色々なIF集   作:超人類DX

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終わりの始まり。


ブリーフィング

 

 

 力を無くした俺には価値なぞありはしない。

 意思を押し通す為には何よりも力が必要であるのだ。

 その力を失った俺の意見に誰が耳を傾ける?

 

 力を掴んだからこそ俺は這い戻れた。

 

 力があったからこそ、俺はこの妙な世界の連中の目に留まれた。

 

 力を失えば最後、俺は見捨てられる、

 

 力を持たずに全てを喪ったあの時のように……。

 

 

 

 

 

 

 

 実験の結果、今の実力で造り出せる分身は一体が精々であることと、戦闘能力にかけては欠陥が目立つという事を理解した一誠。

 とはいえ制限付きながら遠隔操作可能な分身というのは便利であることは変わり無いし、ある程度のリスクを回避しながら敵地に送り込めるということを考えれば、悪くない結果だと思う事にして、早速炎蓮達に話をしてみることにした。

 

 

「相変わらず面妖な奴だなお前は?

妖術で自分を造るとはなぁ……」

 

「皮だけで中身は無いがな。

けど何も知らない奴にはわからん程度だ」

 

 

 曹操の勢力の本拠地に分身体を送り込み、可能なら内側から敵の勢力や指揮系統を崩すという、当初諸葛亮が発案した作戦に誓い作戦を提示する一誠は、デモンストレーションとばかりに炎蓮達の見ている前で分身体を造り上げる。

 

 

「触れた感触は人と変わらないのねぇ……?」

 

「ちと冷たいような気がするがのぅ……」

 

「妖術――いや、魔力だったか? 一誠はすごいことをするのう……」

 

 

 一誠の隣に現れた分身体に興味津々とばかりに、重鎮達がペタペタと触りながら触った感覚を口にしているのを一瞥しながら炎蓮は一誠に問う。

 

 

「その分身とやらを曹操の所に送り込みたいって話だが……」

 

「流石に分身体だと戦闘力が話にならないから、曹操の首を持ってこれるかは微妙ではあるものの、内部から引っ掻き回せる程度のことは出来るだろう。

それに、奴らがどの程度なのかは知っておくべきだからな……。

なんだったか――劉備だっけか? 奴等の話だけではわからんし」

 

 

 凄くストレートに言えば、劉備達のことはほぼ信用してません発言をする一誠の提案に炎蓮は長として考える。

 劉備達の話や抱える兵達から聞いた話によれば、曹操等の軍勢の戦力は数の多さ以上に個々の強さが凄まじい。

 

 

「とはいえ条件さえ整えば引っ掻き回す事自体は出来る。

発動するまでの時間(ローディング)が絶望的に遅いが、分身を介して魔力を行使できたしな。

上手いことやれれば曹操やら天のなんたらを暗殺することも可能だ――――あくまで可能性の話ではあるけどな」

 

「思春の全身が氷付けになったと蓮華達が大騒ぎをしていたのはお前の分身とやらのせいだったのか」

 

 

 一説によれば雑兵ですら呂布が圧される程の武である――と考えれば仮にこちらが100万を越える軍勢を抱えていたとしても開戦となれば負ける可能性のほうが高い。

 

 となれば、一誠の言う通り曹操軍の内部に潜入し厄介そうな種やら芽を潰し、あわよくば曹操や天の御使いを暗殺してしまうのは悪くない話ではある。

 

 

「悪くはない話ではあるが、確実に曹操共の戦力を削れる保証は無いんだろう? 失敗したら奴等が間髪いれずに進軍してくるだろうしな」

 

「そのリスク――いや可能性は考えた。

だが、真正面からやりあってぶち殺せると思える程俺は今自惚れる事も出来やしない。

それに、俺が一番に知りたいのは奴等が本当に異常者(アブノーマル)なのかだ」

 

「天の御使いのことか……」

 

「随分と『有効活用』してくれてるみたいだしな。

面だけは頭に叩き込んでからぶち殺してやりたい」

 

 

 もっとも、そんなすんなりと成功するとも思っていないし、もし向こうにバレたらそれこそ曹操は大義名分とばかりに侵略しに来る。

 軍備や進軍を防ぐ為の手やら色々な策は練りに練って準備はしているし、負けてやるつもりも全く無いのだが、天の御使いの件も捨て置ける話ではない。

 

