色々なIF集   作:超人類DX

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続きです

特にない


魔法先生の試練

 

 

 そういえば最近、用務員のバイト時代よりか色々忙しいのもあってかナンパをしていない。

 

 友達を喪い、世界を追い出され、他所の世界に生き延びて漸くどこかの誰かに常に命を狙われてますな状況から解放された俺は癒しが欲しいんだ。

 

 そう……年上のおねーさんとの一時とかな。

 

 しかも今の俺はグレーゾーンとはいえ安定した収入もある。

 

 つまり! 世の中に蔓延るカップルのような真似事も不可能ではないのだ!!

 

 だから……だから―――

 

 

「れ、連絡は……い、以上……だ……。

ネ、ネギ先生……あ、後を……お、おね……お願いします……」

 

「は、はい……」

 

『……………』

 

 

 久々に一発ナンパに成功したぜと張り切ったというのに、連絡先まで交換できたっつーのに、高いバッグ買わされて以降連絡がつかなくなっちまったとかあっても、俺はへこたれやしないんだよ……。

 

 

「………」

 

(う、うわぁ……)

 

(な、泣いてるよイッセー先生……)

 

(教室の隅っこで体育座りしながら丸まって震えてるのがシュールだわ……)

 

「え、えー……では授業を始めますねー?」

 

 

 本当に……なんで何時もこうなるんだ俺って! ちくしょーー!!!

 

 

 

 

 

 イッセーの収入の全て――つまり財布は世話になっているエヴァンジェリンに管理されている。

 それはイッセーがどこぞの女にすぐ騙されて金だけを奪われるという理由があるのだが、死ぬ気でエヴァに頼み込んで手にしたお小遣いを半日で消滅させた挙げ句音信不通にされるというコンボを食らったイッセーのメンタルはズタボロボンボンだった。

 

 

「言っておくがお前の給料が出るまで小遣いは渡さんからな?」

 

「……………うん」

 

 

 自業自得といえばそれまでだが、小遣いの差止めさえもくらったイッセーの所持金は850円しか残っておらず、ほんわかした雰囲気の年上女性にまんまと騙されて貢がされたということも相俟って素直に聞くしかなかった。

 

 

「何時もよりコーヒーが苦いぞ茶々丸……」

 

「ブラックですから」

 

「そうか。

それなら心なしかしょっぱいのは何でだ……?」

 

「それはイッセー様の涙が混ざっているからかと思います」

 

「なるほどね。

……ふっ、人生ってのはとことん儘ならないぜ」

 

 

 嘘みたいに妙齢の女性に騙され続けるイッセーがコーヒーを飲みながら儘ならない人生に対して学園の屋上で黄昏る。

 

 

「おい、そこら辺の木っ端女ごときに騙されてメンタルをやられたからといってあの坊やに膝を付くなんて事は無いだろうな?」

 

 

 そんなイッセーを毎度の事ながらアホだと呆れながら茶々丸と見ていたエヴァンジェリンが釘を刺す。

 

 

「いくら高いバッグ買わされた後着拒されたからといっても手は抜かんよ俺は。

それはそれ、これはこれってね」

 

「…………」

 

 

 ヘラヘラと笑うイッセーの言葉にエヴァンジェリンは疑うことは無いものの、何時までもそこら辺のただの女に騙される事への不満は残る。

 

 

「ハッキリ言うが、お前のような男が一般人の女と上手く行くなぞありえんぞ」

 

 

 その気になれば騙した女を物理でバラバラに出きる男が、報復もせず凹む姿を無様に晒すのは気にくわないと語るエヴァンジェリン。

 

 

「万が一……まあ、私は絶対にあり得んと思うのだが、まともな女とやらと出会った所でお前の『根の部分』を知れば間違いなくお前は拒絶される」

 

「あー……確かにそうかもな」

 

「だったら何故辞めん?」

 

「んなもん決まってんだろ? きれーなおねーさんが大好きだからだよ」

 

