を言って貰えるとは思っていなかった。
故に最初は呆然となっていた小蓮の表情が徐々に弾けるような笑顔―――――ではなく、何故か紅潮し、瞳を潤ませ始めた。
「ほ、本当にシャオがイッセーにして欲しいことをしてくれるの?」
「?? ああ、良いぞ。缶けりとか教えてやろうか?」
これはまさに千載一遇の大好機なのではないかと、この機を逃したら後は無いのではと即時に判断した小蓮は、最早躊躇は要らぬとばかりに一誠から離れると、目の前で胸をはだけさせながら言う。
「それじゃあ……今からシャオをイッセーの
「……? ……………………! このアホ!! そういう意味で言ってねーわ!!」
急にメスの顔をする幼女に、ここでピンと来た一誠が慌ててそのまま脱ぎ始めようとした小蓮を止める。
「なんでよ……! シャオに嘘ついたの?」
「遊ぶとか、どこかに行きたいとかって意味で言ったんだ俺は! ったく、ミリキャスといい、ガキの癖に変な知恵ばっかつけやがって……!」
「………その名前をシャオの前で呼んで欲しくない」
つい本音をポロリする小蓮に何でだと首を傾げる一誠は、ちょっと泣いてる小蓮の頭を不器用に撫でる。
「まあ、あんな母親だの姉だと仲間連中だのの近くに居れば要らん事を覚えちまうのも無理はないんだろうが、お前はまだ少なくとも10年は早いっての……」
「でもシャオはイッセーの赤ちゃんが欲しい……」
「は、はぁ? お、お前マジな顔してなんつー事を……。
あのな小蓮? 仮にだ――本当に仮にお前の望み通りにしたら、俺は色々と社会的に抹殺されるんだよ―――って何を説明してるんだ俺は……」
「でも多分曹操の所に居る天の御使いも同じことしてるかもしれないよ?」
「そうだっただとしても俺には関係ねーし、流石にお前くらいのガキ相手には―――――いや、俺の想像する奴だったらマジでやりかねないかもしれねぇけど」
苦々しい顔をする一誠。
「とにかく! そういう話はお前にはまだ早いし、そもそも俺はそんな気なんて無い!」
「じゃあ雪蓮姉様や母様から誘われたら?」
「無い」
「…………。この前湯浴みしていたイッセーに母様達が入っていったのを見たけど?」
「! み、見てたのか……。
た、確かにそんな事もあったが、当然追い返したしなんもやってない……」
「『ん、んな所触るんじゃねぇ!!』……ってイッセーの声が聞こえたけど?」
「そ、それでも俺は潔白だ!!」
気づけばジト目になって追求してくる子供相手に必死こいて潔白を訴えるという、微妙に情けない絵面になっている訳だが、とにかく子供には早いとぶーぶー言う小蓮を説得し続ける一誠なのであった。
「雪蓮姉様の服だけ吹き飛ばして全裸にしては意地悪く笑うのに……」
「い、いやあれはその……本能的にそうなるというかなんというか」
終わり
補足
何故執事がフルパワーを取り戻せなかったのかは、例の変態褌が更に上の誰かによって命じられ、排除の目的があったから。
誤算だったのは、全ての力を取り上げられなかった事
執事的好感度チェッカー(外史偏)
炎蓮さん←ババァ一号。
とにかく意味不明な成長速度。しかし拮抗できる相手という意味では悪くないのだが、狂暴過ぎるし隙を見せると襲撃されるから割りと怖い。真名に関しては、呼ばないとお前で孕むぞと言われたので速攻呼んでいる
雷火さん←ババァ二号。
割りとこっちの意を汲んでくれたり、察してくれるという意味では寧ろ嫌いではない。真名に関しては自然と呼び合えていた
祭さん←ババァ三号といったら、その日の夜に襲撃されたのであまり逆らえない。真名は呼ばないとお前を食べるぞと言われたので呼んでいる
粋怜さん←お姉さんとか自称してるけどテメーの実年齢考えてからもの言えと言ったその日の夜に泣かされたし、それ以降あんまり強くも言えない。真名で呼ばないと絞り出すと言われたので呼んでは居る
蓮華さん←母、姉、妹があまりにも濃すぎるせいで、地味にしか見えない地味女その1。真名は知らないし別に知りたくもないし名前で呼ばれたくもない。
思春さん←↑に付き従ってるだけの地味女その2 それ以上も以下も無し。真名は知らない。
明命さん←猫猫とうるせぇ小娘。マタタビでも食らっとけ。真名は知らない。
穏さん←冥琳の部下という認識しかない。真名は知らない。
亞莎さん←接点がそもそもない。真名は知らないし興味もない。
包さん←今度余計な事を言ったらテメーの腸引きずり出してそのうるせぇ口にねじ込むぞ――と言った程度に何かを言われた。真名は知りたくない。
梨晏さん←ああまで言われてあっけらかんとできるその根性は素直に凄いと思ったし、向上心を含めても結構好ましいかもしれない←自然と真名で呼び合えるようになった。
冥琳さん←文字の読み書きに関しては彼女から教わった。なんでもかんでも自分一人で抱え込もうとする辺りになんかシンパシーを感じるし、普通に良い奴だと思う。真名でしか呼ばなすぎて最早姓と名と字が微妙に忘れそうになる
雪蓮さん←アホ女(一誠なりの褒め言葉)なので、ついこう……泣かせたくなる時がある(無意識)。好きか嫌いかで言ったらまったく嫌いではない(好感度高めの台詞)。一度公の場で真名ではなくて姓と名で呼び合ったのだが、互いに違和感が凄くてすぐ辞めた。
小蓮←マセガキだけどミリキャスみたいで嫌いじゃない。多分最初に真名を授けられたし、思い返したら彼女に日之影姓で呼ばれた事が一度も無かった。
今のところこんな感じ