 

「その後はそうなった『原因共』もまとめて皆殺しにしてやる……」

 

「……」

 

 炎蓮的には実に好ましい『狂犬』めいた目付きで殺意を滲ませる一誠の力を何かしらの理由で天の御使いが持っているのが真実か否なのか。

 その真偽を確かめる為にも一誠の造った分身を潜入させて調査するのは『策』の為にも必要不可欠ではあると炎蓮は納得するように頷く。

 

 

「わかった。それなら許可してやろう」

 

「心配せんでもアンタ等にゃあ損はさせねぇよ」

 

『良かったな一誠?』

 

 

 ここ最近、一誠の腕に変なのが引っ付いてて、それがまた別の力となっているらしいので。

 

 

「それじゃあ準備はよろしく、俺は暫く帰らないから」

 

「わかっ―――――は?」

 

 

 

 

 

 

 

 分身は本体から離れれば離れるほどその精度と強さが弱まる。

 故に現在曹操こと魏の本拠地である洛陽の近くまで接近しないとならないという話らしい。 

 

 一誠と天の御使いである北郷一刀の存在――なによりこの世界が外史という世界であるが故なのか、最早史実なんてどこぞに消し飛んでいるし、なんならこの時期はまだ魏だの呉だの蜀だのは存在していない―――――という事実は知らないままで居る一誠の分身体のリスクの話に炎蓮達は一応納得はするのだが……。

 

 

「お前が分身を操る間、お前は動けなくなるのか?」

 

「完全に動けないわけではない。ただ精度を高めようとすると集中しなくてはならないから、少しばかり無防備にはなるだけだ……」

 

「それならお前が分身とやらを操る間お前の護衛が必要になるじゃないか?」

 

「……。別に誰にも見つからなそうな場所に隠れてから送り込めば良いだけの話だ。そこに人員を割かなくてもいい」

 

「駄目だ。

せめて誰か護衛を一人付けろ。もしお前が奴等に捕まったらそれこそ終わりだ」

 

「……」

 

 

 よりにもよって炎蓮に正論を言われてしまった一誠はむっと口を閉ざす。

 精度を高めた分身を潜入させて調査する間は少し無防備になるのなら、確かにその間自分を守れる護衛が居るほうが集中はできる。

 

 が、此処に来てそんな話が浮上したものだから話が拗れ始めるわけで……。

 

 

「護衛を一人つけるとなれば、誰にするかという話になる訳だが……。

一応聞くが一誠は誰が良いとかあるか?」

 

「は? 別に誰でも良い。

強いて言うなら信用できねぇ奴は嫌だが……」

 

 

 少し前までの一誠なら『雑魚なんぞ要らん』と噛みついていたのだが、自分の現状を受け入れた事でそこら辺の思考が若干ながら軟化し始めているらしく、護衛自体は受け入れている様子。

 もっとも、顔見知りで話せる相手限定なのは譲れないのだが……。

 

 

「はいはいはーい! シャオが行くー!」

 

「私なら一誠的にも文句ないんじゃない?」

 

「いやいや、ここは私が……」

 

「待った待った。三人は目立つからここは私が……」

 

 

 それまで黙って居た娘さん達がここぞとばかりに立候補し始めたのを皮切りに、重鎮さん達までもが自分が行くと言い出す。

 

 

「お主らはやるべき事があるじゃろうて。

それなら儂が……」

 

「いーやここは私が……」

 

「わ、儂も一誠を守るくらいならなんとか出来るぞ?」

 

 

 祭、粋怜、果てには雷火までもが立候補し始め互いが互いを牽制し合う状況に炎蓮は一誠を見る。

 

 

「で、誰にすんだ? お前がどうしてもと言うんならオレでも良いが……」

 

「アンタは駄目だろ。

仮にもアンタはここの王だろうが」

 

「家督なら今は席を外してる蓮華辺りに押し付け――んんっ! 譲って引退しても良いぞ?」

 

「絶対に駄目だ。あの地味女一号がどうとかの話じゃなく、アンタはとにかく駄目だ」

 

「チッ……」

 

 

 正直、このメンツの中ならば誰でも良く。

 単純な戦闘力だけで考えたら炎蓮か小蓮が適任ではあるのだが、紛いなりにも炎蓮この国の王なので当然除外だ。

 