 

 何を言っても、どれだけ騙されても辞めるということをするつもりがないイッセーにエヴァンジェリンは深々とため息を吐く。

 まさにバカに付ける薬は無い……と。

 

 

「さぁてと! そろそろ昼休みも終わるし、仕事だ仕事!」

 

「はぁ……」

 

「僭越ながら申し上げますと、イッセー様が今後ナンパをした相手の女性が『まとも』である確率は0.00000000005%という予測データがあります」

 

「………か、完全に0ではないんだから大丈夫だぜ!」

 

 

 しかしそんなイッセーのバカさ加減に助けられたのもまた事実であるエヴァンジェリンはもう一度ため息を吐くのであった。

 

 

 

 

 

 

 なんとしてでもエヴァンジェリンの弟子になろうと諦めずにイッセーへと挑むネギ少年だが、本音では毎日挑んだ所でエヴァンジェリンから提示された条件をクリアできるとは思っていない。

 

 それなら何故毎日のようにイッセーに挑むのか……。

 それは、普段はバカレンジャーの一人であり、学業の成績がお察しなアスナのアイデアが理由だった。

 

 

『じゃあさ、試験を理由に毎日イッセーに挑めば良いんじゃない? そうすればトレーニングにもなるし、アイツって何気にアドバイスとかしてくれるし』

 

 

 何故かイッセーの事になると謎に基礎知能が上がるアスナの提案はまさに天啓だった。

 確かにエヴァンジェリンはイッセーに膝を付かせる条件に、回数の制限は無かったし、アスナの言うとおり挑んでは返り討ちにされる度にイッセーからのワンポイントアドバイスもある。

 

 故に、古菲や楓――最近ではまき絵からの協力を得るようになったネギは毎日のように教師としての業務を終えた後にイッセーに挑むのが日課となっていた。

 

 

「今日こそ……イッセー先生に膝を付かせて見せます!!」

 

 

 日が暮れた学園の時計塔近くの広場にて、張り切るネギに対してイッセーは後ろでその様子を見るために同行していたエヴァンジェリンと茶々丸――そしてチャチャゼロとチャチャゼロにうざ絡みされて嫌そうな顔をしている人形モードのドライグを背に―――

 

 

「はぁ……人妻と遊びてー……」

 

 

 貢がされた事を根に持っているのか、何時も以上にやる気の無い――煩悩丸出しな事を口にしながらぼけーっとしていた。

 

 

「あ、アンタねぇ……! ネギに毎日挑まれてる相手をして貰って悪いとは思ってるけど、もう少しシャキっとできないわけ?」

 

「だからナンパなんて辞めろって言ったアル」

 

「逆によくもまあそういう女ばかりと当たるものだと感心するでござるよ」

 

 

 どこからどう見ても腑抜け面のイッセーにアスナ、古菲、楓の三人は呆れた顔をしている訳だが、真剣だろうが腑抜けだろうが膝を付かせるどころか傷のひとつも負わせられない程の差があるのだから理不尽だ。

 

 

「ネギ先生!」

 

「やったれネギ君!」

 

「兵藤先生なんて倒しちゃえー!!」

 

 

 

 そんな理不尽が服を着て歩き回るイッセーを前にネギが立つと、ここ最近ネギの事を知った女子数人が応援のつもりかやいのやいのとネギを応援している。

 

 

「今日は妙にギャラリーが多いな」

 

 

 そんなギャラリー達の反対側――つまりイッセーの側に立つエヴァンジェリンは騒々しさに眉を寄せる。

 

 

「どうやら皆さんネギ先生の応援のようですね」

 

「応援したところで天地がひっくり返っても今のぼーやじゃあイッセーに片ひざなんぞ付かせられんのだがな」

 

「ケケケ、マァ応援ノ数ナラコッチモ負ケチャイネーダロ。

ナァドライグ?」

 

「分かったから一々オレに絡むな。鬱陶しいぞ」

 