 

「ねーねー、シャオが一番やることとか無いし良いでしょ? それに喧嘩なら姉様や母様達に負ける気ないし?」

 

「おい……」

 

 

 実に可愛らしく一誠の腹部付近に抱きつきながら懐いた猫みたいに頭をスリスリしてくる小蓮。

 先程も述べた通り、単純な戦闘力に関して言えばこのメンツ達――『殻を破った者達』の中では炎蓮に追従する程の進化をしているのは否定しないし、この前も『現状の』一誠に7割の力を引き出させる程だった。

 

 

「ねーねー……? もしシャオを連れていってくれたら、シャオ、いっぱい一誠の事『癒して』あげるよ?」

 

「……」

 

『…………』

 

 

 しかし一誠は自分の口から誰かを指定するということが出来なかった。

 というのも誰かを指定したら変な空気になりそう―――というより小蓮の台詞で既に変な空気になっているので。

 

 

「俺はアンタ等の中ならば正直誰でも良い。

アンタ等で決めてくれよ……」

 

『……意気地なし(ヘタレ)』

 

「うっせー、本当なら要らねぇって俺だって言ってやりてーわ」

 

 

 故に一誠が取った行動は逃げであった。

 

 

 

 

 

 一誠の過去、一誠の力、そして一誠が目指す場所。

 全てが荒唐無稽で、普通ならあり得ぬと思ってしまう。

 

 

『テメー等への借りは返してやる。

だから俺に触るな、俺に寄るな、俺に話しかけるな……! 俺に構うんじゃねぇ!!』

 

 

 されど一誠はその全てを『行動』で示してきた。

 誰も信じず、力だけが全てと信じる野良犬のような青年。

 誰に対しても噛みつき、威嚇し、そう簡単には心を許そうとはせんとする手負いの獣。

 それが張昭こと雷火の抱いた一誠への印象だった。

 

 

「意外だな、まさかアンタが来ることになるとはな……」

 

「うむ、中々に大変じゃったが無事に勝ち取れた。

何せ儂は本来そこまで強いわけではないからのぅ」

 

 

 分身体を曹操の勢力内に侵入させる作戦において、誰か一人を無防備となる一誠の護衛としてつけるという話になってから半日後。

 逃げるようにその場を去った一誠の元に現れたのは顔や手足のあちこちに青アザを作る雷火だった。

 

 長である炎蓮以外の誰か一人という枠の為に、その場で手合わせをして残った者が一誠の護衛として同行する――というルールの下バトルロイヤル形式で戦ったらしく、それに勝ち残ったのは意外にも孫呉の内政を担当し、本来は非戦闘員側の雷火だったらしく、そこら辺のガキ大将相手に喧嘩でもした後のような出で立ちに一誠は意外な気分にさせられた。

 

 

 

「わしと決まった以上、明日に備えて早く眠るべきではあるのじゃが……」

 

「?」

 

 

 話せる相手であるなら誰でも良く、雷火はその普通に話せる相手の一人であるので特に異論は無かったりする一誠に、雷火は唐突に青アザだらけの状態で構え始めた。

 

 

「今の儂がお前さんを守れるだけのものか、お前さん自身で確かめて欲しい」

 

 

 右足を前にやや腰を落としながら半身構え、開いた左手を前に突き出し正面に居る一誠を捉える。

 

 

「………」

 

 

 奇しくもその構えは、一誠が『悪魔の執事』としての――本人曰く『外面を繕った小綺麗な戦い方』をする為の戦闘スタイルに酷似している。

 

 

 

『お前の構え方に少し近いな……』

 

「…………」

 

 

 

 しかしそれもその筈だ。

 何故なら雷火自身、一誠という青年の異質さを受け止めんと覚悟したその時から独自に『戦う術』を持たんと一誠の戦い方を見て学び続けたのだ。

 それもただの模倣ではなく、一誠の悪魔の執事としての戦闘スタイルをベースに独自に改良や発展をさせた――謂わば雷火だけの戦闘スタイル。

 

 

「さぁ遠慮は要らぬぞ一誠! かかって来い!!」

 

「へ、そんなナリで威勢の良いババァなことで」

 

 

 そんな雷火に応えるように一誠も構える。

 その表情は――どこか楽しげな笑みが溢れていた。

 そんな二人のやり取りは月が照らす夜を迎えても続くのであった。

 

 

 

 

 

 一誠と関わった者――いいや、一誠という存在そのものを知って、尚その生き方を否定せずに受け止められる覚悟がある者というべきなのか。

 とにかくそういった者達は明らかに一誠の影響を受けて成長をしている。

 

 間違いなく儂もその一人だ。

 

 

「はぁ……。

流石に炎蓮のようにはいかぬな」

 

「……………」

 

 

 この年になってから知ることになった可能性。

 一誠が見せた事で知った領域(バショ)

 一誠と出会わなければ死ぬまで知ることなぞ叶わなかったと思えばこれもまた運命(サダメ)なのかもしれない。

 

 

「だが、これでわしが足手まといではないのはわかってくれるか? 必ずお前さんの事は守ってみせるぞ?」

 

「ああ、正直俺が思っていた以上にアンタがやれるのはわかったよ」

 

「ふっふっふ、そうじゃろうそうじゃろう? この年になって――いいや、今まで生きてきた中でも一番必死になって己を鍛えてきたからなぁ。

一誠にそんな言葉を言われるのはとても嬉しいぞ?」

 

 

 一誠は自分の事を、『本来ならここに俺が居ること自体が有り得ないし、存在してもならない』と言っていたがわし等にとってすれば今この瞬間こそ――一誠と共にこの時を生きる今こそが『本来』なのだ。

 一誠の本来の力を奪い取った存在や、その奪い取られた力を使うとされてる天の御使いについての不安は確かにある。

 

 

「ふぅ、戦う為の鍛練をしたお陰なのか以前より傷の治りが早くなった気がするぞ。

まだ少し痛むが、このまま戻って眠れば残りの傷も全て治る筈じゃ」

 

 

 しかしそれでも我等は前に進まなければならない。

 どれだけ地へと墜ちても、常に上を見てもがき続ける一誠のように……な。

 

 

「っ……ではわしはそろそろ―――え?」

 

「そのザマでどうする気だ? 当日動けませんじゃ話にならないだろうが。

良いから動くな」

 

 

 それに不器用な言い方だけど優しい所もちゃんと知っているからな。

 ふふふ――――――――え?

 

 

 

 

 

 

 悔しいが、今の自分を誰かの力を借りなければ意思を貫けないことを自覚している一誠は、此度の作戦に同行者が付くことに同意した。

 その同行者が雷火になったのだけは予想外ではあったが。

 

 

「わ、わしは平気だぞ!?」

 

「良いから大人しくしろ」

 

 

 そんな雷火の自身の護衛としての戦闘力は合格と言えるだけのものはあったし、そもそも雷火自身が己の殻を破っていたのは知っていた。

 だからこそ一誠は自分なりの礼のつもりで、雷火の負っている傷を自室で治療しているのだ。

 もっとも、されている本人はいきなり一誠に部屋まで連れ込まれたのでテンパってしまっているのだが。

 

 

「こんなところか?」

 

「お、おぅ……やはり器用だな一誠は」

 

 

 打撲やら切り傷に効き目がありそうな草を擂り潰した簡易的な傷薬を使って雷火の脚やら腕やらに塗ってから、自作の包帯を巻く一誠に雷火はカチコチに緊張してしまう。

 

 

「お、おぉ……! 凄いな、殆ど痛みが引いているぞ」

 

「殆どアンタの自己治癒能力ありきだけどな」

 

 

 そんな精神状態であることは知らず、粗方の治療を終えた一誠が簡易救急箱を片付ける。

 

 

「うむ、これなら一眠りで完全に治りそうだな。

ふふ、ありがとうな一誠?」

 

「別に礼なんて良い。

単に借りを返してるだけだ」

 

 

 当初は常に険を帯びた雰囲気で周囲を威嚇していた一誠の、彼なりの『優しさ』に、出会う前はほぼほぼ消えていた母性本能がさっきから刺激される雷火は、何故か自分の部屋なのに出ていこうする素振りみせる一誠を呼び止める。

 

 

「どこに行く気じゃ?」

 

「あ? 外」

 

「何故じゃ? 何か用事でもあるのか?」

 

「別に無い。

無いが、アンタにはここで寝て貰うつもりだから、俺は適当にどこか外で寝ようかと」 

 

 

 そう言って再び出ていこうとする一誠を雷火は再び慌てて呼び止めた。

 わざわざ一誠が使う部屋なのに、自分に使わせるからと言ってその主が外で寝る辺りが一誠らしいのだが雷火としてもそこまでして貰うつもりはない。

 第一、治療のお陰で普通に動けるのだから己の自室に戻れば良いのだから。

 

 

(い、いや待て! ここでわしが普通に自室に帰れば済む話ではある。

しかしこれは――機ではなかろうか?)