「…………ケケケ!」

 

「グォッ!? き、貴様!」

 

 

 すぐ横でチャチャゼロに押し倒されてポカスカ叩かれている人形状態のドライグとのやり取りをスルーしながら、ギャラリーの数はお互い様かと小さくため息を吐くエヴァンジェリン。

 こうしてネギにとっては真剣で、イッセーにとっては戯れとなる『試験』が開始されることになる。

 

 

「契約執行・120秒間!!」

 

 

 もっとも、結果は『お察し』なのであるが……。

 

 

「八極拳・転身誇打!!」

 

「……!」

 

 

 腑抜けているとはいえ、エヴァンジェリンとの約束もあるので手を抜いていたつもりは無かった筈のイッセーに古菲との修行により会得した拳法の連打がヒットする。

 

 

「おおっ!?」

 

「っ! 手応えはあった……!」

 

 

 驚きにどよめくネギ側のギャラリー

 

 

「バカイッセーめ、気を抜きすぎだ。

しかしあのぼーや、我流とはいえ自分の肉体に魔力を供給して身体能力を底上げしたのか……」

 

 

 対してイッセー側のギャラリーであるエヴァンジェリンはダメージこそ皆無ではあるものの、まともに連打を受けたイッセーに舌打ちしつつ、我流となるネギの魔力の扱い方に少しだけ興味を示す。

 

 

「あの小僧、小娘の技術を短期間で体得したのか……」

 

「ケド効イチャイナサソウダゼ?」

 

「当然だ。

しかし、あの小僧……思っていた以上に成長が早いタイプのようだ」

 

 

 チャチャゼロに馬乗りにされていたドライグも、それまであまり興味の無かったネギという少年の成長速度に初めて意識を向ける。

 

 

 

「先手必勝だったのに頑丈が過ぎるわよイッセーの奴……」

 

「けれどイッセー君を驚かせるのには成功したアル」

 

「うむ、証拠にイッセーは目を丸くしているでござる」

 

 

 主に体術を仕込んだ古菲と楓はネギの『天才っぷり』に後方理解面のようにうなずいている。

 

 

 

「へぇ、昨日までは喧嘩のやり方が拙かったのに、古菲と同じ動きか……」

 

「ええ……! クー老師に教えて貰いました!」

 

「ふーん……? そっか……いや、舐めてたつもりは無かったんだけど、少し驚いたよ。

キミはそうか―――特別(スペシャル)って奴なんだな」

 

 

 

 ネギに対して特別と呟きながら叩き込まれたネギの拳の感触を確かめるように腹部に触れるイッセーが、ちらりと古菲と楓を見る。

 

 

「神楽坂もだが、古菲も長瀬もお勉強が苦手な癖に、妙に頭が回る時があると思わないかいネギ先生?」

 

「え? あ、は、はい」

 

 

 

 

 

「む、イッセーがこっちを見て笑っているでござる」

 

「よく聞こえないけど、軽くバカにされた気が――ってどうしたのよクー?」

 

「ひ、久しぶりにイッセー君が笑ってくれた気がしたアル。

ど、ドキドキするアル……」

 

『お、おっふ……古菲……さん』

 

 

 今回ネギを引き上げた最大の功労者である者達に思わず溢れる笑みを見た瞬間、古菲がもじもじし、それを見た普段の古菲を知る女子達は、真面目に女の子になっている古菲に驚きと同時に変な声が出てしまう。

 

 

「さ、最近イッセー君が遊んでくれないし、エヴァンジェリンにばっかり構うからネギ坊主を強くしてびっくりさせようと思ったのに……。

笑うなんてずるいヨ……」

 

「こんな女の子してるクーちゃんを見ることになるなんて……」

 

「恋してるんやねぇ……?」

 

 