 

 

 自分が帰る――と言いかけた所でハッと気が付いた雷火。

 

 ここ最近一誠は以前と比べて大分他の者達と交流するようになった。

 別にその事自体は雷火としても良いことだとは思っている。

 

 しかし一誠が他の者と交流をすればするほど――一誠とこうして接する機会が少なくなっているわけで……。

 

 

「お、おほん! 明日からわしとお前さんは特別な任がある。

その任務は間違いなく互いの息を合わせる必要性もあろう」

 

「は?」

 

 

 妙な罪悪感というか、背徳感のようなものを抱きつつも雷火は周りの『肉食系』達に対抗するかの如く不思議そうな目をして自分を見る一誠にそれらしい建前を並べ始めた。

 

 

「だからその……お互いを知る為にここはひとつ共に寝てみないかなー………なんて」

 

「……………………は?」

 

 

 まるで初恋した少女のように心臓を早鐘させながら告げる雷火に一誠はポカンとした顔だった。

 

 

「な、なんじゃその顔は!? わ、わしは正気じゃ!」

 

「いや別にそんなつもりじゃなくて、アンタがそんな事言い出すことに驚いたというか……」

 

「わ、わしはそこまで枯れてはおらんわ!」

 

 

 その『変なもんでも食ったのか?』と言わんばかりの顔に、ちょっとムッとなってしまう雷火は一誠の使っている寝具に横になりながら、バンバンとその隣を叩く。

 

 

「一緒に寝るぞ! 嫌だって言ったら傷つくぞ! 良いのか!? 良い年したババァが泣くのを目の前で見せるぞ!?」

 

 

 殆どゴリ押しといえばそれまでではあるが、ちょっと半泣き顔だった事が説得力を増したのか、基本年上には圧されがちな一誠は言われるがままにその横で寝ることになるのだった。

 

 

「おかしい……少し前までの俺なら絶対突っぱねてたのに」

 

「少しはわし等に心を開いてくれているという事じゃな。

さぁ一誠よ……炎蓮や祭や粋怜と比べたら大分足りぬが、今日だけはわしに甘えても良いぞ?」

 

「…………おやすみ」

 

 

 言うとおりにしたらテンションがおかしくなった雷火に背を向けてさっさと寝る事にした一誠。

 

 もっとも、数多のもしもの一誠のようにこの執事もまた『かなり寝相が悪い』事に定評があるので……。

 

 

 

「…………んん」

 

「っ……! い、いっせー? きゅ、急にどうし――ひゃんっ!?」

 

「んー……」

 

「な、なな……わ、わしがこんな生娘みたいな声を出すとは………じゃなくて! い、一誠!? ちょっと待つのじゃ! と、突然来られるとわしも驚――ひんっ!?」

 

「………」

 

「ほ、本当は起きてるのじゃろう!? わ、わしをからかってるのじゃろう!? い、今白状したら許す……からぁっ……! そ、そんなに吸うのはやめ…っ…!」

 

「んー……うるしゃい……」

 

「うぅ……普段はババァなんて呼ぶ癖にお前という奴は……。

だ、第一そんなに吸われても出ないぞ……?」

 

「……zzz」

 

「……。本当にわしをおかしくする奴じゃよ一誠は……ふふふ」

 

 

 

 

終わり

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、一誠を受け止めるのも体力が必要じゃのう……」

 

「………………………」

 

「ん、心配せんでもわしは気にしとらんよ。

わしはお前さんの弱さも含めて受け止めるつもりじゃしな?」

 

「………………」

 

 

 

終わりったら終わり




補足

実はこの世界線では三番目に執事と親しくなったのが彼女だったり。

だからなのか、無自覚ながら執事は彼女に対して結構弱さを見せたりするとか
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