 そんな女子達の事に気づかないまま、昨日よりも急激な成長を見せ始めた――否、眠っていた才能を開花させ始めているネギにイッセーはそれまでの腑抜けを消し去り、今まで一度も――それこそ修学旅行の際に破壊したリョウメンスクナにすら皆無であった『構え』を取る。

 

 

「思ってた以上だよネギ・スプリングフィールド君。

キミならひょっとして――くくくく」

 

「っ!?(か、構えた……!)」

 

 

 

 右手を顔の前に上げ、左手は脱力するように真下に垂らす――ボクシングのフリッカースタイルを更に崩したような独特の構えを取るイッセーにネギは全身が総毛立つ。

 

 

「エヴァには後で怒られるだろうけど、気が変わったよ。

キミの糧になるかはわからないが教えてやるよ」

 

 

 その言葉と同時にイッセーの姿が文字通り消える。

 

 

「うっ、速っ――ぶっ!?」

 

 

 エヴァンジェリンすら見失う速度でネギに肉薄したイッセーの鞭のようなしなやかさを感じさせる左ジャブがネギの顔面を叩く。

 

 

「う、ぐっ!?」

 

 

 大きく身体を仰け反らせながらも踏ん張るネギの耳にギャラリー達の悲鳴が聞こえる。

 

 

「がっ!? うぐっ!? ゴファッ!?」

 

 

 そんなネギに対してイッセーは手を緩めず、さっきの仕返しだとばかりにまだ小さな少年の全身に拳を叩き付け、押し出すような前蹴りで吹き飛ばす。

 

 

「…………」

 

「ね、ネギ君が……」

 

 

 それまでの緩い空気が一瞬にして冷たく重苦しい空気へと変わりながら、地面に横たわるネギと若干ギラギラとした目で見据えるイッセーを交互に見る生徒達。

 

 

「立ちな小僧。

俺の『授業』はまだ始まったばかりなんだぜ?」

 

 

 そんな空気の中、イッセーだけは既に虫の息になりかけているネギに向かって、続行を宣言するのであった。

 

 

「…………」

 

「マスター、ひょっとしてネギ先生に提示した条件が厳し過ぎたのかもしれないと思われてますか?」

 

「いいや? 元々弟子にする気なぞ無いし、諦めさせる為にわざと無謀な条件をぼーやに突きつけたからな。

イッセーが言っていた通り、確かにぼーやの才能は目を張るものがあるが……。

そんな他者の高い才すらも『糧として乗り越えられる』理不尽な男を知った今となってはな……」

 

 

 なんとか立ち上がったネギを容赦なく殴り続ける今のイッセーは端から見れば大人気ないように見えるのかもしれないし、現にネギ側の生徒達はすっかりイッセーに恐怖の表情を浮かべている。

 

 

「加減はしているが、昨日までと違ってぼーやの心をへし折るつもりなのだろう。

ここで折れたらそれまで……折れなければ――」

 

「イッセーはあの小僧に『殺し合いを生き延びる術』を叩き込むだろうな」

 

「―――ああ、お前の言うとおりだなドライグ。

まあ、もし折れずに居られたのなら、私としても少しは認めてやらんこともない」

 

「ココロヲヘシ折ル前二死ヌンジャネーカ?」

 

 

 

 殴り倒しては無理矢理立たせて蹴り飛ばす。

 投げ潰しては強引に立たせて壁に叩き付ける。

 

 型も何も無い、ただの暴力がネギの肉体を壊していく光景に常人の感性を持つ者達は目を覆う中、エヴァンジェリンはどこか複雑そうな眼差しでイッセーを見る。

 

 どこか楽しそうに、期待しているような笑みを溢しているイッセーを……。

 

 

「私だけでは不満なのかお前は……」

 

 

 イッセーに根付く進化への欲求を満たすのは自分だけだという自負を持っていたからこそ、その期待を向けられているネギに少しだけ嫉妬するのだった。

 




補足

その内魔法じゃなくてドラゴン波が必殺技になるネギきゅん―――になるかは知らぬ
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